眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)/評価と記録
食べ方と暮らしの変化を、
受診につながる記録にする
OPMDでは、飲み込みにくさやまぶたの下がりに加え、食事の負担、体重、立ち上がりや歩行の変化を確認します。診察で伝えたいのは、「前よりどう変わり、何に困るようになったか」です。
このページでは、週ごとの短い記録、食事で変化があった日のメモ、受診前にまとめる1枚を用意しています。ご本人が書きにくい場合は、家族の代筆やスマートフォンのメモでも使えます。
資料確認:2026年10月23日
食べられない・飲めない、発熱や息苦しさがあるときは、記録より先に医療機関へ相談してください。息ができない・声が出ない窒息や、意識の異常がある場合は119です。詳しくは受診を早めたい変化にまとめています。
このページの目次を開く・閉じる
週ごとの記録:体重・食事・生活の変化を残す
まずは、週1回を目安に普段の様子をまとめ、変化があった日は追加で記録する形から始めます。記録の頻度は、主治医からの指示と、続けやすさに合わせて調整してください。
以下は、受診相談のための家庭用の記入例です。OPMDの重症度を判定する検査票ではありません。医療機関での定期評価と組み合わせて使います。
比較しやすくするために決めておくこと
- 体重:できるだけ同じ体重計・同じ時間帯・似た服装で測る。測定日も残す。
- 食事時間:朝食・夕食など、記録する食事を決める。食べ始めから終わりまでとし、休憩を含めたかもそろえる。
- 食べた量:完食、約4分の3、約半分など、用意した量に対してどのくらい食べたかを残す。用意する量が変わった場合も書く。
- 食べ方:やわらかさ、とろみ、姿勢、介助、栄養補助などを変えたら、その内容と日付を残す。
- 体調:風邪、発熱、睡眠不足、歯や入れ歯の不具合、服薬の変更などがあれば添える。
立って体重を測ることが危ない場合は、無理に体重計に乗らず、医療機関で安全に測る方法を相談してください。
コピーして使う週ごとの記録
- 記録日・体調
- __年__月__日 普段と違う体調や出来事:____
- 体重
- __kg 測定条件:____ 前回の測定日と体重:__月__日・__kg
- 食事時間・量
- 朝・昼・夕の食事:__分 休憩を含む・含まない 食べた量:全部・約4分の3・約半分・それ以下
- 食形態・介助
- 普段の食品や飲み物の形状:____ とろみ・栄養補助・姿勢・介助の変更:____
- 飲み込み・かむ力
- 困る食品や飲み物:____ のどに残る感じ:____ 食事後半の疲れ:____
- むせ・声・痰
- どの場面でむせたか:____ 食後の声・咳・痰の変化:____
- 発熱・肺炎・呼吸
- いつ、何があったか:____ 受診や治療の内容:____
- まぶた・動作
- 見えにくさ、立ち上がり、歩行、転倒・ヒヤリ、介助の変化:____
- 今回の変化
- 楽になったこと:____ 困るようになったこと:____ 相談したいこと:____
書けなかった項目は空欄や「不明」で構いません。全部を埋めることより、その人の前回と比べられる情報を残すことを優先します。
食事で変化があった日は、食品・量・場面を残します
「むせが増えた」だけでなく、何を口にしたときか、食事の前半か後半か、休憩や介助が必要だったかを残すと、嚥下・栄養の相談に使いやすくなります。食べ物がのどに残る感じ、かみにくさ、話しにくさもOPMDで確認したい変化です。[2]
普段の食事で起きたことを記録してください。記録のために、むせやすい飲み物や食品を試したり、水を一気に飲むテストを行ったりする必要はありません。
- 日時・食事
- __月__日 朝・昼・夕・間食 食事時間:__分
- 食品・飲み物
- 何を、どのくらい用意したか:____ やわらかさ・とろみ・温度など:____
- 実際に取れた量
- 食べた量:____ 飲めた量が分かれば:____ 残した理由:____
- 困った場面
- 飲み込む前・飲み込むとき・食後/食事の前半・後半/かむことに疲れる・のどに残る・むせる:____
- 食後の変化
- ガラガラ・ゴロゴロした声、咳、痰、胸の違和感、疲労など:____
- 対応とその後
- 食事を中断した、休憩した、介助を受けた、医療機関に連絡したなど:____ その後どうなったか:____
記入例:短い文章でも伝わります
記入例
夕食の肉がのどに残る感じがあった。後半はかむことに疲れ、普段と同じ量を用意したが半分残した。食後に声がガラガラした。食事を中断し、嚥下外来への相談について主治医に連絡した。
必要な日だけ詳しく残し、相談時に見せます。食事や水分が取れないなどの変化がある場合は、数日分をそろえてから連絡する必要はありません。
食形態、とろみ、栄養補助や検査については、OPMDの嚥下・栄養ページにまとめています。
体重・食事時間・むせは、条件と一緒に比べます
数字が変わったときは、身体の状態と、食べ方・生活条件の両方を確認します。短い時間で食べられるようになったこと、食事が楽になったことも、生活上の大切な変化です。その意味を読み違えないよう、食べた量や必要な介助を一緒に残します。
| 見えた変化 | 一緒に確認すること | 相談につながる見方 |
|---|---|---|
| 体重が減った | いつから何kg変わったか。食事量・水分・体調・測定条件も変わったか。 | 1回の差だけで進行と決めず、意図しない減少が続く場合や食事量が落ちた場合は、栄養・嚥下を相談します。 |
| 食事時間が短くなった | 食品、用意した量、食べた量、介助、休憩、食形態が同じか。 | 同じ量を楽に食べられたのか、食べる量が減ったのかで意味が変わります。 |
| むせが少なくなった | 水分や食事を避けていないか、食形態を変えたか。のどに残る感じ、食後の声や痰はどうか。 | 食べやすくなった点を残しつつ、嚥下の安全性は必要な検査で確認します。 |
| 歩きやすくなった・動作が速くなった | 補助具、手すり、介助、移動距離、疲労や体調が変わったか。 | 生活が楽になった変化と、筋力やバランスの変化を合わせて評価します。 |
例えば、同じ量の食事を40分から30分で食べられた場合と、食べる量が半分になって20分で終わった場合では、相談する内容が異なります。安全上必要な食形態や介助の変更を優先し、何を変えたかも記録して比較してください。
むせがないことだけでは、誤嚥がないとは判断できません
OPMDを対象とした嚥下造影の研究では、むせを伴わずに飲み物が気道へ入る「不顕性誤嚥」も観察されています。むせの記録だけでなく、食後の声・痰、食事量、体重、肺炎歴を合わせて医療者に伝えてください。[2]
取り組みの前後を比べるとき
服薬、栄養補助、食形態、リハビリ、手術、生活上の工夫などを始めた日・変えた日を残します。同時期に変えたことが複数あれば、それぞれ書いておきます。
家庭の記録は、楽になったことや負担が増えたことを具体化する材料になります。ただし、前後の変化だけで、特定の取り組みが原因だと確定することはできません。本人の実感と、摂取量・体重・機能評価・検査結果を合わせて確認すると、次に続けることや見直すことを相談しやすくなります。
まぶた・立ち上がり・歩行も、普段の生活で確認します
OPMDは、まぶたと飲み込みだけに限られる病気ではありません。筋力や移動の能力も評価の対象です。OPMDの研究でも、筋力・バランス・立ち上がりや室内移動などが調べられています。[3][4]
| 場面 | 記録する変化 |
|---|---|
| まぶた・見え方 | 上が見えにくい、左右差がある、首を反らす、額に力を入れる、目が乾く。読書・外出など何に困るかも残します。 |
| 立ち上がり | 普段の椅子から立つとき、手を使うようになった、座面の高さを変えた、介助が必要になった。 |
| 歩行・段差 | 同じ移動で休む回数が増えた、手すり・杖・歩行器を使うようになった、段差や階段で困る。 |
| 転倒・ヒヤリ | いつ、どこで、何をしていたときか。見えにくさ、足のもつれ、ふらつき、疲労など、そのときの状況。 |
| 疲労・生活への影響 | 料理・買い物・入浴・仕事など、続けにくくなったこと。休憩や介助で楽になったこと。 |
記録のために、支えを外して立ったり、速く階段を上ったりする必要はありません。普段使っている補助具や介助を含めた生活の状態を残します。
見えにくさはOPMDの眼瞼下垂ページ、歩行・上肢・疲労などの詳しい記録は筋ジストロフィー共通の評価・記録も参照してください。
家庭の記録を、医療機関での評価につなげます
家庭では普段の困りごとを残し、医療機関では、診察や検査を通して機能と安全性を確認します。GeneReviewsでも、OPMDの継続評価として、嚥下・栄養、眼、移動や日常生活、呼吸機能などの確認が示されています。[1]
| 家庭から伝えること | 医療機関で相談する評価 |
|---|---|
| のどに残る、むせる、食後に声が変わる | 嚥下造影(VF/VFSS)、嚥下内視鏡(VE/FEES)など。飲食物の残り方や気道への入り込みを確認し、食べ方の調整につなげます。 |
| かみにくい、舌が動かしにくい、話しにくい | 口や舌の動き、舌圧、咀嚼、発話などの評価。症状と目的に応じて検査を選びます。[2] |
| 体重が減る、食事を残す、食事に疲れる | 食事内容と摂取量、栄養状態、水分摂取、栄養補助の必要性。主治医・管理栄養士・嚥下チームに相談します。 |
| まぶたが下がり、見え方や姿勢に影響する | 眼科で、まぶた・視野・目の乾きなどを評価。手術歴がある場合はその内容と、その後の変化も伝えます。 |
| 立ち上がり・歩行・段差が難しい | 筋力、バランス、移動動作、補助具・生活環境などの評価。必要に応じて理学療法士・作業療法士と相談します。[3][4] |
| 肺炎を繰り返す、息苦しい、睡眠中の呼吸が気になる | 呼吸器の診察や呼吸機能、必要に応じた睡眠中の呼吸評価。嚥下の状態と合わせて相談します。 |
再評価の間隔は、現在の症状、これまでの検査、治療内容に応じて主治医と決めます。次回予定日があっても、新しい症状や明らかな悪化があれば連絡してください。
OPMDの経過を調べた研究では、約20か月を隔てて複数の機能を測定しています。ゆっくりした経過の評価には継続した比較が必要ですが、急な飲み込みの悪化や感染を、その長期評価まで待つという意味ではありません。[3]
診断やPABPN1検査の結果について相談したい場合は、OPMDの診断・検査ページで、持参する資料を確認できます。
受診を早めたい変化
記録は、必要な相談につなげるために使います。次のような変化がある場合は、記録を完成させる前に医療機関へ連絡してください。
- 119を要請する状態
- 食べ物が詰まって息ができない・声が出ない、意識がおかしい、反応がないなど。通報時は呼吸や意識の状態を伝え、通信指令員の指示に従ってください。[5]
- 早急に連絡する変化
- 急に飲み込みが悪くなった、食事や水分がほとんど取れない、窒息しかけた、発熱・痰・息苦しさがある、尿が明らかに少ないなど。強い呼吸困難など緊急性が高い場合は119です。
- 予定より早い相談
- 食事時間が延びて食べ切れない、意図しない体重減少が続く、食後の声や痰の変化を繰り返す、転倒やヒヤリが増えた、見えにくさで生活に支障が出たなど。
「何kg減るまで」「何回むせるまで」と、ひとつの数字に達するのを待つ必要はありません。いつもの状態からの変化と、食事・水分・呼吸・生活への影響を伝えて相談してください。
受診前にまとめる1枚
前回の受診からの変化をまとめます。細かい記録や検査報告書は、必要なときに見せられるよう添えてください。
- 今回いちばんの相談
- ____________
- 比較する期間
- __月__日〜__月__日 いつから変化したか:____
- 体重と摂取量
- 現在__kg 前回__月__日:__kg 食事量・水分・栄養補助の変化:____
- 食事時間と食べ方
- 以前__分→現在__分 食品・量・食形態・介助の変更:____ 後半の疲れや食べ残し:____
- 飲み込み・声・痰
- 困る食品や飲み物:____ のどに残る感じ、むせる場面、食後の声・咳・痰:____
- 発熱・肺炎・呼吸
- いつ、何があったか:____ 受診・治療・入院:____
- まぶた・移動
- 見えにくさ、立ち上がり、歩行、転倒・ヒヤリ:____ 補助具や介助の変化:____
- 新しく始めたこと
- 服薬・食形態・栄養補助・リハビリ・手術・生活上の工夫など、内容と日付:____
- 楽になったこと
- ____________
- 確認したいこと
- 嚥下検査/食形態・とろみ/栄養/眼科/歩行・補助具/呼吸/再評価の間隔/その他:____
相談の例は、「食事時間が延び、同じ量を食べ切れなくなりました。嚥下と栄養を再評価した方がよいですか」のように、変化と希望する相談をセットにすると伝わりやすくなります。
よくある質問
毎日、全部の項目を書く必要がありますか?
主治医から個別の指示がなければ、まずは週ごとの概要と、変化があった日の短いメモから始めて構いません。食事や栄養の詳しい記録が必要な場合は、医療者と項目・期間を決めます。記録の負担で食事や休息が妨げられない形にしてください。
食事時間は何分以上なら問題ですか?
一律の分数だけでは判断できません。食品や量、介助、休憩の有無で変わります。以前より長くかかる、後半に疲れて残す、水分や栄養が十分に取れないなどの変化がある場合は、時間の記録と一緒に相談してください。
むせなくなったら、嚥下の検査は不要ですか?
むせが減ったことだけでは決められません。OPMDでは、むせを伴わない誤嚥も報告されています。食事量・食形態・体重・食後の声や痰・肺炎歴と、これまでの検査結果を合わせ、再評価の必要性を主治医と相談します。[2]
家族の気づきと本人の実感が違う場合は、どう記録しますか?
両方を分けて残します。例えば「本人:食べにくさは同じ」「家族:食事後半の休憩と食べ残しが増えた」と書きます。どちらかを消して一つの評価にせず、診察や検査で確認する材料にしてください。
参考資料
- Trollet C, et al. Oculopharyngeal Muscular Dystrophy. GeneReviews®. 嚥下・栄養、眼、移動・日常生活、呼吸機能などの継続評価を参照。
- Kroon RHMJM, et al. Swallowing, Chewing and Speaking: Frequently Impaired in Oculopharyngeal Muscular Dystrophy. J Neuromuscul Dis. 2020;7:483–494. 自覚症状、口腔機能、嚥下造影を調べた研究。
- Kroon RHMJM, et al. Longitudinal Assessment of Strength, Functional Capacity, Oropharyngeal Function, and Quality of Life in Oculopharyngeal Muscular Dystrophy. Neurology. 2021. 約20か月を隔てて筋力・運動機能・口咽頭機能などを測定した研究。
- Bélair N, et al. Muscle Strength, Balance, and Indoor Mobility in Oculopharyngeal Muscular Dystrophy: An Exploratory Canadian Multicenter Study. Muscle Nerve. 2026;74:656–668. 筋力、バランス、室内移動との関連を調べた研究。
- 総務省消防庁.救急車利用マニュアル.救急要請を考える症状と119番通報の案内。
本ページの記録欄は、生活の変化を医療者に伝えるための記入例です。診断や重症度の判定、嚥下の安全性、治療効果は、診察と必要な検査を合わせて確認してください。
