デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー(DMD/BMD)総合案内|病態・経過・遺伝・心臓/呼吸・治療と生活管理

Dystrophinopathies / Duchenne and Becker
デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー(DMD/BMD)|ジストロフィンの病態・年齢別経過・心臓/呼吸・治療と生活管理

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、どちらもDMD遺伝子の変化によって、筋細胞を支えるジストロフィンというタンパク質が不足・欠損する病気です。

DMDは、多くの場合、幼児期から転びやすさ、走りにくさ、階段の苦手さ、床からの立ち上がりにくさとして気づかれます。年齢とともに歩行、関節、骨、呼吸、心臓、学校生活、成人医療への移行が課題になります。

BMDは、DMDより緩やかなことが多い一方で、発症年齢も進み方もかなり幅があります。5〜7歳頃に見つかる人もいれば、40〜50代以降に筋力低下や心臓の問題から診断される人もいます。歩けているから軽い、日常生活ができているから心臓は大丈夫、とは判断できません。

DMD BMD ジストロフィノパチー ジストロフィン 病態 年齢別経過 心筋症 呼吸管理 ステロイド 女性保因者 遺伝子治療

目次

結論:DMDとBMDは共通点と違いを分けて見る

DMDとBMDは、どちらもDMD遺伝子とジストロフィンに関係する病気です。そのため、病態の土台は共通しています。一方で、発症年齢、進行速度、歩行を失う時期、心臓・呼吸が目立つタイミング、生活上の困りごとは大きく異なります。

DMDでは、幼児期からの運動発達、歩行、階段、立ち上がり、ステロイド、骨、側弯、呼吸、心臓を早めに見ます。BMDでは、歩けている期間が長くても、運動後の疲労、筋肉痛、CK高値、心筋症、不整脈、仕事や運動負荷を別に見ます。

  • DMDは、幼児期から学童期にかけて運動面で気づかれやすい病気です。 転びやすい、走れない、階段が苦手、床から立ち上がりにくいといった変化を見ます。
  • BMDは、発症年齢と重症度の幅が大きい病気です。 小児期に気づく人も、成人後に心臓や疲労から診断される人もいます。
  • 心臓は、筋力とは別に確認します。 BMDでは、筋症状より心筋症が先に重要になることがあります。
  • 呼吸は、息苦しさが出る前から見ます。 肺活量、夜間低換気、朝の頭痛、眠気、咳の弱さを確認します。
  • 治療情報は、遺伝子変異・年齢・歩行状態・安全条件で対象が変わります。 期待だけでなく、適応と副作用を確認します。
早めに相談したいサイン:
失神、強い動悸、胸痛、急な息切れ、横になると苦しい、朝の頭痛、強い眠気、痰が出せない、肺炎を疑う症状、転倒増加、骨折を疑う痛み、むせや体重減少がある場合は、次回予約を待たずに医療機関へ相談してください。

最初に確認したいこと

DMD/BMDでは、診断名を聞いた直後から確認したい項目があります。特に、遺伝子変異、歩行状態、心臓、呼吸、骨、ステロイドの有無、学校・仕事への影響は、早めに整理すると次の判断につながります。

診断後に最初にやること

診断名、遺伝子変異、主治医、循環器、呼吸、学校・生活の優先順位を整理します。

評価と記録テンプレ

歩行期、移行期、非歩行期、上肢、疲労、体重、心肺サインを比較できる形にします。

心臓の見逃しサイン

DMD/BMDの心筋症、不整脈、心臓MRI、動悸・めまい・失神感を確認します。

呼吸の見逃しサイン

肺活量、夜間低換気、朝の頭痛、日中眠気、咳の弱さ、排痰補助を確認します。

迷った時の順番:
まず、遺伝子検査結果、心臓評価、呼吸評価、歩行・上肢・疲労の記録をそろえます。その後、ステロイド、装具、学校・仕事、制度、治療開発情報を見ていくと整理しやすくなります。

病態:ジストロフィンが不足すると何が起きるか

ジストロフィンは、筋肉の細胞膜の裏側にあり、筋収縮で生じる力を受け止める支えとして働きます。筋細胞の内側の骨格と、細胞膜、さらに細胞外の構造をつなぐジストロフィン関連糖タンパク複合体の一部です。

ジストロフィンが不足・欠損すると、筋肉が縮むたびに細胞膜が傷つきやすくなります。そこからカルシウム流入、炎症、筋線維の壊死、再生、線維化、脂肪置換が繰り返されます。これが、筋力低下、疲労、CK高値、仮性肥大、関節拘縮、心筋症、呼吸筋低下につながります。

病態の流れ 身体で起きること 生活で見える変化
ジストロフィン不足・欠損 筋細胞膜が収縮の負荷に弱くなります。 走る、階段、ジャンプ、床から立つ動作が苦手になります。
筋細胞膜の損傷 筋線維が壊れやすくなり、CKが血液中に漏れやすくなります。 CK高値、運動後の筋肉痛、疲労、回復の遅さが見られます。
壊死・再生の反復 初期は再生しますが、時間とともに再生力が追いつきにくくなります。 歩行距離の低下、立ち上がり困難、転倒増加が出やすくなります。
線維化・脂肪置換 筋肉が脂肪や線維組織に置き換わります。 ふくらはぎが太く見える仮性肥大、筋力低下、関節の硬さが出ます。
心筋への影響 心筋にもジストロフィンが必要なため、心筋症・不整脈が起こります。 動悸、息切れ、疲労、むくみ。BMDでは心臓が先に目立つこともあります。
呼吸筋への影響 横隔膜や呼吸補助筋が弱くなり、肺活量や咳の力が低下します。 朝の頭痛、日中眠気、風邪が長引く、痰が出せない、肺炎リスク。
病態から見た大切な考え方:
DMD/BMDでは、筋肉をまったく使わないことが目標ではありません。壊れやすい筋肉に対して、強すぎる負荷、疲労が戻らない負荷、転倒や骨折につながる負荷を避けながら、関節、姿勢、呼吸、心臓、生活動作を守ることが重要です。

DMDとBMDの違い

DMDとBMDの違いは、ジストロフィンがどの程度作られるか、どの程度機能するかに関係します。DMDではジストロフィンがほぼ欠損することが多く、BMDでは短い、または量が少ないジストロフィンが一部機能することがあります。

項目 デュシェンヌ型(DMD) ベッカー型(BMD)
ジストロフィン ほぼ欠損することが多い。 量が少ない、短い、不完全ながら一部機能することがあります。
発症時期 幼児期に気づかれることが多い。歩き始めの遅れ、転びやすさ、走りにくさが手がかりになります。 小児期から成人後期まで幅広い。5〜7歳頃に気づく人も、40〜50代以降に診断される人もいます。
進行 自然経過では比較的速く、歩行、関節、骨、呼吸、心臓を早めに見ます。 緩やかなことが多い一方、個人差が大きく、心臓管理が非常に重要です。
歩行 学童期から歩行能力が低下し、車いす利用へ移行することがあります。 長く歩ける人もいれば、若年から歩行困難が進む人もいます。
心臓 症状が少ない時期から定期評価が必要です。 筋症状より心筋症・不整脈が先に問題になることがあります。
呼吸 非歩行期以降に肺活量、夜間低換気、咳の弱さ、排痰補助が重要になります。 個人差があります。朝の頭痛、眠気、咳の弱さ、感染後の戻りを見ます。
生活上の課題 学校、移動、転倒、骨折、側弯、呼吸、心臓、成人移行。 仕事、学校、スポーツ、運動後疲労、筋肉痛、心臓評価、活動量の調整。
BMDは「軽いDMD」とだけ考えない:
BMDはDMDより緩やかなことが多いですが、発症年齢も進行も幅があります。歩けていること、仕事ができていること、日常生活が保てていることは、心臓が安全であることの証明にはなりません。

DMDの年齢別経過

DMDの経過には個人差があり、ステロイド、心臓・呼吸管理、骨管理、リハビリ、生活環境によって変わります。ただし、年齢ごとに前に出やすい課題を知っておくと、後手に回りにくくなります。

時期 見られやすい変化 確認したいこと
乳幼児期〜3歳頃 歩き始めが遅い、転びやすい、走り方がぎこちない、ジャンプが苦手、言葉や発達の遅れで先に相談されることがあります。 CK、神経筋疾患の評価、発達評価、家族歴、専門医紹介。
3〜5歳頃 床から立つ時に手で太ももを押す、階段が苦手、ふくらはぎが太い、つま先歩き、疲れやすさが目立ちます。 遺伝子検査、ガワーズ徴候、仮性肥大、ステロイド相談、リハビリ開始。
6〜9歳頃 走る、階段、ジャンプ、長距離歩行が難しくなり、アキレス腱短縮、転倒、疲労が増えやすくなります。 ステロイド効果と副作用、関節可動域、骨、学校配慮、心臓・呼吸の基準値。
9〜13歳頃 歩行低下が進み、車いす併用や移行を考える時期になります。骨折、側弯、体重、学校導線が重要になります。 転倒予防、車いす、装具、座位、側弯、骨密度、呼吸機能、心臓評価。
非歩行期 座位保持、側弯、上肢機能、呼吸機能、咳の弱さ、心筋症、嚥下・栄養が前に出ます。 NPPV、排痰補助、カフアシスト、心臓薬、上肢支援、栄養、学校・生活支援。
青年期・成人期 呼吸管理、心不全予防、栄養、嚥下、介助体制、意思決定、成人診療への移行が重要になります。 成人医療、循環器、呼吸器、リハビリ、緊急時情報、制度、生活支援。
年齢は目安です:
「何歳で必ずできなくなる」とは言えません。ただ、DMDでは、歩行、骨、側弯、呼吸、心臓、学校生活が年齢とともに変わりやすいため、困ってからではなく、少し早めに準備することが大切です。

BMDの幅広い経過

BMDは、DMDより緩やかと説明されることが多い病気ですが、発症年齢、筋力低下の部位、心臓の出方、生活への影響には大きな幅があります。小児期から筋力低下が目立つ人もいれば、成人してから筋肉痛、疲労、CK高値、心筋症で診断される人もいます。

BMDの見え方 具体例 確認したいこと
小児期に気づくBMD 5〜7歳頃から走るのが遅い、転びやすい、階段が苦手、CK高値で見つかることがあります。 DMDとの鑑別、遺伝子変異、フレーム、心臓、運動負荷、学校配慮。
思春期〜若年成人で気づくBMD スポーツ後の筋肉痛、こむら返り、疲労、足の筋力低下、階段困難が出ることがあります。 CK、心電図、心エコー、心臓MRI、活動量、筋トレ負荷。
成人後に気づくBMD 30代、40代、50代以降に、筋力低下、疲労、心筋症、家族歴から診断されることがあります。 心臓管理、仕事負荷、運動、呼吸、家族検査、女性家族の評価。
心臓が先に目立つBMD 筋力低下が軽くても、拡張型心筋症、不整脈、息切れ、動悸、むくみで見つかることがあります。 循環器、心臓MRI、ホルター心電図、心不全治療、家族歴。
筋痛・疲労が中心のBMD 運動後に強い筋肉痛、回復に数日かかる、階段や坂道の後に崩れることがあります。 過負荷の調整、CK、心臓評価、休息、仕事・スポーツの条件調整。
BMDで見逃したくないこと:
BMDでは「歩けるから大丈夫」と考えないでください。心筋症・不整脈は、筋力低下が軽い時期にも問題になることがあります。BMDと診断されたら、循環器での定期評価を相談する価値があります。

DMD/BMDの心臓の見逃しサインを詳しく見る

診断の手がかり

DMD/BMDの診断では、身体所見、CK、家族歴、遺伝子検査を組み合わせます。特に小児では、運動が苦手、よく転ぶ、階段を嫌がる、ふくらはぎが太い、床から立つ時の動きが特徴的、という形で気づかれることがあります。

ガワーズ徴候 床から立つ時に、手を膝や太ももにつき、体をよじ登るように立ち上がる動きです。近位筋の弱さを示します。
ふくらはぎの仮性肥大 筋肉が強いのではなく、脂肪や線維組織に置き換わって太く見える状態です。
CK高値 DMD/BMDではCKが大きく上がることがあります。小児の高CKは重要な手がかりです。
運動後の戻りにくさ BMDでは、筋力低下より先に、運動後の筋肉痛、疲労、CK高値、こむら返りが目立つことがあります。
気づきやすい場面 DMDで多い見え方 BMDで多い見え方
幼児期 歩き始めが遅い、転ぶ、走れない、階段が苦手。 軽い運動発達の遅れ、CK高値だけで見つかることもあります。
学童期 ガワーズ徴候、つま先歩き、アキレス腱短縮、転倒増加。 運動が苦手、筋肉痛、疲労、階段困難、学校体育で気づくことがあります。
成人期 通常は小児期から診断されることが多いです。 筋力低下、CK高値、心筋症、不整脈、家族歴から診断されることがあります。
「運動が苦手なだけ」で終わらせない:
転びやすい、走れない、階段が苦手、ふくらはぎが太い、床からの立ち上がりが特徴的、CKが高い場合は、神経筋疾患の評価につなげる判断材料になります。

リーディング・フレームとエクソン・スキップ

DMD/BMDを理解する上で重要なのが、リーディング・フレームです。遺伝子は3文字ずつ読まれてタンパク質を作ります。欠失や重複によって読み枠がずれると、機能するジストロフィンが作られにくくなります。

DMDで多い状態 読み枠がずれ、機能するジストロフィンがほぼ作られない状態です。典型的にはDMDの経過につながります。
BMDで多い状態 読み枠が保たれ、短くても一部機能するジストロフィンが作られることがあります。BMDに多い考え方です。
例外もある フレームルールは大切な目安ですが、症状と完全に一致しないことがあります。遺伝子結果と臨床像を合わせて見ます。
治療対象の確認 エクソン・スキップ治療は、変異の位置によって対象が決まります。すべてのDMD患者に同じ薬が使えるわけではありません。
エクソン・スキップの考え方:
エクソン・スキップ治療は、読み枠を調整し、短くても機能するジストロフィンを作らせることを狙います。これはDMDの状態をBMDに近づける発想です。ただし、対象エクソン、遺伝子変異、年齢、病期、薬剤ごとの条件を確認する必要があります。

心臓:DMDでもBMDでも後回しにしない

DMD/BMDでは、心筋にもジストロフィン不足の影響が出ます。拡張型心筋症、不整脈、伝導障害、心不全が問題になります。とくにBMDでは、筋力低下が軽くても心筋症が先に見つかることがあります。

見る項目 理由 相談したい検査
心電図 不整脈、伝導障害、波形異常を確認します。 診断時から定期的に相談します。
心エコー 心機能、心拡大、収縮能を見ます。 症状がなくても基準値を作ります。
心臓MRI 心筋の線維化や早期変化を確認する目的で使われることがあります。 施設や年齢、状態に応じて相談します。
ホルター心電図 日常生活中の不整脈を確認します。 動悸、めまい、失神感がある時に相談します。
心臓で早めに相談したいサイン:
動悸、めまい、失神感、胸痛、息切れ、むくみ、横になると苦しい、急な体重増加がある場合は、記録だけで様子を見るより、循環器へ相談してください。

DMD/BMDの心臓の見逃しサインを詳しく見る

呼吸:息苦しさが出る前から見る

DMD/BMDの呼吸管理では、日中の息苦しさだけで判断しません。肺活量低下、夜間低換気、朝の頭痛、日中眠気、咳の弱さ、痰の出しにくさ、感染後の戻りにくさを見ます。

呼吸で見ること 家庭で気づきやすいサイン 相談したい評価
肺活量 会話で疲れる、息が続かない、姿勢で呼吸が変わる。 FVC/%VC、座位・臥位の肺活量。
夜間低換気 朝の頭痛、日中眠気、寝ても疲れが取れない、夜間覚醒。 夜間SpO2、CO2、睡眠評価。
咳の力 痰が出せない、風邪が長引く、ゼロゼロが残る。 ピーク咳流量、排痰補助、カフアシスト。
感染時対応 発熱後に戻らない、肺炎を繰り返す、痰が増える。 呼吸器、排痰計画、受診目安、緊急時対応。
SpO2だけで判断しない:
酸素飽和度が大きく下がらなくても、CO2が上がる低換気が問題になることがあります。朝の頭痛、眠気、寝汗、夜間覚醒がある場合は、睡眠中の呼吸を相談してください。

呼吸の見逃しサインを詳しく見る

骨・関節・側弯・拘縮

DMD/BMDでは、筋力低下だけでなく、関節拘縮、側弯、骨粗鬆症、骨折リスクも重要です。DMDではステロイド、歩行低下、活動量低下が骨に影響し、転倒時の骨折が生活を大きく変えることがあります。

領域 見たいこと 対策の方向性
足関節・アキレス腱 つま先歩き、足首の硬さ、装具の必要性。 可動域管理、夜間装具、歩行補助具、理学療法。
膝・股関節 立ち上がり、階段、座位、歩行姿勢、痛み。 姿勢、座位、ストレッチ、移動方法、転倒予防。
側弯 非歩行期の座位、体幹傾き、呼吸への影響。 座位保持、装具、整形外科、呼吸評価。
骨折歴、背中の痛み、身長低下、ステロイド使用。 骨密度、ビタミンD、栄養、骨折予防、内分泌評価。
骨折を軽く見ない:
DMD/BMDでは、骨折をきっかけに歩行や活動量が大きく落ちることがあります。転倒が増えた、背中や脚の痛みが強い、ステロイド使用中で骨が心配な場合は、早めに相談してください。

知的発達・神経発達・学校生活

DMDでは、ジストロフィンが筋肉だけでなく脳にも関係するため、運動症状だけでなく、言語発達、学習、注意、行動、社会性の困りごとが見られることがあります。

領域 見られること 対応の考え方
言語発達 言葉の遅れ、理解・表出の差、説明が苦手。 発達評価、言語支援、学校共有を検討します。
学習 読み書き、計算、記憶、処理速度、宿題の負担。 学習支援、合理的配慮、疲労を考えた課題量を相談します。
注意・行動 切り替えにくさ、注意の続きにくさ、多動、こだわり。 叱るより、環境調整、見通し、休憩、支援計画を作ります。
学校生活 体育、階段、移動、トイレ、行事、通学、疲労。 できること・避けたいこと・必要な配慮を具体化します。

発達や学習の問題は、本人の努力不足ではありません。身体症状、疲労、睡眠、学校環境、脳でのジストロフィン発現の影響を合わせて考えます。

学校・移行期・制度を詳しく見る

女性保因者・発症保因者

DMD/BMDはX連鎖性の疾患です。女性は「保因者」と説明されることがありますが、保因者という言葉だけで安全とは言えません。女性でも筋症状、CK高値、心筋症、不整脈が見られることがあります。

確認したいこと 理由 相談先
心臓評価 筋症状がなくても、心筋症や不整脈が問題になることがあります。 循環器、神経筋専門外来。
筋症状・CK 疲れやすい、筋痛、脱力、運動後の症状がある場合があります。 神経内科、神経筋疾患外来。
遺伝相談 母親が必ず保因者とは限らず、新生変異や生殖細胞系列モザイクも考えます。 遺伝カウンセリング。
妊娠・出産 家族計画、出生前診断、着床前検査などの相談が関係します。 遺伝外来、産科、小児神経。
女性保因者の重要点:
筋症状がない女性でも、心臓評価は別に考えます。家族内でDMD/BMDが分かった場合、女性家族の検査と心臓評価の必要性を、遺伝カウンセリングや専門外来で確認してください。

女性保因者・発症保因者を詳しく見る

診断と検査の流れ

DMD/BMDの診断では、CK高値、臨床症状、家族歴、遺伝子検査を組み合わせます。現在はDMD遺伝子の欠失・重複・点変異を確認する遺伝子検査が中心です。

段階 検査・確認項目 見る内容
疑う 歩行の遅れ、転倒、ガワーズ徴候、仮性肥大、CK高値、筋肉痛、心筋症。 DMD/BMDを検査候補に入れます。
遺伝子検査 欠失・重複解析、MLPA、シーケンス、必要に応じた追加解析。 変異の種類、フレーム、対象治療、家族検査、遺伝相談に関わります。
補助評価 筋生検、ジストロフィン染色、筋MRIなど。 遺伝子検査で不明な場合や診断整理に使われます。
全身評価 心電図、心エコー、呼吸機能、骨、栄養、嚥下、発達、学校。 診断後の安全管理と生活設計に使います。

検査結果で確認すること

・DMD遺伝子のどの変異か:欠失 / 重複 / 点変異 / その他

・対象エクソン:____

・フレーム:イン・フレーム / アウト・オブ・フレーム / 不明

・診断名:DMD / BMD / 中間型 / 未確定

・治療対象になる可能性:エクソン・スキップ / ナンセンス変異 / 遺伝子治療 / 不明

・家族検査・女性保因者評価:必要 / 不要 / 要相談

治療・合併症予防・治療開発

DMD/BMDの治療は、ひとつの薬だけで完結しません。ステロイド、心臓管理、呼吸管理、リハビリ、骨・栄養、学校・制度支援、変異別治療を組み合わせて考えます。

ステロイド療法

DMDでは、副腎皮質ステロイドが基本治療の一つです。歩行期間、呼吸機能、心機能、側弯などに関わる一方で、体重増加、低身長、骨粗鬆症、行動面、血圧、血糖、感染時対応、手術時対応を見ます。

治療・管理 目的 注意点
ステロイド DMDの進行を遅らせ、歩行・呼吸・心臓・側弯に関わります。 体重、身長、骨、血圧、血糖、行動、感染時・手術時対応を確認します。
心臓管理 心筋症、不整脈、心不全を早期から見ます。 症状がなくても心電図・心エコー・心臓MRIなどを相談します。
呼吸管理 肺活量、夜間低換気、咳の弱さ、排痰を見ます。 NPPV、カフアシスト、感染時対応を早めに整理します。
リハビリ・整形 拘縮、側弯、座位、上肢、移動を守ります。 強い筋トレより、関節可動域、装具、座位、転倒予防を重視します。
変異別治療 エクソン・スキップ、ナンセンス変異治療、遺伝子治療など。 対象変異、安全条件、病期、承認状況、国ごとの差を確認します。
治療開発情報の見方:
エクソン・スキップや遺伝子治療は、検討する価値のある領域です。一方で、対象者が限られ、安全性の確認も必要です。特に遺伝子治療では、年齢、歩行状態、肝機能、抗体、心臓・呼吸状態、重い副作用の警告を確認します。

ステロイド療法を詳しく見る
治療開発・治験を詳しく見る

家庭で記録したいこと

DMD/BMDでは、病院の検査だけでなく、家庭での変化も大切な判断材料になります。歩行、立ち上がり、階段、上肢、疲労、体重、呼吸、心臓サインを、同じ条件で記録します。

記録項目 DMDで見たいこと BMDで見たいこと
歩行・階段 歩行距離、転倒、階段、床からの立ち上がり、車いす併用。 長距離歩行後の疲労、階段後の筋肉痛、数日戻らない疲労。
上肢 非歩行期以降の食事、書字、PC、洗顔、車いす操作。 肩・腕の疲労、仕事や運動後の筋肉痛、握力低下。
心臓 動悸、息切れ、むくみ、疲労、心臓検査の予定。 歩けていても動悸、息切れ、胸部症状、心筋症の確認。
呼吸 朝の頭痛、眠気、咳の弱さ、痰、感染後の戻り。 日中元気でも、睡眠中の呼吸、咳の弱さ、感染後の戻り。
体重・栄養 ステロイド中の体重増加、非歩行期の体重減少、むせ、便秘。 食事量、筋量低下、体重変化、運動後の回復。

評価と記録テンプレを詳しく見る

参考文献・一次情報

免責事項

本ページは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)・ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)に関する一般情報です。個別の診断、治療方針、薬剤選択、治験参加、遺伝子検査、家族検査、リハビリ内容、学校・制度利用を指示するものではありません。

DMD/BMDは、遺伝子変異、年齢、歩行状態、心臓・呼吸機能、骨、栄養、生活環境によって管理が変わります。主治医、神経筋疾患専門医、循環器、呼吸器、リハビリ職、遺伝カウンセリング、医療ソーシャルワーカーと相談してください。

ステロイド、心臓薬、呼吸管理、NPPV、排痰補助、エクソン・スキップ、遺伝子治療、治験薬などは、自己判断で開始・中止しないでください。治療開発情報は更新が速いため、必ず主治医と最新の承認状況・適応・安全性を確認してください。

失神、強い動悸、胸痛、強い息苦しさ、横になると苦しい、急なむくみ、痰が出せない、反復肺炎、朝の頭痛、強い眠気、むせの増加、体重減少、転倒増加、骨折を疑う痛み、意識の変化がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。