【CMT】鍛えすぎに注意|過負荷弱化を避ける運動の考え方
CMTでは、筋力低下があるなら鍛えた方がよいのか、それとも使いすぎで悪くなるのかで迷いやすくなります。 実際には、まったく動かない方がよいわけでも、強く追い込めばよいわけでもありません。 大切なのは、過負荷弱化を避けながら、長く続けられる強さで整えることです。 このページでは、CMTでの運動を「やるか・やらないか」ではなく、「どの程度で、どう崩れないように行うか」という視点で整理します。
結論
- CMTでは、運動を一律に避けるのではなく、低〜中等度強度を基本に、過負荷弱化を起こしにくい範囲で続ける考え方が現実的です。
- 現在は、低〜中等度の有酸素運動や筋力トレーニングは全体として勧められる方向ですが、supramaximal な強い負荷や、翌日まで悪化を残すやり方は避けたいところです。
- 大切なのは「鍛えた実感」より、「翌日も生活が崩れないか」「歩き方が後半で崩れないか」を見ることです。
- 実務的には、自覚的運動強度 5〜6/10 程度を一つの目安にしつつ、疲労、痛み、つまずき、だるさの残り方で個別調整するのが役立ちます。
過負荷弱化とは何か
過負荷弱化は、もともと弱っている筋や神経に強すぎる負荷をかけ続けることで、 一時的な疲労を超えて、かえって筋力低下や動作悪化につながるのではないかと考えられてきた概念です。
CMTではこの考え方が長く意識されてきましたが、実際にはすべての運動が危険という意味ではありません。 問題になりやすいのは、強すぎる反復、高強度、崩れた動きのまま続けることです。
注意したいのは「運動そのもの」ではなく、「弱いところに強すぎる負荷が重なり続けること」です。
今はどう考えられているか
現在は、CMTで運動を広く避けるというより、低〜中等度の運動は全身的な利益があり、定期的に勧められる方向に整理されています。 interval training、トレッドミル、抵抗運動などでも、過負荷弱化を示さず、機能改善を報告した研究があります。
使いすぎるとどんどん弱くなるのでは、という懸念が強かった。
低〜中等度なら利益が期待でき、問題は強度設定とやり方の不適合にある。
今は「動くな」ではなく、「追い込みすぎず、崩れない範囲で続ける」が基本に近い考え方です。
なぜ鍛えすぎが問題になるのか
CMTでは、筋力低下だけでなく、足部変形、深部感覚低下、代償歩行、バランス維持のための余分な努力が重なりやすくなります。 そのため、見た目の運動量以上に、特定の筋や関節へ負担が集中することがあります。
| 負担が増えやすい理由 | 見えやすい形 |
|---|---|
| 弱い筋への集中負荷 | 足先を持ち上げる筋、手の細かい筋などが先に疲れやすい |
| 代償動作 | 本来使いたい筋より別の部位が頑張りすぎる |
| フォームの崩れ | 回数後半で歩き方や姿勢が悪くなる |
| 回復不足 | 翌日までだるさ、つまずき、痛みが残る |
CMTでは「鍛えているつもり」が、実際には代償部位の酷使になっていることがあります。
比較的取り入れやすい運動の考え方
実務的には、強く追い込むより、コントロールしやすく、翌日に残しにくい運動を選ぶ方が続けやすくなります。
| 考え方 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 低〜中等度強度 | 自覚的運動強度 5〜6/10 程度を一つの目安にする |
| フォーム優先 | 回数より、崩れずにできる範囲で止める |
| interval 的な組み方 | 休憩を入れながら行い、連続負荷を避ける |
| 大きい筋群中心 | 遠位の弱い筋ばかりを追い込まない |
| 有酸素+筋力+柔軟性 | 一つだけに偏らず組み合わせる |
運動の質を判断する基準は、その場の頑張りではなく、翌日まで含めた反応です。
やりすぎを疑いたいサイン
次のような変化が出るなら、負荷設定を見直した方がよい目安になります。
- 運動後30分ほどしても、むしろ弱く感じる
- 24〜48時間たっても強い筋肉痛やだるさが残る
- 手足が重く、普段の動作がやりにくくなる
- つまずきやすさが増える
- 強いこむら返りや筋けいれんが増える
- 息切れや回復の遅さが目立つ
「達成感があった」より、「生活に悪影響が残らなかったか」を優先して判断した方が安全です。
日々の調整で大切なこと
CMTの運動では、強い日を作ることより、長く続けられる配分を作ることが重要です。
- 調子の良い日にやりすぎない
- 運動量は少しずつ増やす
- 外出や仕事で疲れた日は無理に上乗せしない
- 足先や手先の弱い筋だけを反復で追い込まない
- 装具や靴の相性も含めて負荷を考える
- 疲労やつまずきを簡単に記録する
続く運動は、強い運動より、生活の邪魔をしない運動です。
よくある質問
CMTでは筋トレをしない方がいいですか?
一律に避ける必要はありません。低〜中等度で、翌日に悪化を残さない範囲なら取り入れられることがあります。
どのくらいの強さが目安ですか?
一つの目安として、自覚的運動強度 5〜6/10 程度が使いやすいです。
鍛えた翌日にだるいのは普通ですか?
軽い疲れはありえますが、翌日まで強いだるさやつまずき増加が残るなら、やりすぎを疑った方がよいです。
足先の弱い筋を重点的に鍛えた方がいいですか?
必ずしもそうではありません。弱い遠位筋を追い込みすぎるより、全体の歩行や姿勢を支える組み方の方が現実的なことがあります。
参考文献
- McCorquodale D, et al. Management of Charcot–Marie–Tooth disease. 2016.
- Mori L, et al. Treadmill training in patients affected by Charcot–Marie–Tooth neuropathy: results of a multicenter, prospective, randomized, single-blind, controlled study. 2019.
- Leale I, et al. Telecoaching: a potential new training model for Charcot–Marie–Tooth disease. 2024.
- CMTA. A Guide to Physical and Occupational Therapy for CMT.
- Pazzaglia C, et al. Sport activity in Charcot–Marie–Tooth disease: a case study of a paralympic swimmer. 2016.
CMTでは、過負荷弱化の概念には議論が残るものの、低〜中等度の運動は全体として勧められる方向です。問題になりやすいのは、強すぎる負荷、崩れたフォームの反復、翌日まで残る悪化です。
まとめ
CMTで大切なのは、鍛えるか休むかの二択ではなく、過負荷弱化を避けながら続けられる運動の形を作ることです。
低〜中等度を基本に、フォームを崩さず、翌日に悪化を残さない範囲で行う方が長期では実務的です。
運動の良し悪しは、その場の達成感より、翌日の歩きやすさや生活の安定で判断することが役立ちます。
- 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の運動処方を行うものではありません。
- CMTの運動負荷は、病型、足部変形、疲労、装具使用の有無によって調整が必要です。
- 運動後に明らかな筋力低下、つまずき増加、強い痛みやだるさが続く場合は、内容を見直すことが重要です。

