免疫療法-免疫チェックポイント阻害剤に関し正しい情報を

2023年12月26日

免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)に関して正しい情報をとりましょう


オプジーボの開発がノーベル賞の受賞で多くのガン患者の方がオプジーボで治療を受けたい!と問合せをしているようなので少し当院からも情報を配信しようと思いました。

免疫療法という言葉と値段が高いということだけを知っていて、癌で追い詰められている人に対して、自費診療で似たような免疫療法があるとして、医学的なエビデンスが薄い治療をすすめる医師も出てきているようです。

ベースとなる作用機序、その薬、適応範囲、医学的エビデンスなど最低限ネットで手に入る情報は手に入れた上で判断しましょう!

 

免疫療法に関して知るべき情報3つ


  • 免疫チェックポイント阻害剤
  • 薬剤が非常に高い
  • 効果がある人はわずか2割、効果がなく重篤な副作用も多い

 

免疫チェックポイント阻害剤

免疫チェックポイント阻害剤は以下です。

作用機序 一般名 製品名
抗CTLA-4抗体 イピリムマブ ヤーボイ
トレメリムマブ
抗PD-1抗体 ニボルマブ オプジーボ
 ペムブロリズマブ キイトルーダ
抗PD-L1抗体  アベルマブ バベンチオ
 アテゾリズマブ テセントリク
 デュルバルマブ イミフィンジ

ノーベル賞で話題になったオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」は、がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外すことで免疫の力を回復し、がん細胞への攻撃力を強める薬です。(がん細胞は免疫に攻撃されないようにブレーキされています)

本庶佑さんはブレーキ機能となっている「PD-1」という分子を発見しました。

この分子の働きを抑えることで免疫が活性化することをマウスを用いた実験で発見し、免疫によるがん細胞への攻撃力が強まることを証明しました。

 

薬剤が非常に高い

小野薬品から出ているオプジーボは100㎎で約73万円で、患者1人に年約3500万円かかるとされています。

高い理由としては最初は対象疾患が少ない、メラノーマ(悪性黒色腫)で承認申請したからです。しかしその後、肺がんなど適用範囲を広げるという戦略をとりました。

毎年のように価格を下げられている理由としては、元々多くのがんに有効であるとされていたが、あえて、一番薬価が高くつくと思われるメラノーマで申請するという価格戦略をとったため、意図的であると判断され、例外的な薬価引き下げが行われています。まだまだ高額ですが、今後、さらに薬価の引き下げはされると言われています。

 

効果がある人はわずか2割、効果がなく重篤な副作用も多い

効果のある人にはとことん効く、画期的な薬剤が免疫チェックポイント阻害剤ですが、合わない人も多く、重篤な副作用を示すことも多いです。薬剤として、オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイなどを選択するということは下記のようなリスクがあるということを認識の上医師とともに選択ください。

副作用一覧

  • 間質性肺疾患
  • 重症筋無力症、筋炎
  • 1型糖尿病
  • 肝機能障害、肝炎
  • 大腸炎、重度の下痢
  • 神経障害
  • 眼障害
  • 副腎障害
  • 腎障害
  • 甲状腺機能障害
  • 重度の皮膚障害
  • 静脈血栓塞栓症
  • 脳炎
  • Infusion reaction(急性輸液反応)

 

参考になる情報ソース(がん全般)


 

ダメな情報例


ネット上で見つかる記事は医師が監修に入り、医療情報に詳しいライターが書いている場合もありますが、下記の記事のように、「読まれるために嘘がちりばめられる」「制度などの理解をせず、私見を入れ込んで記事作成をする」などの例もあるので、情報ソースや記事内容に違和感があるものなどは鵜呑みにしないようにしましょう。

 

 

医療提供者として思うこと


代替医療ではありますが当院も医療を提供するものとして気になる点がいくつかあります。

例えば今回注目されている免疫療法ですが、免疫を高めるものはすべて免疫療法と呼び、それこそ、「青竹踏み」や、嘘っぱちの「デトックス足湯」「水素水」レベルのものを免疫療法の1種であったり、免疫療法と併用すると治療成功率があがるなどして宣伝する程度の低いところから、医師であるもののまだ医学的にエビデンスがないもの(海外から輸入したエビデンス不十分な薬剤による治療、がんワクチン、免疫細胞療法など)を自費で進めてくる医院もあります。

個人的には免疫療法の中でもオプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイは免疫療法という言葉ではなく、「免疫チェックポイント阻害剤による治療」という表現のみを使うのがよいと思っています。

もちろん、免疫チェックポイント阻害剤を使用していない免疫療法のすべてが悪いわけでもなく、もちろん免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療も万能ではありません。

情報として確かなものを入手、そのうえで、時間的なコスト、金銭的なコスト、肉体的負担、精神的負担、それらによって期待できるアウトカム(成果)が最善となるように考えた上で選択ください。

当院でもガンの方(乳がん、子宮頸がん、咽頭がん、膵臓がん、胃がん)も来られており、できる限りのサポート・情報提供をさせていただいています。