筋ジストロフィーで歯科受診するとき|事前に伝えたいこと
筋ジストロフィーで歯科を受診するとき、不安になりやすいのは歯そのものだけではありません。 診療台までの移動、座位や仰向け姿勢、口を開け続けること、うがい、飲み込み、疲労、局所麻酔、鎮静、抜歯や長い処置の相談まで含めて考える必要があります。
結論
- 筋ジストロフィーで歯科を受診するときは、診療内容だけでなく、移乗、姿勢、開口、うがい、飲み込み、疲労、麻酔や鎮静の共有が大切です。
- 予約時に「筋ジストロフィーです」とだけ伝えるより、何がやりにくいかを具体的に伝える方が調整しやすくなります。
- 歯科受診では、口の中の問題と同じくらい、診療台での姿勢保持、口を開け続ける負担、水や唾液の処理が問題になりやすいことがあります。
- DMD・BMDでは、静脈内鎮静や全身麻酔の可能性がある処置で、サクシニルコリンや揮発性吸入麻酔薬に関する注意を共有します。
- 筋強直性ジストロフィーでは、嚥下機能、呼吸機能、心機能、保持できる体位、開口障害、鎮静薬・鎮痛薬への反応を事前に伝えます。
このページで整理すること
このページは、筋ジストロフィーの方が歯科を受診するときに、予約時・受診時・処置前に伝えたい内容を整理するためのページです。 日常の口腔ケア、手術・検査前の麻酔確認、入院・救急の共有メモとは役割を分けています。
| 場面 | 主な目的 | このページで見ること |
|---|---|---|
| 歯科受診 | 診療台、開口、うがい、嚥下、疲労、麻酔共有を整える | 予約時の伝え方、当日の困りごと、局所麻酔・鎮静、処置後の確認 |
| 手術・検査前 | 麻酔科、手術担当医、主治医と事前に共有する | DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、呼吸、心臓、術後管理 |
| 日常生活ガイド | 食事、移動、整容、入浴、外出を広く整理する | 歯みがきも含めた生活動作全体を見ます。 |
| 緊急時・入院・手術ガイド | 救急搬送、入院、手術で医療者に短時間で情報を渡す | 呼吸器、吸引、薬、意思疎通、緊急時の希望などをまとめます。 |
歯科受診は、歯だけの話ではありません。 「診療台でどの姿勢なら保てるか」「口をどれくらい開け続けられるか」「水や唾液をどう処理するか」「処置後に食事や水分が取れるか」まで見ると、受診の負担を減らしやすくなります。
なぜ歯科受診で事前共有が大切か
歯科受診は短時間に見えて、実際には移動、診療台への乗り移り、姿勢保持、開口、うがい、口の中の処置、会計、帰宅後の食事まで、細かい負担が積み重なります。 筋ジストロフィーでは、これらが少しやりにくいだけでも疲労や危なさにつながることがあります。
さらに、病型によっては呼吸機能、心機能、嚥下、麻酔・鎮静の注意点が異なります。 歯科医院側が病名を知っていても、本人の移乗方法、口を開けられる時間、仰向けの限界、うがいのしにくさまでは分かりません。
診療台を倒すと息苦しい、首や背中が保てない、側弯や拘縮で姿勢がつらいことがあります。
長時間の開口、噛む力、舌の動き、唾液や水の処理が難しくなることがあります。
短時間の診療でも、帰宅後に食事、歯みがき、会話、翌日の活動に影響することがあります。
事前共有は、特別扱いを求めるためではありません。 どの条件なら受診しやすいかを歯科側とそろえるための準備です。
予約時に伝えたいこと
予約時に伝える内容は、詳しい病歴すべてではなく、受診の流れに関わる条件です。 最初の電話や予約フォームでは、以下を短く伝えます。
| 伝えること | 具体例 | 歯科側が準備しやすいこと |
|---|---|---|
| 診断名・病型 | DMD、BMD、筋強直性ジストロフィー、肢帯型、FSHDなど | 処置時間、麻酔・鎮静の扱い、主治医確認の必要性 |
| 移動・移乗 | 車いす、歩行器、介助、診療台への乗り移りが難しい | バリアフリー動線、診療台の調整、介助者同席 |
| 姿勢 | 仰向けが苦しい、上体を起こしたい、首の支えが必要 | 診療台の角度、枕、クッション、短時間処置 |
| 開口 | 長く口を開けられない、顎が疲れる、開口障害がある | 休憩を入れる、処置を分ける、開口保持具の相談 |
| 嚥下・うがい | 水でむせる、うがいが難しい、吸引をしっかりしてほしい | 注水量、吸引、うがいの回数、処置中の姿勢調整 |
| 呼吸・心臓 | NPPV、人工呼吸器、心筋症、不整脈、ペースメーカー、ICD | モニタリング、病院歯科や麻酔科との連携 |
| 薬 | 抗凝固薬、ステロイド、心臓の薬、糖尿病薬、アレルギー | 抜歯や出血、感染、内服継続の確認 |
「筋肉の病気があります」だけより、「長時間の開口がつらい」「仰向けが苦しい」「水でむせやすい」など、診療で困る条件として伝える方が歯科側も準備しやすくなります。
受診当日に困りやすい場面
当日困りやすいのは、治療そのものより前後の動作です。 診療前、診療中、診療後に分けて見ると、次回の調整もしやすくなります。
受付から診療台までの移動、椅子から診療台への移乗、荷物の置き場、待ち時間の疲労。
長い開口、首や背中の姿勢、飲み込みづらさ、注水、吸引、休憩を入れにくいこと。
口をゆすぐ、立ち上がる、会計まで移動する、帰宅後に疲れが出る。
処置自体は短くても、移動や姿勢保持で疲労が大きいことがあります。
| 場面 | 困りやすいこと | 先に伝えるとよいこと |
|---|---|---|
| 待ち時間 | 長く座る、姿勢を保つ、トイレ、疲労 | 待ち時間が長いと疲れやすい、予約時間の調整をしたい |
| 移乗 | 診療台へ移る、立ち上がる、腕を引かれる | どこを支えると安全か、どこを引っ張らないでほしいか |
| 診療台 | 倒しすぎると苦しい、首や腰がつらい | 可能な角度、枕やクッション、途中休憩 |
| 開口 | 顎が疲れる、口が閉じてくる、痛みが出る | 何分くらいなら開けられるか、休憩サイン |
| うがい | 水をためられない、むせる、吐き出しにくい | うがいを少なくしたい、吸引を多めにしたい |
「診療時間が短いから大丈夫」とは限りません。 前後の動作、姿勢、開口、うがいの方が負担になることがあります。
姿勢・開口・うがいで見たいこと
歯科受診では、姿勢と口の使い方の負担が重なりやすくなります。 痛みが少ない処置でも、長く口を開けることや診療台を倒すことがつらい場合があります。
| 確認項目 | 本人・家族が見ること | 歯科へ伝える例 |
|---|---|---|
| 診療台の角度 | 倒すと息苦しいか、上体を起こすと楽か | 「完全な仰向けは苦しいため、少し上体を起こしたいです。」 |
| 首・背中 | 首が反りすぎないか、背中や腰が痛くないか | 「首の下に支えがあると楽です。」 |
| 開口時間 | 何分くらい口を開け続けられるか | 「5〜10分ごとに休憩を入れたいです。」 |
| 顎の疲れ | 口が閉じてくる、顎が痛い、こわばる | 「長く開けると顎が疲れるため、短く区切りたいです。」 |
| うがい | 水を口に含める、吐き出す、むせる | 「うがいが難しいため、吸引を多めにお願いします。」 |
| 休憩サイン | 手を上げる、瞬き、文字盤、家族が伝える | 「休憩したい時はこの合図を出します。」 |
歯科でのつらさは「痛み」だけではなく、姿勢保持、開口の持続、唾液や水の処理で強くなることがあります。
嚥下・吸引・口腔ケアで伝えたいこと
筋ジストロフィーでは、病型や進行によって、噛む力、舌の動き、飲み込み、唾液や水の処理、口腔ケアが難しくなることがあります。 歯科治療では、注水やうがい、唾液の貯留、処置中の姿勢が嚥下と関係します。
- 水分でむせやすい
- 食後に痰が増える
- 湿った声になりやすい
- 口の中に食べ物が残りやすい
- 胃ろう・経管栄養がある
- 歯ブラシを持ちにくい
- 開口が難しい
- 仕上げみがきが必要
- うがいが難しい
- 人工呼吸器や口呼吸で乾燥しやすい
| 困りごと | 歯科へ伝える内容 | 相談したい工夫 |
|---|---|---|
| 水でむせる | 注水やうがいでむせやすい | 吸引を多めにする、少量ずつ進める、姿勢を調整する |
| 痰が絡む | 喉でゴロゴロする、吸引が必要なことがある | 処置前後の吸引、短時間処置、休憩 |
| 口の中に残る | 食べかすが残りやすい、舌で動かしにくい | 清掃しやすい道具、介助方法、定期的な口腔ケア |
| 口腔乾燥 | 口が乾きやすい、痰が硬い、口臭が気になる | 保湿、口腔ケア頻度、薬の影響、加湿 |
| 人工呼吸器・NPPV | マスク、気管切開、吸引、加湿の状況 | 診療中の姿勢、吸引、病院歯科との連携 |
歯科治療中の水や唾液の処理は、むせや誤嚥の不安に直結します。 「うがいができるか」だけでなく、「水をためられるか」「吐き出せるか」「吸引が必要か」を分けて伝えます。
局所麻酔・鎮静・全身麻酔で共有したいこと
歯科で使う麻酔には、虫歯治療や抜歯で使う局所麻酔、処置への不安や長時間処置で使われることがある鎮静、病院歯科などで検討される全身麻酔があります。 これらを同じものとして考えず、どの方法を予定しているのかを確認します。
| 方法 | 主な場面 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 局所麻酔 | 虫歯治療、抜歯、歯周処置など | 心疾患、不整脈、薬、アレルギー、過去の反応、エピネフリンの有無 |
| 笑気・軽い鎮静 | 不安が強い、処置が長い、口を開ける負担が大きい場合 | 呼吸機能、嚥下、痰、NPPV、眠気が残るか、帰宅基準 |
| 静脈内鎮静 | 抜歯、長時間処置、強い不安、障害者歯科など | 病型、呼吸・心機能、過去の麻酔歴、病院歯科・麻酔科管理の必要性 |
| 全身麻酔 | 複数処置、協力困難、長時間処置、病院歯科での管理 | DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、心臓、呼吸、術後観察、入院管理 |
局所麻酔でも伝えておきたいこと
一般的な歯科局所麻酔と、静脈内鎮静・全身麻酔は分けて考えます。 ただし、心筋症、不整脈、心不全、ペースメーカー・ICD、抗凝固薬、過去の麻酔トラブルがある場合は、局所麻酔だけでも事前に伝えます。
鎮静や全身麻酔の可能性があるとき
抜歯、親知らず、複数本の処置、長時間処置、強い不安、開口保持が難しい場合は、鎮静や病院歯科での対応が検討されることがあります。 その場合は、病型、呼吸機能、心機能、嚥下、NPPVや人工呼吸器、吸引、過去の麻酔歴を歯科側へ共有します。
麻酔薬の選択や鎮静の可否は、本人・家族だけで決めるものではありません。 筋ジストロフィーでは病型によって注意点が異なるため、必要に応じて主治医、歯科医師、麻酔科医が情報を共有して決めます。
病型ごとに伝えたい注意点
筋ジストロフィーは病型によって、歯科受診で伝えたい内容が変わります。 予約時や処置前に、分かる範囲で病型を伝えてください。
| 病型・状態 | 歯科で伝えたいこと | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| DMD・BMD | 口腔周囲筋の弱さ、咀嚼・嚥下、開口、呼吸・心機能、鎮静・全身麻酔時の薬剤注意 | 「DMD/BMDです。抜歯や鎮静の可能性がある場合、サクシニルコリンや吸入麻酔薬について主治医・麻酔科確認をお願いしたいです。」 |
| 筋強直性ジストロフィー | 開口障害、嚥下、呼吸、心伝導障害、不整脈、鎮静薬・鎮痛薬への反応、サクシニルコリン回避 | 「筋強直性ジストロフィーです。嚥下、呼吸、心臓、開口、鎮静薬への反応を事前に共有したいです。」 |
| EDMD | 伝導障害、不整脈、ペースメーカー・ICD、拘縮、診療台姿勢 | 「心臓の経過観察があります。局所麻酔や処置前に心臓の情報を共有します。」 |
| FSHD | 顔面・肩甲帯・体幹の筋力、姿勢保持、開口、うがい、疲労 | 「診療台での首・肩・体幹の支え方と、長時間の開口がつらいです。」 |
| 先天性筋ジストロフィー | 年齢、発達、呼吸、嚥下、側弯、てんかん、意思疎通、介助方法 | 「普段の姿勢、飲み込み、意思表示、介助方法を家族が説明します。」 |
| 病型が未確定 | 筋疾患が疑われること、呼吸・心臓・麻酔歴、処置中の姿勢 | 「病型は未確定ですが、筋疾患が疑われています。鎮静や長時間処置は主治医確認をしたいです。」 |
DMD/BMDでは、歯科でも静脈内鎮静や全身麻酔を伴う処置では麻酔薬の選択が重要です。 筋強直性ジストロフィーでは、サクシニルコリン回避、鎮静薬・鎮痛薬への過敏性、呼吸抑制、誤嚥、不整脈、体温低下、開口障害を伝えます。
薬・心臓・出血リスクで確認したいこと
歯科処置では、内服薬や心臓の状態も重要です。 抜歯や歯周処置では出血、感染、局所麻酔、抗菌薬、痛み止めの選択が関係するため、お薬手帳を持参します。
| 項目 | 確認する内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 抗凝固薬・抗血小板薬 | ワルファリン、DOAC、アスピリン、クロピドグレルなど | 自己判断で中止しない。歯科医師、主治医、循環器医へ確認します。 |
| 心臓の薬 | β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬、抗不整脈薬など | 不整脈、心不全、血圧、局所麻酔薬の添加薬について共有します。 |
| ステロイド | DMDなどで長期内服している場合 | 抜歯や感染、手術的処置では主治医へ確認が必要なことがあります。 |
| 糖尿病薬 | インスリン、内服薬、食事制限の有無 | 食事が取りにくい処置後は低血糖や内服タイミングに注意します。 |
| アレルギー・副作用歴 | 抗菌薬、鎮痛薬、局所麻酔薬、ラテックスなど | 過去に困った薬や症状を具体的に伝えます。 |
| ペースメーカー・ICD | 機器手帳、植込み時期、通院先 | 使用機器や処置内容によって確認が必要なことがあります。 |
抗凝固薬、抗血小板薬、ステロイド、心臓の薬は、歯科処置の前に自己判断で中止しないでください。 抜歯や外科的処置の前に、歯科医師と処方医へ確認します。
受診後に家庭で見たいこと
歯科受診は、その場で終わっていても、帰宅後に疲労、口の違和感、食事のしにくさ、むせ、痛み、出血が出ることがあります。 次回のためにも、受診後の変化を短く残します。
| 帰宅後に見ること | 確認内容 | 相談したい場面 |
|---|---|---|
| 疲労 | 帰宅後に横になる時間、翌日まで残るか | 毎回寝込む、食事や水分の余裕がなくなる場合 |
| 痛み・出血 | 痛み止めで落ち着くか、出血が続くか | 出血が止まりにくい、強い痛み、腫れがある場合 |
| 食事・水分 | むせ、食べられる量、水分量、薬が飲めるか | 水分が取れない、薬が飲めない、むせが増える場合 |
| 痰・声 | 湿った声、喉のゴロゴロ、痰の増加 | 処置後に痰やむせが増え、戻らない場合 |
| 次回への記録 | つらかった姿勢、開口時間、うがい、休憩の必要性 | 次回予約前に歯科へ共有します。 |
一度の受診で困った点を記録しておくと、次回は診療台の角度、休憩の間隔、うがい、吸引、処置時間を調整しやすくなります。
歯科受診を先延ばしにしない方がよいサイン
歯科受診が負担に感じると、つい後回しになりがちです。 ただ、口腔内の問題が進むと、痛み、食事低下、口腔ケアの難しさ、感染、処置の大きさが増えることがあります。
- 口の中の痛みや出血が続く。
- 歯ぐきの腫れ、膿、強い口臭がある。
- 食べかすが残りやすく、口腔ケアが難しい。
- 口腔ケアがほとんどできない。
- 飲み込みやうがいが以前より難しくなっている。
- 歯の痛みで食事量が落ちている。
- 発熱、顔の腫れ、強い痛みがある。
- 病型や麻酔のことを共有しないまま処置が進みそうで不安がある。
発熱、顔の腫れ、強い痛み、飲み込みにくさ、口が開きにくい状態が急に悪化した場合は、歯科だけでなく医療機関へ早めに相談してください。 呼吸や嚥下に不安がある場合は、歯科医院と主治医の連携が必要になることがあります。
コピーして使える歯科共有メモ
歯科受診では、短い時間で必要な情報を伝える必要があります。 以下をコピーして、予約時や初診時に使ってください。分からない項目は空欄で構いません。
よくある失敗と避け方
| よくある失敗 | なぜ困るか | 避け方 |
|---|---|---|
| 病名だけ伝える | 実際に困る姿勢、開口、うがい、嚥下、移乗が伝わりません。 | 「何が何分くらいつらいか」を具体的に伝えます。 |
| 局所麻酔と鎮静・全身麻酔を同じように考える | 必要な確認項目が違います。 | どの麻酔方法を使う予定かを確認します。 |
| DMD/BMDの麻酔注意を伝えない | 鎮静・全身麻酔を伴う処置で重要な薬剤注意が抜けることがあります。 | 病型名と、サクシニルコリン・揮発性吸入麻酔薬の確認希望を伝えます。 |
| 筋強直性ジストロフィーの嚥下・心臓・開口を伝えない | 水の処理、鎮静、局所麻酔、処置姿勢、不整脈の確認が不足します。 | 嚥下、呼吸、心機能、保持できる体位、開口障害を共有します。 |
| 抗凝固薬を自己判断で止める | 出血だけでなく、血栓リスクにも関わります。 | 歯科医師と処方医に確認し、自己判断で中止しません。 |
| 処置後の疲労を記録しない | 次回も同じ負担が繰り返されます。 | 姿勢、開口時間、休憩、帰宅後の疲労を書いて次回に渡します。 |
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歯科受診の不安は、日常生活、入浴、宿泊、麻酔・手術前の確認とあわせて見ると整理しやすくなります。
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神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイドを見るよくある質問
歯科には病名まで伝えた方がよいですか?
はい。病名と病型は伝えた方がよいです。そのうえで、「長く口を開け続けるのがつらい」「仰向けが苦しい」「水でむせやすい」「診療台への移乗が難しい」など、診療上の条件も合わせて伝えると調整しやすくなります。
普通の虫歯治療でも麻酔のことを話した方がよいですか?
話した方がよいです。局所麻酔だけで短時間に終わる処置と、静脈内鎮静や全身麻酔を伴う処置では注意点が違います。将来的に抜歯、親知らず、長時間処置、鎮静の可能性があるなら、病型、呼吸、心臓、過去の麻酔歴を早めに共有してください。
歯科の局所麻酔は危険ですか?
一律に危険とは言えません。通常の局所麻酔だけで処置できる場合もあります。ただし、心筋症、不整脈、心不全、ペースメーカー・ICD、薬、アレルギー、筋強直性ジストロフィーなどがある場合は、局所麻酔薬や添加薬の選択を歯科医師・主治医に確認してください。
DMD/BMDでは歯科で何を伝えるべきですか?
DMD/BMDで、抜歯や長時間処置、静脈内鎮静、全身麻酔の可能性がある場合は、サクシニルコリンや揮発性吸入麻酔薬に関する注意を伝えます。呼吸機能、心機能、NPPVや人工呼吸器、過去の麻酔歴も共有してください。
筋強直性ジストロフィーでは歯科で何を伝えるべきですか?
嚥下機能、呼吸機能、心機能、保持できる体位、開口障害、鎮静薬・鎮痛薬への反応、サクシニルコリン回避、不整脈の有無を伝えます。水や唾液の処理、注水、うがい、吸引についても事前に相談してください。
歯科受診で一番見落としやすいのは何ですか?
口の中の問題だけでなく、診療台への移乗、姿勢保持、長い開口、うがいのしにくさ、処置後の疲労です。短時間の診療でも、前後の動作で疲労が強く出ることがあります。
短時間の受診なら準備はいらないですか?
そうとは限りません。短い診療でも、移動、姿勢、開口、うがいで疲労が大きいことがあります。初回は、短めの確認、姿勢の相談、処置時間の分割から始めると負担を減らしやすくなります。
抗凝固薬やステロイドは歯科処置前に止めた方がよいですか?
自己判断で中止しないでください。抜歯や出血を伴う処置では、歯科医師と処方医が、出血リスクと薬を止めるリスクを確認して判断します。お薬手帳を必ず持参してください。
参考文献・参考情報
本ページは、筋ジストロフィーで歯科受診をするときに共有したい内容を整理するための一般的な情報です。 実際の歯科治療、局所麻酔、鎮静、全身麻酔、薬の中止・継続は、病型、呼吸機能、心機能、嚥下、処置内容によって変わります。
- 日本神経学会:筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/myotonic_2020.html - 日本神経学会:デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dmd.html - Parent Project Muscular Dystrophy:Dental Considerations
https://www.parentprojectmd.org/care/care-guidelines/by-area/dental-considerations/ - Parent Project Muscular Dystrophy:Dental Procedures
https://www.parentprojectmd.org/care/care-guidelines/by-area/dental-considerations/dental-procedures/ - OrphanAnesthesia:Duchenne muscular dystrophy
https://www.orphananesthesia.eu/rare-diseases/published-guidelines/duchenne-muscular-dystrophy/809-duchenne-muscular-dystrophy-2/file.html - OrphanAnesthesia:Myotonic Dystrophies type 1 and 2
https://www.orphananesthesia.eu/rare-diseases/published-guidelines/myotonic-dystrophies-type-1-and-2/176-myotonic-dystrophies-type-1-and-2/file.html - 神経筋疾患ポータル:神経筋疾患患者の口腔ケア(応用編)
https://nmdportal.ncnp.go.jp/treatment/oral-care02.html - Mielnik-Błaszczak M, et al. Duchenne muscular dystrophy–a dental healthcare program. PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17388226/ - Dysphagia and Oral Health. A Clinical Guideline from the All Wales Special Interest Group
https://www.sigwales.org/wp-content/uploads/Dysphagia-and-Oral-Health.-A-Clinical-Guideline-from-the-All-Wales-Special-Interst-Group-2025.final_.pdf
まとめ
筋ジストロフィーで歯科受診を考えるときは、口の中の問題だけでなく、移動、姿勢、開口、うがい、飲み込み、疲労、麻酔や鎮静の共有まで含めて考える方が現実に合います。
特に、抜歯、親知らず、長時間処置、静脈内鎮静、全身麻酔の可能性がある場合は、病型、呼吸、心臓、薬、過去の麻酔歴を事前に伝えることが重要です。 DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、心疾患や呼吸機器使用がある場合は、歯科医院だけで完結させず、主治医や病院歯科、麻酔科との連携を確認してください。
大切なのは、「歯医者に行けるかどうか」を気合いで決めることではなく、何がやりにくいかを先に言葉にして、受診しやすい条件をそろえることです。
- 本ページは一般的な情報整理を目的としたもので、個別の歯科治療方針、麻酔可否、薬の中止・継続を示すものではありません。
- 筋ジストロフィーでは病型差が大きく、歩行、移乗、開口、呼吸、心機能、嚥下、疲労の出方によって、受診時に共有したい内容は変わります。
- 局所麻酔、鎮静、全身麻酔、抜歯、抗凝固薬、抗菌薬、痛み止めの扱いは、歯科医師、主治医、薬剤師、必要に応じて麻酔科医の判断を優先してください。
- 強い痛み、出血が止まらない、顔の腫れ、発熱、飲み込みにくさ、呼吸の苦しさがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
- 標準的な医療管理や薬を自己判断で中止・変更しないでください。

