【DMD/BMD】運動・リハ(拘縮・脊柱・装具)|やり過ぎ回避・ストレッチ・座位設計

DMD / BMD 運動・リハ 拘縮・装具・脊柱

【DMD/BMD】運動・リハ(拘縮・脊柱・装具)|やり過ぎ回避・ストレッチ・座位設計

DMD/BMDの運動は、一般的な「鍛えて強くする」発想ではうまくいきません。 目的は、筋肉を壊さずに、生活機能を長く保つことです。 そのため、このページでは「何を鍛えるか」より、何を守るかどこでやり過ぎになるか歩行期と車いす期で何が変わるかを整理します。

DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)を土台にしつつ、BMDにも共通する原則が分かる形でまとめています。 ただしBMDは進行速度や負担の出方の個人差が大きく、最終的には個別設計が必要です。

結論:目的は「維持」と「拘縮予防」

DMD/BMDの運動・リハは、筋肥大を狙う強いトレーニングより、 可動域を保つ転倒と痛みを減らす座位と呼吸を守るための設計が中心です。

  • 優先順位は、筋力アップよりも拘縮予防・安全・疲労管理
  • 強いエキセントリック負荷や高負荷筋トレは避ける方向
  • 歩行期と車いす期では、同じ「運動」でも目的が変わる
  • BMDでも原則は同じだが、進行速度が遅い分、個別の設計がより重要

DMDとBMDで何が同じで、何が違うか

DMDとBMDはどちらもジストロフィノパチーですが、進行の速さとばらつきが違います。 DMDは幼少期から進みやすく、BMDはより軽く、発症年齢や進行の仕方の幅が広いです。

DMDで意識しやすいこと
  • 病期ごとの見直しが早い
  • 拘縮・立位・装具・側弯対策を前倒しで考えやすい
  • 歩行喪失後の座位・呼吸への影響が大きい
BMDで意識しやすいこと
  • 「まだ歩ける」が長く続くことがある
  • その分、無理な運動や痛みの放置で悪化しやすい
  • 一律の型ではなく、疲労・痛み・活動量を個別に調整しやすい

つまり、原則は共通ですが、DMDは「病期を先回りする設計」、BMDは「無理を溜めない個別設計」がより重要です。

歩行期・早期車いす期・後期車いす期で優先順位は変わる

病期 優先しやすい目標 見落としやすい点
歩行期 足関節拘縮の予防、転倒予防、過負荷回避、家庭ストレッチの定着 「まだ歩けるから大丈夫」で足首拘縮や歩行量の過多を見逃しやすい
早期車いす期 座位保持、立位保持の再設計、側弯進行の確認、上肢機能の維持 歩行の終了を「運動終了」と考えてしまい、姿勢設計が遅れやすい
後期車いす期 痛み・座位・褥瘡予防、呼吸を浅くしない姿勢、移乗の安全、介助量の最適化 拘縮や側弯を見た目の問題として扱ってしまいやすい

DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)では、評価・リハ・整形は病期ごとに見直す前提で整理されています。

やり過ぎ回避:避けたい負荷と、比較的取り入れやすいこと

DMDでは、エキセントリック運動(筋肉を伸ばしながら強く力を出す運動)や、 高負荷の筋力トレーニングは避ける方向です。 一方で、完全に動かないことも萎縮や拘縮につながるため、軽めの有酸素・可動域維持・姿勢設計が中心になります。

避けたい / 要相談になりやすい例
  • 重い負荷の筋トレ
  • 限界まで追い込む反復
  • ジャンプや坂道ダッシュの反復
  • 反動をつけた強いストレッチ
比較的取り入れやすい方向
  • 疲労が翌日まで残らない範囲の軽い有酸素
  • 関節可動域の維持
  • 水中での軽い活動
  • ポジショニングと立位保持の工夫

判断の基準は「その場でできた」ではなく、翌日〜2日後に痛み・疲労・動きの悪化が残らないかです。

拘縮予防:どの関節を優先するか

拘縮は進んでから戻すのが難しいため、予防が中心です。 DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)では、歩行期から足首・膝・股関節を中心に、必要に応じて上肢へ広げる設計が示されています。

優先順位が上がりやすい部位
  • 足関節: 尖足、つま先歩き、装具適合、転倒に直結
  • 膝・股関節: 立ち上がり、移乗、座位姿勢に影響
  • 肩・肘・前腕・手: 更衣、食事、整容、車いす操作に影響
  • 頸部・体幹: 後期では座位・視線・呼吸にも関係
家庭での基本ルール
  • 痛みが出ない範囲でゆっくり
  • 反動をつけない
  • 「毎日少し」を基本にする
歩行期の実務ポイント
  • 足首背屈の低下を早めに拾う
  • 夜間 AFO(短下肢装具)は若い時期から予防的に始めると使いやすいことがある
  • 受診時には足首の背屈角度と歩行の変化をセットで確認

DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)では、受動背屈が 10°未満になったら中立位の夜間AFO(短下肢装具)を検討する流れが示されています。 これは「変形が進んでから」ではなく、「歩行を守る前段階」で考える項目です。

装具・立位保持・歩行量の設計

装具は「がまんして歩く」ためではなく、転倒・痛み・疲労を減らし、生活全体を回すための道具です。 また、歩けなくなった後も、立位保持や姿勢管理の道具として役割があります。

AFO(短下肢装具)

足関節の位置管理、つまずき予防、拘縮予防に使います。

KAFO(長下肢装具)

立位保持や一部の移動補助に使うことがありますが、現在は電動立位保持機能付き車いすが代替になる場面もあります。

立位保持デバイス

歩行の代わりではなく、関節・姿勢・生活リズムを守るための手段として考えます。

確認したい点 見るポイント
装具が合っているか 皮膚トラブル、痛み、疲労、ずれ、履きやすさ
歩行量が適切か 翌日まで疲労が残らないか、転倒が増えていないか
立位保持の目的が明確か 拘縮予防、姿勢、生活参加のどれを狙うか

歩行量を減らすことが「後退」ではなく、転倒と疲労を減らして生活全体を保つ調整になる場面があります。

脊柱・座位保持・脊柱装具の考え方

車いす期に重要度が大きく上がるのが、脊柱と座位です。 側弯は見た目の問題ではなく、座位耐久・痛み・介助しやすさ・呼吸に関わります。

座位で見るポイント
  • 骨盤の傾き
  • 体幹支持が十分か
  • 長時間座ると痛い部位がないか
  • 呼吸を浅くする姿勢になっていないか
側弯で見落としやすい点
  • 「見た目がまだ軽い」で様子見しすぎる
  • 座位の崩れをクッションだけでごまかす
  • 呼吸との関係を後回しにする

DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)では、脊柱装具の使用は一般には推奨されていません。 また、側弯が進行する場合は、骨成熟前なら6か月ごと、骨成熟後でも少なくとも年1回の画像確認が推奨され、20°以上で整形外科医の関与が目安になります。

側弯手術の目的は「まっすぐに見せること」ではなく、これ以上の進行を抑え、座位耐久を上げ、痛みを減らすことです。

骨折・骨の弱さも「整形」の範囲で考える

DMDでは、グルココルチコイド使用や活動低下の影響もあり、骨の弱さと骨折が問題になります。 下肢骨折は、歩行期では歩行喪失のきっかけにもなり得るため、運動・装具・骨の話を切り離さずに考えた方が安全です。

  • 転倒が増えているなら「筋力」だけでなく骨折リスクも考える
  • 痛みや腫れを「使い過ぎ」と決めつけず骨折も除外する
  • 後期非歩行期では、骨折治療の目的は再歩行より痛みと安定化に置くことがある

DMDケア・コンシダレーション(診療上の配慮事項)では、骨折予防のための anticipatory guidance(前もって備える説明)を全病期で行うべきとされ、 後期非歩行期では骨折治療の目的も痛みの管理と安定化に重心が移ります。

受診で確認するチェックリスト

迷いやすい点を、そのまま外来で確認できる形にまとめます。

拘縮・可動域
  • 足首の背屈は前回より落ちているか
  • 膝・股関節・肩の可動域はどう変わったか
  • 家庭ストレッチの量は不足か、やり過ぎか
装具・歩行・立位
  • 装具は合っているか(皮膚・痛み・疲労)
  • 歩行量は生活に対して多すぎないか
  • 立位保持や車いすの見直し時期か
脊柱・座位
  • 座っていると骨盤が傾くか
  • 長時間座ると痛みや疲労が強いか
  • 呼吸を浅くする姿勢になっていないか
骨折・安全
  • 転倒は増えていないか
  • 痛みの強い部位を無理に動かしていないか
  • 最近の骨折歴やステロイド使用を踏まえて骨の評価が必要か

このページは「何をやるか」より、何を守るために調整するかを整理するためのページです。 実際の運動量・装具・手術・立位保持の適応は、主治医・リハ・装具士・整形外科と個別に決めてください。

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