筋ジストロフィーで緊急時カードを作るとき|最低限入れたい項目

筋ジストロフィーの救急受診・入院に備える

救急車を呼んだとき、本人が息苦しくて話せないとき、初めての病院で処置を受けるとき。病名に加えて、普段使っている呼吸器、心臓の病気、薬、意思表示の方法がすぐに伝わると、医療者が状態を判断する助けになります。

緊急時カードには、本人の情報と優先して伝える注意点を記入します。詳しい機器設定や検査結果は別紙に残し、カードから所在がわかるようにしておきましょう。下に、コピーして記入できるカードと詳細メモを用意しています。

緊急時は、カードを探すより119番通報を優先してください。

強い呼吸苦、反応の低下、窒息などがある場合は、書類や主治医への連絡がそろうまで待たずに救急要請します。カードは、救急対応と並行して本人・家族の情報を伝えるために使います。

医学情報の確認日:2026年9月12日。病型と本人の状態に合わせ、医療上の注意事項は主治医と確認して記入してください。

コピーして使える緊急時カード

以下は記入用のひな形です。印刷用紙の寸法を指定したものではありません。財布に入る大きさにする場合も、文字を小さくして詰め込まず、必要な項目を選んでください。わからない項目は「不明」「未確認」と書き、症状がないことと検査していないことを区別します。

表面:本人情報と優先して伝えること

【筋ジストロフィー 緊急時カード】
氏名・ふりがな:
生年月日:
病名・病型:(未確定ならその旨を記入)

【優先して伝えること】
呼吸器・気管切開:
心臓・不整脈・植込み機器:
重要な薬剤注意/アレルギー:
ステロイド服用:(あり・なし・不明)
具体的な注意:

【連絡先】
通院先・診療科:
電話:(代表/時間外の別も記入)
家族・支援者(氏名・続柄):
電話:

【意思表示】
普段の会話:
「はい」の伝え方:
「いいえ」の伝え方:

更新日:
医療上の注意事項の確認日・確認先:
詳細資料の保管場所:

裏面:処置や移動に必要な情報

【呼吸】
NIV/NPPV:(未使用・夜間・日中も使用)
人工呼吸器/気管切開:
咳介助・吸引:
低換気・CO2貯留の指摘:
呼吸が楽な姿勢:
機器設定の記録場所:

【心臓・薬】
心臓の診断・ペースメーカー/ICD:
重要な服薬:
薬の詳細:お薬手帳/別紙(保管場所: )

【食事・介助】
嚥下・経管栄養:
移乗方法:
拘縮・骨折歴・避けたい動作:

【個別に確認した注意事項】
麻酔・鎮静:
過去の重い副作用・麻酔トラブル:
体調不良時の薬の指示書:

更新日:

すべての病型の注意文を貼り付けるのではなく、本人に該当する情報を書きます。「心臓に注意」だけよりも「心伝導障害あり・ペースメーカー使用」のように具体的に書く方が伝わります。機器名や薬剤名は、手帳・処方箋・設定表を見ながら転記してください。

病院に渡す詳しいメモ

携帯カードに収まらない情報は、別紙や端末内の文書にまとめます。1枚に収まらなければ、読みやすい文字サイズで複数枚にして構いません。薬の一覧や機器設定表を別に添付すれば、重複して書く負担も減らせます。

【救急受診・入院時の情報】
氏名/生年月日:
病名・病型/診断の確かさ:
記入日/医療者による確認日:

■ 通院先
脳神経内科・小児神経科:
呼吸の担当:
循環器の担当:
在宅医・訪問看護:
時間外の連絡先:

■ 呼吸
呼吸器の機種:
使用時間帯・マスク:
処方された設定表:(添付・保管場所)
酸素の処方:(あり・なし・不明)
処方流量・使用条件:(指示がある場合のみ)
気管切開カニューレの種類・サイズ:
吸引・機械的咳介助:
普段のSpO2と測定条件:
VC/FVC:(単位・予測値に対する%・測定日)
PCF:(L/min・測定日)
CO2貯留・夜間低換気の指摘:
仰向けなど苦しい姿勢:

■ 心臓
心筋症・心不全・不整脈・心伝導障害:
失神歴:
心エコーのLVEF:(%・検査日)
ペースメーカー/ICDなど:
デバイス手帳の保管場所:
治療施設:

■ 薬・アレルギー
お薬手帳/最新処方一覧:(添付)
ステロイドの薬名・1回量・服用日程:
最終服用時刻:
最近の減量・中止歴:
体調不良時・手術時の指示:(指示書を添付)
抗凝固薬・抗てんかん薬など:
アレルギー:(薬名/起きた症状)
過去の重い副作用:
治験薬・遺伝子治療などの治療歴と担当施設:(該当時)

■ 麻酔・処置
確認済みの薬剤注意:
過去の麻酔・鎮静後の問題:
術後の呼吸補助・観察についての指示:

■ 嚥下・栄養・介助
普段の食形態・とろみ:
むせ・誤嚥性肺炎歴:
胃ろう・経管栄養:
薬の飲ませ方:
移乗方法・必要人数・リフト:
拘縮・痛み・骨折歴:
楽な姿勢・座位保持具:

■ 本人との意思疎通
普段の会話・理解:
はい/いいえの方法:
文字盤・入力装置:
返答を待つ時間や説明方法の配慮:

■ 本人の希望について相談した記録
文書の有無・保管場所・作成日:
相談した医療機関・担当者:
本人が意思を伝えられないときに相談する人:

■ 今回の変化(受診時に追記)
いつから:
普段と違う症状:
発熱・呼吸・痰・意識・痛み:
食事・水分・薬を摂れたか:
転倒・打撲・骨折の可能性:
実施した対応と時刻:

測定していない肺活量や心機能を、カード作成のためだけに自分で推定する必要はありません。直近の検査票があれば、そのまま添付できます。

優先して書く情報

医療者が知りたいのは、病名だけでなく「この方の普段の状態」と「今回変わったこと」です。詳しい病歴は別紙で伝え、携帯カードには、処置の前に知っておいてほしい情報を選びます。

項目記入の要点
病名・病型正式名を基本に、DMD・DM1などの略語を併記。未確定なら「病型確認中」。
呼吸・心臓使っている機器、診断されている病気、既往、担当医。
薬・アレルギー緊急処置に関係する薬、ステロイド、重いアレルギー。薬剤名と反応を記入。
意思表示・介助返答の方法、移乗方法、苦しい姿勢や痛む動作。
連絡先・更新日通院先、家族・支援者、情報がいつのものか。

受診先で確認していない病気を「なし」と記入しないようにします。「心臓の症状なし・検査は未確認」と「心臓検査で異常なし」は異なる情報です。血液型はこのカードの必須項目にせず、限られた面積は現在の治療と注意事項に使えます。

病型ごとの注意点

同じ筋ジストロフィーでも、呼吸・心臓・嚥下・麻酔に関わる特徴は異なります。以下は記入内容を主治医と相談するための例です。各項目が、その病型の全員にあるわけではありません。

デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー(DMD・BMD)

呼吸補助、心筋症・不整脈、ステロイド服用、骨折歴、麻酔薬の注意を確認します。サクシニルコリンの回避と、揮発性吸入麻酔薬による横紋筋融解などのリスクは、麻酔科へ明確に伝えたい内容です。

筋強直性ジストロフィー(DM1・DM2)

鎮静・鎮痛薬などによる呼吸抑制、処置後の覚醒や呼吸、誤嚥、不整脈・心伝導障害について確認します。普段歩けることや筋力低下が軽いことだけで、麻酔上のリスクが小さいとは判断できません。Myotonic Dystrophy Foundationの医療アラートカードも参考になります。

エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)

心伝導障害・不整脈、失神歴、ペースメーカー・ICDなどを優先して記入します。首・肘・足首などの拘縮も、体位や処置の情報になります。心臓の問題と筋力低下の程度は、必ずしも並行しません。GeneReviewsのEDMD解説で、病型と管理の特徴を確認できます。

肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)

可能なら遺伝子名や病型まで記載します。心臓や呼吸への影響は病型によって異なるため、「LGMDだから心臓は大丈夫」「全員に同じ合併症がある」とは扱わず、実際の診断・検査結果を書きます。

福山型・その他の先天性筋ジストロフィー

呼吸、飲み込み、発作の既往と対応指示、薬、姿勢、普段の意思表示を記入します。てんかんや発達面の特徴がある場合も、病名から一律に推測せず、本人の状態と必要な支援を具体的に書きます。

眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)

飲み込みにくさ、誤嚥歴、食形態、栄養の経路、服薬方法を確認します。眼瞼下垂や発話の状態も、普段からある症状として伝えておくと、今回の変化との比較に役立ちます。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)

肩や体幹の状態、移乗方法、側弯、呼吸機能低下の有無など、本人に該当する情報を記載します。顔の動かしにくさがある場合は、普段の表情や意思表示についても伝えます。

病型を確認中の方は、推測した病名を確定のように書かず、通院先と現在わかっている状態を記載してください。各病型の案内は筋ジストロフィー総合案内から確認できます。

呼吸器・酸素・排痰

酸素の不足と、換気の不足を分けて伝える

呼吸筋が弱くなると、空気の出し入れが足りず、二酸化炭素(CO2)がたまることがあります。これが低換気です。酸素を補ってSpO2の数値が上がっても、換気の不足が解消したとは限りません。SpO2は酸素化の目安であり、CO2を測る数値ではありません。

カードに一律の「酸素禁止」と書くのは避けます。低酸素があれば酸素投与が必要になる場面もありますが、呼吸筋の弱さがある場合には、換気状態・CO2と、換気補助や排痰補助の必要性を医療者が評価します。PPMDの酸素使用に関する案内も、CO2の監視と換気補助を重視しています。

呼吸筋の弱さ・低換気がある方の記入例

「夜間NPPV使用。低換気の指摘あり。酸素投与時はCO2と換気状態を評価し、換気補助・排痰補助の必要性も確認してください。設定表は別紙。」

機器の種類と普段の使い方

NIV/NPPVを夜だけ使うのか、日中にも使うのか、気管切開があるのかを明記します。機種、処方設定、マスクや回路、咳介助・吸引の情報は別紙に記録し、最新の設定表と照合します。CPAPと、呼吸の換気を補助する機器は同じ意味ではないため、わかる機種名・治療名をそのまま記載してください。

呼吸器や充電器、予備電源、普段使うマスクなどは、可能なら同行者が持参します。ただし、準備のために搬送を遅らせないでください。家族は教わっている個別の対応を行い、カードを見て機器設定を自己変更することは避けます。

詳しい評価はDMD・BMDの呼吸・排痰・睡眠も参照できます。

麻酔・鎮静・薬剤

全身麻酔だけでなく、内視鏡、歯科治療、骨折の処置、画像検査などで鎮静を行う場合にも、神経筋疾患があることを事前に伝えます。過去の覚醒遅延、呼吸補助が長く必要だった経験、不整脈、横紋筋融解などがあれば、病院名・時期・わかる薬剤名を残します。

サクシニルコリンと吸入麻酔薬は分けて書く

サクシニルコリン(スキサメトニウム)は脱分極性筋弛緩薬です。ENMCの麻酔に関する合意声明では、神経筋疾患が判明または疑われる患者には、高カリウム血症の危険から使用しないよう勧告しています。単に「注意」とぼかさず、確認した指示を記載します。

DMD・BMDでは揮発性吸入麻酔薬による横紋筋融解なども問題になるため、回避を含めた麻酔計画を麻酔科が検討します。これは「筋ジストロフィーは全員、悪性高熱症の体質」という意味ではありません。DMDの麻酔関連横紋筋融解と悪性高熱症は区別されます。PPMDの麻酔上の注意に説明があります。

DMD・BMDで主治医と確認する記入例

「DMD/BMD。サクシニルコリン(スキサメトニウム)回避。揮発性吸入麻酔薬による横紋筋融解・高カリウム血症リスクについて麻酔科で確認。呼吸・心機能の情報は別紙。」

すべての麻酔薬・鎮痛薬を禁じる文面にはしません。薬の種類、量、監視、術後の呼吸補助を含めて医療者が判断します。事前の確認項目は手術・検査前の麻酔・呼吸のチェックリストをご覧ください。

ステロイドの服用

長期間ステロイドを使うと、体が必要なときに十分な副腎皮質ホルモンを分泌できなくなる場合があります。重い感染、けが、手術、嘔吐で薬を飲めない状況では、補充方法を変える必要が生じます。

カードには「ステロイドあり」だけでなく、薬名、1回量、毎日か間欠的か、最終服用時刻を記入します。最近減量・中止した方も、その時期を伝えてください。体調不良時の追加投与などについて指示を受けていれば、指示書を添付します。

嘔吐などで処方薬を飲めないときは、早めに連絡を

何日も様子を見たり、自己判断で中止・増量したりせず、主治医または救急医療機関に相談します。強い脱力、意識の変化、ぐったりするなどの症状がある場合は救急対応を優先します。

PPMDの副腎クリーゼの案内では、服薬中断と重い身体的ストレスへの対応計画を勧めています。薬や体格によって対応が異なるため、このひな形には一律の追加量を記載していません。

心臓の状態

心筋症、心不全、不整脈、心伝導障害の診断、失神歴、担当の循環器医を記載します。LVEFなどの数値を記入する場合は検査日を添え、数値だけで「安全」と判断しないようにします。

ペースメーカー・ICDなどを使用している方は、機器の種類とデバイス手帳の所在も書きます。心臓薬、利尿薬、抗凝固薬などは最新のお薬手帳・処方一覧を添付してください。

「点滴禁止」「心臓薬は必ず止める」といった一律の指示を書くのではなく、現在の診断と個別の指示を伝えます。急な胸痛、失神、呼吸苦は、普段の筋力低下とは分けて評価が必要です。

嚥下・栄養・服薬方法

水分や薬でむせる、食後に痰が増える、誤嚥性肺炎の既往がある、といった情報を書きます。食形態やとろみは、単に「刻み食」などと書くだけで伝わらない場合があるため、指示書や普段の具体的な状態を添えます。

胃ろう・経管栄養がある方は、その経路と日常の方法を記載します。胃ろうがあっても、唾液や逆流などによる誤嚥の可能性がなくなるわけではありません。鎮静後や意識が低下しているときに、普段どおり飲食できるとも限りません。

薬はすべて粉砕できるわけではありません。「錠剤が飲みにくい」「普段はこの方法で服用」と伝え、変更が必要な場合は医師・薬剤師に確認します。意識が低下した方へ無理に水や薬を飲ませないでください。

移乗・体位・骨折

歩けるかどうかだけでなく、立ち上がりや移乗に必要な介助、リフト・座位保持具、拘縮のある関節、骨折歴、苦しい姿勢を記載します。「肩を引かれると痛む」「仰向けでは息苦しい」など、本人の経験を具体的に伝えてください。

普段の介助人数は参考になりますが、けがや急変があるときは同じ方法が適切とは限りません。骨折が疑われるときは無理に立たせたり歩かせたりせず、救急隊に状況を伝えます。

DMDでは、転倒や打撲後に呼吸苦や意識・行動の変化が起きた場合、まれですが脂肪塞栓症候群も鑑別に入ります。見た目に骨折がわからなくても、急な変化があれば救急要請し、転倒・打撲があったことを伝えてください。PPMDの脂肪塞栓症候群の案内が参考になります。

意思表示と医療についての希望

声が出にくいことと、説明が理解できないことは同じではありません。普段の会話、文字盤・視線入力・指の動きなどの方法を記入し、可能な範囲で本人へ直接話しかけてもらえるようにします。

「はい・いいえは可能」だけでなく、どの動きがどちらを意味するかを書きます。反応に時間がかかる場合は、そのことも伝えます。急に返答が悪くなった場合は、普段の発話困難と決めつけず、今回の症状として扱います。

医療について希望を話し合った文書がある場合は、作成日、保管場所、相談先を記載できます。ただし緊急カードの短い一文だけで、すべての治療方針を決めるものではありません。

DNARは心停止時に心肺蘇生を試みないという指示であり、心停止前の治療を一律に行わない意味ではありません。日本集中治療医学会の勧告でも、他の医療・看護は別に検討するとしています。本人・家族・医療チームで確認した内容を、文書と連絡先で共有してください。

救急隊・受付で伝えること

病名の説明に時間を使いすぎず、今回何が起きているかを先に伝えます。以下の文面は、本人の状態に合わせて使ってください。

筋ジストロフィーの__型です。
__時ごろから、__が起きています。
普段は__ですが、今日は__です。

呼吸器は__を使用しています。
心臓の病気/重要な服薬は__です。
本人の意思表示は__で確認できます。

緊急時カードと薬・機器の資料を持っています。
主治医・家族の連絡先はこちらです。

電話では119番の質問に従い、場所・症状・呼吸や反応の状態を答えます。主治医への連絡は大切ですが、連絡がつくまで救急要請や必要な処置を待つことは避けてください。

保管・共有・更新

紙と端末の両方に残す

財布、車いすのポーチ、呼吸器バッグなど、取り出しやすい場所を決めます。スマートフォンにも保存できますが、電池切れや画面ロックで見られない場合に備え、紙も用意しておくと役立ちます。端末の緊急情報機能を使う場合は、実際にロック中にどこまで表示されるか確かめます。

医療情報を誰でも閲覧できるウェブページへ公開したり、公開リンクだけに頼ったりする必要はありません。家族・介助者・訪問看護・学校・職場には、本人の意向に沿って必要な範囲を共有します。

変わったときに差し替える

  • 薬の開始・変更・中止、ステロイドの減量後。
  • 呼吸器導入・設定変更、気管切開、排痰方法の変更後。
  • 心臓の検査や機器の変更後。
  • 嚥下評価、骨折、移乗方法の変更後。
  • 主治医・電話番号・生活場所が変わったとき。

更新日は本人・家族が記入した日と、医療者に確認した日を分けます。未確認のものを「主治医確認済み」としないでください。古いカードは回収し、共有相手にも最新版を渡します。

外出の準備には筋ジストロフィーの旅行前チェックリスト、定期受診には受診メモのひな形も使えます。

救急要請・受診の目安

119番を優先する症状

  • 強い呼吸苦、唇が青い、窒息して声や有効な咳が出ない。
  • 呼びかけへの反応が乏しい、意識が戻らない、普段と明らかに違う意識の状態。
  • 強い胸痛や、呼吸苦・冷汗などを伴う急な体調悪化。
  • 転倒・打撲後の急な呼吸苦、意識の変化、強い頭部症状。

SpO2が測れない、数値が普段と変わらないという理由だけで、重い症状を様子見しないでください。反応がなく普段どおりの呼吸がない場合は、119番の指示に従って対応します。

主治医・医療機関へ早めに連絡する変化

  • 痰を出せない、発熱や咳が続く、いつもより呼吸器が必要。
  • 新しい朝の頭痛や日中の眠気、仰向けでの息苦しさ。
  • 飲み込みの悪化、むせ、食事・水分が摂れない。
  • 嘔吐などでステロイドや必要な薬を服用できない。
  • 失神後に回復した場合も含め、新しい失神や動悸。
  • 転倒後の痛みや腫れ、骨折の疑い。

症状が強い、急速に悪化する、連絡先につながらず判断に迷う場合は、救急対応へ切り替えます。本人用の急変時指示書がある方は、その内容も医療者に伝えてください。

用語の意味を解説

NIV・NPPV
主にマスクなどを使って、気管に管を入れずに換気を補助する治療。NPPVは陽圧を用いる非侵襲的換気を指します。
低換気・CO2貯留
空気の出し入れが足りず、二酸化炭素を十分に排出できない状態です。
SpO2
指先などで測る、血液の酸素化の目安。二酸化炭素の量はわかりません。
VC・FVC・PCF
VCは肺活量、FVCは努力性肺活量、PCFは咳の最大流量です。単位と測定日を添えて記録します。
機械的咳介助(MI-E)
機器で咳を補助し、痰を出しやすくする方法。カフアシストなどが使われます。
心伝導障害・ICD
心伝導障害は心臓の電気信号の伝わり方の異常。ICDは危険な不整脈に対応する植込み型除細動器です。
横紋筋融解・高カリウム血症
筋細胞が壊れて内容物が血液へ出ることと、血中カリウムが高くなること。重い不整脈や腎障害などに関わります。
拘縮
関節が動く範囲が狭くなった状態。普段動かせる範囲を超えて伸ばさないよう伝えます。

よくある質問

まだ歩ける段階でも作った方がよいですか?

救急受診や鎮静などで病型・薬・連絡先を伝えるために使えます。歩行能力だけでは呼吸・心臓・麻酔上の注意を判断できません。

病型がわからない場合はどう書きますか?

「筋ジストロフィー疑い」「病型確認中」など、実際の説明に沿って記入し、通院先と現在の治療を書きます。

名刺サイズに全部入りません。

重要な情報と連絡先を選び、詳細は別紙にします。文字を読めないほど小さくする必要はありません。

酸素を使わないよう書けばよいですか?

一律の酸素禁止にはしません。低換気や呼吸器使用を伝え、必要な酸素投与とあわせてCO2・換気状態を評価してもらう文面にします。

家族のスマートフォンだけに保存してもよいですか?

家族が不在、電池切れ、画面ロックなどの場合に備え、本人が持つ紙のカードもあると役立ちます。

医師に確認してもらうまで使えませんか?

本人情報、連絡先、処方された薬など確認できる情報から作れます。薬剤回避や機器設定、急変時指示などは主治医に確認し、未確認の部分はその旨を書きます。

参考文献・専門機関の資料

本記事のひな形は医療情報を共有するためのものです。個別の薬剤選択、呼吸器設定、救急処置を指示するものではありません。本人用の注意事項や急変時の対応は、主治医・関係する医療者と確認してください。