1. パーキンソン病(PD)とは
パーキンソン病(Parkinson’s Disease: PD)は、中脳黒質のドパミン神経細胞が進行性に変性・脱落することで、運動機能(動く力)や自律神経、精神機能に多角的な障害が生じる神経変性疾患です。
1817年にジェームズ・パーキンソン医師が「振戦麻痺」として報告して以来、現在でもアルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い神経変性疾患として知られています。
疫学:数字で見るパーキンソン病
高齢者に多い病気ですが、若年での発症も珍しくありません。日本国内の患者数は増加の一途を辿っています。
- 有病率: 人口10万人あたり約100〜150人。日本国内には約20万人以上の患者がいると推計され、2030年には30万人に達すると予測されています。
- 好発年齢: 50歳〜65歳での発症がピークですが、加齢とともにリスクは上昇し、70歳以上では100人に1人が罹患すると言われます。
- 若年性パーキンソン病(YOPD): 40歳以下で発症するケースが全体の約10%存在します。遺伝子変異(PARK2など)の関与が多く、進行は比較的緩やかですが、薬の副作用(ジスキネジア)が出やすい特徴があります。
- 性差: 日本の統計では、わずかに女性に多い傾向(男女比 1 : 1.3程度)が見られますが、世界的には男性優位とする報告もあり、議論が続いています。
2. なぜ動けなくなるのか?(病態生理)
パーキンソン病の本質は、「ドパミンの減少」と「αシヌクレインの蓄積」です。
なぜドパミンが減ると体が固まるのか、脳内回路の視点から解説します。
① 黒質の脱落と運動回路の破綻
中脳の「黒質緻密部(SNpc)」で作られるドパミンは、大脳基底核(線条体)へ送られ、運動の調節を行います。
線条体には2つの回路があります。
- 直接路(アクセル): 運動を促進する回路。
- 間接路(ブレーキ): 余計な運動を抑制する回路。
ドパミン不足により、「アクセルが踏めず、ブレーキがかかりっぱなし」になります。
これにより、脳からの「動け」という指令が筋肉に届かなくなります(無動・固縮)。
② Braak仮説(病気は腸から?)
神経細胞の中に溜まるゴミ「レビー小体(αシヌクレイン凝集体)」は、脳幹で突然発生するのではなく、外部から侵入するという有力な仮説(Braak仮説)があります。
- Stage 1-2(発症10年以上前): 腸管神経(胃腸)や嗅球(鼻)から始まり、迷走神経を介して脳へ上る。⇒ 便秘・嗅覚障害
- Stage 3-4(発症期): 中脳黒質へ到達し、運動症状が出る。
- Stage 5-6(進行期): 大脳皮質へ広がり、認知機能や精神機能に影響する。
⚠️ 3. 生命予後と「防げる死」について
治療法の進歩により、パーキンソン病患者の平均寿命は一般人口とほぼ変わらなくなっています。
しかし、死因の内訳を見ると、肺炎(誤嚥性肺炎)に加え、パーキンソン病特有の症状に起因する「不慮の事故(溺死)」や「自殺」が高い割合を占めています。
これらは、リスクを知り対策することで防ぐことができます。
リスク①:自殺(うつ・不安・孤立)
パーキンソン病では、セロトニンやノルアドレナリンといった感情をコントロールする神経伝達物質も減少するため、約40〜50%の患者さんが「うつ症状」や「強い不安」を合併します。
さらに、「認知機能(頭)はしっかりしているのに、体が動かない」という強烈なジレンマが、生きる気力を奪う要因となります。
【本人・家族ができる対策】
- 「気分の落ち込み」「趣味への興味消失(アパシー)」は、性格の問題ではなく「脳の症状(非運動症状)」です。主治医に相談し、抗うつ薬の調整を行うことで改善可能です。
- 「頑張れ」という励ましは逆効果になることがあります。「動かなくて辛いね」と共感し、孤立させない環境づくりが重要です。
- 「オフ(薬が切れて動けない時間)」の時に、特に悲観的になりやすいため、その時間帯の精神ケアを重視してください。
リスク②:入浴中の溺死(ヒートショックとオフ現象)
日本におけるパーキンソン病患者の事故死で際立って多いのが「浴槽内での溺死」です。
これは単なる転倒ではなく、PD特有の生理反応が重なって起こる「動けない」状態が原因です。
溺れるメカニズム(負の連鎖)
- 血管拡張と低血圧: お湯に浸かると血管が広がり、血圧が下がります。PD患者は自律神経障害により血圧調整が苦手なため、脳への血流が減少します。
- 浴槽内での「オフ」: 脳血流の低下やリラックス効果により、急激に薬の効果が切れ、体が鉛のように重くなる「オフ」や「すくみ」が発生します。
- 起立困難: いざ上がろうとしても、筋強剛と低血圧で立ち上がれません。
- パニックと誤嚥: 焦って体勢を崩し、顔がお湯に沈んでも、首や手足が固まって(無動)起き上がれず、そのまま溺れてしまいます。
【命を守る入浴の鉄則】
- 水位は低く: 万が一動けなくなっても顔が出るよう、みぞおち程度(半身浴)の水位にします。
- 温度はぬるめ(40度以下): 高温は急激な血圧低下を招くため避けてください。
- 薬のピーク時に: 「オフ」の時間帯(薬が切れる直前や早朝)の入浴は避けてください。
- 声かけ: 入浴前に家族に声をかける、または家族がいる時間帯に入浴する習慣をつけてください。
4. 症状の全貌:運動症状と非運動症状
パーキンソン病の症状はよく「氷山」に例えられます。水面上の目に見える「運動症状」は全体の一部に過ぎず、水面下には膨大な「非運動症状」が隠れています。
これらを網羅的に理解することが、適切な対処の第一歩です。
A. 4大運動症状(TRAP)
診断の中核となる症状です。左右差(片側から始まり、やがて両側へ)があるのが大きな特徴です。
出現率:約70-80%
力を抜いてリラックスしている時に出現し、何かしようと動くと止まるのが最大の特徴です(本態性振戦との違い)。
精神的な緊張やストレスで増強し、睡眠中は消失します。
特徴的な動き:
- 丸薬丸め運動(Pill-rolling): 親指と人差し指で薬を丸めるような、あるいは小銭を数えるような独特のリズム(4〜6Hz)で動きます。
- 足の震えは「貧乏ゆすり」と間違われることが多いです。
② 筋強剛(Rigidity:固縮)
筋肉(特に屈筋)の緊張が抜けず、関節が固くなる症状です。
患者さん自身の自覚症状としては「痛み」や「こり」として現れることが多く、五十肩や腰痛と誤診され整形外科に通い続けるケースが多発しています。
医師が確認するサイン:
- 歯車様強剛(Cogwheel): 手首などを他動的に曲げ伸ばしすると、ガクガクと小刻みに引っかかる抵抗を感じます。
- フロマン徴候(Froment’s sign): 反対側の手を動かしてもらうと、患側の固縮が増強される現象です。
③ 無動・寡動(Akinesia / Bradykinesia)
動作の開始(Start)に時間がかかり、動作の振幅(大きさ)や速度が低下します。
日常生活への影響が最も大きく、QOLを低下させる主因です。
具体的な症状:
- 仮面様顔貌: 瞬きが減り(凝視)、表情筋が動かず、能面のような顔つきになります。
- 小字症: 文字を書いていると、だんだん字が小さくなり、右上がりになります。
- 単調言語: 声が小さく(小声)、抑揚のない話し方になります。
- 寝返り困難: 夜間、自力で体位を変えられず、睡眠障害や床ずれの原因になります。
- すくみ足(Freezing): 歩き出しや、エレベーターの入口などの「狭い場所」で、足が床に張り付いて出なくなります。
④ 姿勢反射障害(Postural Instability)
体のバランスが崩れた時に、とっさに足を出して支える「立ち直り反射」が消失します。
初期には見られず、病気が進行してから(ヤールIII度以降)現れる症状ですが、転倒・骨折(特に大腿骨頸部骨折)による寝たきりの最大のリスクです。
関連症状:
- 突進現象: 前傾姿勢で歩き出すと、重心が前に突っ込み、足が追いつかず、止まれなくなって壁に激突するまで走り続けてしまいます。
- 前屈姿勢(Camptocormia): 立っていると腰が極端に曲がりますが、寝ると真っ直ぐに戻る(腰曲がり)のが特徴です。
B. 全身に及ぶ「非運動症状」
運動症状が出る10年以上前から現れる症状も多く、早期発見の手がかりになります。
これらはドパミン不足だけでなく、アセチルコリンやセロトニンなど他の神経系の異常も関与しています。
1. 自律神経症状
- 頑固な便秘: 最も頻度が高く、ほぼ全例に見られます。腸管の動きが低下するためです。
- 起立性低血圧: 立ち上がった瞬間に血圧が急降下し、失神や転倒を起こします。
- 頻尿・尿失禁: 膀胱が過敏になり、トイレが近くなります(過活動膀胱)。
- 脂漏性顔貌: 皮脂の分泌が増え、額や鼻の周りが脂っぽくなります。
- 流涎(りゅうぜん): 飲み込み(嚥下)の回数が減るため、よだれが垂れやすくなります。
2. 感覚障害・睡眠障害
- 嗅覚障害: 初期の重要サイン。「コーヒーの香りがしない」「カレーの匂いが弱い」などで気づかれます。
- 痛み・しびれ: 原因不明の痛み(疼痛)が肩や腰に出現します。
- レム睡眠行動障害(RBD): 夢の中の行動をそのまま実行してしまい、寝ながら大声を出したり、暴れて隣の人を殴ったりします。
- むずむず脚症候群(RLS): 夕方から夜にかけて、脚の内部に不快感があり、じっとしていられなくなります。
3. 精神・認知機能障害
- うつ・不安: 脳内物質の減少による生理的な反応です。約半数に見られます。
- アパシー(意欲低下): 趣味や活動への興味が失われます。うつと似ていますが「悲壮感」がないのが特徴です。
- 幻視・妄想: 進行期や、薬の副作用で見られます。「部屋に虫がいる」「知らない子供がいる」などが典型的です。
5. どうやって診断するのか?(検査と鑑別)
パーキンソン病には「これが出たら確定」という単一の血液検査マーカーなどはありません。
診断は、「臨床症状」「薬への反応性」「画像検査」、そして「他の病気の除外(鑑別)」を組み合わせて慎重に行われます。
MDS(国際運動障害学会)の診断基準に基づくポイント
- パーキンソニズムの存在: 「無動(動きが遅い)」が必須で、かつ「静止時振戦」または「筋強剛」のどちらかがあること。
- 除外診断: 脳血管障害、薬剤性、他の神経変性疾患(MSA, PSPなど)ではないこと。
- 支持的基準: L-ドパ(薬)を飲んだら明確に症状が良くなること、嗅覚障害があること、など。
確定診断のための画像検査
一般的なMRIやCTでは、パーキンソン病の異常は写りません(逆に「正常」に見えるのが特徴です)。
診断には「核医学検査」という特殊な検査が用いられます。
① MIBG心筋シンチグラフィ
心臓の交感神経の働きを見る検査です。
【PDの特徴】 心臓への集積が著しく低下します(黒く抜ける)。
【重要】 似た症状の「多系統萎縮症(MSA)」や「進行性核上性麻痺(PSP)」では正常なことが多いため、それらとの鑑別に最も有用です。
② ドパミントランスポーター(DAT)スキャン
線条体のドパミン神経の脱落を可視化します。
【PDの特徴】 本来なら三日月型に光る部分が、ドット状(点状)に欠けて見えます。
※本態性振戦(震えるだけの病気)との鑑別に役立ちます。
⚠️ 間違いやすい「パーキンソン症候群」
以下の病気はPDと症状が似ていますが、L-ドパが効きにくく、進行が早い傾向があります。早期の鑑別が重要です。
- 多系統萎縮症(MSA): 小脳失調(ふらつき)や自律神経症状が強く、進行が早い。
- 進行性核上性麻痺(PSP): 転倒しやすく、眼球が上下に動かしにくくなる。
- 大脳皮質基底核変性症(CBD): 片方の手が思うように動かない(失行)、他人の手のように感じる。
- 脳血管性パーキンソニズム: 脳梗塞が原因。下半身に症状が強く、小刻み歩行が目立つが、上半身の機能は保たれることが多い。
6. 進行度と重症度(ヘーン・ヤール分類)
世界共通の進行度指標「ヘーン・ヤール(Hoehn & Yahr)重症度分類」です。
III度以上が、日本の難病医療費助成(指定難病)の対象となる目安です。
※この他に、日常生活動作(ADL)を評価する「生活機能障害度」も認定に用いられます。
7. 薬物療法の鉄則:補充と調整の科学
パーキンソン病治療の基本は、枯渇したドパミンを外から補う「補充療法」です。
しかし、単に飲めばいいというものではありません。病気の進行に伴い、脳が薬を受け入れる容量(キャパシティ)が変化するため、緻密なコントロールが要求されます。
A. 治療の二本柱(L-ドパとアゴニスト)
最強の特効薬(Gold Standard)
脳の血管関門(BBB)を通過し、脳内でドパミンそのものに変換される薬です。
即効性があり、服用後30〜60分で劇的に動きが改善します。高齢発症者や、認知機能低下がある場合は、副作用(幻覚など)のリスクを考慮しても、効果の確実なL-ドパが第一選択となります。
持続と保護
ドパミンの代わりに、神経細胞のスイッチ(受容体)を直接刺激する薬です。
効果はL-ドパよりマイルドですが、「効果時間が長い(半減期が長い)」のが特徴です。
薬の濃度変動を穏やかにすることで、後述する運動合併症(ウェアリング・オフ)の発現を遅らせる効果が期待できるため、特に若年〜中年発症者では第一選択となることが多いです。
B. なぜ薬は増えていくのか?(増量のパラドックス)
多くの患者さんが「薬が増え続けること」に恐怖を感じますが、これには医学的な理由があります。
病気が進行すると、脳がドパミンを貯めておくタンクの容量(保存能)が減ってしまいます。
初期(ハネムーン期):タンクが大きい
神経細胞が残っているため、飲んだ薬を貯金しておけます。1日3回飲めば、常に効果が持続します。
進行期:治療域(Therapeutic Window)の狭小化
神経細胞が減り、ドパミンを貯めておけなくなります(自転車操業状態)。
「少し足りないと動けない(オフ)」、逆に「少し多いと暴走する(ジスキネジア)」という、非常に狭いストライクゾーン(治療域)を狙わなければならなくなります。
そのため、1回の量を増やすのではなく、「1回量を減らして、回数を増やす(頻回投与)」という複雑な調整が必要になるのです。
C. 薬では治せない症状(Dopa-resistant symptoms)
「薬を増やしても良くならない」と悩む場合、それがそもそも「薬が効きにくい症状(抵抗性)」である可能性があります。
これらはドパミン以外の神経系(ノルアドレナリンやアセチルコリン系)の障害も関与しているためです。
- 姿勢反射障害: バランスを崩した時の立ち直り反応。薬ではほとんど改善しません。
- すくみ足(一部): 特に「薬が効いているはずなのに足が出ない」タイプのすくみ足は難治性です。
- 構音障害・嚥下障害: 呂律や飲み込みの問題も、L-ドパへの反応は限定的です。
- 認知機能障害: 薬によっては逆に幻覚を悪化させるリスクがあるため、減薬が必要になることもあります。
⚠️ 8. 「ムクナ豆」と自己判断の危険性
インターネットや口コミで「天然の特効薬」として広まっている「ムクナ豆(八升豆)」ですが、パーキンソン病患者さんが自己判断で使用することは極めて危険です。
「食品だから安全」という認識は大きな間違いです。
リスク①:重複服用による過剰摂取(Overdose)
ムクナ豆には、天然の「L-ドパ」が高濃度で含まれています。つまり、病院で処方される薬(メネシットやマドパー)と中身は同じです。
処方薬を飲みながらムクナ豆を食べることは、「医師の指示の倍量以上の薬を飲んでいる」のと同じ状態になります。
発生する副作用:
- 激しいジスキネジア: 全身が踊るように激しく動き続け、止まらなくなります。これにより筋肉が融解し(横紋筋融解症)、腎不全に至るリスクもあります。
- 精神症状: 幻覚(ありもしないものが見える)、妄想、興奮錯乱状態。
- 消化器症状: 激しい吐き気、嘔吐。
リスク②:悪性症候群(急な中止の危険)
逆に、ムクナ豆を大量に摂取していた人が、「調子が悪いから」といって急にやめると、体内のドパミン濃度が急降下します。
これにより、高熱、意識障害、筋肉の硬直を起こす「悪性症候群」という致死的な状態に陥る可能性があります。
【結論】どうしても摂取したい場合は、必ず主治医に報告し、処方薬の減量をセットで行う必要があります。独断での併用は絶対に避けてください。
9. 「ハネムーン期」の終わりと運動合併症
L-ドパ治療を開始してからの3〜5年間は、薬が非常によく効き、発症前と変わらない生活を送れることが多く、これを「ハネムーン期(蜜月期)」と呼びます。
しかし、長期間の服薬を続けると、脳内のドパミン受容体が過敏になり、薬の濃度変化に体が過剰反応する「運動合併症」という新たな壁が現れます。
① ウェアリング・オフ(Wearing-off)
薬の効果時間が短縮し、次の服薬時間の前に効果が切れてしまう現象です。
1日の中で、動ける時間(オン)と、体が鉛のように重くなる時間(オフ)を繰り返すようになります。
対策:
- 服用回数を増やす(1日3回→4〜6回)。
- 効果を延長する薬(COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)を追加する。
- アゴニストを併用して底上げする。
② ジスキネジア(Dyskinesia)
薬が効きすぎて(ピーク時)、本人の意思とは無関係に手足や首、口元がクネクネと勝手に動いてしまう「不随意運動」です。
「動けない(オフ)よりはマシ」と我慢する患者さんもいますが、激しい動きは体力を消耗し、体重減少の原因になります。
対策:
- L-ドパの1回量を減らす(ただしオフが悪化するジレンマがある)。
- アマンタジン(シンメトレル)等の調整薬を追加する。
10. 若年性パーキンソン病(YOPD)の苦悩
40歳以下(広義には50歳以下)で発症する若年性パーキンソン病は、高齢発症とは異なる臨床的特徴と、深刻な社会的課題を抱えています。
臨床現場では、「薬によるコントロールが最も難しい層」と言えます。
① 「効きすぎる」ゆえのジスキネジア地獄
若年性の患者さんは、L-ドパに対する反応性が良好です。しかし、それゆえに「ジスキネジア(不随意運動)が非常に早期から、かつ激しく出現しやすい」という特徴があります。
動くためには薬が必要だが、飲むと体が暴れて仕事にならない――この板挟みに苦しむ期間が、人生の活動期(働き盛り)と重なり、長く続きます。
② 早朝ジストニア(痛みを伴う筋収縮)
若年性の特徴として、薬の効果が切れている早朝などに、足の指がギュッと曲がり込むような、強烈な痛みを伴う筋収縮(ジストニア)が起きやすい傾向があります。
これもQOLを著しく低下させる要因です。
③ 社会的孤立と経済的問題
就労、結婚、子育ての時期に発症するため、経済的なダメージが直撃します。
「見た目は若くて元気そう」に見える(仮面様顔貌で辛さが伝わりにくい)ため、職場でサボっていると誤解されたり、周囲の理解を得られずに孤立するケースが後を絶ちません。
11. 薬の限界を超えて:デバイス補助療法(DAT)
飲み薬でのコントロールが限界(ウェアリング・オフやジスキネジアが制御不能)になった場合、デバイスを用いた高度な治療が検討されます。
これらは「最後の手段」ではなく、「QOLを維持するための積極的な選択肢」に変わりつつあります。
① 脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)
脳の特定部位(視床下核STNや淡蒼球GPi)に電極を埋め込み、ペースメーカーのような装置から電気刺激を送る手術です。
過剰に働いている「ブレーキ」の信号を電気的に遮断します。
- メリット: 「オフ」の時間を減らし、L-ドパの服用量を減らせる(結果としてジスキネジアも減る)。
- 適応: 認知機能が保たれており、70〜75歳以下の元気な方が良い適応となります。
② 胃ろうからの持続注入療法(LCIG / デュオドーパ)
胃に小さな穴(胃ろう)を開け、チューブを小腸まで通し、ポンプを使ってL-ドパ製剤を「持続的」に注入します。
血中濃度を常に一定に保てるため、最強のウェアリング・オフ対策となります。
- メリット: 手術がDBSより身体への負担が少なく、高齢者でも導入可能。
- デメリット: ポンプを常時携帯する必要がある。
12. 薬に頼らない戦略:リハビリの「コツ」
パーキンソン病のリハビリは、単なる筋力トレーニングではありません。
壊れてしまった脳の「自動運転機能(大脳基底核)」の代わりに、「意識的な操作(大脳皮質)」を使って体を動かす技術を習得することです。
魔法のスイッチ:外部刺激(Cueing)
すくみ足で一歩も動けない時でも、外部からの「合図(キュー)」があると、脳の別の回路が働いてスムーズに動けることがあります(矛盾性運動)。
👀 視覚刺激(Visual Cue)
床にテープを貼ったり、横断歩道の白線をまたぐように意識すると、足が出やすくなります。
レーザーポインター付きの杖なども市販されています。
👂 聴覚刺激(Auditory Cue)
メトロノームのリズムや、「イチ、ニ、イチ、ニ」という掛け声に合わせて歩きます。
好きな音楽のリズムに合わせるのも有効です。
🧠 認知戦略(Mental Rehearsal)
動く前に、頭の中でその動作をイメージしてから実行します。
また、「かかとから着く」など、動作の一部を強く意識します。
13. 標準治療の「死角」を読み解く
病院での標準治療(薬物療法)は、パーキンソン病治療において**絶対的な正解であり、最優先されるべきもの**です。
しかし、実際に患者さん(特に若年性の方)を診ていると、「薬は効いているはずなのに、動くのが辛い」「薬の効果が不十分に感じる」という訴えが少なくありません。
当研究所では、この原因を脳の機能局在から以下のように分析しています。
主な症状: 手足の震え、典型的な固縮、動作緩慢
対応: 薬(ドパミン)が著効します。
ドパミン受容体が豊富な領域のため、標準治療で十分にコントロール可能です。
主な症状: 姿勢反射障害(バランス)、すくみ足、身体の深部の重さ
対応: 薬の効果が出にくい領域です。
この領域(脚橋被蓋核や小脳系)はドパミン神経以外で制御されているため、いくらドパミンを足しても反応せず、「なんとなく不調」が残り続けます。
つまり、「Aは薬で抑えられているが、B(難治性領域)が放置されている」ことが、
患者さんが抱える「薬の効果は感じるが不十分」という感覚の正体であると考えられます。
14. 独自の物理的アプローチ「3軸作用仮説」
当研究所では、薬が届かない「脳幹・小脳エリア」の機能不全に対して、外部から物理的介入を行うことで、標準治療の隙間を埋める研究を行っています。
神経難病特有の深部領域へダイレクトにアプローチする手法です。
特殊な物理刺激によって深部血流を極限まで高め、細胞内に蓄積した異常タンパク(αシヌクレイン等)の代謝サイクルを活性化させます。
薬が効きにくい姿勢制御エリア(脳幹・小脳)の慢性的な炎症・緊張状態を物理的に鎮めます。
ここが正常化すると、薬の量はそのままでも「体が軽い」「バランスが取れる」という感覚が戻りやすくなります。
機能不全に陥っているだけの(死滅していない)神経回路に強いシグナルを送り、本来の機能を呼び覚まします。
15. 複数の症例から見える「可能性」
これまでに当研究所では、若年性の方を含め、複数の「薬の効果に行き詰まりを感じている方」に変化が現れています。
特に、B領域(脳幹・小脳エリア)の症状が目立つ方において、再現性のある改善が見られています。
- 施術前:
「震えは薬で止まっているが、すくみ足が出る」「体が鉛のように重い」状態。
(A領域は薬で制御できているが、B領域の不全が残存している状態と推測) - 施術後:
直後から「足がスムーズに出る」「小走りができるようになった」という変化を確認。
「薬がなくても症状を感じない」という感想を持たれる方もいます。 - 結論:
これは、薬が効かない領域(B)の問題が物理的アプローチによって解消された結果、脳全体のバランスが整ったためと考えられます。
すくみ足やバランス障害が改善し、スタスタと歩けるようになった記録動画も公開しています。
アプローチする場所を「薬の届かない場所」に変えることで、変化は起こりうるのです。
治療の主役は、あなた自身と主治医です
パーキンソン病は長い付き合いになる病気ですが、医学は日々進歩しています。
主治医とよく相談し、適切な標準治療を受けることが大前提です。
当研究所が提示する「物理的アプローチ」や「小脳エリアへの介入」は、標準治療を補完する一つの視点に過ぎません。
しかし、もし今の治療に行き詰まりを感じているのであれば、この視点が新たな突破口になる可能性があることも、また事実です。
正しい知識を持ち、諦めずに治療に向き合ってください。
