筋ジストロフィーには、患者数は少なくとも、それぞれに固有の特徴と管理法が必要な病型が存在します。
ここでは、特に日本国内で患者数が多い「福山型」や「ウルリッヒ型」、成人発症の「遠位型」などを、他の主要な型と同じ深さで解説します。
日本人に特有のタイプであり、国内ではデュシェンヌ型に次いで2番目に患者数が多い筋ジストロフィーです。
ほぼ全ての患者さんが日本人の祖先を持ち、小児期発症の筋ジストロフィーとして極めて重要です。
福山型と同じく「先天性(生まれつき)」のタイプですが、福山型とは全く異なる「関節の柔らかさと硬さが混在する」という非常に特徴的な身体サインを持っています。
原因は、筋肉の細胞を取り巻くコラーゲン(VI型コラーゲン)の欠損です。
特徴的な3つのサイン(診断の鍵)
- ① 手足の過伸展(柔らかすぎる関節)
- 手首や指の関節が異常に柔らかく、ありえない方向に曲がってしまうほどの柔軟性(過伸展)が見られます。
また、皮膚のキメが細かく、ビロードのように柔らかい(Samooth skin)のも特徴です。 - ② 大きな関節の拘縮(硬くなる関節)
- 手先が柔らかい一方で、肘(ひじ)や膝(ひざ)などの大きな関節は、生後間もない時期から硬くなり、伸びにくくなる「拘縮(こうしゅく)」が起こります。
この「末端は柔らかいのに、体に近い関節は硬い」というギャップがウルリッヒ型の最大の特徴です。 - ③ 早期からの呼吸障害(重要)
- 他の筋ジストロフィーに比べて、**「歩行機能が保たれていても、呼吸機能だけが先に低下する」**というリスクがあります。
特に睡眠中の呼吸が浅くなりやすいため、幼少期から夜間の人工呼吸器(NPPV)が必要になるケースが多くあります。
※「歩けているから呼吸も大丈夫」という油断は禁物です。
💡 ケロイド体質について
皮膚のコラーゲン異常により、蚊に刺された跡や手術の跡が盛り上がりやすい(ケロイド化しやすい)傾向があります。外科処置の際は、あらかじめ医師に相談することが望ましいです。
多くの筋ジストロフィーが「体幹に近い筋肉(近位)」から弱るのに対し、このグループは「手先や足先(遠位)」から筋力が低下するのが最大の特徴です。
初期症状が「つまづきやすい」「ペットボトルの蓋が開けにくい」などであるため、整形外科的な疾患と間違われることもあります。
※肢帯型2B型と同じ「ジスファーリン遺伝子」の変異
「ふくらはぎ(下腿三頭筋)」が選択的に痩せていく日本人に多い病型です。
20歳前後で発症し、CK値(クレアチンキナーゼ)が非常に高くなるのが特徴です。
- つま先立ちができなくなる(初期症状)。
- ジャンプができなくなる、走るのが遅くなる。
- 進行すると太ももや腰も弱くなり、LGMDと同様の状態になります。
※DMRVとも呼ばれます
体内の「シアル酸」を作る酵素の異常により、筋肉が変性するタイプです。
「足首を持ち上げる筋肉(前脛骨筋)」が弱くなる一方で、太ももの筋肉(大腿四頭筋)は最後まで保たれるという、不思議な特徴(Quadriceps sparing)があります。
- 足首が垂れ下がり(下垂足)、平らな道でつまづく。
- 階段は登れるのに、平地で転ぶ。
- 現在、シアル酸を補充する治験が進められています。
筋ジストロフィーの中では珍しく、40代以降の中高年で発症することが多いタイプです。
手足の筋力低下よりも先に、「目(まぶた)」と「のど(飲み込み)」に症状が現れるため、最初は眼科や耳鼻科を受診される方が少なくありません。
主な症状と対策
- ① 眼瞼下垂(がんけんかすい)
- まぶたを持ち上げる筋肉が弱くなり、まぶたが下がってきます。
「眠そうに見える」「おでこにシワを寄せて、あごを上げて見ようとする」といった変化が見られます。
対策 視野が狭くなり生活に支障が出る場合は、手術でまぶたを吊り上げる処置が検討されます。 - ② 嚥下障害(えんげしょうがい)
- のどの筋肉が弱くなり、物を飲み込む力が低下します。
「食事中にむせる」「固いものが飲み込みにくい」「食事が長時間かかる」といった症状が出ます。
最も怖いのは「誤嚥性肺炎」です。咳払いをする力も弱くなるため、窒息や肺炎のリスクが高まります。
対策 食事形態の工夫(刻み食やとろみ食)や、定期的な嚥下機能検査が重要です。
このタイプは、筋力低下そのものよりも「心臓の異常」と「関節の拘縮」が先行するのが特徴です。
「筋肉はまだ動くから大丈夫」と油断していると、突然の心トラブルに見舞われるリスクがあるため、正しい知識による管理が命を守ります。
- ① 早期からの関節拘縮(こうしゅく)
- 筋力低下が目立つ前の幼少期から、関節が硬くなります。
特に「肘(ひじ)が伸びない」「首が前に曲がらない」「かかとが床につかない(アキレス腱短縮)」のが典型的です。 - ② 致死性の心伝導障害(不整脈)
- 心臓の筋肉そのものより、脈を作る「電気回路」に異常が出ます(心房停止、房室ブロックなど)。
自覚症状がなくても進行し、ある日突然失神したり、突然死の原因となることがあります。
※24時間ホルター心電図検査が必須であり、早期にペースメーカー導入(ICD含む)が必要になることが多いです。 - ③ 独特な筋力低下の分布
- 「上腕(力こぶ)」と「下腿(ふくらはぎ)」の外側から筋肉が痩せていく、Humero-peroneal(上腕腓骨)型と呼ばれる分布を示します。
ここで紹介した病型は、一般的な病院では診断が難しいことが多く、確定診断がつくまでに長い時間(数年〜数十年)がかかる「診断の旅(Diagnostic Odyssey)」を経験される患者さんが少なくありません。
- 専門医の不足: 希少なタイプを診た経験のある医師が限られています。
- 症状の個人差: 同じ病名でも、症状の出方や重症度が人によって大きく異なります。
- 遺伝子の複雑さ: 遺伝子検査をしても、病気とは関係のない変異(VUS)なのか、本当の原因なのか判断が難しいケースがあります。
「次の子供に遺伝する確率は?」「家族に発症者はいないのになぜ?」といった不安に対しては、専門の知識を持った「認定遺伝カウンセラー」に相談することが推奨されます。
正しい知識を持つことが、将来のライフプランを考える上での第一歩となります。
「希少な型」だからこそ、諦めない選択を。
ここで紹介した病型は、一般的な医学書では「その他」として数行で片付けられてしまうこともあります。
しかし、私たち当研究所は、どの型であっても「筋肉が壊れていくメカニズム(血流不足や代謝異常)」には共通点があると考えています。
現代医学で「経過観察しかない」と言われたとしても、まだできることはあります。
物理的な血流改善と代謝コントロールによって、筋肉が本来持っている「回復・成長しようとする力」を最大限に引き出し、機能を維持するという選択肢です。
この「諦めないための理論」を、一冊の本にまとめました。
当研究所の「筋肉へのアプローチ理論」を知る
『筋強直性ジストロフィーと診断されたとき最初に読む本』
※ご注意:筋強直性ジストロフィー向けに書かれた書籍ですが、
「どうすれば筋肉の壊死を減らせるか」という
根本の理論は共通しており、全ての病型の方に参考にしていただけます。
