【CMT】靴選びで失敗しないために|下垂足・足部変形・装具との関係

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靴選びで失敗しないために|下垂足・足部変形・装具との関係

CMT(シャルコー・マリー・トゥース病)では、靴選びがただの好みの問題ではなく、つまずきやすさ、足首の安定性、疲れやすさ、足の痛み、さらには装具の使いやすさに大きく関わります。 とくに下垂足(足首が上がらない状態)、高アーチ(土踏まずが高い)、ハンマートゥ(足指が曲がる変形)、足首の不安定さがある場合は、「軽くて履きやすい靴」が必ずしも安全で歩きやすい靴とは限りません。 このページでは、靴選びで何を見落としやすいか、どんな視点で整理すると失敗しにくいかを、歩行を助ける装具(AFO等)との関係も含めて実務的にまとめます。

本ページは一般的な情報整理です。特定の商品を勧める内容ではありません。実際の靴、足底板(インソール)、装具の適合は、足の変形や歩き方を見ながら専門家(医師や義肢装具士)と個別に調整する必要があります。

結論

  • CMTの靴選びでは、見た目や軽さだけでなく、下垂足、足首のぐらつき、高アーチ、指の変形、足裏の感覚の鈍さを一緒に考える方が失敗しにくくなります。
  • 靴が合っていないと、つまずき、捻挫、タコ、足の痛み、全身の疲労の増加につながることがあります。
  • 靴だけで対応できるのか、足底板(インソール)が必要か、AFO(Ankle-Foot Orthosis:足関節-足部装具、いわゆる短下肢装具)まで考えるべきかは、つま先の引っかかりと横揺れのどちらが大きいかで整理しやすくなります。
  • 試し履きでは、その場で立つだけでなく、方向転換、少し速い歩き、疲れてきた時の崩れ方まで確認することが大切です。

CMTで靴選びが重要になる理由

CMTでは、足首を上に向ける筋肉の低下、足首の横揺れ、高アーチ(土踏まずの極端な盛り上がり)、ハンマートゥ(指が「く」の字に曲がる)、足裏の感覚の鈍さなどが重なることで、靴との相性が歩きやすさに直結します。 そのため、合わない靴は単に履き心地が悪いだけでなく、つまずき、捻挫、靴ずれ、タコ(胼胝)、関節の痛み、そして疲労の原因になりやすくなります。

逆に言うと、靴を適切に見直すだけで歩行の安定感や疲れ方が劇的に変わる人もいます。

CMTにおいて、靴は単なる「服の一部」ではなく、歩行を支える補助具(ギア)の一部として考えた方が整理しやすくなります。

靴の前に見たい足の状態

靴のデザインだけを見ても判断しにくいので、まずご自身の足の「何が一番歩きにくさの原因になっているか」を整理しておくと失敗しにくくなります。

見たいこと 意味・影響
下垂足(かすいそく) 足首を持ち上げられない状態です。歩行時につま先が引っかからないようクリアランス(地面との隙間)を補えるかが重要になります。
高アーチ・凹足(おうそく) 土踏まずが高く盛り上がった状態です。足裏にかかる体重の圧が偏りやすく、靴の当たりや不安定さにつながります。
ハンマートゥ(槌指:つちゆび) 足の指が曲がって固まる変形です。靴のつま先部分(アッパー)が低すぎると圧迫され、靴ずれや爪のトラブルの原因になりやすいです。
足首の横揺れ 筋肉の低下で足首が左右にぐらつく状態です。靴の素材が柔らかすぎると不安定さが増え、捻挫しやすくなります。
感覚低下 足裏や指先の感覚が鈍いと、靴の当たりや圧迫に気づきにくく、深刻な皮膚トラブル(傷やタコ)を見逃しやすくなります。

靴選びの前に「自分の足で何が一番問題か」を一度分けて考えると、靴に求める条件がはっきりします。

靴で見たいポイント

靴選びでは、単純な軽さだけでなく、踵(かかと)の安定、つま先の余裕、足首まわりのホールド感、靴底の硬さや反り返り方などを見ていくと整理しやすくなります。

踵(かかと)まわり

踵を包む部分(ヒールカウンター)が硬く安定している方が、足首の横揺れが強い人には合いやすい傾向があります。

つま先の空間(トゥボックス)

指の変形やつま先の上がりにくさがある場合は、前足部に高さと深さの余裕があることが重要になります。

靴底(ソール)

柔らかすぎるとクッション性はあっても不安定さが増え、逆に硬すぎても足の蹴り出し(返り)が悪く感じることがあります。

開き方・履き口

装具(AFO)や足底板(インソール)を使う場合は、靴紐やマジックテープで履き口が大きく開くデザインが必須になります。

「軽いから歩きやすい」とは限りません。筋力が落ちた足には、靴自体の重さ(軽さ)よりも「骨格を支える安定感」の方が優先される場面が多くあります。

失敗しやすいパターン

CMTの人が靴選びで失敗しやすいのは、見た目のおしゃれさや一般的な「楽な靴(スリッポンなど)」を優先しすぎて、実際の歩き方との相性を見落とす時です。

  • 布製の柔らかすぎるスニーカーを選び、足首が横にぐらつく
  • つま先が薄いデザインを選び、曲がった指(ハンマートゥ)や爪がこすれて痛む
  • 将来的に足底板や装具(AFO)を入れる余裕がないほどぴったりサイズを買ってしまう
  • 店内を数歩歩いた時はよくても、長距離を歩くと姿勢が崩れて疲れる
  • CMT特有の「左右差(右足と左足で変形の強さが違う)」があるのに、両足とも同じ基準で選んでしまう

店で数分歩いて大丈夫でも、長距離・少し速い歩き・方向転換・夕方など疲労が溜まった後で問題が出ることがよくあります。

足底板(インソール)・AFO(短下肢装具)との関係

靴選びは靴単独で終わる問題ではなく、足底板(オーダーメイドのインソール)やAFO(Ankle-Foot Orthosis の略。足首から足先までを支えるプラスチックなどの短下肢装具)との相性も極めて重要です。 とくにAFOを考える場合は、「靴の中に装具がきちんと収まるか」「装具を入れても踵が抜けずに安定するか」「履き口がガバッと十分に開くか」が実務的なポイントになります。

状況 考え方
足裏の圧の偏りが強く、タコができる 靴を変えるだけでなく、体重を分散させる「足底板(インソール)」の作成が必要になることが多くなります。
歩行時につま先が下に引っかかる 靴の工夫だけでは限界があり、足首を90度に保つ「AFO(短下肢装具)」の相談が視野に入ります。
足首が横にぐらぐら崩れる(捻挫しやすい) 靴のヒールカウンター(踵の芯)の硬さだけでは足りず、ハイカットシューズやAFOによる物理的な支持が必要なことがあります。
すでにAFO(装具)を使っている 「足に合う靴」ではなく「装具に合う靴(サイズが大きく、履き口が開くもの)」を選ぶ発想が必要になります。

靴、足底板、AFOは別々のものとして考えるより、「歩行を安全にするための一つのシステム」としてセットで考える方が現実に合いやすくなります。

試し履きで見たいこと

靴屋での試し履きでは、次のような点を確認しておくと失敗しにくくなります。

  • 平地を歩いた時に、つま先が地面に引っかからないか
  • Uターンなど方向転換をした時に、足首が横にぐらつかないか
  • 階段やちょっとした段差を想定した時に、靴の中で足が滑って不安定にならないか
  • 歩くたびに踵がパカパカと浮きすぎないか
  • 曲がった指や爪が、靴の天井や側面に当たって圧迫されていないか
  • 長めに歩いた時に、足の痛みや全身の疲れが増えないか

立った感じや数歩の感触だけでは不十分で、歩く、曲がる、少し速く歩くまで見た方が実際の生活で役立ちます。

医療機関や装具士への相談時に伝えたいこと

医師や義肢装具士に靴や装具の相談をする時は、次のような具体的な情報があると専門家も判断しやすくなります。

  • 「家の中」と「外」など、どの場面で一番つまずくか
  • 右足と左足で、症状や変形の強さに差があるか
  • 足首のぐらつき(頻繁に捻挫しそうになる等)があるか
  • 高アーチや指変形、タコ、繰り返す靴ずれがあるか
  • 今の靴を履いていて、どこが一番困っているか(痛い、疲れる等)
  • 夕方など、疲れてくると歩き方が悪化するか
  • 足底板(インソール)や装具を過去に使ったことがあるか、現在使っているか

「自分に合う靴が全くない」と漠然と伝えるより、「柔らかい靴だと右の足首がぐらつき、長距離を歩くとつま先が引っかかって転びそうになる」と伝えた方が、装具の必要性も含めた的確なアドバイスをもらいやすくなります。

よくある質問

軽い靴の方がCMTの足には良いのでしょうか?

一律ではありません。筋力が落ちているため靴の軽さが足の持ち上げを助ける人もいますが、足首の不安定さが強い人では、少し重さがあっても素材がしっかりしていて「安定性が高い靴」の方が結果的に疲れにくいことが多々あります。

高アーチ(凹足)なら、必ずオーダーメイドの靴やインソールが必要ですか?

必ずしもそうではありません。市販の靴で問題なく歩ける方もいます。ただし、特定の場所にタコができて痛む、足が疲れやすいといった問題が出ている場合は、靴を変えるだけでなく、体重を分散させる足底板(インソール)との組み合わせを考える方が実務的です。

AFO(短下肢装具)を使う場合、上から履く靴は何でもいいですか?

そうではありません。装具の分だけ足のボリュームが大きくなるため、靴の幅や深さが必要です。装具の踵部分が靴の踵にピタッと収まること、脱ぎ履きしやすいように履き口がガバッと大きく開くデザイン(ベルクロや長い靴紐など)であることが重要です。

左右で足の変形度合いが違うため、靴の悩みが左右で違うのは普通ですか?

はい。CMTでは症状の進行や変形の度合いに左右差があることがあり、片側だけ強く靴が当たったり、片側だけよく捻挫しそうになったりすることは珍しくありません。場合によっては、左右で異なるサイズの靴を購入できるサービスや、片側だけ足底板を入れるなどの調整が必要になります。

参考文献

  1. Bracing and Orthotics for Charcot-Marie-Tooth disease. CMTA.
  2. Management of gait impairments in people with Charcot-Marie-Tooth disease.
  3. Current Treatment Methods for Charcot-Marie-Tooth Diseases.
  4. Pes Cavus. StatPearls.
  5. Cell Healing CMT関連記事.

まとめ

CMTの靴選びで失敗しにくくするには、見た目や靴単体の軽さだけでなく、「下垂足」「足首の不安定さ」「高アーチ」「指の変形」「感覚の鈍さ」といった自分の足の特徴を一緒に整理することが大切です。

靴を変えるだけで解決するのか、足底板(インソール)で圧を分散させるべきか、AFO(短下肢装具)で足首をしっかり支えるべきかは、日々のつまずき方と歩き方の崩れ方を見ながら、専門家と相談して判断していく方が実務的です。

  • 本ページは一般的な情報整理であり、特定の靴メーカーや装具を推奨するものではありません。
  • 急な片側だけの悪化、強い痛み、しびれ、腫れがある場合は、靴のせいにする前に早めに医療機関へご相談ください。
  • CMTの靴選びは、足の形、皮膚の感覚、歩き方の癖、疲労の度合い、そして装具との相性をトータルで考えることが極めて重要です。