【読了】「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」

2019年12月22日

究極の食事方で重要なポイントは以下の3つ


本日、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」 津川友介著 を読了しました。

栄養に興味関心がある方には結構当たり前の内容をエビデンス上しっかりと証明されているもののみを紹介しているおそらく、現時点(2019年)では最も正しいであろう食事の方法です。

 

基本的にどのような本でも重要な点は1-2割程度です。

この書籍の中ので一番重要なポイント以下の3つに絞ることができます。

大枠:一見正しい情報は正しくない可能性がある

■重要なポイント3つ

  • 評価の点としてエビデンスレベルが大事
  • 日本食はエビデンス的にはそこまで優れていない
  • 成分や表現のイメージに引っ張られない

 

以下でこの3つの点に関して少し書き足していきたいと思います。

 

評価の点としてエビデンスレベルが大事


評価の点としてはエビデンスのレベルが大事です。

一般の方、医療に携わっていない方からすると、「エビデンスがある」というだけで、「確実に効果があるに違いない」と思ってしまいますが、エビデンスというのは実は簡単にごまかし悪用してしまうこともできます。

エビデンスレベルに関して、そしてどう悪用できるのかというような例を交えて説明した参考記事<https://ryoshihado-lab.com/2019/12/14/post-484/>

 

多くの健康食品などはエビデンスレベルが低いものを1つだけ、もしくは2-3個持ってきて、効果があるとしているケースがとても多いです。

本書籍でおもしろいと思ったのが

  • フルーツは身体にいいというエビデンスがある
  • 果汁100%のジュースは定期的に摂取すると糖尿病のリスクがあがるというエビデンスがある
  • 野菜ジュースは食物繊維などは除去されていて野菜そのものが含有されていて野菜ジュースが健康にいいというエビデンスはない
    ⇒健康効果はあるかもしれないがそのエビデンスは現段階では見つからない、野菜と同等の効果があるとは考えない方がおそらくいいであろう、というのが現状の見解

なんでも「イメージ」や「表層的な本当に効果があるのかわからないエビデンス」に踊らされるとこのような事実にはついつい目がいかないことがあります。

 

 

日本食はエビデンス的にそこまで優れていない


長寿大国日本。なのに日本食はエビデンス的には優れていないとはどういうことか⁉一部の方からは叱責を受けそうですが、その理由としては日本食は世界の食習慣と比べても「炭水化物量が多い」「塩分摂取量が多い」という2点があります。

■総エネルギーに占める炭水化物

日本    58%

アメリカ  50%

フランス  45%

上記のデータにもあるようにカロリーの多くを炭水化物で摂取をしていて、これらが玄米やソバなどであればまだいいのですが、主には白米、小麦(パン、うどん、パスタ等含む)、砂糖、異性化糖などで摂取をしています。

これは有意に糖尿病リスクをあげるので、典型的な日本食がいいかというとなかなか難しいものがあります。

■国別 1日あたりの塩分摂取量(g) -Powles et al.(2013)より2010年データ

韓国    13.2

日本    12.4

中国    12.3

イタリア  11.2

世界平均  10.1

フランス  9.6

カナダ   9.4

イギリス  9.2

アメリカ  9.1

ドイツ   9.0

塩分摂取量が多いと浸透圧の関係で血圧が上昇、定常化することで動脈硬化、結果として命を落とすリスクも高い下記のような疾患リスクが高まります。

  • 心筋梗塞
  • 脳卒中

 

日本食は健康にいい!はどこから?そしてどうすれば?


日本食が健康にいいとされるのは

「魚の一日あたり摂取量平均」が高くなると有意に、多くの疾患リスクを減らすことができるため結果として、古来から魚を中心に食べてきた日本人の食生活から健康にいいとされてきています。

現状は欧米文化も入ってきており、現状の日本食自体が健康に長寿命に関係あるかというと必ずしも断言が難しいようです。

日本の平均寿命に関してだけ追求すると、要素として「貧富の差が低いこと」「国民皆保険制度により広く遍く医療が受けられる」というのもとても大きいことも考慮に入れ、短絡的に「食が世界一優れている」と結論付けられない可能性が十分にあります。

例えば、塩分摂取量という観点からすると「味噌汁」などはいくら薄めても、量を飲んでしまう(飲み干してしまう)場合は総摂取量という観点からみるとあまり有効ではなく、一汁一菜などとし、毎食スープを飲んだ場合、かなりの塩分摂取量となってしまうため、そもそも汁は飲まないという選択も「健康」という観点ではとても大事になります。

 

また、白米に関しては取るだけ糖尿病リスクがあがるので、できる限り減らすことが望ましく玄米に変更する、もしくは麺類はそばなどにするなどをすると医学的に健康的な食事となります。

しかし、注意点としては「現状のエビデンス」という点であり、実際には体格や人種などの遺伝子上の点は考慮されておらず、遺伝的に糖尿病になりやすい、同じ量の栄養分をとっても疾患になる人とならない人がいて、平均化されたものにおいての数字なので個別の体調においてはおおきく乖離することも実際にはありえます。

 

成分や表現のイメージに引っ張られない


■オーガニックは本当に健康にとっていいの?

オーガニック食材は「栄養分が豊富」「残留農薬・汚染物質がゼロ」「安全性が最も高い」という印象を持っていますが、医学的に評価をすると「栄養分は差がない」「残留農薬などは差があるが、オーガニックもそうでないものも健康に影響のあるほどの差はない」「冬場の肉に関してはオーガニック食品は食中毒リスクが7 倍高い」というのが医学的な評価となり、メリットよりデメリットの方が多い可能性があるという結論にまでなっています。

オーガニックに傾倒する人の中には「残留農薬が〇倍もある!子供にとっていいはずがない」という主張があったりします。事実として微量な残留農薬を認める確率はオーガニック食材が7%、一般食材で38%と開きがあります。しかし、これは量に関してではなく出現率によるもので、量に関しては健康被害を到底起こさないレベルの含有量であるため、明確な有意差はないと結論づけることができます。

参考:[Human health implications of organic food and organic agriculture: a comprehensive review.](二番目に信用の高いレベルのエビデンス)

 

どうでしたか?少なくとも1つくらい、「え?そうだったんだ!」というようなことを紹介できればと思い紹介させていただきました。

ちなみにここまでエビデンス推しのようなスタンスをとっていながら、エビデンスは万能ではないということをコメントさせていただけたらと思います。

理由としては人間に最終的に影響があり、それが本当に奏効したかどうかに関しては30代から介入した場合、少なくとも30-60年かからないとそれが本当に人の生死に影響したかわかりませんし、30-60年たってからのデータでは住環境や食生活、生活水準から家族構成のスタイル、平均身長、平均寿命など大きく変化していきます。それらの多くの変数をすべて取り除き理論的に同条件で比較することは絶対にできないので、「30年前は正しかったこと」が「現在は誤り」ということは往々にして起こります。

一番高いエビデンスレベルを取得するには5-15年程かかったりすることもありますし、正しいことであるが、そこまで時間をかけることができても予算や、十分な研究がされることなく、導けないこともありますし、その研究していたことよりも画期的なものができて研究そのものがなしになるということもあります。

またエビデンスは集約された平均におけるものなので、その個人がたまたま集団から乖離した個である場合はその人には全く価値のないものともなりえるのがエビデンスです。

そのエビデンスの性質を知りながら、正しい情報を見極める力を一人でも多くの方が、ご自身の健康のため、大切な人の健康のために活用できたらと思っています。

 

おまけ:具体的に信じてはいけない記事例


ここまでだとわかったような気になっているので、具体的にある記事を参考にかいつまんでみていきましょう。

鵜呑みにしてはいけない代表的な記事例:食品添加物危険性ランキングトップ7!その理由と影響についても

(100%間違っているわけではないが信じてはいけない理由がある記事です)

■ 信じてはいけない理由:まずは記事内ランキング第一位から

まず第一に記事冒頭の引用で下記のようにあります。

食品添加物って色々あります。
食べて非常に危険なものが多いです。

では、具体的にはどういったものに気を付けていけばよいのでしょうか?

そのポイントって分からないことが多いいですよね。

そこで今回は、危険度の高いものをランキング形式で見ていきたいと思います。

上記記事内、最初に「危険度の高いものランキング」としています。しかし危険度の定義がなく、これが「ガンになる可能性の高いものを危険度としたランキング」なのかそれとも「絶対的に体に害を及ぼすもののランキング」なのか「有害物質の相対含有率が高いランキング」なのか、「食品の品目に対して含有されている数が最も多い(常用することで結果的に体に影響を強く与えそうという視点の)有害物質のランキング」なのか全くわからないランキングなので、何を持って1位から7位と順位付けをしていて、果たしてこれが正しいのかが全くわかりません。

なので一般的に分析する際には定義が明確ではない中、まずこのランキングの順位(数値)は信じてはいけないということになります。

 

次に先に続く一部記事の引用です。説得力がない理由は後述します。

亜硝酸Na(ナトリウム)は高い毒性を持っています。
食べると発がん性物質に変化しますので、非常に危険です。

ここで気を付けていただきたいのが、明太子です。
元々明太子はタラから作られています。

タラの卵にはアミンという物質が含まれています。
このアミンと亜硝酸Na(ナトリウム)が結合すると、発がん性物質ができやすくなるのです。

ですから、その中でも明太子は危険です!!

こちらの内容に関しては、「欧州食品安全機関(EFSA)、食品添加物としての亜硝酸カリウム(E 249)及び亜硝酸ナトリウム(E 250)の再評価に関する科学的意見書を公表」という内容から

疫学研究においては、(i)食事経由の亜硝酸塩と胃がん、(ii)加工食肉由来の亜硝酸塩と硝酸塩(nitrate)を組み合せたものと大腸がんを結び付けるエビデンスもあった。前もって形成されたNDMAと大腸がんを結び付けるエビデンスがあった。

亜硝酸塩と胃がん、亜硝酸塩と硝酸塩、NDMA(ジメチルニトロソアミン) であり、広義のアミンが危険ではなく、2級アミンと亜硝酸塩でニトロソアミンなどができるので加工肉中の血液成分などと結合することでできたりするので、エビデンス上で特に避けるように喚起したのはあくまで摂取量・習慣などから発がんするリスクが高い「加工肉」であり、「明太子が特に一番危険」というのはなんの納得性もありません。

(結論:広義のアミンは誤り。明太子に限定は根拠がなく「加工肉」こそ危険というのが医学的な知見)

 

■信じてはいけない理由:続いて記事内、第二位

続いて記事から次の引用箇所はこちら

スクラロースの危険性

スクラロースはとても分解されにくいもので、摂取し続けると体にどんどん蓄積されていきます。
ホルモン系や免疫系のシステムに悪影響を及ぼす可能性があり、
慢性的に人間の体をむしばんでいきます。

まず最初の「スクラロースは分解されにくいもので、摂取し続けると体にどんどん蓄積されていきます。」という点は基本的な言語の論理性が成り立っていないので不確かです。スクラロースは糖分であるが、人間の体内の酵素では分解できる酵素を持ち合わせていないため、分解されにくいため、カロリーがゼロ(100g当たり5kcal未満)であり、それが原因で体に蓄積されていくというのは論理上成り立ちません。こんにゃくなどもこんにゃく芋由来のマンノースという糖質であるが、人間がその糖分を分解することのできる消化酵素を持ち合わせていないので分解されにくいです。こんにゃくは分解されないがゆえに腸内の毒素を一緒に排出するため腸内環境をよくするとされている(エビデンスレベルは低が複数”コンニャクマンナンとビタミンB_6摂取の増加は大腸内環境を改善する”、”雄ラット腸内代謝におよぼすコンニャクマンナン投与の影響”、”コンニャクグルコマンナン入り機能性ペットフードの犬・猫による予備試験”)

また「摂取し続けると体にどんどん蓄積されていきます。」という点に関してはエビデンスと大きく異なります。エビデンスにおいてはがんの発症や遺伝子の損傷、免疫系などに影響を及ぼすことはないと認められています。また、私たちの身体の中に取り込まれたスクラロースは体内に蓄積されることなく、すみやかに排出される、ともされています。スクラロースは安全性の高いカロリーゼロ甘味料で糖尿病に効果があると結論づけられています。

参考となる海外ウェブサイト:https://sucralose.org/

参考引用部:

補足として下記のような機関が正式なステートメントを発表する場合は十分なエビデンスがそろわないと発表しません。

■ FDA Talk Paper T98-16.(アメリカ FDA)

 In determining the safety of sucralose, FDA reviewed data from more than 110 studies in humans and animals. Many of the studies were designed to identify possible toxic effects including carcinogenic, reproductive and neurological effects. No such effects were found, and FDA’s approval is based on the finding that sucralose is safe for human consumption.

■ American Diabetes Association(アメリカ糖尿病学会)

 There is adequate evidence, [for sucralose], that there are no concerns about mutagenicity, carcinogenicity, development or reproductive toxicity.

Opinion of the Scientific Committee on Food of the European Commission on Sucralose, September 7, 2000
■National Cancer Institute(アメリカ国立がん研究所)

 The low-calorie sweeteners in the United States all underwent extensive testing before they were approved. Results showed that low-calorie sweeteners are safe for everyone, including children and pregnant women. Sucralose is the newest low-calorie sweetener on the market. Sucralose is not affected by heat and retains its sweetness in hot beverages, baked goods, and processed foods.

 Sucralose was approved by the FDA as a tabletop sweetener in 1998, followed by approval as a general purpose sweetener in 1999. Before approving sucralose, the FDA viewed more than 100 safety studies that were conducted, including studies to assess cancer risk. The results of these studies showed no evidence that these sweeteners cause cancer or pose any other threat to human health.

■信じてはいけない理由:続いて記事内、第三位

続いての引用箇所はこちら

タール色素の危険性

発がん性もあり、赤血球減少、ホルモンバランスを崩す危険なものです。

とにかく、あまりにも鮮やかで不自然な色がある食べ物には気をつけましょう。

確かにタール色素はもともとはコールタールから得られるベンゼンやナフタレン、フェノールやアニリンといった芳香族化合物を原料としてアゾ染料(酸性染料)が合成されたためこの名がついています。しかし現在ではこれらの芳香族化合物は主に石油精製の際に得られるナフサを原料とした化成品から生産されており、アゾ染料もコールタールを原料とすることはほとんどなくなっています。
1960年代はこのタール色素が食品添加物として指定されていたのですが、発がん性が指摘されたため、50年以上昔から禁止されているのですが、50年前以上の現在は禁止されている成分の情報を持ち出し、現在の食品に関して危険と言っているので、そもそもの指摘ポイントは時間軸がずれにずれています。問題が起きて以降は、食品用途には天然物から得られる色素を代替として用いられることが多くなっています。(天然だとすべて安全というわけではありませんが。念のため。)
日本の厚労省もそこまで注意関心を向けないで放置することはないので現在、食品添加物等に使用されている色素は通常使用量により反復投与毒性試験、発がん性試験、変異原性試験で毒性のないことが確認されたものです。

上記までで記事内で「食品添加物危険性ランキングトップ7!」のうち上位3位に関して「なぜ鵜呑みにすべきでないか」を書いてみました。書いてある内容を1位-3位まで順に追ってみてもすべてが誤りであるということがわかりました。

これは人々が思う「なんとなく体によさそう」「なんとなく体に悪そう」という印象からそれに合わせて記事化すると、知識がないものがでたらめで書くことでも「やっぱりそうだったんだ」とプラスに解釈し、「共感」を得ることで拡散され、PVが上がり、結果として「記事を書いた人の収益につながる」という形となります。

■ 最後に:簡単な見極め方と、見極めが難しい記事

今紹介した記事は偶然Facebookで拡散されることで偶然、私の目に止まり参考にと思いピックアップしてみました。

見極め方として

〇 第一ハードル:そもそも誰が書いているのか

⇒「執筆者は専門家なのか」「記事を書くことでその人がどのような利益を享受するのか」それを少しイメージすると少なからずバイアスを差し引いて情報を入手できます。

 

今回の場合、「この記事を書いた人」を見ても専門家でもなんでもありません。ほかにも記事を書いていますが、書いてある記事も分野がいろいろとまたがっていて、確実に医療や食に関しての専門性が高いわけではありません。

 

〇第二ハードル:専門家が書いている記事の見極め

⇒「書くことでその専門家がどのようなメリットを享受するか」

⇒「エビデンスを引用しているか」

⇒「エビデンスの内容と主張は正しいか」

⇒「エビデンスのレベルはどうか」

このようなプロセスで分析をするとより情報を的確に捉えることができます。

しかし、専門家が書いていると先の例で紹介したような「ほぼ全部が嘘」ということはなく「7-8割は正しいけど、最後にこういう意図を持ってねじまげられている」ということがあるのでそれを判断しなければなりません。「書くことでその専門家がどのようなメリットを享受するか」ということを頭に入れておくと「どの方向にねじ曲げられていきそうか」という点に関しては大方予測がつくため、上記のようなステップで厳しめに記事を見ることをおすすめします。

しかし、これはあくまで、自分の行動、自分の大切な人を守るという手段においての意思決定のための記事の読み方であり、日常生活においては流し読みで「ああ、こんなことも書いてあったりするな。でもこのパターンなら話半分くらいにしておくか。」「拡散はしないでおくか。」とするだけで、自分や自分の大切な人達を守ることにつながる結果となります。

危険なのは「鵜呑みにして傾倒する」というカルト的な思考停止型、依存型の人間となることです。

繰り返しにはなりますが、エビデンスがしっかりしているものは基本古い情報ではあるので、あるタイミングで更新されたり、変わることもあります。

バランスとそれによるインパクトに関しては冷静に判断できるように、そして微力ながら人のお手伝いができる存在でありたいと思っています。

 

参考:「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」 津川友介著