【FSHD】評価と記録テンプレ|左右差・体幹/下肢・転倒を「比較できる形」にする

FSHD 評価と記録 左右差 転倒・疲労・痛み

【FSHD】評価と記録テンプレート|左右差・転倒・疲労・肩甲帯・下垂足を週1回で比較する

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の記録は、毎日完璧に書くことが目的ではありません。 右と左で何が違うか、どの動作で困るか、転倒・痛み・疲労がどの条件で増えるかを、あとから比較できる形で残すことが目的です。

FSHDでは、顔、肩甲帯、腕、体幹、足首、歩行、疲労、痛みが同じように変化するとは限りません。 週1回の短いログと、月1回の受診用まとめを組み合わせると、外来やリハビリで説明しやすくなります。

記録の目的

FSHDは、症状の左右差が大きく、進行もゆっくりで、本人や家族でも変化に気づきにくいことがあります。 記録の目的は、細かい数値を増やすことではなく、数週間から数か月単位で「何が変わったか」を見えるようにすることです。

  • 右と左の違いを分けて説明できるようにする
  • 転倒やつまずきが増えた時期を把握する
  • 肩甲帯、体幹、下垂足、腰痛、肩痛の関係を見やすくする
  • 疲労が翌日に残る条件を見つける
  • 装具、靴、手すり、照明、運動内容の変更が役立っているかを確認する
  • 呼吸・心臓サインがある時に、早めに専門ページや医療機関へつなげる

FSHDの記録では、「毎日詳しく」よりも、同じ項目を同じ条件で続けることが重要です。 週1回、5分で書ける形にしておく方が続きやすく、外来でも使いやすくなります。

記録の原則:左右別・疲労込み・生活動作で見る

FSHDの記録で外したくないのは、左右差、疲労、転倒、痛みです。 筋力だけを見ていると、実際に生活を崩している要因が見えにくくなります。

左右別に残す

右と左で、顔、肩、腕、足首、歩行の状態が違うことがあります。 「右はできるが左は難しい」のように分けて記録します。

疲労込みで見る

午前はできるが午後に崩れる、外出翌日に強く疲れる、仕事後に腰痛が出るなど、時間帯や翌日への残り方も重要です。

生活動作で見る

洗髪、着替え、階段、立ち上がり、買い物、仕事、通学、家事など、実際に困る動作を中心に記録します。

数値は少なくて構いません。 ただし、同じ基準で続けることが大切です。0〜10の疲労、転倒回数、つまずき回数、痛みの場所、困った動作を固定して記録します。

週1ログ:5分で残す基本項目

週1ログは、日曜の夜など同じタイミングで書きます。 記録が長くなりすぎると続かないため、5分で終わる項目に絞ります。

項目 記録内容 記入例
転倒・つまずき 転倒回数、つまずき回数、場所、原因。 転倒0回、つまずき3回。屋外の段差で右足先が引っかかる。
歩行 平地、屋外、階段、歩行距離、休憩の必要性。 500mで休憩。階段は手すりが必要。
立ち上がり 椅子、床、トイレ、浴室での立ち上がり。 低い椅子では手が必要。床からは難しい。
肩・腕 洗髪、更衣、棚の上、物を持つ動作。 右腕は肩より上で疲れる。洗髪は途中で休憩。
腰・体幹 反り腰、腰痛、長時間座位、立位疲労。 夕方に腰痛6/10。長時間立つと反り腰が強くなる。
疲労 平均疲労0〜10、最もつらい日、翌日に残るか。 平均5/10。外出翌日は7/10で半日休んだ。
痛み 肩、首、腰、膝、足首などの痛み0〜10。 右肩4/10、腰6/10。買い物後に悪化。

週1ログの目的は、きれいな記録を作ることではありません。 転倒、疲労、痛み、左右差が増えた時に、運動・装具・生活環境・受診の見直しにつなげることです。

左右差ログ:顔・肩・腕・体幹・下垂足

FSHDでは、片側だけ進む、片側をかばって反対側に負担が出る、ということがあります。 左右差ログは、悪い側を責めるためではなく、かばい動作で全身が崩れる前に対策へつなげるために使います。

部位
目を閉じにくい / 口をすぼめにくい / 飲み物がこぼれる / 変化なし 目を閉じにくい / 口をすぼめにくい / 飲み物がこぼれる / 変化なし
肩甲帯 肩甲骨が浮く / 腕を上げにくい / 肩が疲れる / 変化なし 肩甲骨が浮く / 腕を上げにくい / 肩が疲れる / 変化なし
腕・手 洗髪困難 / 棚の上が困難 / 物を持つと疲れる / 変化なし 洗髪困難 / 棚の上が困難 / 物を持つと疲れる / 変化なし
体幹・腰 右へ傾く / 右腰が痛い / 右で支える癖 / 変化なし 左へ傾く / 左腰が痛い / 左で支える癖 / 変化なし
足首・足先 足首が上がりにくい / つまずく / 装具が必要 / 変化なし 足首が上がりにくい / つまずく / 装具が必要 / 変化なし

左右差が強い場合、弱い側だけでなく、かばっている側にも痛みや疲労が出ることがあります。 「弱い側」と「痛い側」が一致しないこともあるため、左右別に記録すると判断しやすくなります。

転倒・つまずき・下垂足の記録

下垂足や足首の上がりにくさは、FSHDで生活の損失につながりやすい項目です。 転倒は、筋力低下だけでなく、疲労、段差、暗さ、靴、床の滑り、焦りなど複数の要因で起こります。

転倒・つまずきメモ
  • 転倒:__回/週
  • つまずき:__回/週
  • 場所:屋内 / 屋外 / 階段 / 浴室 / 夜間
  • 原因:段差 / 暗い / 疲労 / 足先が引っかかる / 滑る
  • 右足が多い / 左足が多い / 両方
  • けが:あり / なし
対策後に見ること
  • 靴を変えて減ったか
  • インソールで歩きやすくなったか
  • 短下肢装具(AFO)でつまずきが減ったか
  • 手すりで階段が安定したか
  • 夜間照明で転倒不安が減ったか
  • 疲労が強い日は転倒が増えるか

転倒が増えている時に、歩行量だけを増やすのは危険です。 下垂足、靴、装具、段差、夜間照明、疲労、左右差を先に見直します。

疲労・痛みの記録

FSHDでは、筋力だけでなく、疲労と痛みが生活を制限することがあります。 その日の疲労だけでなく、翌日に残るかどうかを見ると、運動量、仕事、家事、外出の調整に使いやすくなります。

項目 記録の仕方 見直しの目安
疲労 0〜10で記録。午前・午後・外出後・仕事後で分ける。 翌日に残る疲労が続く場合は、活動量や休憩を見直します。
痛み 肩、首、腰、膝、足首など、場所と強さ0〜10を記録。 同じ場所の痛みが増える場合、かばい動作や姿勢を見直します。
回復時間 休むと何時間で戻るか、翌日まで残るか。 回復に時間がかかる活動は、量・時間帯・分割方法を調整します。
悪化条件 買い物、通勤、家事、階段、長時間座位、腕上げなど。 条件が分かると、生活設計や職場・学校での配慮につなげやすくなります。

疲労は「気合いの問題」ではなく、活動量の設計に使う情報です。 翌日に疲労が残る活動は、分割する、休憩を入れる、時間帯を変える、道具を使うなどの調整対象になります。

呼吸・心臓サインの記録

FSHDでは、呼吸や心臓の評価が全員に同じ頻度で必要になるわけではありません。 ただし、症状がある場合は、早めに入口を作ることが重要です。月1まとめには、呼吸・心臓サインも短く入れておきます。

呼吸サイン
  • 横になると苦しい:あり / なし
  • 朝の頭痛:あり / なし
  • 日中の眠気:あり / なし
  • 寝ても疲れが取れない:あり / なし
  • 咳が弱い、痰が出しにくい:あり / なし
  • 睡眠中の呼吸を指摘された:あり / なし
心臓サイン
  • 動悸:あり / なし
  • 脈が飛ぶ、不規則:あり / なし
  • 前失神、倒れそうになる:あり / なし
  • 失神:あり / なし
  • 胸部不快、胸痛:あり / なし
  • 急な息切れ:あり / なし

失神、強い胸痛、安静時の息切れ、痰が出せないほどの呼吸不安は、月1まとめを待たず、早めに医療機関へ相談してください。

装具・靴・環境変更の効果を記録する

FSHDでは、装具や靴、インソール、手すり、照明、椅子、作業環境の変更が、転倒や疲労を減らすことがあります。 使ったかどうかだけでなく、「何が改善したか」「何が合わなかったか」を記録します。

試したこと 見ること 記録例
短下肢装具(AFO) つまずき、歩行安定、疲労、痛み、靴との相性。 つまずきは減ったが、右足首に違和感。調整相談。
靴・インソール 足先の引っかかり、足裏の痛み、歩行距離。 新しい靴で屋外歩行が安定。階段はまだ不安。
手すり・段差対策 階段、トイレ、浴室、夜間動線の安全性。 浴室手すりで立ち上がりが楽。夜間転倒不安が減った。
椅子・作業環境 腰痛、肩の疲労、腕上げ、長時間座位。 机を低くして肩の疲労が減った。腰痛は夕方に残る。
休憩の入れ方 疲労の翌日残り、活動時間、仕事・家事の継続性。 30分ごとに休憩すると翌日の疲労が軽い。

道具や環境変更は、使い始めて終わりではありません。 合わない装具、痛みが出る靴、疲れる作業姿勢は、調整することで使いやすくなることがあります。

月1まとめ:受診で見せる1ページメモ

月1まとめは、外来やリハビリで見せるための短いメモです。 週1ログを全部見せる必要はありません。変化、困りごと、試したこと、相談したいことだけをまとめます。

項目 記入欄
この1か月で変わったこと 転倒↑ / つまずき↑ / 腰痛↑ / 肩痛↑ / 屋外歩行↓ / 疲労↑ / 変化なし
一番困っている動作 1)______ 2)______ 3)______
左右差 右が悪化 / 左が悪化 / 部位により違う / 部位:顔・肩・腕・体幹・足首
転倒・つまずき 転倒:__回/月 / つまずき:__回/月 / 多い場所:______
疲労・痛み 疲労平均:__/10 / 翌日に残る:あり・なし / 痛みの場所:______
試したこと 靴・装具・手すり・照明・運動変更・休憩・職場/学校配慮:______
効果 改善した / 変わらない / 悪化した / 内容:______
呼吸・心臓サイン 朝の頭痛・眠気・横になると苦しい・動悸・前失神・失神・胸部不快:______
相談したいこと 検査・装具・リハ・運動・呼吸・心臓・制度・学校/仕事・その他:______

月1まとめは、医療者に「何が変わったか」を短く伝えるためのものです。 1か月分の記録を全部説明するより、変化と相談事項を絞る方が外来で使いやすくなります。

医療機関・研究で使われる評価との違い

FSHDでは、医療機関や研究で専門的な評価尺度が使われることがあります。 ただし、家庭での記録は、それらを正確に再現することが目的ではありません。

医療機関・研究で使われることがある評価
  • 筋力検査
  • 6分間歩行
  • 肩や上肢機能の評価
  • FSHD-COMなどの疾患特異的評価
  • 患者報告アウトカム
  • 筋MRIや画像評価
家庭記録で優先すること
  • 転倒・つまずきが増えたか
  • 左右差が変わったか
  • 歩行や階段が危なくなったか
  • 肩・腰・足首の痛みが増えたか
  • 疲労が翌日に残るか
  • 呼吸・心臓サインが出ていないか

専門的な評価は医療機関で行うものです。 家庭では、日常生活での変化を同じ形式で残し、外来で検査やリハビリの判断につなげることを優先します。

参考文献・参考情報