嗅覚低下はパーキンソン病の初期サイン?他の原因との違い
「最近、匂いがわかりにくい」「香水や食べ物の匂いに気づきにくくなった」と感じると、 パーキンソン病との関係が気になる方は少なくありません。 実際に嗅覚低下は、パーキンソン病で比較的早い段階からみられる非運動症状の一つとして知られています。 ただし、嗅覚低下の原因は一つではなく、加齢、慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ、COVID-19などのウイルス後変化、頭部外傷などでも起こります。 このページでは、嗅覚低下をパーキンソン病の初期サインとしてどう整理するか、他の原因との違いも含めて実務的にまとめます。
結論
- 嗅覚低下はパーキンソン病でよくみられる早期の非運動症状の一つです。
- ただし、嗅覚低下はパーキンソン病だけで起こるわけではなく、加齢、慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ、ウイルス後嗅覚障害などでも起こります。
- 嗅覚低下だけでパーキンソン病を判断することはできず、便秘、夢の中で動く、動きの遅さ、震え、固さなどほかの所見とあわせて考えることが重要です。
- 鼻症状が強いか、急に起きたか、徐々に進んだかを分けてみると、他の原因との整理に役立ちます。
パーキンソン病と嗅覚低下の関係
パーキンソン病では、嗅覚低下は比較的よくみられる非運動症状です。 近年のレビューでは、嗅覚低下は頻度が高く、運動症状より前からみられることがある早期サインとして整理されています。
そのため、便秘やレム睡眠行動障害と並んで、「運動症状の前から起こりうる変化」として注目されています。
つまり、嗅覚低下はパーキンソン病と無関係ではありませんが、それ単独で診断に使えるほど決定的なものでもありません。
初期サインではあるが特異的ではない理由
嗅覚低下はパーキンソン病の早期バイオマーカーとして感度は高い一方、特異度には限界があります。 つまり、パーキンソン病の人に多い症状ではあっても、嗅覚低下がある人すべてがパーキンソン病とは言えません。
実際、2025年の研究でも、嗅覚パターンだけでパーキンソン病由来の嗅覚低下を完全に見分けるのは難しいことが示されています。
「匂いがわかりにくい」ことは大事な手がかりですが、それだけで強く決めつけると誤解が起きやすくなります。
他の原因として多いもの
嗅覚低下の原因としては、パーキンソン病以外に次のようなものが比較的よくみられます。
| 原因 | 特徴として見やすいこと |
|---|---|
| 加齢 | 徐々に進む、他の神経症状は目立たない |
| 慢性副鼻腔炎・鼻ポリープ | 鼻づまり、後鼻漏、鼻の症状を伴いやすい |
| COVID-19などのウイルス後嗅覚障害 | 比較的急に起こる、味覚変化を伴うことがある |
| 頭部外傷 | きっかけがはっきりしていることがある |
| 他の神経変性疾患 | 認知機能や他の神経症状を伴うことがある |
慢性副鼻腔炎では嗅覚低下は非常によくみられ、鼻ポリープの有無や炎症の強さと関係しやすいことが知られています。 また、COVID-19後の嗅覚低下は比較的よくみられ、急性発症や感染との時間的な関係が手がかりになります。
鼻症状が強い、感染のあとに急に起きた、味覚も一緒に変わったという場合は、パーキンソン病以外の原因を優先して考えやすくなります。
見分けるときの整理ポイント
嗅覚低下を整理するときは、「ある・ない」だけでなく、始まり方と一緒にみると考えやすくなります。
徐々に気づく、鼻づまりが目立たない、便秘や夢の中で動くなど他の非運動症状を伴う、のちに動きの遅さや震えが加わる。
急に起きた、感染や鼻炎の前後ではっきりしている、鼻づまりや鼻ポリープがある、頭部外傷の後から続いている。
とくに「急に起きた嗅覚低下」と「徐々に気づく嗅覚低下」は、受診時に分けて伝えると整理しやすくなります。
受診時に伝えたいこと
嗅覚低下を相談するときは、次のような点を整理しておくと役立ちます。
- いつから気づいたか
- 急に起きたか、徐々か
- 鼻づまりや副鼻腔炎の症状があるか
- COVID-19や強い風邪のあとか
- 味覚の変化もあるか
- 便秘、睡眠中に手足が動く、震え、動きの遅さがあるか
- 頭部外傷歴があるか
嗅覚低下だけで神経内科へ進むか、まず耳鼻科的な原因をみるかは、鼻症状や発症経過で変わることがあります。
よくある質問
嗅覚低下があるとパーキンソン病の可能性は高いですか?
関連はありますが、それだけで高いとは言い切れません。加齢や副鼻腔炎、ウイルス後変化などでも起こるため、他の症状との組み合わせが重要です。
急に匂いがわからなくなった場合もパーキンソン病ですか?
急な発症では、まず感染後や耳鼻科的な原因を考えやすくなります。パーキンソン病の嗅覚低下は、比較的徐々に気づく形が多いです。
鼻づまりがなくても副鼻腔炎はありますか?
ありますが、一般には鼻症状の有無も大切な手がかりになります。耳鼻科評価が役立つことがあります。
嗅覚低下だけで検査はできますか?
嗅覚検査自体はありますが、パーキンソン病の確定診断を単独で行うものではありません。経過や他の症状とあわせて判断されます。
参考文献
- Mitchell E, et al. Hyposmia in Parkinson’s disease; exploring selective odour loss. 2025.
- Doty RL. Olfactory dysfunction in Parkinson disease. Nat Rev Neurol. 2012.
- Ponsen MM, et al. Idiopathic hyposmia as a preclinical sign of Parkinson’s disease. Ann Neurol. 2004.
- Bochniak K, et al. Current Perspectives on Olfactory Loss in Atypical Parkinsonisms. 2024.
- Soler ZM, et al. Reduced Sense of Smell in Patients with Severe Chronic Rhinosinusitis. 2024.
- Simonini L, et al. A Comprehensive Review of COVID-19-Related Olfactory Deficiency. 2024.
- Whitcroft KL, Hummel T. Olfactory Dysfunction in COVID-19 and Other Causes. 総説文献群.
嗅覚低下はパーキンソン病でよくみられる早期の非運動症状ですが、特異的ではありません。加齢、慢性副鼻腔炎、ウイルス後嗅覚障害などでも起こるため、発症のしかたや鼻症状、ほかの神経症状とあわせて整理することが重要です。
まとめ
嗅覚低下は、パーキンソン病の初期サインとして知られる一方で、それだけで判断できる症状ではありません。
徐々に進むのか、急に起きたのか、鼻の症状があるのか、便秘や睡眠の問題など他の症状があるのかを分けて考えることが大切です。
不安があるときは、耳鼻科的な原因と神経内科的な原因の両方を視野に入れて整理することが実務的です。
- 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断を行うものではありません。
- 嗅覚低下はパーキンソン病以外にも多くの原因で起こります。
- 嗅覚低下に加えて便秘、睡眠中の異常行動、震え、動きの遅さなどがある場合は、医療機関での相談が重要です。

