デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とベッカー型筋ジストロフィー(BMD)では、診察室での検査だけでは日常の変化を拾いきれないことがあります。歩行、階段、立ち上がり、転倒、上肢、疲労、痛み、体重、食事、心臓、呼吸、学校・仕事での困りごとを、同じ条件で記録しておくことが大切です。
DMDでは、病期ごとに先回りして記録します。BMDでは、歩けている時期にも、運動後の筋肉痛、疲労の戻りにくさ、心臓症状、仕事や学校での負荷を軽く見ないことが重要です。
このページは、医療機関で行うNSAA、6分間歩行、PUL、呼吸機能検査、心臓検査を家庭で代用するものではありません。家庭では、無理なテストではなく、日常生活の変化を安全に残します。
目次
まず押さえたいこと
DMD/BMDの記録で大切なのは、「できる・できない」だけで判断しないことです。同じ動作ができていても、時間がかかる、手すりが必要になった、翌日まで疲労が残る、転びそうになる、痛みが出る、心臓や呼吸のサインが重なる場合は、意味が変わります。
家庭での記録は、医療機関の評価を置き換えるものではありません。日常の変化を、主治医、理学療法士、作業療法士、呼吸療法に関わる職種、学校や職場へ伝えやすくするためのものです。
- DMDは病期別に見る:歩行期、歩行不安定期、車いす併用期、非歩行期で優先する記録が変わります。
- BMDは個人差を重視する:歩ける期間が長くても、疲労、筋肉痛、心臓症状、仕事・運動後の回復を記録します。
- 上肢は早めに見る:歩行だけでなく、洗髪、食事、筆記、スマホ、PC、ペットボトルなどを見ます。
- 心臓・呼吸は別に追う:筋力や歩行が保たれていても、心筋症、不整脈、夜間低換気、咳の弱さは別枠で記録します。
- 家庭で限界テストをしない:階段、床から立つ動作、長距離歩行を繰り返し試すと、転倒や疲労につながります。
記録は、病気の進行を毎日監視して不安を増やすためではありません。変化が起きた時に「いつから」「どの場面で」「どのくらい」「何をすると悪くなるか」を説明できるようにするためのものです。
DMDとBMDで記録の重点はどう違うか
DMDとBMDは同じジストロフィノパチーですが、経過の見え方が異なります。DMDでは年齢や病期に合わせた先回りの記録が重要です。BMDでは、症状が軽く見える時期に、疲労や心臓を見落とさない記録が重要です。
| 項目 | DMDで重視すること | BMDで重視すること |
|---|---|---|
| 歩行・階段 | 歩行期から、階段、立ち上がり、転倒、床からの立ち上がり、疲労を定期的に記録します。 | 歩行可能でも、長距離歩行後の疲労、筋肉痛、階段後の回復、外出後の崩れを記録します。 |
| 移行期 | 歩行が不安定になる時期は、転倒、骨折、装具、車いす併用、学校導線を早めに記録します。 | 明確な移行期が分かりにくいことがあります。仕事、通学、外出、運動後の限界を記録します。 |
| 上肢 | 非歩行期に向けて、腕上げ、洗髪、食事、筆記、スマホ操作を歩行期から残します。 | 上肢症状が軽くても、反復作業後の疲労、PC作業、仕事上の困りごとを残します。 |
| 体重・栄養 | ステロイド使用、体重増加、便秘、嚥下、骨の健康と関連して記録します。 | 過体重による負担、低体重、活動量低下、心不全症状との関連も見ます。 |
| 心臓 | 症状がなくても定期評価が重要です。動悸、失神感、息切れ、疲労を記録します。 | BMDでは筋症状より心臓症状が目立つことがあります。歩けることと心臓の安全性は分けて見ます。 |
| 呼吸 | 肺活量、咳の弱さ、夜間低換気、排痰、NPPV準備を病期に応じて記録します。 | 「日中は平気」「歩ける」場合でも、朝の頭痛、眠気、咳の弱さ、風邪の長引きを記録します。 |
| ステロイド | 効果と副作用をセットで記録します。体重、身長、血圧、行動、骨、感染時対応が重要です。 | BMDでは一律ではありません。使用する場合は目的、副作用、心筋症・生活機能との関係を記録します。 |
| 学校・仕事 | 体育、通学、移動、行事、試験、支援員、車いす導線を記録します。 | 部活、通学、通勤、立ち仕事、長時間座位、実習、勤務後の疲労を記録します。 |
BMDでは「まだ歩ける」「仕事ができる」「運動も少しできる」ため、疲労、筋肉痛、心臓、回復の遅さが後回しになりやすくなります。できたかどうかだけでなく、翌日以降にどう残るかを記録してください。
記録より先に相談したい赤信号
次の症状がある場合は、家庭記録を続けて様子を見るより、早めに医療機関へ相談してください。特に心臓、呼吸、骨折、嚥下、ステロイド関連の症状は、記録だけで判断しない方が安全です。
- 転倒が増えた、階段が危ない、骨折や強い痛みがある
- 立ち上がり、トイレ、浴室、車の乗降で介助が急に増えた
- 胸部違和感、動悸、失神、前失神、原因不明の息切れがある
- 朝の頭痛、日中の強い眠気、横になると苦しい、咳が弱い、痰が出せない
- むせが増えた、食後に声が湿る、食事時間が長くなった、体重が下がる
- 発熱、肺炎疑い、風邪が長引く、痰が増えて出せない
- ステロイドを内服中で、発熱、嘔吐、手術、絶食、強い体調不良がある
- 数日〜数週間で明らかに歩行、上肢、呼吸、食事、疲労が悪化した
心臓の詳しい確認は DMD/BMDの心臓、呼吸の詳しい確認は DMD/BMDの呼吸、運動・装具・拘縮は DMD/BMDの運動・リハ も確認してください。
最初に作りたい基準値
記録は、変化が起きてから始めるより、現在の状態を先に残しておく方が役立ちます。診断直後、治療開始前、ステロイド開始前後、車いす併用前、学校・進学前、就労前などは、基準値を作る良いタイミングです。
| 領域 | 基準値として残すもの | 見返す時のポイント |
|---|---|---|
| 診断情報 | 診断名、DMD遺伝子変異、対象エクソン、DMD/BMD/中間型の説明。 | 治療候補、家族検査、将来の説明で必要になります。 |
| 歩行・移動 | 連続歩行時間、階段、転倒、通学・通勤、外出後の疲労。 | 同じ場所、同じ条件で比較します。限界まで試しません。 |
| 上肢 | 洗髪、着替え、食事、筆記、スマホ、PC、ペットボトル。 | 歩行より変化が遅れて見えることもありますが、生活には大きく影響します。 |
| 心臓 | 心電図、心エコー、心臓MRI、ホルター、心臓薬。 | 症状がない時の値が、将来比較の基準になります。 |
| 呼吸 | FVC/%VC、咳の力、睡眠中の評価、朝の頭痛、眠気。 | 日中に息苦しくなくても、夜間低換気や咳の弱さを確認します。 |
| 体重・栄養 | 体重、身長、食事時間、むせ、便秘、食事量。 | ステロイド、呼吸、嚥下、心不全、活動量と合わせて見ます。 |
| 学校・仕事 | 体育、通学、教室移動、試験、PC利用、通勤、勤務後の疲労。 | 支援や配慮で改善したことも記録します。 |
今できていること、今困っていないこと、支援で改善したことを残すと、将来の変化を早く拾いやすくなります。
歩行期の記録:歩ける時期に残したいこと
歩行期は、できることが多い一方で、変化が見えにくい時期でもあります。家庭では限界テストをするのではなく、日常動作の変化を安全に残します。
| 項目 | 記録方法 | 見たい変化 |
|---|---|---|
| 歩行 | 連続__分 / 楽・普通・きつい / 外出後の疲労。 | 同じ場所・同じ靴・同じ時間帯で比較。限界まで歩かない。 |
| 走る・小走り | できる / 遅い / 避ける / できない。 | DMDでは早期に変化が出やすいことがあります。無理に試さない。 |
| 階段 | 手すりなし / 手すりあり / 一段ずつ / 介助 / 不可。 | 階段は転倒リスクが高いため、普段の様子を記録。 |
| 床から立つ | 日常で困った時だけ記録。繰り返し測定しない。 | ガワーズ徴候、立ち上がり時間、疲労、転倒リスク。 |
| 椅子・トイレから立つ | 普通 / 手を使う / 手すりが必要 / 介助。 | 家庭・学校・外出先で困る場面を分けて記録。 |
| 転倒・つまずき | 0回 / 1回 / 2回以上。場所、時間、靴、疲労も記録。 | 転倒増加、段差、混雑、急がされた場面、骨折リスク。 |
| 疲労 | 当日で回復 / 翌日まで残る / 2日以上残る。 | BMDでは特に重要です。仕事、部活、外出後も記録。 |
| 痛み | 部位__ / 強さ0〜10 / いつ出るか。 | 筋肉痛、関節痛、腰痛、足首痛、膝痛を分けて記録。 |
DMDでは床からの立ち上がりや階段が重要な評価になりますが、家庭で反復して測ると転倒や疲労につながることがあります。医療機関での評価結果を保管し、家庭では日常で困った場面を記録する方が安全です。
移行期の記録:歩行が不安定になってきた時期
DMDでは歩行が不安定になってくる時期、BMDでは活動量の限界が見え始める時期に、生活設計の見直しが必要になります。この時期は「まだ頑張れるか」ではなく、転倒・骨折・疲労を避けながら生活を守ることを優先します。
| 記録項目 | 具体的に残すこと | 相談につながる判断材料 |
|---|---|---|
| 転倒 | 場所、回数、けが、痛み、靴、時間帯、疲労。 | 学校導線、装具、車いす併用、手すり、環境調整。 |
| 階段・段差 | 手すり、片足ずつ、一段ずつ、介助、避けている場所。 | 学校配置、通学経路、家庭内手すり、転倒予防。 |
| 車いす併用 | 使うと楽になる場面、使わないと疲れすぎる場面。 | 車いすは後退ではなく、疲労と転倒を減らす選択肢になります。 |
| 装具・靴 | 当たり、痛み、履きにくさ、歩きやすさ、転倒への影響。 | 装具調整、靴、足関節の可動域、PT/装具士相談。 |
| 外出後の疲労 | 当日回復 / 翌日まで残る / 2日以上残る。 | 学校・仕事・行事の負荷調整、車いす併用、休憩計画。 |
| 痛み | 背中、腰、股関節、膝、足首、足裏、肩、手首。 | 骨折、側弯、座位、装具、過負荷の確認。 |
無理に歩行を続けることで転倒や骨折が増える場合、車いす併用や環境調整は後退ではなく、安全と体力を守る選択肢になります。
非歩行期の記録:上肢・座位・呼吸・生活動作を中心に見る
歩行が中心でなくなった後も、評価と記録は重要です。上肢、座位、体幹、呼吸、嚥下、体重、痛み、介助量の変化を残すことで、生活の質を守りやすくなります。
| 項目 | 記録方法 | 相談につながる変化 |
|---|---|---|
| 座位 | 安定 / 傾く / 疲れる / 痛い / ずり落ちる。 | 側弯、骨盤の傾き、クッション、座位保持具の見直し。 |
| 上肢挙上 | 洗髪できる / 休憩が必要 / 難しい。 | 肩・上腕・体幹の弱さ、介助方法、環境調整。 |
| 手指 | ボタン、スマホ、箸、筆記、ゲーム操作。 | OT相談、道具の変更、スイッチ・ICT支援。 |
| 食事 | 食事時間、むせ、疲労、姿勢、食後の声。 | 嚥下評価、食形態、食事姿勢、栄養。 |
| 呼吸 | 朝の頭痛、眠気、咳、痰、NPPV使用。 | 呼吸機能、睡眠評価、排痰補助、マスク適合。 |
| 介助量 | 移乗、トイレ、入浴、更衣、外出、夜間介助。 | 介助方法、福祉用具、制度、家族負担の見直し。 |
| 痛み | 背中、腰、肩、股関節、膝、足首、座面の圧痛。 | 座位、クッション、側弯、骨折、装具、介助方法の確認。 |
上肢、座位、呼吸、食事、会話、ICT、外出、介助量の記録は、生活の選択肢を保つ判断材料になります。
上肢・手指の記録:歩行期から始める
DMD/BMDでは、歩行や階段に目が向きやすいですが、上肢の変化は生活、学習、仕事、食事、コミュニケーションに直結します。歩行期から上肢の記録を始めておくと、後から比較しやすくなります。
| 動作 | 記録方法 | 見たいこと |
|---|---|---|
| 洗髪 | 普通 / 疲れる / 休憩 / 難しい。 | 肩・上腕・体幹の疲労。 |
| 着替え | 普通 / 遅い / 工夫 / 介助。 | 肩、肘、手指、バランス。 |
| 食事 | 普通 / 疲れる / 遅い / 介助。 | 腕の保持、手指、姿勢、嚥下。 |
| スマホ・タブレット | 普通 / 疲れる / 支持が必要 / 難しい。 | 手指、前腕、上肢支持、ICT支援。 |
| 筆記・学習 | 普通 / 遅い / 疲れる / 代替が必要。 | 学校配慮、入力機器、休憩。 |
| PC作業 | 普通 / 疲れる / 姿勢が崩れる / 入力補助が必要。 | BMDの就労、DMDの学習・コミュニケーション支援。 |
| ペットボトル・ふた | 開けられる / 工夫 / 難しい / できない。 | 握力、つまみ、道具の変更。 |
| 車いす操作 | 普通 / 疲れる / 方向転換が難しい / 介助が必要。 | 電動化、入力装置、座位、上肢疲労。 |
筋力の数字だけではなく、食事、学習、仕事、スマホ、PC、身だしなみ、車いす操作で困るかを記録すると、必要な支援につながりやすくなります。
疲労・痛み・回復の記録
DMD/BMDでは、動作そのものができるかよりも、動作後にどれくらい疲労や痛みが残るかが重要になることがあります。特にBMDでは、歩行や仕事が可能でも、翌日以降に疲労や筋肉痛が残ることがあります。
| 記録項目 | 記録方法 | 見たい意味 |
|---|---|---|
| 疲労の戻り | 当日で回復 / 翌日まで残る / 2日以上残る。 | 活動量、学校・仕事、運動、外出の負荷調整。 |
| 筋肉痛 | 部位、強さ0〜10、出た活動、何日続いたか。 | 過負荷、BMDの筋損傷、運動内容の見直し。 |
| 関節痛 | 膝、足首、股関節、腰、肩、手首など。 | 姿勢、装具、歩行、座位、車いす、介助方法。 |
| 背部痛・腰痛 | 姿勢、座位時間、寝具、車いす、強さ。 | 側弯、座位保持、骨折、クッション、姿勢調整。 |
| 疲労を増やす要因 | 暑さ、睡眠不足、感染、行事、通学、通勤、部活。 | 事前に休憩、移動手段、学校・職場調整を検討。 |
強い痛み、局所の痛み、転倒後の痛み、背中や腰の痛み、軽いきっかけで出た強い痛みは、骨折や姿勢の問題が隠れていることがあります。
ステロイド治療中に記録したいこと
DMDではステロイド治療が標準治療の中心になります。BMDでは一律ではありませんが、使用する場合は目的と副作用をセットで見ます。自己判断で中止せず、記録をもとに主治医と相談します。
| 項目 | 記録方法 | 相談する目安 |
|---|---|---|
| 体重 | 週1回または月1回:__kg。 | 増加が続く、食欲が強すぎる、移動や呼吸に負担が出る。 |
| 身長・成長 | 医療機関での測定値を保管。 | 成長の遅れ、思春期の遅れが気になる。 |
| 血圧・血糖 | 医療機関の結果を保管。 | 高血圧、血糖異常を指摘された。 |
| 行動・気分 | 怒りやすい、不眠、不安、集中困難、学校での変化。 | 家庭や学校生活に影響する。 |
| 骨・痛み | 腰痛、背部痛、骨折、転倒、骨密度の結果。 | 痛みが続く、軽い転倒で強く痛む、骨折が疑われる。 |
| 眼 | 白内障、眼圧、見え方、眼科受診の結果。 | 見え方の変化、眼科での指摘。 |
| 感染・発熱 | 発熱、嘔吐、絶食、手術予定、救急受診。 | ストレス時の対応や副腎抑制の確認が必要になることがあります。 |
| 薬の変更 | 薬剤名、量、開始日、変更日、中止理由。 | 効果と副作用を時系列で確認します。 |
長くステロイドを使っている場合、自己判断で急に中止すると危険なことがあります。発熱、嘔吐、手術、外傷、絶食などの時にどうするかも、主治医と事前に確認してください。
ステロイドの詳しい確認は DMD/BMDのステロイド治療 を確認してください。
心臓・呼吸・嚥下は症状がない時期から記録する
DMD/BMDでは、筋力や歩行の変化だけでなく、心臓、呼吸、嚥下、栄養を並行して見ます。症状が目立たない時期でも、検査結果と家庭での変化を残しておくと、後から比較しやすくなります。
- 心電図、心エコー、心臓MRI、ホルターの結果
- 動悸、胸部違和感、失神感、息切れ
- 疲労やむくみが増えた時期
- 心臓薬の開始・変更日
- 肺活量、咳の力、睡眠評価の結果
- 朝の頭痛、日中の眠気、寝汗
- 痰が出せるか、風邪が長引くか
- NPPV、カフアシスト、吸引器の使用状況
- 体重、食事時間、むせ
- 食後の声の湿り、痰の増加
- 便秘、腹部症状、食欲
- 栄養補助、食形態、胃ろうの相談内容
- 体育、階段、移動、休憩の必要性
- 書字、PC・タブレット、通学・通勤
- 疲労で午後に崩れるか
- 支援や配慮で改善したこと
食事や体重の詳しい確認は 嚥下・体重減少・栄養、心臓は DMD/BMDの心臓、呼吸は DMD/BMDの呼吸 を確認してください。
学校・仕事・生活負荷の記録
DMD/BMDの変化は、検査値だけではなく、学校や仕事で先に見えることがあります。体育、教室移動、通学、通勤、部活、実習、長時間座位、宿泊行事、在宅勤務など、生活場面での変化を記録します。
| 場面 | 記録したいこと | 相談先・使い道 |
|---|---|---|
| 学校 | 体育、階段、教室移動、トイレ、休憩、筆記、試験、行事。 | 学校面談、合理的配慮、支援員、ICT利用。 |
| 通学・通勤 | 距離、坂道、階段、荷物、雨の日、混雑、疲労。 | 送迎、車いす併用、通勤配慮、在宅勤務。 |
| 部活・体育・スポーツ | 筋肉痛、翌日疲労、息切れ、動悸、痛み、参加内容。 | 活動量調整、体育内容調整、心臓評価。 |
| 仕事 | 立ち仕事、PC作業、通勤、休憩、残業、出張、回復日数。 | 勤務時間、業務調整、就労支援、障害者雇用。 |
| 家庭 | 入浴、トイレ、階段、食事、睡眠、介助量、家族負担。 | 福祉用具、住宅調整、訪問支援、制度相談。 |
学校や仕事の記録では、「できなかったこと」だけでなく、「配慮でできるようになったこと」も残してください。休憩、教室配置、タブレット利用、車いす併用、通勤調整などが効いている場合、それ自体が大切な判断材料になります。
学校・進学・成人移行は DMD/BMDの学校生活・成人移行、制度や補装具は 公的支援・学校・補装具の進め方 も確認してください。
医療機関で使われる評価との違い
医療機関では、DMD/BMDの状態を標準化して見るために、専門的な評価を行うことがあります。家庭ではこれらを自己採点する必要はありません。結果を保管し、日常の記録と合わせて見返します。
| 評価 | 主に使われる場面 | 家庭での扱い |
|---|---|---|
| NSAA | DMDの歩行可能期の運動機能評価。 | 家庭で自己採点せず、医療機関での点数と評価日を保管します。 |
| 6分間歩行テスト | 歩行持久力、治験・臨床評価。 | 家庭で限界まで歩かない。普段の連続歩行時間や疲労を記録します。 |
| 10m歩行・4段階段・床から立ち上がり | 歩行速度、階段、立ち上がりの変化。 | 転倒リスクがあるため、家庭で無理に測定しません。日常の困りごとを残します。 |
| PUL | 上肢機能評価。 | 洗髪、食事、筆記、スマホ操作など生活上の上肢変化を記録します。 |
| 関節可動域・側弯評価 | 拘縮、装具、座位、脊柱管理。 | 装具の当たり、座位の崩れ、痛み、写真・動画を安全な範囲で残します。 |
| 呼吸機能検査 | 肺活量、咳の力、睡眠中の換気。 | 朝の頭痛、眠気、咳、痰、風邪の長引きを記録します。 |
| 心電図・心エコー・心臓MRI | 心筋症、不整脈、心機能。 | 検査結果、薬の変更、動悸や失神感を時系列で残します。 |
| 嚥下評価・栄養評価 | むせ、体重減少、食事時間、誤嚥リスク。 | 食事時間、むせ、食後の声、体重、便秘を記録します。 |
NSAA、6分間歩行、床からの立ち上がり、階段テストなどは、転倒や疲労につながることがあります。家庭では、安全な生活場面の記録を優先してください。
週1で使える記録テンプレート
すべてを毎日細かく記録する必要はありません。週1回、または変化があった時に、同じ項目で残すと比較しやすくなります。
週1ログ
毎週すべて埋める必要はありません。変化があった項目だけでも、続けることで比較しやすくなります。
月1で見返す項目
週1ログを続けている場合、月1回だけ見返します。毎日細かく見すぎると不安が増えやすいため、1か月単位で変化を見る方が整理しやすくなります。
- 歩行・階段・立ち上がりのカテゴリが一段悪化していないか
- 転倒が増えていないか、骨折や痛みを見逃していないか
- 外出、学校、仕事の翌日に疲労が残るようになっていないか
- 上肢動作、食事、筆記、スマホ操作が難しくなっていないか
- 体重が増えすぎていないか、または減り続けていないか
- むせ、食事時間、便秘、腹部症状が増えていないか
- 朝の頭痛、日中眠気、咳の弱さ、痰の出しにくさが増えていないか
- 動悸、失神感、胸部違和感、原因不明の息切れがないか
- ステロイド使用中なら、体重、行動、睡眠、血圧、骨、感染時対応を確認したか
- 学校・仕事・介助負担が増えていないか
- 支援や道具を入れたことで楽になった項目があるか
車いす併用、休憩、教室配置、PC利用、装具調整、呼吸機器、食形態変更などで楽になったことも記録してください。うまくいった条件は、次の調整に使えます。
受診で渡せる1枚まとめ
受診前に、次の内容を1枚にまとめると、主治医、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、装具士、学校や職場への説明がしやすくなります。
DMD/BMD 1枚まとめ
参考文献・参考情報
- Birnkrant DJ, et al. Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 1. Lancet Neurology. 2018.
- Birnkrant DJ, et al. Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 2. Lancet Neurology. 2018.
- Birnkrant DJ, et al. Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 3. Lancet Neurology. 2018.
- GeneReviews:Dystrophinopathies
- 難病情報センター:筋ジストロフィー(指定難病113)一般利用者向け
- 難病情報センター:筋ジストロフィー(指定難病113)診断・治療指針
- 小児慢性特定疾病情報センター:デュシェンヌ型筋ジストロフィー
- Mazzone E, et al. North Star Ambulatory Assessment, 6-minute walk test and timed items in ambulant boys with Duchenne muscular dystrophy. Neuromuscular Disorders. 2010.
- Mayhew A, et al. Development of the Performance of the Upper Limb module for Duchenne muscular dystrophy. Developmental Medicine & Child Neurology. 2013.
- Pane M, et al. The 6 Minute Walk Test and Performance of Upper Limb in ambulant Duchenne muscular dystrophy boys. PLOS Currents Muscular Dystrophy. 2014.
- CHEST:Respiratory Management of Patients With Neuromuscular Weakness. 2023.
- Parent Project Muscular Dystrophy:Care Guidelines
免責事項
本ページは、DMD/BMDの評価と記録について、患者さん・ご家族が医療者と相談しやすくするための一般情報です。診断、治療、リハビリ内容、運動負荷、装具、ステロイド、心臓薬、呼吸補助、嚥下管理、栄養管理、治験参加の可否を個別に判断するものではありません。
DMD/BMDの管理は、年齢、病期、遺伝子変異、歩行状態、心臓・呼吸・嚥下・骨・内分泌の状態によって変わります。家庭記録は、医療機関での評価や検査を置き換えるものではありません。
転倒増加、骨折疑い、強い痛み、朝の頭痛、日中の強い眠気、咳の弱さ、むせの増加、体重変化、動悸、失神、胸部違和感、急な筋力低下がある場合は、主治医、神経筋疾患専門医、循環器専門医、呼吸器専門医、リハビリ専門職、救急医療機関に相談してください。
ステロイド、心臓薬、呼吸管理、NPPV、排痰補助、リハビリ内容、装具、学校・仕事での活動量を自己判断で変更・中止しないでください。
