ALSや筋ジストロフィーなどの病気で、歩く、手を使う、呼吸する、話すといったことが難しくなったとき、身体障害者手帳を申請できる場合があります。手帳は病名に対して発行されるものではありません。現在の身体機能が、法令で定める障害の種類と程度に該当するかを審査して交付されます。
申請の準備から交付後の制度確認まで、家族と一緒に進められるようにまとめました。まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で、必要な様式と指定医を確認してください。
身体障害者手帳の対象は病名ではなく身体機能の障害
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、一定以上の身体機能の障害がある人に交付される手帳です。筋力が落ちた、難病と診断されたという事実だけで、自動的に交付や等級が決まるわけではありません。一方、進行する病気だから一律に申請できないわけでもありません。現時点の障害を、該当する認定基準に沿って確認します。
| 障害の区分 | 病気に伴う例と確認したいこと |
|---|---|
| 肢体不自由 | 上肢・下肢・体幹などの機能。歩行、立ち上がり、移乗、食事や更衣で手を使う動作などを、指定医が認定基準に沿って評価します。 |
| 呼吸器機能障害 | 呼吸機能の検査値や日常生活への影響などを、所定の認定基準で確認します。呼吸補助装置の使用だけで等級が決まるものではありません。 |
| 音声・言語・そしゃく機能障害 | 発声、意思疎通、食べ物をかむ機能など、該当する区分と状態を確認します。飲み込みづらさがあるだけで、直ちにこの区分の手帳が交付されるわけではありません。 |
| その他の法定区分 | 視覚、聴覚・平衡機能、心臓、腎臓などの機能障害も対象です。診断書の様式と指定医の指定区分は障害の種類に合わせて確認します。 |
等級は原則として1級から6級まであります。複数の障害があるときも含め、認定基準に基づく判定が必要です。「ALSだから何級」「車椅子を使っているから何級」と先に決めることはできません。呼吸や嚥下の治療が必要な場合は、手帳の判定を待たず、主治医と必要な医療・支援を相談してください。
申請から交付までの進め方
- 市区町村の障害福祉担当窓口に相談する。「身体障害者手帳を申請したい」と伝え、対象になりそうな障害区分、申請書、障害区分ごとの診断書・意見書の様式、写真や本人確認書類、代理申請の方法を確認します。必要書類や提出先は自治体で異なります。
- 該当区分の15条指定医を確認して受診する。診断書・意見書を書けるのは、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医です。普段の主治医でも、その障害区分で指定されているか確認が必要です。指定医がいない場合は、窓口や医療機関に紹介先を尋ねます。
- 診断書・意見書と必要書類を提出する。指定医の診察・検査を受け、自治体指定の様式を作成してもらいます。申請書、顔写真、本人確認・個人番号の確認書類などと合わせて提出します。診断書の作成料や写真の費用、診断書の有効期間も事前に確かめておくと安心です。
- 審査結果を受け取り、手帳の記載を確かめる。審査中に追加資料や照会が必要になることがあります。交付の連絡を受けたら障害の種類・等級、再認定の予定の有無を確認し、利用したい制度について窓口で相談します。審査期間は地域や案件によって違うため、急いで使いたい支援がある場合は申請時に伝えてください。
診断書を先に依頼すると、別の障害区分の様式だったり、その区分の指定医ではなかったりして、作り直しになる場合があります。窓口で受け取った様式を受診先に示し、受診日と書類の提出期限を調整してください。
診察前に、普段の困りごとを具体的に書き出す
診察室では、調子の良い日の短い動作だけでは、日々の介助の量や疲労の影響を伝えきれないことがあります。本人や家族が生活の変化をメモして持参すると、医師が必要な検査や認定基準に沿って状態を確認する助けになります。メモがそのまま等級の根拠になるわけではなく、診断書の判断は指定医と審査機関が行います。
受診先に確認する障害区分: 歩行・移乗・手の動きで難しいこと: 呼吸や会話・食事で難しいこと: 自分でできること/手助けが必要なこと: 補助具、呼吸補助などの使用状況: 困りごとが変わった時期と、直近の検査結果:
たとえば「歩けない」だけでなく「自宅内は手すりがあれば移動できるが、玄関の段差では介助が必要」のように書くと、生活場面が伝わります。無理にできる動作を続けたり、補助具を外して状態を示したりする必要はありません。検査や評価の方法は医師の指示に従ってください。
交付後に確認したい支援と、手帳とは別の制度
手帳を受け取ると、障害の区分や等級、住んでいる地域、各制度の要件に応じて、利用できる支援があります。交付だけで交通機関の割引や税の控除が一斉に始まるわけではありません。どの窓口に、何を持って申請するかを確認しましょう。
| 相談したいこと | 確認先と注意点 |
|---|---|
| 交通・公共料金などの減免 | 交通事業者や自治体、各制度の案内で対象の等級・区分や申請手続きを確認します。全国一律の割引ではありません。 |
| 税の障害者控除 | 所得税などの障害者控除は税法上の要件に従います。手帳の等級・本人と扶養親族の状況を確認し、勤務先の年末調整や確定申告など必要な手続きを取ります。 |
| 補装具・日常生活用具、福祉サービス | 必要な用具や介助を自治体の担当窓口に相談します。各制度には申請・判定・自己負担など固有の条件があります。購入や契約の前に相談してください。 |
| 住所・障害の状態が変わったとき | 住所変更、再認定、等級変更などの手続きは窓口で確認します。病状が変わっても、手帳の等級が自動で変更されるわけではありません。 |
医療費助成、障害年金、福祉サービスは別々に確認する
指定難病の医療費助成を受けるための受給者証、身体障害者手帳、障害年金は、それぞれ目的と認定基準が違います。手帳の等級と障害年金の等級は同じ数字でも連動しません。介護保険の対象になる方は、障害福祉サービスとの適用関係も含め、窓口で現在の支援を相談してください。
障害者総合支援法の対象疾病に該当する難病などでは、手帳を持っていなくても、所定の手続きで必要と認められた障害福祉サービス等を利用できる場合があります。対象疾病の一覧や証明書類、利用の要件は厚生労働省の案内と自治体窓口で確認してください。手帳の審査中でも、必要な支援を待たずに相談できます。
身体障害者手帳についてよくある疑問
ALSや筋ジストロフィーと診断されれば取得できますか?
診断名だけでは決まりません。現在の身体機能が対象区分・認定基準に該当するかを、指定医の診断書などに基づいて審査します。どの区分の診断書が必要か、まず自治体に相談してください。
主治医にそのまま診断書を頼めますか?
身体障害者手帳の診断書・意見書は、該当する障害区分の15条指定医に作成してもらいます。普段の主治医が指定医かどうか、自治体や受診先に確認してください。
手帳が交付されなかったら、支援も利用できませんか?
いいえ。対象疾病に該当する難病の方は、手帳なしで障害福祉サービス等を申請できる場合があります。医療費助成や介護保険、障害年金も別の制度です。必要な支援ごとに担当窓口で確認してください。
手帳の等級が変わったら障害年金の等級も変わりますか?
自動では変わりません。障害年金は別の認定基準で審査されます。障害の状態が変わった場合は、手帳の再認定や等級変更と、年金の手続きをそれぞれの窓口に相談してください。
いつ申請するのがよいですか?
生活に支障が生じ、手帳の対象になりそうだと感じたときは、主治医と自治体に相談できます。具体的な診断書作成の時期は障害の種類や医学的な評価によります。支援が急ぎ必要な場合は、手帳の結果を待つ前に利用できる制度も尋ねてください。
申請を始めるときの確認先
まずは自治体の障害福祉担当窓口に「身体障害者手帳を申請したい」「生活上の介助や用具も相談したい」と伝え、必要な様式、該当区分の指定医、利用を急ぐ支援を確認してください。主治医には検査結果と普段の状態を持参し、診断書の作成や他科の指定医への紹介を相談します。
制度・窓口の取扱いは変わることがあります。実際の申請には、お住まいの自治体が示す最新の様式と案内をご確認ください。
