てんかん発作があるとき|受診・薬・生活で整理したいこと
福山型先天性筋ジストロフィーでは、筋肉だけでなく脳の形成にも変化があり、てんかん発作が起こることがあります。全身のけいれんだけが発作ではありません。短時間反応がなくなる、目線が片側に寄るなど、気づきにくい形もあります。発作の最中に家族が診断名をつける必要はありません。安全を確保し、時間、呼吸、顔色、回復の様子を確認することが、その後の診療につながります。
福山型先天性筋ジストロフィーとてんかん
福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は、筋力低下とともに脳の形成の変化を伴う疾患です。そのため発達や学びに加え、発作にも目を向けます。GeneReviewsでは、発作は患者さんの60%超に見られると報告されています。ただし、この割合は集められた患者さんに関する報告であり、目の前の方の発作の有無や経過を予測する数字ではありません。[1]
熱があるときに起こる発作も、熱がないときに起こる発作もあります。子どもの頃に目立たず、成長してから発作が見つかることも報告されています。発熱時にだけ起きたから「てんかんではない」、年齢が上がったから「新しい発作は起こらない」とは決められません。[2][3]
病型全体の管理は福山型先天性筋ジストロフィーの総合ページ、発達・学びは発達と日常生活のページで扱っています。このページは、発作を見たときの安全と、診察で共有する情報に絞ります。
発作はどのように見える?
全身が突っ張ってガクガク動く場合だけでなく、片手や顔の片側だけが動く、目線が固定される、呼びかけへの反応が途切れる、といった変化もあります。筋力や発達の状態、普段の反応の仕方を知っている家族だからこそ、「いつもとの違い」が重要な手がかりになります。
観察しておきたい変化
- 全身または体の片側が突っ張る、繰り返しぴくつく。
- 視線が一方向に寄る、動きが止まり、呼びかけに反応しなくなる。
- 数秒の変化が何度も続き、発作の間に普段どおりの反応へ戻らない。
- 発作らしい動きが目立たないのに、急に力が抜ける、眠気が強くなる。
- 発作後に長く眠る、むせる、痰が出しづらい、呼吸の様子が変わる。
眠気や体調不良と区別しにくい場合もあります。家庭では無理に発作の型を分類せず、見えた動き、続いた時間、前後の変化を主治医に伝えてください。安全が確保できていれば短い動画も役立ちますが、撮影のために救急連絡や介助を遅らせないでください。
急いで助けを求める場面と、発作中にできること
迷ったら救急へ
けいれんを伴う発作が5分以上続く、すぐ次の発作が起こる、呼吸が苦しい・唇が青い、回復せず反応が悪い、水中で起きた、頭を打ったときは119を含む緊急対応が必要です。初めての発作も直ちに医療につないでください。5分は「それまでは待ってよい」という意味ではありません。福山型で呼吸・嚥下の問題がある場合や、いつもと明らかに違う場合は、時間にかかわらず早めに助けを求めます。[4]
- 始まった時刻を見る。周囲の硬い物をどけ、転落や打撲から守り、必要なら頭の下に柔らかい物を置きます。
- 呼吸と顔色を見る。安全に行える範囲で横向きにし、息の通りを妨げないようにします。無理に体を押さえたり、口に指・物を入れたりしません。
- 飲食物を口に入れない。反応が十分戻る前に水・食べ物・内服薬を飲ませると、むせや窒息の危険があります。処方済みの発作時薬は、主治医の指示どおりに使います。
- 発作後も様子を確認する。いつもどおりの反応に戻るか、息づかい、むせ、痰、顔色に変化がないかを見ます。戻りが悪ければ医療につなぎます。
発熱を伴う強い発作、短い発作の反復、食事中や入浴中の発作も、通常より危険が増す場面です。あらかじめ渡されている救急受診基準があれば、その指示と現在の状態を照らして対応してください。
受診時に役立つ発作の記録
「発作があった」だけでは、薬の効果や検査の必要性を判断しづらいことがあります。難しい医療用語は不要です。最初から最後まで分からなくても、見た範囲を記しておけば十分役に立ちます。
- いつ、どこで始まり、何分・何秒続いたか。発熱、睡眠、食事、入浴との関係。
- 目線、左右どちらの手足が動いたか、声かけへの反応、呼吸と唇の色。
- 発作の直後に眠ったか、何分で普段の反応に戻ったか。むせ・痰・呼吸の変化。
- 最近の発作回数、発熱・感染、寝不足、薬の飲み忘れや変更、けがの有無。
普段から短い変化が繰り返されている、発作後の様子が変わったなど、新しい特徴も共有してください。主治医が必要に応じて脳波などの検査や薬の調整を検討します。
薬の効果と副作用を一緒に伝える
発作の治療には抗てんかん発作薬が用いられます。発作の回数や長さがどう変わったかに加え、薬の開始・増量後に眠気が強くなった、食事中にむせる、痰が出しづらい、呼吸や日中の活動が変わった、といったことも伝えてください。いずれも薬が原因とは限りませんが、福山型では呼吸・嚥下の状態と合わせて確認したい情報です。発作抑制と副作用の兼ね合いは主治医と検討し、自己判断で増量・中止しないでください。[1]
レスキュー薬は「いつ・誰が・使った後」を書面に
発作が長引いたときなどに使う頓用薬(レスキュー薬)が処方される場合があります。適応、薬の種類、投与方法、使用するまでの時間は個別に異なります。以下を医師の発作時指示に沿って確認してください。
- どのような発作で、何分続いたら使うか。反復発作ではどうするか。
- 誰が、どの方法で使えるか。学校や通所先での指示書・研修・保管方法はどうするか。
- 使用後に呼吸・眠気をどう観察し、いつ119・主治医へ連絡するか。
「手元に薬がある」だけでは発作時の迷いは減りません。家族と支援先が同じ指示書を見られるようにしておきます。
発作だけでなく、嚥下・呼吸・睡眠も見る
発熱、感染、寝不足、服薬のずれなどが発作と重なった場合は、起きた順番を記録しましょう。便秘や疲労との関連が気になる場合も記録できますが、一度重なっただけで発作の原因と決めつけないことが大切です。発熱時に薬や受診の対応を変える必要があるかは主治医に確認します。
福山型では発作後の眠気と、もともとの飲み込みにくさや呼吸の弱さが重なることがあります。発作後にむせる、痰を出せない、息が浅い、夜間の発作のあと朝までぐったりしている、といった変化は発作の情報と一緒に主治医へ伝えてください。息苦しさや顔色不良があれば緊急対応を優先します。夜間の変化については福山型の呼吸変化のページも参照できます。
入浴中は転倒・溺水、食事中は窒息や誤嚥の危険に注意が必要です。見守りの方法は本人の発作の頻度や身体の状態に合わせて相談し、発作中・意識がはっきりしない間は食事を再開しないでください。姿勢や介助は福山型のリハビリのページでも扱っています。
学校・通所先・ショートステイ先と決めておくこと
「てんかんがあります」だけでは、現場での対応は決められません。普段の発作の見え方と、緊急時に何をすべきかを短い用紙にまとめて共有します。薬の使用は医師の指示、施設の体制、担当者への説明や所定の手続きに従います。
- 普段の反応と「いつもの発作」の違い、発作が始まった時刻の記録方法。
- 安全確保、食事・入浴の中断、呼吸・顔色の確認、発作後の見守り。
- 119を呼ぶ条件、家族・医療機関への連絡順序、緊急連絡先。
- 頓用薬を使う条件・担当者・使用後の対応を記した主治医の指示書。
本人に合った基準を共有することで、担当者が変わった日にも対応がつながります。新しい発作や薬の変更があったときは、用紙を更新しましょう。
発作記録と共有用のひな形
書けるところだけ埋めて、受診や学校との打ち合わせに持参してください。下記の空欄は一律の救急基準を示すものではなく、主治医の指示で埋めるためのものです。
発作があった日のメモ
日付・場所: 開始時刻/終了時刻: 熱・体調・直前の様子: 目線/手足の動き/左右差: 呼びかけへの反応/呼吸/顔色: 発作後の眠気・むせ・痰: 普段の反応に戻った時刻: けが・服薬の変更・頓用薬の使用: 動画の有無/主治医に聞きたいこと:
学校・通所先へ渡す確認用メモ
普段の反応・いつもの発作の形: 発作時にしてほしいこと:時間を確認/危険物をどける/呼吸・顔色を見る してほしくないこと:体を押さえない/口に物を入れない/意識が戻る前に飲食させない 主治医の指示による頓用薬:あり・なし 使う条件/担当者/使用後の対応: 119に連絡する条件(主治医と確認): 家族への連絡順と電話番号: 医療機関の連絡先: 更新日:
よくある質問
発熱時だけ発作が出るなら、てんかんではありませんか?
発熱の有無だけでは判断できません。発作の形、繰り返しの有無、発熱していないときの変化も含め、主治医へ相談してください。
動画を撮れなかったのですが、受診時に説明できますか?
できます。時刻、目線、左右差、呼吸と顔色、発作後の戻り方を言葉で残すだけでも役立ちます。撮影より本人の安全を優先してください。
薬を増やしてから眠気が強い気がします。
変更日と眠気の出る時間、食事・呼吸・活動の変化、発作回数を記録して相談してください。原因を自己判断して薬を中止することは避けます。
年齢が上がってから初めて発作が出ることもありますか?
あります。進行した時期に新たに発作が見られた報告もあります。いつもと違う反応が続く場合は、年齢だけで発作を否定しないでください。[3]
参考資料
- GeneReviews: Fukuyama Congenital Muscular Dystrophy(2025年更新)。病態、発作、治療管理。
- Yoshioka M, et al. Seizure-genotype relationship in Fukuyama-type congenital muscular dystrophy(2008年)。
- Kuwayama R, et al. Epilepsy in patients with advanced Fukuyama congenital muscular dystrophy(2021年)。
- CDC: First Aid for Seizures。発作時の安全確保、救急対応の一般的な目安。
- Yoshioka M, et al. Long-term prognosis of epilepsies and related seizure disorders in Fukuyama-type congenital muscular dystrophy(2005年)。
このページは一般向けの情報です。個別の診断、処方、頓用薬の使い方、学校などの手順は、主治医・担当医の指示に従ってください。

