ALS|自分と家族の経過を記録する
落ち着いている経過を、
次の診察に役立つ記録へ
「最近、ALSの進行が止まったように感じる」「前回の診察から大きく変わっていない」。そのようなときは、保たれていることを具体的に記録してください。良い変化や安定している期間も、経過を理解するための大切な情報です。
伝えたいのは、いつから、どの機能が、どのような条件で保たれているかです。呼吸・食事・移動・手の動作などを分け、介助や道具の変化も添えると、主治医と話し合いやすくなります。
ご自身やご家族の経過を整理するためのページです。他の人の「進行が止まった」という体験談や広告を評価したい方は、体験談を読むときの確認ポイントをご覧ください。
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横ばいの経過をどう受け止めるか
「この期間は、この機能が保たれている」と表現すると、観察したことを正確に伝えられます。食事の負担が減った、会話が楽になった、同じ介助で移乗できているなど、本人にとって意味のある変化も残してください。
| 観察したこと | 診察での伝え方 | 一緒に確認すること |
|---|---|---|
| 前回と同じ生活動作ができる | 「前回から今まで、この動作は同じ方法でできています」 | 介助、道具、休憩、活動量の変化 |
| 食事や会話が楽になった | 「この場面の負担が減りました」 | 食事形態、姿勢、睡眠、呼吸や口腔ケアの変化 |
| 評価の点数が変わらない | 「この期間、同じ評価では合計点が横ばいです」 | 項目別の内容と、検査・生活上の変化 |
ALSでも横ばいの時期はあるのか
ALSの経過は、毎日一定の速さで変化するとは限りません。臨床試験データを集めたPRO-ACTの解析では、機能評価の点数が一定期間下がらない経過や、小さく上向く経過が報告されています。短い横ばいだけから、特定の治療・施術による進行停止と結論づけることはできません。[1]
同じ研究では、大きく持続する機能改善を、詳しく調べる価値のある経過として扱っています。良い変化を記録し、その期間・範囲・条件を明らかにすることが、次の評価につながります。
同じ項目・同じ条件で比べる
比較する日付を決め、以前の記録と現在の状態を並べます。「最近は良い気がする」から一歩進めて、何が保たれ、何が変わったのかを書きます。過去の状態が曖昧な項目は、推測で埋めず「以前の記録なし」と残せば十分です。
- 期間:いつの状態と、いつの状態を比べているか。
- 動作・症状:食事、会話、手の操作、移動、睡眠など、どの項目か。
- 条件:時間帯、姿勢、道具、介助、休憩、体調がどうだったか。
- 生活の負担:本人の疲労と、家族の手助けが増減していないか。
介助や活動量の変化も書く
「食べられる」場合でも、自分で食べるのか、食具や食事形態を工夫しているのか、介助を受けているのかで内容が違います。「歩ける」場合も、見守り、補助具、距離、休憩の必要性を添えます。
支援を使って生活が楽になることには価値があります。そのうえで、本人の機能の変化と、支援によってできるようになったことを分けて残すと、今必要なケアも見つけやすくなります。
記録のために、補助具や呼吸補助を外す、無理に歩く、何度も最大の力を出す、水を飲んでむせを試す必要はありません。安全な日常場面で気づいたことと、医療機関で行った評価を使います。
記録に残したい6つの領域
毎日すべてを測定する必要はありません。本人が大切にしている動作と、最近変わったことを中心に、無理なく続く量で記録します。検査の頻度や方法は、担当の医療者と相談してください。
| 領域 | 残す情報 | 比較するときの条件 |
|---|---|---|
| 呼吸・睡眠・排痰 | 横になる苦しさ、朝の頭痛や眠気、会話時の息切れ、咳・痰、医療機関での検査結果 | 検査日・姿勢、呼吸補助や排痰支援の使い方、感染などの体調変化 |
| 食事・嚥下・栄養 | 体重、食事時間、食事量、水分、むせ、飲み込みの負担 | 食事形態、姿勢、食具、介助、経口・経管の栄養方法 |
| 移動・立ち上がり | 日常の移動、立ち上がり、移乗、転倒・つまずき、休憩と疲労 | 同じ生活場面、補助具、見守り・介助、外出や活動範囲 |
| 手・腕の動作 | 食具、着替え、スマートフォン、筆記などで困ること | 使う道具、姿勢、支える場所、手伝ってもらう部分 |
| 会話・意思伝達 | 声量、聞き返される場面、会話後の疲労、使える意思伝達手段 | 相手、環境、休憩、文字や機器の利用 |
| 介助・生活全体 | トイレ・入浴・寝返りの支援、家族の負担、外出、本人が続けたいこと | 介助方法、福祉用具、支援者、サービス利用の変更 |
医療機関の検査結果は、数字と日付をそのまま残します。家庭での観察は、「誰が見たことか」「本人はどう感じたか」を分けると伝わりやすくなります。項目を詳しく確認したい方は、ALSの評価・記録の案内も利用できます。
ALSFRS-Rが同じ点数のときに見ること
ALSFRS-Rは、日常生活の機能に加え、息切れ、横になったときの呼吸、換気補助の必要性などを評価する尺度です。経過を共有するために役立ちますが、合計点と、各項目の内容を一緒に確認します。[2]
- 前回と同じ方法で評価されているか。自己記入と診察での評価を混ぜていないか。
- 合計点が同じでも、困っている動作や症状に変化がないか。
- 点数には表れにくい疲労、所要時間、介助量、生活範囲の変化がないか。
- 呼吸、嚥下、体重など、診察や検査で別に確認すべき項目はどうか。
一度の点数や短期間の上がり下がりだけで判断せず、日付を付けた複数回の記録を主治医と確認します。点数が同じでも本人の負担が減っていれば、その変化も書いておきましょう。
呼吸・嚥下・体重の確認を続ける
手足の動きが保たれていても、呼吸や飲み込み、栄養の状態は別に確認します。ALSの診療では、生活機能とともに、呼吸症状、食事・水分摂取、体重、意思伝達や支援の必要性を継続して評価します。[3][4]
- 呼吸:横になると苦しい、朝の頭痛、日中の強い眠気、咳が弱い、痰を出しにくい。
- 食事・嚥下:食事時間の延長、むせ、食後の声の変化、水分や薬の飲みにくさ。
- 栄養:体重の変化、食事・水分量、食べるための疲労や介助の増加。
体重や日中のSpO2が保たれていても、症状の変化があれば医療者へ伝えてください。呼吸・嚥下の見逃しサイン、体重・食事・栄養の案内でも確認できます。
安定している期間も、処方薬、定期受診、呼吸補助、栄養・排痰などの計画は医療者と確認して続けます。変更を希望するときは、現在の記録を持って相談してください。
新しい治療・ケアを始めた後の見方
治療、施術、機材、サプリメント、生活の工夫を始めた場合は、開始日と同時期に変わったことを残します。薬、食事、睡眠、呼吸補助、活動量、介助方法なども一緒に記録すると、変化の背景を検討しやすくなります。
「始めた後に安定した」という前後の記録だけでは、その方法が進行を止めたとまでは言えません。これはCell Healingの施術・機材についても同じです。変化した機能、比較期間、他の治療・ケア、評価方法を具体的に示す必要があります。[1]
生活上の良い変化も、評価に含めます。眠りや食事、移動、介助の負担が軽くなったなら、それ自体を大切な目標として記録できます。病気の進行速度への効果と、生活の負担が減ったことを分けて説明しましょう。
原因を確かめようとして、処方薬や呼吸補助を自分で中断することは避けてください。施術前後の記録を詳しく整理する場合は、施術を主観だけで判断しないための記録も参考になります。
家族と共有する3つの問い
- 今、保たれていてうれしいことは何か。本人が大切にしている動作や暮らしを言葉にします。
- 以前より手助けが必要になったことは何か。本人の印象と、家族が見たことを分けて残します。
- 次の診察で何を相談するか。良い変化も気になる変化も、具体的な場面として伝えます。
意見が違うときは、「安定している/していない」の結論を争うより、それぞれが見ている場面を並べます。家族で決めることや担当を整理するには、ALSの家族会議テンプレートを使えます。
受診・連絡を早めたい変化
息苦しさ、むせ、食事・水分の取りにくさ、体重減少、痰の出しにくさ、転倒などが増えた場合は、次の予定受診を待つかどうか医療機関へ相談してください。「進行が止まっているはず」と考えて、新しい症状を見過ごさないことが大切です。
強い呼吸困難、窒息、呼びかけへの反応が乏しいなどの場合は、119番を含む緊急の対応を優先してください。記録を完成させてから連絡する必要はありません。[5]
自分だけで機器設定を変えたり、無理に水分や食事を取らせたりせず、医療者の指示を受けます。呼吸補助や吸引などの機器に問題があるときは、事前に決めた緊急時の連絡先へ知らせてください。
診察で伝える短い比較メモ
以下をコピーしてメモアプリなどで記入してください。分かる項目だけで構いません。印刷用の用紙や、呼吸・嚥下などを詳しく伝える書式は、ALSの受診メモテンプレートにあります。
よくある質問
半年ほど変わらなければ、進行が止まったと言えますか?
同じ条件で確認した機能が半年間保たれているなら、その経過を具体的に伝えられます。病気全体の進行や安定している理由を判断するには、他の機能、診察・検査、さらに続く経過も一緒に確認します。
以前より楽に感じるだけでも、記録してよいですか?
記録して構いません。何が楽なのか、どの場面で感じるのかを書くと役立ちます。体感、生活動作、検査の情報を分けて残してください。
ALSFRS-Rが同じなら、他の検査は不要ですか?
ALSFRS-Rに加えて、呼吸、嚥下、体重などの確認を続けます。検査の種類や間隔は、症状と担当医の評価に応じて相談してください。
家族が見ると介助は増えています。本人にどう伝えればよいですか?
「この動作は保てている」「この場面は手伝うことが増えた」と、両方の事実を並べます。本人の良い実感を残しながら、必要な支援も診察で相談できます。
参考文献・参考情報
- Bedlack RS, et al. How common are ALS plateaus and reversals? Neurology. 2016;86:808–812. PubMed/本文。臨床試験データにおける機能評価の横ばいと改善の解析。
- Cedarbaum JM, et al. The ALSFRS-R: a revised ALS functional rating scale that incorporates assessments of respiratory function. J Neurol Sci. 1999;169:13–21. PubMed。呼吸機能の評価を含むALSFRS-Rの原著。
- NICE. Motor neurone disease: assessment and management(NG42). 公式ガイドラインPDF。生活機能、呼吸、栄養・嚥下、支援の継続評価。
- Van Damme P, et al. European Academy of Neurology guideline on the management of amyotrophic lateral sclerosis. Eur J Neurol. 2024;31:e16264. 本文。多職種によるケア、呼吸・栄養・生活支援。
- 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ。
医療情報の確認日:2026年10月25日。比較メモは情報共有のための書式で、進行停止や治療効果を判定する検査ではありません。診断、薬の変更、呼吸・栄養管理の判断は、主治医・医療チームと相談してください。

