三好型ミオパチーの治験・DYSF研究【2026年9月】|SRP-6004終了後とKNA-155・新規治療研究

三好型ミオパチーの治験・DYSF研究【2026年9月】|SRP-6004終了後とKNA-155・新規治療研究

三好型ミオパチーは、DYSF遺伝子に関連するdysferlinopathyの一つです。同じDYSF遺伝子異常でも、三好型ミオパチー、LGMDR2(旧LGMD2B)、前脛骨筋優位型、無症候性高CK血症など異なる表現型をとることがあります。

そのため、治験や新しい治療研究を調べる時は「三好型ミオパチー」だけではなく、Dysferlinopathy、DYSF、LGMDR2、LGMD2Bまで含めて確認する必要があります。

2026年9月時点では、dysferlinopathyに対して承認された疾患修飾治療はありません。一方で、終了した遺伝子治療試験から得られた経験、新しいdual-AAV遺伝子治療、RNAスプライシング修正、自然歴研究、患者登録など、次の治験につながる研究が続いています。

このページでは、単なる「治験の探し方」ではなく、2026年9月3日時点でDYSF関連研究がどこまで進んでいるのかを、ヒト治験、前臨床研究、自然歴研究、患者登録に分けて整理します。

三好型ミオパチーを含むdysferlinopathyでは、2026年9月時点でも承認された疾患修飾治療はありません。

一方、「治療研究がない」という状態でもありません。重要なのは、人に投与されている治験なのか、前臨床研究なのか、自然歴研究なのかを区別することです。

研究・プログラム 種類 2026年9月時点
SRP-6004 / NAVIGENE dual-AAV遺伝子治療 ヒトPhase 1まで進みましたが、試験はTerminated。現在募集していません。
KNA-155 dual-AAV遺伝子治療 IND-enabling前臨床開発段階。まだヒト試験ではありません。
PPMO / pseudoexon skipping RNAスプライシング修正 特定の深部イントロン変異を対象とした前臨床研究。2026年に新しい研究成果が報告されています。
COS2 自然歴・アウトカム研究 募集完了。治療薬を投与する治験ではありません。
Dysferlin Registry 患者登録 現在も運用中。将来の研究・治験募集を支える基盤です。

「DYSFの遺伝子治療研究がある」ことと、「現在参加できる遺伝子治療治験がある」ことは同じではありません。 研究段階を必ず確認してください。

DYSF遺伝子は非常に大きく、通常のAAVベクター1本にそのまま収めることが難しいことが、遺伝子治療開発上の大きな課題です。

SRP-6004では、DYSFを複数のベクターに分けて導入するdual-vector型のアプローチが採用されました。

NAVIGENE試験の現在地

ClinicalTrials.gov ID NCT05906251
対象 DYSF関連LGMDR2/旧LGMD2Bの歩行可能者
Phase Phase 1
実登録数 2名
試験終了 2025年6月13日
現在のStatus Terminated
終了理由 ClinicalTrials.gov上ではbusiness decisionとされています。
結果 ClinicalTrials.govには試験結果が掲載されていません。

現在参加できる治験ではありません。 古い記事や検索結果にNAVIGENEやSRP-6004が出てきても、現在の募集状況と混同しないでください。

終了したこと自体にも研究上の意味がある

この試験が終了したからといって、DYSFに対する遺伝子治療という考え方自体が否定されたわけではありません。

DYSFのような大きな遺伝子をどう届けるか、必要な筋肉へどう分布させるか、安全性をどう確保するかという課題は、その後のKNA-155など新しい開発にもつながっています。

KNA-155はKinea Bioが開発するdysferlinopathy向けの遺伝子治療候補です。

DYSF遺伝子がAAV1本には収まりにくいという問題に対し、複数のAAVから作られたタンパク質断片を細胞内で結合させ、より完全なdysferlinタンパク質を作ることを目指しています。

対象

DYSF関連dysferlinopathy。三好型ミオパチーやLGMDR2などが含まれる疾患群です。

方式

dual-AAVを用いて大きなDYSF遺伝子由来タンパク質の再構成を狙います。

ベクター

筋肉への送達を目的とした次世代myotropic AAV capsidを用いる開発です。

現在地

2026年9月時点ではIND-enabling前臨床段階です。

KNA-155はまだヒト治験ではありません。 「遺伝子治療候補が開発中」と「患者が投与を受けられるPhase 1が始まっている」は明確に分けて考えます。

Jain Foundationは2025年、KNA-155のdose-findingやGLP毒性試験などIND-enabling研究を進めるためKinea Bioへの支援を発表しています。

DYSF関連疾患では、遺伝子全体を補うアプローチだけでなく、特定の変異によって生じたRNAスプライシング異常を修正する研究も進んでいます。

2026年にJCI Insightで報告された研究では、DYSFの深部イントロン変異によって本来含まれないpseudoexonがRNAに取り込まれるタイプを対象に、antisense oligonucleotideやPPMOを使って異常なスプライシングを抑える方法が検討されました。

研究段階 確認されたこと
患者由来筋細胞 異常なpseudoexon inclusionを抑え、正常なDYSF RNA・dysferlinタンパク質発現を回復させる方向の結果が得られています。
マウスモデル スプライシング修正、dysferlin発現、膜修復機能、筋病理・機能の改善が報告されています。
ヒト治験 この研究は前臨床段階であり、一般患者へ投与する治療として確立したものではありません。

すべてのDYSF変異が対象になる治療ではありません。 この研究は特定の深部イントロン変異によってpseudoexonが作られる患者を想定した、変異特異的なアプローチです。

DYSF遺伝子は患者によって変異部位が大きく異なるため、将来こうした治療が臨床段階へ進んだ場合にも、遺伝子検査レポートの正確なvariant表記が重要になります。

DYSF関連疾患では、治療候補そのものだけではなく、病気が治療なしでどの速度で変化するのかを正確に知ることが重要です。

その役割を担ってきた代表的研究が、Jain Foundationが支援するClinical Outcome Study for DysferlinopathyとCOS2です。

COS2は薬や遺伝子治療を投与する治療試験ではありません。 将来の治験で「治療効果があったか」を判断するための自然歴と評価指標を作る研究です。

2026年時点の状況

  • COS2は200名の参加目標に到達しています。
  • 新規募集は終了しています。
  • 歩行可能者・非歩行者を含むdysferlinopathy患者を長期評価してきました。
  • 筋力・機能評価、MRI、血液検査、患者報告アウトカムなどが研究されています。

なぜ自然歴研究が重要なのか

進行速度を知る

治療をしていない場合にどれくらい変化するかを把握します。

評価項目を決める

6分間歩行、筋力、NSAD、MRIなど、どの指標が変化を捉えやすいかを検討します。

必要な治験期間を決める

6か月・1年など、どの期間で治療効果を検出できるかを検討します。

非歩行者も評価する

歩行だけでは評価できない段階の患者にも使える指標を整備します。

Dysferlin RegistryはJain Foundationが運営する、遺伝学的にdysferlinopathyが確認された人を中心とした国際患者登録です。

Jain Foundationは現在、1,300人を超える遺伝学的確定例が登録されているとしています。

研究対象者を把握する

希少疾患では、どこの国に何人の対象者がいるのかを把握すること自体が治験準備になります。

研究情報を届ける

DYSF関連の研究・調査・治験情報を対象患者へ届ける基盤になります。

治験募集を支える

条件に合う患者へ研究募集情報を届ける際の基盤になります。

自然歴を理解する

患者アンケートなどを通して疾患経過の把握にも利用されています。

患者登録=治験参加ではありません。 登録していても個々の治験には年齢、歩行状態、変異、呼吸、心臓、既往治療など別の適格条件があります。

STEP 1 DYSF遺伝子検査結果を確認する

治験・研究情報を探す前に、DYSF遺伝子の両アレルに病的または病的可能性の高いvariantが確認されているかを整理します。

STEP 2 病名の表記を広げる

検索語 意味
Dysferlinopathy DYSF関連疾患全体。最も重要な検索語の一つです。
DYSF 原因遺伝子名。遺伝子治療・RNA治療・基礎研究で重要です。
Miyoshi myopathy 三好型ミオパチーの代表的英語表記。
LGMDR2 DYSF関連の肢帯型表現型の現在の分類名。
LGMD2B 旧分類名。過去の治験や論文では今も頻繁に使われます。

STEP 3 研究の種類を確認する

  • Interventional:治療や介入を行う研究か
  • Observational:自然歴・患者観察研究か
  • Registry:患者登録か
  • Preclinical:細胞・動物段階か

STEP 4 Statusを見る

  • Recruiting
  • Not yet recruiting
  • Active, not recruiting
  • Completed
  • Terminated
  • Withdrawn

タイトルだけではなく、ClinicalTrials.govなどでこのStatusを必ず確認します。

STEP 5 更新日を見る

希少疾患では古い治験ページが検索上位に残りやすいため、Last Update Postedや情報更新日を確認します。

SRP-6004は「DYSF gene therapy」と検索すると現在も見つかりますが、ClinicalTrials.govの現在のStatusはTerminatedです。検索結果に存在することと参加可能であることは別です。

治験が始まってから過去の情報を集めるより、診療の中で継続的に記録しておく方が確認しやすくなります。

項目 保存する情報
DYSF遺伝子 variant表記、病原性判定、両アレルの結果、検査日、検査会社・医療機関。
診断 三好型ミオパチー、dysferlinopathy、LGMDR2など診断名の推移。
発症時期 つま先立ち、走行、階段、CK高値など最初の変化。
歩行 歩行可能か、歩行距離、階段、転倒、杖・装具・車いす。
機能評価 6分間歩行、NSADなど医療機関で行った評価があれば保存。
呼吸 FVC、夜間換気、NIV/NPPV使用の有無。
心臓 心電図、心エコー、症状、異常所見。
CK・採血 CK推移、肝機能として誤認されやすいAST/ALTなども含め保存。
治療歴 薬剤、手術、装具、リハビリ、過去の研究参加歴。

特にDYSF遺伝子検査レポートの原本は保存してください。将来、変異特異的な治療研究が増えた場合、「三好型」という診断名だけでなく正確なvariant情報が重要になる可能性があります。

よくある質問

三好型ミオパチーに承認された根本治療はありますか?

2026年9月時点では、dysferlinopathyに対して承認された疾患修飾治療はありません。遺伝子治療、RNAスプライシング修正、薬剤探索など複数の研究が進められています。

SRP-6004の治験は現在も参加できますか?

参加できません。NCT05906251はTerminatedとなっており、現在募集していません。実際にヒト投与まで進んだ研究として重要ですが、現在進行中の治験ではありません。

KNA-155はもう患者に投与されていますか?

2026年9月時点ではヒト投与を行う臨床試験ではなく、IND-enabling前臨床開発段階です。

2026年に報告されたRNA治療は誰でも対象になりますか?

いいえ。報告されたpseudoexon skipping研究は、特定のDYSF深部イントロン変異によって異常なスプライシングが起こるケースを対象とした前臨床研究です。すべてのDYSF変異を対象とするものではありません。

COS2に参加すれば治療を受けられますか?

COS2は治療試験ではありません。dysferlinopathyの自然歴や将来の治験で使用する評価方法を研究する臨床研究です。また、現在は募集目標に到達しています。

Dysferlin Registryに登録すると治験参加が保証されますか?

保証されません。患者登録は研究・治験募集を支える重要な基盤ですが、実際の治験参加には各試験の適格条件があります。

三好型ミオパチーの治験はどの名前で探せばよいですか?

Miyoshi myopathyだけでなく、Dysferlinopathy、DYSF、LGMDR2、LGMD2Bなどでも検索してください。同じDYSF関連疾患が異なる表現型・分類名で登録されることがあります。

まとめ

  • 三好型ミオパチーはDYSF関連dysferlinopathyの一つとして治験情報を探す。
  • 2026年9月時点で承認された疾患修飾治療はない。
  • SRP-6004 / NAVIGENEはヒト投与まで進んだが、現在はTerminated。
  • KNA-155は新しいdual-AAV遺伝子治療候補だが、まだIND-enabling前臨床段階。
  • 2026年には特定のDYSFスプライシング変異を標的とするPPMO研究が報告されたが、前臨床かつ変異特異的。
  • COS2は治療試験ではなく、将来の治験を成立させるための自然歴・アウトカム研究。
  • Dysferlin Registryは将来の研究・治験募集を支える患者登録として現在も運用されている。
  • 将来に備え、DYSF遺伝子検査のvariant表記、歩行、呼吸、心臓、機能評価を保存しておく。

DYSF関連疾患の治療研究は、過去の遺伝子治療試験が終了した一方で、新しいベクター技術や変異特異的RNA治療など別の方向へ展開しています。

「昔の治験が終了した」という情報だけでも、「新しい治療候補がある」という情報だけでも全体像は分かりません。研究段階、対象変異、ヒト投与の有無、現在の募集状況を分けて確認することが重要です。

参考文献・一次情報
  • ClinicalTrials.gov:NCT05906251 ― SRP-6004 / NAVIGENE
  • ClinicalTrials.gov:NCT01676077 ― Clinical Outcome Study for Dysferlinopathy
  • Jain Foundation:Clinical Trials, Studies and Surveys
  • Jain Foundation:COS2
  • Jain Foundation:Dysferlin Registry
  • Jain Foundation:Kinea Bio / KNA-155 development program
  • Kinea Bio:Dysferlinopathy pipeline / SIMPLI-GT
  • Gooding JE et al. JCI Insight. 2026;11:e204742. Peptide-phosphorodiamidate morpholino oligomer therapy for dysferlinopathy induces pseudoexon skipping and restoration of functional protein.
  • GeneReviews:Dysferlinopathy
  • NCBI Gene:DYSF
注意事項
  • 本ページは一般的な医学・研究情報の提供を目的としており、特定の治験参加や未承認治療を推奨するものではありません。
  • 治験の募集状況、研究段階、実施施設、適格条件は変更されるため、実際の情報はClinicalTrials.gov、研究施設、主治医などで最新状況を確認してください。
  • 企業による前臨床結果や研究発表は、ヒトでの安全性・有効性や将来の承認を保証するものではありません。
  • 細胞・動物研究で改善が確認されても、その結果をそのまま患者への治療効果とみなすことはできません。
  • Dysferlin Registryへの登録は治験参加を保証するものではありません。
  • 現在受けている医学的管理、リハビリ、呼吸管理、薬剤などを、将来の治験への期待を理由に自己判断で中止しないでください。