CPT2欠損症(CPT II欠損症)|症状・検査・発作予防と緊急時の対応

CPT2欠損症/脂肪酸代謝異常症/代謝性ミオパチー

発作がない日の備えと、
筋痛・尿の変化が出たときの対応

CPT2欠損症(CPT II欠損症)は、長鎖脂肪酸をエネルギーとして使う過程に障害がある病気です。筋型では、普段は症状が少なくても、空腹、長時間の運動、感染・発熱、寒冷などをきっかけに、筋痛や脱力、横紋筋融解を繰り返すことがあります。

日常では食事・運動・体調不良時の計画を整え、強い筋痛、尿色や尿量の変化、食べられない状態が出たら、決めておいた連絡・受診手順に移ります。尿が赤褐色になるまで待つ必要はありません。

医学情報の確認:2026年10月24日|主に筋型の日常管理を扱い、新生児・乳児の重症型についても区別して説明します。

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症状が出ているときは、記録より連絡・受診を優先する

CPT2欠損症と診断されている方は、主治医から受け取った体調不良時の指示に従ってください。診断が未確定でも、強い筋痛や脱力、尿色の変化を繰り返す場合は、医療機関での評価が必要です。

今ある状態 対応の目安
反応が悪い、意識がはっきりしない、けいれん、強い息苦しさなど 119番へ連絡します。意識や飲み込みに問題があるときは、口から飲食物を与えません。
強い・長引く筋痛、急な脱力、赤褐色・コーラ色の尿、尿量の減少 運動を中止し、直ちに主治医・救急窓口へ連絡して受診を相談します。次回予約まで待ちません。
発熱・嘔吐・下痢などで、必要な食事や補給が取れない 体調不良時の計画に沿って早めに連絡します。特に乳幼児では、低血糖などが現れる前からの対応が重要です。

尿色の変化、低血糖、検査値の上昇がすべてそろってから連絡する必要はありません。食べられない状態や筋症状が強いときは、水分だけで対応しようとせず、エネルギー不足への対応も含めて医療者に相談します。[1][4]

受診時に短く伝えること

「CPT2欠損症があります。最後に食べたのは○時で、○時から筋痛・脱力・嘔吐などが出ています。尿の色・量は○○です。主治医の緊急時指示書があります。」

未確定の場合は「横紋筋融解を繰り返しており、代謝性の病気を調べています」など、実際の診断状況を伝えてください。

CPT2欠損症とは:脂肪からエネルギーを取り出す過程の障害

原因となるのは、CPT2遺伝子の病的な変化です。CPT IIはカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIIという酵素で、ミトコンドリア内で長鎖脂肪酸を利用するために働きます。その働きが低下すると、空腹時や長く体を動かす場面などで、エネルギーを十分に作りにくくなります。[1][2]

筋型では、発作と発作の間は元気に生活できる方もいます。診察では普段の筋力だけでなく、「どんな条件の後に、何が起きたか」を伝えることが重要です。

主な臨床像:新生児型・乳児肝心筋型・筋型

臨床像 主に問題になること
新生児期に重く現れる型 低血糖、肝障害、心筋症・不整脈、呼吸の問題など。脳や腎臓の形態異常を伴う場合もあり、出生直後から専門的な管理が必要です。
重症乳児肝心筋型 空腹や感染を契機とした低血糖、肝障害、心筋症・不整脈、筋力低下など。哺乳・食事の状況と全身状態を合わせて管理します。
筋型 小児期から成人期に、筋痛・脱力・横紋筋融解などを繰り返します。筋型でも、発作時には腎障害などの重い合併症が起こり得ます。

新生児マススクリーニングや家族の検査で、症状が出る前に見つかる場合もあります。病型や経過によって、血糖・肝臓・心臓・筋症状の確認項目が変わるため、成人の筋型と乳幼児の管理を同じ条件にはできません。[1][2]

重症型で見られる「低ケトン性低血糖」は、血糖が低いときに、代替エネルギーとなるケトン体も十分に増えない状態です。

発作は、空腹・運動・感染などの条件と一緒に振り返る

発作の起こりやすさには個人差があります。長時間の運動や食事不足だけでなく、感染・発熱、寒冷などが重なった状況を確認します。[1][2]

補給が不足する場面

食事を抜く、食事間隔が長くなる、嘔吐で食べられない、検査・手術のために絶食するなど。

エネルギー需要が増える場面

長距離歩行、持久運動、部活動、登山、身体作業、感染・発熱、寒い環境での活動など。

たとえば、朝食を抜いた日の長い運動や、発熱して食べられない中での活動では、複数の条件が重なります。脱水、睡眠不足、疲労の蓄積も含めて、その日の状況を主治医と共有します。

筋型で気づきやすい症状

  • 運動や体調不良の後に、いつもより強い筋痛・張り・こむら返りが出る。
  • 力が入りにくい、動きにくい、歩くのがつらい。
  • 発作時にCKが大きく上昇する。
  • 尿が赤褐色・コーラ色になる、尿の量が減る。

同じような状況で繰り返すことは診断の手がかりになりますが、毎回まったく同じ経過になるとは限りません。過去より強い症状や、いつもと違う変化は、早めに相談してください。

横紋筋融解では、筋肉だけでなく腎機能や電解質も確認する

横紋筋融解は、筋肉の細胞が壊れて、CKやミオグロビンなどが血液中に出る状態です。尿中にミオグロビンが出ると、尿が赤褐色になることがあります。急性腎障害や電解質の異常などにつながるため、発作時には全身の評価が必要です。[1]

尿の色だけで、横紋筋融解の有無や重さは判断できません。強い筋痛や脱力がある場合は、尿色が普段と同じでも相談します。赤褐色尿には別の原因もあるため、医療機関で調べる必要があります。

医療機関では、症状と経過に応じてCK、腎機能、電解質、血糖、尿検査などを確認します。エネルギーを補う治療と、腎臓などを守る対応が必要になることがあり、輸液の内容や量は医療者が判断します。[4]

症状が出た後に運動を続けたり、痛みのある筋肉へ強い刺激を加えたりせず、医療への連絡を優先してください。発作後の運動再開も、症状や検査結果を踏まえて相談します。

診断は、発作の経過・代謝検査・遺伝学的検査を組み合わせる

検査・情報 確認すること 読み取るときの注意
症状・発作歴 初発年齢、食事・運動・感染との関係、尿色、家族歴。 発作の間に症状が少なくても、繰り返す経過を伝えます。
CK・尿・腎機能・電解質 筋障害と、発作に伴う全身への影響。 普段と発作時の値、採血した時点を合わせて見ます。
血中アシルカルニチン C16・C18:1などを含む、長鎖アシルカルニチンのパターン。 結果は体調や採取条件に左右され、正常でも否定できない場合があります。
CPT2遺伝子検査・酵素活性 病的バリアントや酵素機能を確認し、診断を判断。 意義不明のバリアント(VUS)だけでは確定できません。必要な追加評価を相談します。
血糖・ケトン・肝機能、必要な心臓の評価 病型や体調に応じた臓器障害・代謝状態。 乳幼児の重症型、既往や症状がある場合などで確認内容が異なります。

筋型CPT2欠損症の症例研究では、横紋筋融解が起きているときでも、アシルカルニチンが典型的な異常を示さなかった例が報告されています。反復する症状がある場合は、単回の検査結果だけで評価を終えず、代謝疾患の専門医と検査を組み合わせます。[3]

新生児マススクリーニングの結果も、実施時期や検査対象と合わせて確認します。過去の結果が陰性でも、現在の反復する筋痛や横紋筋融解の評価を省略する理由にはなりません。

症状が出たときの検査は参考になりますが、検査のために自分で絶食したり、運動で発作を起こそうとしたりしないでください。検体採取のために必要な治療を遅らせることも避けます。

日常管理は、食事・運動・体調不良時の手順を具体的にする

管理の内容は、年齢、病型、過去の発作、栄養状態、生活や仕事の負荷によって変わります。代謝疾患の診療経験がある医師と管理栄養士を中心に、実行できる計画にします。[1][4]

食事:自分に合った食事間隔と補給を決める

長い絶食を避け、必要なエネルギーを確保します。夜間を含む食事間隔、間食、運動の前後の補給、脂肪の種類・量は個別に決めます。「何時間までなら空腹でも安全」という一律の数字を当てはめないでください。

断食や糖質を強く制限する減量食など、エネルギーの使い方を変える食事を検討するときは、実施前に主治医へ相談します。脂質を極端に減らすことも、必要な栄養や成長に影響するため自己判断では行いません。

運動:補給・休憩・中止の目安を組み合わせる

運動は、本人の運動能力と栄養管理に合わせて計画します。空腹のままの長時間運動や、体調不良・寒冷・脱水が重なる活動を避け、補給、休憩、運動を止める症状、発作後の再開手順を決めます。

学校の持久走、部活動、長距離の通勤、身体作業、登山などは、実際の内容と時間を担当者へ伝えて相談します。一般的な筋疾患の運動情報に加え、CPT2欠損症に必要なエネルギー補給と発作予防の計画を確認してください。

筋疾患の運動・リハビリの共通原則

発熱・嘔吐・下痢:食べられなくなったときの計画を使う

体調不良時の対応計画は「シックデイルール」と呼ばれます。補給する内容、食事が取れない場合の連絡基準、受診先、時間外の窓口を、元気なときに決めておきます。

事前に指示された経口補給は、意識がはっきりして安全に飲み込め、嘔吐などで摂取できない状態ではないことが前提です。必要な量が取れない、嘔吐を繰り返す、ぐったりする場合は、家庭の対応を続けず連絡・受診に移ります。

検査・手術・出産・旅行:食事や医療へのアクセスを先に調整する

絶食を伴う検査や手術では、CPT2欠損症であることを、予約時から主治医・検査担当・麻酔科に伝えます。絶食の扱い、必要な補給や輸液、術後に食事を再開するまでの対応を事前に相談します。

妊娠・出産を予定している場合も、代謝専門医と産科で栄養管理を共有します。旅行や出張では、補給を持ち歩けるか、食事が遅れた場合、現地の受診先、病名・主治医連絡先・緊急時指示書を確認しておきます。

栄養療法と、国内で承認されたトリヘプタノイン

CPT2欠損症の治療では、発作を起こしにくくする食事・生活管理と、発作時の速やかな治療が重要です。薬や栄養製品も、これらと合わせて使用を検討します。

選択肢 確認すること
食事のエネルギー・脂肪の調整 必要な栄養を保ち、食事間隔、糖質・脂肪などの配分を個別に設計します。
MCTなどの中鎖脂肪酸 エネルギー源として利用する方法です。製品・量・摂取のタイミングを専門医・管理栄養士と決めます。
トリヘプタノイン 長鎖脂肪酸代謝異常症を対象とする医薬品です。現在の食事・補給と合わせ、使用の適否を専門医に相談します。
カルニチン 血中濃度や状態などから適否を判断します。CPT2という病名だけを理由に、市販サプリを自己判断で追加しません。

日本では、トリヘプタノイン(販売名:ドジョルビ内用液100%)が、長鎖脂肪酸代謝異常症を対象として2026年3月23日に条件付き承認されました。承認条件には、実施中の国際共同試験の成績を提出し、医療現場へ情報提供することが含まれています。[5][6]

国内で承認された治療選択肢として、発作の頻度や重さ、摂取状況、現在の管理内容を踏まえて専門医と検討します。市販のMCTオイルと同じものとして置き換えたり、治療中の薬・栄養計画を自己判断で変更したりしないでください。

この薬を使用していても、強い筋痛、尿量低下、食べられない状態などが出たときは、緊急時の計画に沿った医療対応が必要です。

治験・研究情報と、治療の説明を読むときの確認点

遺伝と家族への説明は、予防と備えにつなげる

CPT2欠損症は、基本的に常染色体潜性(劣性)遺伝です。両方のCPT2遺伝子に病的な変化があることで発症します。両親がともに保因者と確認された場合、子どもが発症する確率は妊娠ごとに25%です。[2]

きょうだいや血縁者の検査が必要か、いつ調べるか、結果をどう伝えるかは、主治医や遺伝カウンセリングで相談します。家族にも運動後の筋痛や尿色の変化などがあれば、症状として共有してください。

本人の検査レポートを保管し、変化の正式な表記、診断の確かさ、病型、緊急時の注意点を確認します。家族計画や妊娠について考える場合も、必要な情報と選択肢を整理する相談ができます。

遺伝・家族の検査と相談の整理

似た症状を起こす病気も、検査で区別する

運動後の筋痛や横紋筋融解は、CPT2欠損症以外でも起こります。発症のタイミングは手がかりになりますが、それだけで病名は決まりません。

病気の例 評価で確認すること
VLCAD欠損症 空腹・感染・運動との関係、アシルカルニチンのパターン、ACADVL遺伝子など。
MADD アシルカルニチンや尿有機酸などの代謝検査、関連遺伝子、治療への反応など。
McArdle病 運動開始直後のつらさ、運動中に楽になる「セカンドウィンド」の経験、PYGM遺伝子など。
ポンペ病 持続する近位筋の弱さや呼吸機能、GAA酵素活性など。
RYR1関連疾患など 運動・暑熱・麻酔に関連する筋症状、家族歴、関連遺伝子など。

CACT欠損症などでは、CPT2欠損症と似たアシルカルニチンの結果になる場合もあります。専門的な酵素・遺伝子検査を組み合わせて確認します。[1]

代謝性ミオパチーの全体像/ミオパチーの分類と関連情報

診察・救急受診に持っていく記録

症状が出た日は、受診や連絡を済ませたうえで、食事・活動・体調と症状の時間関係を残します。尿色の写真も参考になりますが、撮影や記入のために受診を遅らせないでください。

CPT2欠損症・診療で共有するメモ

氏名/診断状況:確定・疑い・未確定
病型・初発年齢/新生児マススクリーニングの結果:
CPT2遺伝子検査のレポート・酵素活性など:
症状が始まった日時と、筋痛・脱力などの内容:
最後の食事・補給の時刻と、食べられている量:
その前の運動・仕事の内容と時間:
発熱・嘔吐・下痢/寒冷・脱水・睡眠不足など:
尿の色・尿量の変化:
普段と発作時のCK・腎機能・尿検査など:
低血糖・心臓・肝臓の既往:
現在の薬・MCTなどの栄養製品・食事計画:
主治医・時間外の連絡先/緊急時指示書の保管先:
今回相談したいこと:

このメモは、診療に必要な情報を伝えるためのものです。医療者向けの治療指示書は、主治医に作成してもらい、外出先でも示せるようにしておきます。ご家族、学校、職場への共有範囲も相談して決めます。

筋疾患の評価・記録の考え方

よくある疑問

普段のCKが正常なら、CPT2欠損症ではありませんか?

普段の検査だけでは否定できません。筋型では発作の間に症状や異常が目立たないことがあります。反復する筋痛・横紋筋融解の経過と、代謝・遺伝学的検査などを合わせて判断します。

尿が赤くなるまでは、自宅で様子を見てもよいですか?

尿色が変わるまで待たないでください。強い筋痛や脱力、尿量の減少、必要な補給が取れない状態があれば、緊急時の計画に沿って連絡・受診します。

運動はすべてやめる必要がありますか?

運動能力、発作歴、栄養管理に合わせて個別に計画します。補給や休憩、運動を中止する目安を確認し、空腹での長時間運動や体調不良中の無理を避けます。発作後の再開は主治医と相談してください。

MCTオイルやカルニチンを自分で増やしてもよいですか?

量や製品、栄養全体の配分は専門医・管理栄養士と決めます。カルニチンも一律に追加するものではありません。現在の処方や栄養計画を、自己判断で増減・中止しないでください。

日本でもトリヘプタノインを治療に使えますか?

長鎖脂肪酸代謝異常症を対象とする医薬品として国内承認されています。CPT2欠損症で使用するかは、診断、病状、現在の食事・補給などを踏まえて専門医に相談します。[5][6]

参考文献・公的情報

  1. 日本先天代謝異常学会 編. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019. 「カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ(CPT2)欠損症」など。薬剤の国内承認状況は下記2026年資料で確認。
  2. 米国国立医学図書館 MedlinePlus Genetics. Carnitine palmitoyltransferase II deficiency.
  3. Yazıcı H, et al. Experience with carnitine palmitoyltransferase II deficiency: diagnostic challenges in the myopathic form. J Pediatr Endocrinol Metab. 2024;37(1):33–41. doi:10.1515/jpem-2023-0298.
  4. Grünert SC, et al. International Guideline on the Diagnosis, Treatment, and Monitoring of Long-Chain Fatty Acid Oxidation Disorders (LC-FAOD). J Inherit Metab Dis. 2026;49(5):e70251. doi:10.1002/jimd.70251.
  5. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載. ドジョルビ内用液100%に係る医薬品リスク管理計画書. 2026年9月提出版。
  6. Ultragenyx Japan株式会社. ドジョルビ内用液100%の日本における製造販売承認取得のお知らせ. 2026年3月23日。承認制度・効能の確認に使用。