脊髄性筋萎縮症(SMA)とは|病型・検査・治療薬・呼吸と暮らしの総合案内

Cell Healing|脊髄性筋萎縮症の総合案内

SMAの治療と、
日々の暮らしを考える

脊髄性筋萎縮症(SMA)について、病型と遺伝子、診断、国内の治療薬、呼吸・食事・リハビリ、成人期の生活までまとめています。診察で確認したいことを整理する際にもご利用ください。

医療情報確認日:2026年10月25日
本ページは、主にSMN1遺伝子に関連する「5q SMA」を扱います。

このページの目次を開く・閉じる
  1. SMAとは・SMN1とSMN2の役割
  2. Ⅰ〜Ⅳ型の分類と、その見方
  3. 症状・遺伝子検査・早期診断
  4. 日本で使用される治療薬
  5. 呼吸・睡眠・咳のケア
  6. 食事・飲み込み・栄養
  7. 姿勢・関節・骨とリハビリ
  8. 成人期・学校・仕事・支援
  9. 診察で伝えること・記録用メモ
  10. 新しい研究と、施術・機器を選ぶ視点
  11. よくある質問
  12. 参考文献・公的資料

SMAとは・SMN1とSMN2の役割

脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)は、筋肉を動かす指令を伝える運動ニューロンの障害により、筋力低下や筋萎縮が起こる病気です。腕や脚だけでなく、体幹、呼吸、飲み込みに関わる筋肉にも影響することがあります。[1]

代表的な5q SMAでは、SMN1遺伝子の両方のコピーに欠失や病的な変化があり、運動ニューロンの維持に重要なSMNタンパク質が不足します。筋ジストロフィーと同じく筋力低下を起こしますが、病気の仕組みや治療は異なります。SMN1以外の遺伝子に関連するSMAもあるため、診断名と遺伝子検査の結果を一緒に確認することが大切です。[1][3]

SMN2のコピー数だけで将来は決まらない

SMN2はSMN1によく似た遺伝子ですが、十分に働くSMNタンパク質を作る割合が低いという特徴があります。コピー数が多いほど症状が軽い傾向はあるものの、例外もあり、発症時期や進行、治療後の変化をコピー数だけで予測することはできません。[3]

5q SMAの遺伝形式は原則として常染色体潜性(劣性)遺伝です。家族歴がなくても発症することがあります。家族の検査や将来の妊娠に関する相談は、個別の検査結果に基づいて遺伝カウンセリングで確認できます。[3]

Ⅰ〜Ⅳ型の分類と、その見方

従来の病型は、主に症状が出始めた時期と、治療を受けない経過で到達した運動機能をもとに分類されてきました。治療によって経過が変わる現在、この表は病気を理解するための目安であり、一人ひとりの将来を示す表ではありません。[2]

表は横にスクロールできます。

SMAの従来の病型分類
病型主な発症時期の目安従来の分類での運動機能の特徴
Ⅰ型生後6か月未満支えなしで座ることが難しい
Ⅱ型生後6〜18か月頃座ることはできるが、独歩の獲得が難しい
Ⅲ型幼児期以降歩行を獲得するが、筋力低下や歩行の変化がみられる
Ⅳ型成人期成人になって筋力低下などが現れる

日々のケアでは、病型に加えて、現在の「座る・立つ・歩く・手を使う」能力、呼吸や食事の状態を評価します。成人のSMAには、小児期からの病気を持って成人になった方も、成人期に発症した方も含まれます。[10]

症状・遺伝子検査・早期診断

受診で伝えたい変化

  • 乳児:首のすわりや運動発達の遅れ、手足の動きが少ない、泣き声が弱い、哺乳や呼吸が苦しそう。
  • 小児:立ち上がりや階段が難しい、転びやすい、以前できた動作が難しくなった。
  • 成人:太ももや肩まわりの筋力低下、立ち上がり・歩行の変化、疲れやすさなど。

これらの症状だけでSMAとは判断できません。いつから、どの動作が、どのように変わったかを整理し、小児科・小児神経科、または脳神経内科に相談してください。[1][4]

診断ではSMN1の遺伝子検査が中心になる

診察所見と遺伝子検査を組み合わせて診断します。5q SMAが疑われる場合はSMN1の欠失や病的な変化を調べ、治療の検討に必要なSMN2のコピー数も確認します。一般的な欠失検査で説明できない場合は、より詳しい遺伝子解析などを検討します。筋電図などの検査が必要になることもあります。[4]

新生児スクリーニングで陽性の場合は、専門施設で速やかに確定診断と治療方針の検討につなげることが重要です。一方、スクリーニングですべてのSMAを検出できるわけではありません。陰性でも筋力低下や発達の遅れがあれば相談が必要です。実施状況や費用は、出産施設・自治体に確認してください。[4]

早期に見つける意味

発症前からヌシネルセンを開始した小児を追跡したNURTURE研究では、運動発達などの良好な経過が報告されています。ただし、対照群を置かない研究であり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。診断が疑われた段階で専門診療につなげ、治療の時期を個別に判断することが大切です。[9]

日本で使用される治療薬

現在の主な治療は、不足するSMNタンパク質を増やすことを目指します。SMN2の働き方を調整する薬と、SMNタンパク質を作るための遺伝子を届ける治療があり、投与方法や対象、確認すべき安全性が異なります。[5]〜[8]

「髄腔内」は、脳や脊髄を包む髄液のある空間を指します。髄注は、その空間に薬を投与する方法です。

以下は国内の電子添文・適正使用資料をもとにした概要です。対象条件のすべてを掲載したものではありません。実際の適応は、検査結果・年齢・治療歴・全身状態をもとに専門施設で判断します。

表は横にスクロールできます。

国内の主な治療薬と投与方法(2026年10月確認)
薬剤働き・投与方法対象や通院について確認すること
ヌシネルセン
スピンラザ
SMN2の働き方を調整し、十分に機能するSMNタンパク質を増やす。髄腔内に繰り返し投与。SMN1の変化・SMN2のコピー数、投与手技、製剤・投与法に応じた間隔を確認。[5]
リスジプラム
エブリスディ
SMN2の働き方を調整し、十分に機能するSMNタンパク質を増やす。1日1回の内服。液剤と錠剤がある。錠剤は2歳以上かつ体重20kg以上。年齢・体重に合う製剤と用量を確認。[6]
オナセムノゲン アベパルボベク
ゾルゲンスマ点滴静注
SMNタンパク質を作るための遺伝子を、ウイルスベクターを使って届ける。点滴で単回投与。2歳未満。SMN1の両方のコピーの欠失・変異、抗AAV9抗体陰性などの条件がある。[7]
オナセムノゲン アベパルボベク
ゾルゲンスマ髄注
遺伝子を届ける治療。髄腔内に単回投与。2歳以上。SMN1の両方のコピーの欠失・変異、抗AAV9抗体陰性などの条件がある。過去の同成分の投与歴も確認。[8]

スピンラザ:製剤と投与計画を確認する

12mgに加え、50mg・28mgを用いる投与法もあります。導入時と維持期のスケジュールは投与法などによって異なるため、「誰でも同じ間隔」とは考えず、担当施設の計画を確認してください。腰椎穿刺による投与に伴う負担や、血小板・腎機能などの検査も含めて相談します。[5]

エブリスディ:毎日の服薬と生活との両立

自宅で服用する治療ですが、定期的な診察と評価は必要です。液剤の扱い、飲み忘れや嘔吐したときの対応などは、医師・薬剤師の説明に従います。妊娠・授乳や将来の妊娠を考えている場合も、あらかじめ治療医に相談してください。[6]

ゾルゲンスマ:点滴と髄注では対象が異なる

2026年には2歳以上を対象とする髄注製剤が加わりました。点滴静注の「2歳未満」という条件を、髄注にも当てはめることはできません。髄注では18歳以上の場合に、症状や他の治療歴、別の選択肢を踏まえて、利益とリスクを特に慎重に検討します。[7][8]

髄注製剤は、点滴を含めてオナセムノゲン アベパルボベクの投与歴がある方には投与しないと定められています。単回投与後も、ステロイド投与や肝機能・血小板などの確認が必要です。「1回で治療も経過観察も終わる」という意味ではありません。[8]

治療の目標は、生活の変化まで含めて共有する

治療の評価では、新しい動作の獲得や改善に加え、機能の維持、呼吸・食事、疲労、介助量なども確認します。どの薬が適しているか、切り替えや追加をどう考えるかは、治療歴や負担も含めて医療チームと相談してください。薬を自己判断で中止・追加することは避けましょう。[16]

呼吸・睡眠・咳のケア

SMAでは呼吸の筋肉や咳の力が弱くなり、睡眠中の浅い呼吸や、痰を出しにくい状態が生じることがあります。普段は落ち着いていても、風邪などをきっかけに負担が増えることがあるため、日頃から呼吸の評価と体調不良時の対応を相談しておきます。[11]

  • 眠っている間の呼吸が浅い、息苦しそうに見える。
  • 咳が弱い、痰を出し切れない、風邪が長引く、肺炎を繰り返す。
  • 食事中や食後にむせる、呼吸が変わる。

これらの変化は呼吸器の担当医に伝えてください。必要に応じて、睡眠中の呼吸評価、マスクによる非侵襲的換気(NIV)、咳や排痰を助ける方法などを検討します。機器の種類・設定・使用時間は、専門職の評価と指導に基づいて決めます。[10][11]

強い息苦しさ、唇が青い、反応がおかしい・意識が低下している場合は119番へ。発熱や痰の増加とともに呼吸が悪くなった場合は、あらかじめ決めた医療機関の連絡先に速やかに相談してください。

入院・手術の予定があるときは、呼吸補助や排痰の方法、普段使う機器を事前に共有します。持参する情報は神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイドにもまとめています。

食事・飲み込み・栄養

食事に時間がかかる、噛むと疲れる、むせる、食後に痰が増える、体重が減るといった変化は相談のきっかけになります。食事量だけでなく、食べる姿勢、飲み込み、呼吸の状態、便秘や胃食道逆流も一緒に確認します。[12]

必要なエネルギー量は、年齢、成長、筋肉量、活動量などによって異なります。低栄養にも体重の増え過ぎにも注意し、管理栄養士や嚥下を評価する専門職と調整してください。食形態やとろみを、病名だけで一律に決めることはできません。[12]

口から十分に摂ることが難しい場合は、胃ろうなどの経管栄養も選択肢になります。栄養・水分を確保する方法と、口から食べることをどこまで続けられるかは、それぞれ評価して相談します。特定の食品やサプリメントだけでSMAを治療できると考えて、必要な医療を遅らせないことも大切です。[10][12]

姿勢・関節・骨とリハビリ

SMAのリハビリでは、筋力だけでなく、関節の動き、側弯、痛み、骨の状態、座位や移乗のしやすさを確認します。目標は歩行に限りません。手を使いやすくする、楽に座る、呼吸しやすい姿勢を取る、介助時の負担を減らすことも大切な目標です。[10][13]

  • 姿勢・座位:頭・体幹・骨盤を支える方法、車いすやクッション、机の高さを調整する。
  • 関節・側弯:動かしにくさや痛みを確認し、ストレッチ・装具・整形外科的な対応を相談する。
  • 骨・移乗:骨折への注意、移乗や立位補助の方法を検討する。
  • 活動:現在の能力と疲労に合わせ、生活で続けやすい運動や道具を選ぶ。

理学療法士・作業療法士などと、運動の量や休息の取り方を決めましょう。強い痛みや疲れを我慢して繰り返す方法ではなく、本人が続けられ、生活上の目的に合う計画に調整します。薬物治療を始めた後も、身体の変化に合わせた再評価が必要です。[10][13]

成人期・学校・仕事・支援

治療やケアの方針は、本人が大切にしたい生活と合わせて考えます。学業、仕事、外出、家族との時間など、優先したいことを医療チームに伝えてください。心理的な負担や家族の介護負担も、相談してよい内容です。[14]

小児科から成人の診療へ移るとき

紹介状だけでなく、遺伝子検査の結果、これまでの治療薬と投与歴、呼吸・栄養管理、側弯や手術歴、普段の介助方法を引き継ぎます。成人後の診療先や薬の投与先、緊急時の連絡先を、移行前に確認しておくと相談が途切れにくくなります。[16]

生活の困りごとを具体的な支援につなげる

学校・職場では、「SMAという病名」だけでなく、移動、トイレ、姿勢の保持、休息、通院に必要な配慮を具体的に伝えます。医療費や福祉サービスは、年齢・状態・制度ごとに対象が異なるため、病院の相談員や自治体窓口で確認してください。

診察で伝えること・記録用メモ

診察では、「良くなった・悪くなった」に加え、どの場面で何が変わったかが役立ちます。歩く距離や作業時間などは、補助具・介助・休憩の条件も一緒に残してください。無理な反復測定は必要ありません。

次のメモをコピーし、スマートフォンのメモなどで使えます。この欄は記入・送信用ではありません。

医療者による運動機能評価には専用の尺度もあります。家庭のメモは、診断や治療効果の判定を置き換えるものではなく、相談を助けるための記録です。

新しい研究と、施術・機器を選ぶ視点

脊髄への電気刺激の研究

2025年には、成人SMA患者3人を対象に、硬膜外に留置した電極で脊髄の感覚神経根を電気刺激する探索的研究が報告されました。約1か月の研究期間で、筋力や歩行などの改善が報告されています。少人数・短期間の結果であり、長期的な効果や、より広い患者層での有効性・安全性は今後の検証が必要です。[15]

この研究は、電極を留置する方法と特定の刺激条件を用いています。家庭用の磁気機器や体表から行う施術とは方法が異なるため、それらに同じ効果があると判断することはできません。

Cell Healingの施術・機器について

当方では磁気を用いた介入を提供していますが、SMAに対する有効性が確立した治療として案内するものではありません。SMNを増やす承認治療や医療機関での呼吸・栄養管理、リハビリの継続を前提に、利用の目的、身体の状態、主治医からの注意事項を確認します。

施術や機器を検討する際は、当方を含め、SMA患者を対象とするデータがあるか、何人をどの期間評価したか、有害事象や費用、継続を見直す条件が説明されているかを確認してください。仕組みの仮説や他の病気での結果と、SMAで確認された効果は分けて考える必要があります。

利用方法や相談の流れは、初めての方へ|施術・機材の利用と相談の流れをご覧ください。

よくある質問

SMAと診断されたら、病型だけで寿命が分かりますか?

病型だけでは判断できません。古い資料の予後は、現在の治療や呼吸・栄養管理を受ける方にそのまま当てはまるとは限りません。現在の機能、治療歴、呼吸や栄養の状態をもとに、担当医と見通しを確認してください。[2][10]

SMN2のコピー数が多ければ、受診や経過観察は不要ですか?

コピー数だけで判断することはできません。症状がない場合の治療開始や経過観察も、検査結果と薬ごとの条件を踏まえて専門医が判断します。[5][6]

成人でも薬物治療について相談できますか?

相談できます。成人であることだけを理由に、すべての治療の対象外になるわけではありません。ただし、薬や製剤ごとに条件が異なり、過去の治療歴や現在の状態、期待できる利益と負担を踏まえた判断が必要です。[5]〜[8]

遺伝子治療を受けた後も、呼吸や食事のケアは必要ですか?

治療後も、その方の状態に合った評価とケアを続けます。単回投与の治療を受けたことと、呼吸・嚥下・栄養・姿勢などの課題がすべて解消したことは同じではありません。[8][10]

参考文献・公的資料

国内の薬の対象・投与方法は、日本の電子添文と適正使用資料を優先して確認しています。海外の患者向け資料は、病気の理解とケアの参考として掲載しています。

  1. 難病情報センター.脊髄性筋萎縮症(指定難病3).
  2. Cure SMA.Understanding SMA(2020年、英語PDF).病型分類と基礎知識の参考。薬の国内条件は下記資料を参照。
  3. Cure SMA.Genetics of SMA(2026年、英語PDF).
  4. Cure SMA.SMA Update in Best Practices: Recommendations for Diagnosis Considerations — Summary Report(英語PDF).2024年の診断に関する推奨の要約。
  5. バイオジェン・ジャパン.スピンラザ髄注12mg・28mg・50mgの適正使用のために(2025年11月改訂、PMDA掲載PDF).
  6. PMDA.エブリスディドライシロップ60mg/エブリスディ錠5mg 電子添文(2025年5月改訂).
  7. ノバルティス ファーマ.ゾルゲンスマ点滴静注 電子添文(2025年11月改訂、PDF).
  8. ノバルティス ファーマ.ゾルゲンスマ髄注 電子添文(2026年5月改訂、PDF).
  9. Crawford TO, et al. Continued benefit of nusinersen initiated in the presymptomatic stage of spinal muscular atrophy: 5-year update of the NURTURE study. Muscle Nerve. 2023.
  10. 国際的なSMAケアに関する合意文書:Mercuri E, et al. Diagnosis and management of spinal muscular atrophy: Part 1. Neuromuscul Disord. 2018;28:103–115. / Finkel RS, et al. Part 2. Neuromuscul Disord. 2018;28:197–207. / Cure SMAによる案内.
  11. Cure SMA.Breathing Risks & Care(呼吸・咳・換気のケア).
  12. Cure SMA.Nutrition Basics(2020年、英語PDF).
  13. Cure SMA.Musculoskeletal(筋骨格系のケア).
  14. Cure SMA.Quality of Life(本人・家族の希望と生活の質).
  15. Prat-Ortega G, et al. First-in-human study of epidural spinal cord stimulation in individuals with spinal muscular atrophy. Nat Med. 2025;31:1246–1256. DOI: 10.1038/s41591-024-03484-8. / 研究を実施したピッツバーグ大学による解説(2025年2月5日).本ページの研究紹介はこの解説を参照。
  16. Schroth MK, et al. Spinal Muscular Atrophy Update in Best Practices: Recommendations for Treatment Considerations. Neurol Clin Pract. 2025;15:e200374. DOI: 10.1212/CPJ.0000000000200374.

疾患ライブラリに戻る

成人の診療への移行、進学・就職・転居に伴う転院や通院の負担は、成人のSMAと移行期医療・通院と暮らしの準備で、引き継ぐ情報と相談用メモを確認できます。