ALS・呼吸筋発症例で胸郭運動と動脈血ガスが改善方向へ|NPPV設定変更なしの70代男性

ALS・呼吸機能|個別観察記録 NPPVの圧設定を変えていない中で、 呼吸時の胸骨・肋骨の動きが改善し、 動脈血ガスでも変化が確認されました

呼吸筋症状から経過が始まったALSの70代男性です。 週2回の通院を約1年間続ける中で、 呼吸時にほとんど動いていなかった胸骨・肋骨周囲の動きが 以前より明瞭になりました。

その後、外部医療機関の動脈血ガス検査で、 PaCO₂が55.1から53.8mmHgへ低下し、 PaO₂が77.9から88.8mmHgへ上昇しています。

呼吸を補助する条件を強めた結果ではありません

2回の検査の間で、NPPVの圧設定に変更はなく、 生活様式にも大きな変化はありませんでした。

胸骨・肋骨の動きが改善した後に、 二酸化炭素の排出と酸素化に関わる検査値も良くなっていたことから、 身体側の呼吸運動や換気状態に変化が起きた可能性を考えています。

症例の概要

対象 ALS・70代男性
経過の特徴 呼吸筋症状が早期から目立つケース
通院頻度 週2回
継続期間 約1年間
NPPV 検査間の圧設定変更なし
生活条件 大きな変更なし

この方は、四肢の症状だけでなく、 息を吐く力の弱さが早期から強く見られていました。 腹筋群や体幹筋の働きも弱く、 呼吸時の胸骨・肋骨の動きが小さい状態でした。

通院開始から約半年後には、 上肢の一部で筋収縮と動作の回復が確認されました。

その後、再び少し弱くなった時期はあるものの、 腕の機能は維持され、脚の力も大きく低下せずに推移しています。

腹筋群や背部を含む体幹筋にも変化が見られるようになり、 呼吸時の胸骨・肋骨周囲の動きも以前より大きくなりました。

医療機関の検査で確認された数値

PaCO₂ 血液中に二酸化炭素がどの程度たまっているかを見る値。 呼吸が浅くなり、CO₂を十分に排出できないと上昇します。 55.1 → 53.8 1.3mmHg低下
PaO₂ 肺から取り込まれた酸素が、 動脈血中にどの程度存在するかを見る値です。 77.9 → 88.8 10.9mmHg上昇
検査項目 基準値 2026年5月 2026年7月 変化
pH 7.38~7.46 7.376 7.373 −0.003
PaCO₂
動脈血二酸化炭素分圧
32~46mmHg 55.1mmHg 53.8mmHg −1.3mmHg
PaO₂
動脈血酸素分圧
74~108mmHg 77.9mmHg 88.8mmHg +10.9mmHg
乳酸 0.4~1.8mmol/L 1.2mmol/L 1.6mmol/L +0.4mmol/L

PaCO₂が低下したことの意味

PaCO₂は、動脈血中の二酸化炭素分圧です。 体内で作られた二酸化炭素は肺へ運ばれ、 呼気によって体外へ排出されます。

ALSで呼吸筋が弱くなり、 肺胞まで届く有効な換気量が減ると、 二酸化炭素を十分に排出できなくなり、 PaCO₂は高くなります。

55.1から53.8mmHgへ低下

低下幅は1.3mmHgであり、 この数値だけで呼吸筋の回復を証明できるほど 大きな変化ではありません。

ただし、NPPVの圧設定を変えていない状態で PaCO₂が上昇せず、わずかでも低下したことは、 二酸化炭素を排出する換気状態が良くなった可能性を示します。

なお、53.8mmHgは現在も基準値を上回っています。 高二酸化炭素血症が解消したわけではなく、 引き続き医療機関による呼吸管理が必要です。

PaO₂が上昇したことの意味

PaO₂は動脈血酸素分圧です。 肺から取り込まれた酸素が、 動脈血中にどの程度存在するかを表します。

指先のパルスオキシメーターで測るSpO₂は、 ヘモグロビンに酸素が結合している割合を推定する値です。 今回の77.9、88.8という数値はSpO₂ではなく、 動脈血から測定されたPaO₂です。

77.9から88.8mmHgへ上昇

1回目の77.9mmHgも検査票上の基準範囲内ですが、 基準範囲の下限に近い値から、 より高い正常範囲へ移動しています。

胸郭の動きと血液ガスの変化をどう捉えるか

胸骨や肋骨の動きが大きく見えるだけでは、 呼吸機能が良くなったとは判断できません。

呼吸が苦しくなり、首や肩などの補助呼吸筋を強く使うようになった場合にも、 外見上の動きが大きく見えることがあるためです。

今回は、胸骨・肋骨の動きが改善した後に、 PaCO₂の低下とPaO₂の上昇が確認されました。

見た目の変化だけではなく、血液ガスにも変化が現れています

NPPVの圧を強くしたわけではなく、 生活様式にも大きな変更がない状態で、 呼吸運動と血液ガスの両方に変化が見られました。

この経過から、腹筋群や体幹筋を含む本人側の呼吸運動が変化し、 肺胞換気や酸素化にも影響した可能性を考えています。

ALS患者を対象とした研究でも、 胸郭の動きはFVCなどの呼吸機能と関連し、 呼吸状態を評価する手がかりになり得ると報告されています。

今回は専用機器による胸郭運動の定量測定ではないため、 胸郭可動域そのものを数値で証明した記録ではありません。

それでも、継続して確認していた身体の変化が、 医療機関の血液ガスにも反映された可能性があることは、 経過を考えるうえで重要な所見です。

医療機関でも数値の改善が確認された

検査結果については、診察時に担当医からも 「数値は良くなっている」と説明されたと、 本人・家族から共有されています。

これは医師による症例報告や意見書を引用したものではありません。 診察時に受けた説明を、症例経過の一部として記載しています。

この記録から分かることと、まだ分からないこと

確認できていること
  • NPPVの圧設定に変更がなかった
  • 生活様式に大きな変化がなかった
  • 呼吸時の胸骨・肋骨の動きが改善した
  • PaCO₂が55.1から53.8mmHgへ低下した
  • PaO₂が77.9から88.8mmHgへ上昇した
  • 医療機関でも数値が良くなっていると説明された
このデータだけでは確定できないこと
  • 呼吸筋そのものが回復したこと
  • ALSの病態自体が逆転したこと
  • Cell Healingだけが変化の原因であること
  • 今後も数値の改善が続くこと
  • 他のALSの方にも同じ結果が起こること

PaCO₂の変化幅は小さく、 血液ガスは採血時の体位、呼吸状態、痰、感染、 NPPVの使用時間やマスクの状態などでも変化します。

したがって、1回の比較だけで因果関係を断定することはできません。

一方で、ALSの呼吸筋機能が低下していく経過では、 一般的には換気が浅くなり、 二酸化炭素は蓄積する側へ進みます。

NPPVの圧設定を変えていない中で、 胸郭の動きが改善し、 PaCO₂が低下してPaO₂が上昇した今回の経過は、 単なる体感だけでは説明できない変化として記録する価値があります。

パスワード保護・限定公開 検査結果画像と詳しい経過は限定ページに掲載しています

個人情報を除去した検査結果画像、 約1年間の身体機能の経過、 胸郭運動と動脈血ガスの関係、 評価上の限界については、 パスワード保護した固定ページにまとめています。

公式LINEで「閲覧希望」と送信してください。

呼吸管理は引き続き必要です

PaCO₂は53.8mmHgと、現在も基準値を上回っています。

今回の変化は、呼吸障害が解消したことや、 NPPVが不要になったことを意味するものではありません。

NPPVの設定、酸素投与、排痰、吸引、 カフアシスト、感染管理については、 必ず主治医および呼吸管理に関わる医療者の指示を優先してください。

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