筋ジストロフィーで緊急時カードを作るとき|最低限入れたい項目

筋ジストロフィー 緊急時カード 救急受診 麻酔・呼吸・心臓

筋ジストロフィーで緊急時カードを作るとき|最低限入れたい項目

筋ジストロフィーでは、救急搬送、急な発熱、転倒、骨折、呼吸苦、手術や処置の場面で、短時間に大切な情報を伝えなければならないことがあります。 その時に役立つのが、緊急時カードです。 これは病気の説明書ではなく、初めて対応する救急隊や医療者に「先に知ってほしいこと」を短く渡すためのメモです。

病型によって、注意したい点は異なります。 DMD/BMDでは麻酔薬や呼吸・心機能、筋強直性ジストロフィーでは麻酔・鎮静・不整脈・呼吸管理などが特に問題になることがあります。 このページでは、財布やスマートフォンに入れておける短いカード、病院へ渡す詳しいメモ、家族が提示する文面を分けて整理します。

まず大切にしたいこと

  • 緊急時カードは、病歴を詳しく説明するためではなく、救急隊や医療者に「先に知ってほしい注意点」を短く伝えるためのものです。
  • 最低限入れたいのは、病名・病型、主治医・通院先、緊急連絡先、呼吸管理、心臓の状態、麻酔・薬剤の注意点、移乗・体位の注意点です。
  • 筋ジストロフィーは病型によりリスクが異なります。DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、EDMD、LGMD、FCMD、OPMDなど、病型名をできるだけ正確に書きます。
  • カードに書く内容は、主治医に一度確認してもらうと安心です。特に麻酔、呼吸器、心臓、服薬、アレルギーは自己判断で断定しないでください。
  • カードは作って終わりではありません。服薬、呼吸器設定、心機能、肺活量、緊急連絡先が変わったら更新します。

緊急時カードの役割

緊急時カードは、本人が話せない時、家族が焦っている時、初めて会う医療者が短時間で判断しなければならない時に役立ちます。 筋ジストロフィーでは、「病名は知っているが、病型ごとの注意点までは現場で十分に共有されていない」ということが起こり得ます。

そのため、カードには長い説明ではなく、救急や処置で先に見てほしい情報を入れます。 特に、麻酔、呼吸、心臓、服薬、アレルギー、意思表示、普段の介助方法は短く書くほど使いやすくなります。

緊急時カードで伝えること なぜ必要か 書き方の例
病名・病型 病型によって、呼吸・心臓・麻酔・嚥下の注意点が変わります。 デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー1型など。
呼吸管理 酸素だけでよいのか、換気補助や排痰補助が必要か判断に関わります。 NPPV夜間使用、気管切開あり、カフアシスト使用など。
心臓の状態 点滴、麻酔、感染、発熱、処置時の管理に関わります。 心筋症あり、EF 〇%、不整脈あり、ペースメーカーありなど。
麻酔・薬剤の注意 避けたい薬剤や慎重に使う薬剤がある場合、処置前に共有が必要です。 サクシニルコリン注意、吸入麻酔薬注意、鎮静薬に注意など。
普段の介助方法 無理な移乗や体位で骨折、痛み、呼吸苦につながることがあります。 移乗は2人介助、リフト使用、仰向けで息苦しいなど。
連絡先 本人が説明できない時に、普段の状態を知る人へ確認できます。 家族、主治医、訪問看護、かかりつけ病院。

カードは「詳しい病歴」ではなく、「最初に見てほしい注意点」です。 詳細な資料は別紙にし、カードには短く書く方が使われやすくなります。

なぜ短くまとめる必要があるのか

救急現場では、本人や家族が落ち着いて説明できないことがあります。 また、医療者も短時間で呼吸、循環、意識、薬剤、処置の必要性を判断します。 そのため、緊急時カードは「読めばすぐ分かる」形であることが大切です。

病歴を長く書きすぎると、大切な注意点が埋もれます。 一方で、病名だけでは足りません。 「病名」「病型」「今の呼吸・心臓・薬剤の注意」「連絡先」を1分以内に読める形にします。

短くする

救急隊や医療者がすぐ読めるよう、箇条書きと数値を中心にします。

優先順位をつける

麻酔、呼吸、心臓、服薬、連絡先を先に置きます。

別紙と分ける

詳しい検査結果、診療情報提供書、服薬一覧は別に持ちます。

「病歴を全部書く」より、「危ない見落としを減らす」ことを優先します。

カード表面に入れたい項目

表面には、最初の数秒で見てほしい情報を入れます。 財布、障害者手帳、スマートフォンのメディカルID、車椅子ポーチなどに入れる場合は、表面だけで最低限伝わるようにします。

項目 書く内容
氏名・生年月日 本人確認に必要な情報。 氏名、ふりがな、生年月日、血液型は分かる範囲。
病名・病型 できるだけ正式名称で書きます。 DMD、BMD、筋強直性ジストロフィー1型、EDMDなど。
主治医・通院先 病院名、診療科、主治医名、代表電話。 〇〇病院 神経内科 〇〇医師。
緊急連絡先 家族、介助者、訪問看護など。 母、配偶者、訪問看護ステーションなど。
最重要注意 麻酔・呼吸・心臓など、先に見てほしいことを1〜3行。 サクシニルコリン注意。NPPV使用。心筋症あり。
意思表示の方法 話せるか、文字盤が必要か、Yes/Noの方法。 発話困難。右手でYes/No可。文字盤あり。

表面に細かい説明を詰め込みすぎないでください。 「この人は神経筋疾患で、呼吸・心臓・麻酔に注意が必要」とすぐ分かることが大切です。

カード裏面に入れたい項目

裏面には、処置や搬送中に必要になりやすい情報を入れます。 表面ほど短くなくてもよいですが、文章よりも箇条書きの方が使われやすくなります。

項目 入れる内容 書き方の例
呼吸 呼吸器、NPPV、気管切開、カフアシスト、普段のSpO2、CO2貯留の既往。 夜間NPPV使用。カフアシストあり。酸素のみ投与は主治医へ確認。
心臓 心筋症、不整脈、ペースメーカー/ICD、EF値、内服薬。 心筋症あり。EF〇%。β遮断薬内服中。
嚥下・栄養 むせ、食形態、胃ろう、経管栄養、誤嚥歴。 水分でむせあり。食形態〇〇。胃ろうあり。
移乗・体位 立位不可、リフト使用、抱え上げ注意、拘縮、骨粗鬆症、側弯。 移乗は2人介助。無理な肩挙上不可。仰向けで呼吸苦。
服薬 ステロイド、心臓薬、抗てんかん薬、呼吸関連薬、抗凝固薬など。 プレドニゾロン〇mg、エプレレノン〇mgなど。
アレルギー・副作用 薬剤名、症状、重症度。 〇〇で発疹、〇〇で呼吸苦など。
普段の状態 歩行、車椅子、会話、食事、介助量。 電動車椅子使用。発話可。食事一部介助。
別紙の所在 診療情報提供書、服薬一覧、検査結果、意思表示書の保管場所。 詳細資料はスマホ内「医療」フォルダ、母が保管。

裏面は、医療者が「次に確認したいこと」を見つける場所です。 数値や設定が古いと混乱するため、更新日を必ず入れてください。

病型ごとに強調したいこと

筋ジストロフィーといっても、病型によって緊急時に優先して伝えたい内容が違います。 ここでは代表的な例を示します。 実際にカードへ書く内容は、主治医に確認してください。

病型・状態 特に書きたいこと カードの書き方例
DMD/BMD 呼吸機能、心筋症、不整脈、ステロイド内服、麻酔薬の注意、骨折時の注意。 DMD。サクシニルコリン注意。吸入麻酔薬は麻酔科へ要確認。心筋症あり。NPPV使用。
筋強直性ジストロフィー 筋強直、呼吸抑制、鎮静薬・麻酔薬への注意、不整脈、嚥下、日中の眠気。 筋強直性ジストロフィー1型。鎮静・麻酔・術後呼吸管理に注意。不整脈あり。
EDMD 心伝導障害、不整脈、ペースメーカー/ICD、失神歴、拘縮。 EDMD。心伝導障害あり。ペースメーカーあり。失神歴あり。
LGMD 病型によって心筋症・呼吸機能低下が関わる場合があります。 LGMD〇型。心機能〇〇。呼吸機能〇〇。病型詳細は主治医へ。
FCMD・先天性筋ジストロフィー 呼吸、嚥下、てんかん、姿勢、発達、普段のコミュニケーション方法。 FCMD。てんかんあり。嚥下注意。呼吸器〇〇。発話困難、家族が意思確認。
OPMD 嚥下、誤嚥、食形態、胃ろう、まぶたの下がり、発話。 OPMD。嚥下障害あり。水分むせ注意。食形態〇〇。
病型未確定 診断途中であること、疑い病型、現在分かっている呼吸・心臓・嚥下の状態。 筋ジストロフィー疑い/病型確認中。神経内科通院中。麻酔前に主治医へ確認。

病型が曖昧なまま「筋ジストロフィー」とだけ書くと、注意点が伝わりにくくなります。 病型が未確定の場合は、「未確定」と書いたうえで、現在分かっている呼吸・心臓・嚥下・麻酔の注意点を入れてください。

麻酔・鎮静・処置で伝えたいこと

筋ジストロフィーでは、手術だけでなく、骨折処置、内視鏡、歯科処置、画像検査時の鎮静などでも注意が必要になることがあります。 すべての病型で同じ対応になるわけではありませんが、麻酔科や主治医に確認してほしい情報はカードに入れておくと安心です。

伝えたいこと なぜ必要か カードの文例
サクシニルコリンへの注意 DMD/BMDなどでは重い高カリウム血症や横紋筋融解のリスクが問題になります。 DMD/BMD:サクシニルコリン使用前に必ず麻酔科・主治医へ確認。
揮発性吸入麻酔薬への注意 病型により横紋筋融解や循環・呼吸管理上の注意が必要です。 吸入麻酔薬は病型を踏まえ麻酔科で要確認。
鎮静薬・鎮痛薬への注意 呼吸抑制、覚醒遅延、低換気が問題になることがあります。 鎮静・オピオイド使用時は呼吸抑制に注意。術後観察を希望。
術後呼吸管理 処置後に痰が出せない、換気が落ちることがあります。 術後はNPPV/排痰補助の要否を確認。カフアシストあり。
ステロイド内服 副腎不全リスクや周術期管理に関わることがあります。 ステロイド内服中。周術期管理は主治医へ確認。
過去の麻酔歴 覚醒遅延、呼吸トラブル、不整脈、横紋筋融解などの既往は重要です。 過去の全身麻酔で〇〇あり。詳細は家族/主治医へ。

カードには「この薬は絶対に使うな」と本人判断で広く書くより、病型と主治医確認が必要な注意点を正確に書く方が安全です。 ただし、DMD/BMDでサクシニルコリンを避ける必要があるなど、主治医から明確に指示されている内容は目立つ位置に書いてください。

呼吸管理で伝えたいこと

筋ジストロフィーでは、日中に息苦しさが目立たなくても、夜間低換気や咳の弱さが先に問題になることがあります。 救急時には、酸素飽和度だけでなく、換気、二酸化炭素貯留、排痰、普段使っている呼吸機器を伝えることが大切です。

項目 入れる内容 書き方の例
NPPV/NIV 非侵襲的陽圧換気を使っているか。夜間のみか、日中も使うか。 NPPV夜間使用。機種〇〇。設定は別紙。
気管切開 気管切開の有無、人工呼吸器、吸引、カニューレ情報。 気管切開あり。吸引必要。カニューレ〇〇。
カフアシスト 機械的咳介助を使っているか。 カフアシスト使用。風邪・痰増加時に必要。
肺活量・咳流量 直近のFVC/%VC、PCF、測定日。 %VC 〇%、PCF 〇L/min、測定日〇年〇月。
CO2貯留 二酸化炭素が溜まりやすい既往や夜間低換気。 夜間低換気あり。酸素投与時は換気状態も確認希望。
普段のサイン 朝の頭痛、日中の眠気、痰が出しにくい、仰向けで苦しい。 仰向けで呼吸苦。痰が出しにくい。

呼吸の情報は、救急時に特に大切です。 「酸素が必要か」だけでなく、「換気補助や排痰補助が必要か」も分かるように書きます。

心臓・循環で伝えたいこと

筋ジストロフィーでは、病型によって心筋症、不整脈、心伝導障害が問題になることがあります。 救急時や処置時には、点滴量、薬剤、麻酔、感染時の管理に関わるため、心臓の情報もカードに入れておくと役立ちます。

項目 入れる内容 書き方の例
診断名 心筋症、心不全、不整脈、心伝導障害など。 拡張型心筋症あり。心伝導障害あり。
検査値 EF値、BNP/NT-proBNP、直近心電図の結果など。 EF 〇%、最終心エコー〇年〇月。
デバイス ペースメーカー、ICD、CRTなど。 ペースメーカーあり。施設〇〇で管理。
内服薬 ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗凝固薬など。 心臓薬内服中。詳細は服薬一覧。
症状 動悸、失神、前失神、胸部不快、息切れ、浮腫。 失神歴あり。動悸あり。胸部不快時は循環器へ。

心臓の情報が古いと、現場で判断しにくくなります。 EF値、心電図、不整脈、ペースメーカー/ICD、内服薬は、分かる範囲で更新日と一緒に書いてください。

嚥下・食事・薬で伝えたいこと

救急時には、食事や薬の飲み込みも大切です。 ふだんは何とか食べられていても、発熱、疲労、処置後、鎮静後にはむせやすくなることがあります。 食形態、胃ろう、むせ、誤嚥歴、服薬方法を短く書いておくと、入院時にも役立ちます。

項目 入れる内容 書き方の例
むせ 水分、食事、薬でむせるか。 水分でむせあり。食後に痰が増える。
食形態 普通食、刻み、とろみ、ミキサー食など。 とろみ水使用。刻み食。
胃ろう・経管栄養 胃ろうの有無、栄養剤、投与方法。 胃ろうあり。栄養剤〇〇。家族が手順把握。
服薬方法 錠剤が飲めるか、粉砕可否、ゼリー使用など。 錠剤嚥下困難。服薬ゼリー使用。
誤嚥・肺炎歴 誤嚥性肺炎、入院歴、食事中のSpO2低下など。 誤嚥性肺炎で〇年〇月入院。

嚥下の情報は、食事だけでなく、薬の飲ませ方、処置後の飲水開始、肺炎リスクにも関わります。

移乗・体位・骨折で伝えたいこと

筋ジストロフィーでは、移乗や体位変換で痛み、骨折、呼吸苦、関節への負担が出ることがあります。 救急時には、急いで移動させる必要がある一方で、普段の介助方法を知らない人が対応するため、無理な抱え上げや体位で負担が増えることがあります。

項目 入れる内容 書き方の例
移乗方法 自力、1人介助、2人介助、リフト使用。 移乗は2人介助。抱え上げ不可。リフト使用。
体位 仰向け不可、側臥位が楽、座位保持が必要など。 仰向けで呼吸苦。上半身挙上が必要。
拘縮 肩、肘、股関節、膝、足首、首の可動域。 膝・足首拘縮あり。無理な伸展不可。
骨粗鬆症・骨折歴 ステロイド使用、骨折歴、骨密度低下。 ステロイド長期内服。骨折歴あり。移乗注意。
車椅子・装具 電動車椅子、手動車椅子、AFO、コルセットなど。 電動車椅子使用。AFOあり。座位保持具あり。
痛みが出る動作 肩を引く、脇を持つ、足を伸ばす、首を倒すなど。 肩を引かないでください。脇を抱えないでください。

移乗・体位の情報は、医療者だけでなく救急隊にも役立ちます。 「どこを持たないでほしいか」「どの姿勢が苦しいか」まで書くと伝わりやすくなります。

読まれやすい書き方

緊急時カードは、きれいな文章よりも、すぐ読めることが大切です。 医療者向けの言葉と家族向けの言葉を混ぜすぎると読みにくくなるため、短い見出し、数値、箇条書きを使います。

書き方 よい例 避けたい例
病型を書く DMD、BMD、DM1、EDMDなど正式名を書く。 筋肉の病気、難病、身体が弱い。
数値と日付を入れる %VC 〇%、EF 〇%、測定日〇年〇月。 肺が弱い、心臓が悪い。
やってほしいことを書く 麻酔前に主治医/麻酔科へ確認。NPPV持参。 とにかく注意してください。
やめてほしい動作を書く 肩を引かない。仰向けで長時間寝かせない。 丁寧に扱ってください。
更新日を書く 更新日:2026年5月10日。 いつの情報か分からない。

「詳しく書くほど安心」ではありません。 カードは短く、別紙は詳しく、という分け方が使いやすくなります。

保管場所と共有先

緊急時カードは、作っても提示されなければ使われません。 本人が持つだけでなく、家族、介助者、訪問看護、学校・職場、旅行時の同行者など、必要な人がすぐ出せる状態にしておくことが大切です。

保管場所 使う場面 注意点
財布・障害者手帳 外出先で倒れた時、救急隊に見つけてもらいやすい。 一番手前に入れる。古いカードを残さない。
スマートフォン メディカルID、ロック画面、写真フォルダで提示。 ロック中でも見られる設定を確認。
車椅子・呼吸器バッグ 移動中、通院、旅行、学校・職場で提示しやすい。 防水ケースに入れる。
自宅の分かる場所 救急搬送時に家族がすぐ持ち出せる。 冷蔵庫、玄関、医療ファイルなど場所を決める。
家族・介助者の端末 本人が説明できない時に提示できる。 画像やPDFで保存し、更新時に差し替える。
訪問看護・学校・職場 急変時や外出先での対応に使う。 必要な範囲だけ共有し、個人情報の扱いを決める。

本人が提示できない時に、誰がカードを出すのかまで決めておくと、実際の場面で使いやすくなります。

いつ更新するか

緊急時カードは、古い情報のまま残ると混乱の原因になります。 特に、服薬、呼吸器、心臓の検査値、連絡先、主治医、食形態、移乗方法は変わりやすいため、更新日を入れて見直します。

更新したいタイミング 見直す内容 確認先
定期受診後 診断名、病型、服薬、検査値、主治医。 神経内科、筋疾患外来。
呼吸器導入・設定変更後 NPPV、気管切開、カフアシスト、設定、使用時間。 呼吸器内科、在宅医、訪問看護、業者。
心臓検査後 EF値、不整脈、ペースメーカー/ICD、心臓薬。 循環器内科。
嚥下評価後 食形態、とろみ、胃ろう、誤嚥歴。 主治医、嚥下外来、管理栄養士。
転倒・骨折後 移乗方法、体位、骨折歴、装具、車椅子。 整形外科、リハビリ、福祉用具。
引っ越し・学校/職場変更後 住所、連絡先、共有先、搬送先、支援者。 家族、相談支援、学校・職場。

カード下部に「更新日」と「確認者」を入れてください。 例:更新日 2026年5月10日/主治医確認済み:〇年〇月。

コピーして使える緊急時カード

ここからは、そのままコピーして使える形です。 まずは短いカード版を作り、必要に応じて詳細版を別紙で用意してください。 書いた内容は、可能であれば主治医・訪問看護・家族と確認してください。

カード表面:最短版

【筋ジストロフィー 緊急時カード】 氏名: 生年月日: 病名・病型: 主治医・病院: 病院電話: 【先に見てください】 □ 呼吸管理に注意 □ 心機能・不整脈に注意 □ 麻酔・鎮静・筋弛緩薬に注意 □ 移乗・体位に注意 □ 嚥下・誤嚥に注意 【緊急連絡先】 1: 2: 訪問看護: 介助者: 【意思表示】 発話:可能・困難 Yes/No:可能・困難 文字盤:あり・なし スマホ入力:可能・困難 更新日: 主治医確認:あり・なし

カード裏面:医療者向け

【呼吸】 NPPV/NIV:なし・夜間・日中も使用 気管切開:なし・あり 人工呼吸器:なし・あり カフアシスト:なし・あり %VC/FVC: PCF: CO2貯留:なし・あり・不明 仰向け:可・不可・苦しい 普段のSpO2: 【心臓】 心筋症:なし・あり 不整脈:なし・あり 心伝導障害:なし・あり EF: ペースメーカー/ICD:なし・あり 心臓薬: 失神歴:なし・あり 【麻酔・鎮静】 病型により麻酔薬・筋弛緩薬に注意。 DMD/BMD等ではサクシニルコリン、揮発性吸入麻酔薬の使用前に麻酔科・主治医へ確認。 筋強直性ジストロフィーでは鎮静・鎮痛・術後呼吸管理に注意。 過去の麻酔トラブル: 【嚥下・栄養】 むせ:なし・あり 食形態: とろみ:なし・あり 胃ろう:なし・あり 誤嚥性肺炎歴:なし・あり 服薬方法: 【移乗・体位】 歩行:可・不可 車椅子:なし・手動・電動 移乗:自力・1人介助・2人介助・リフト 拘縮: 骨折歴: 避けてほしい動作: 【服薬・アレルギー】 服薬一覧:別紙あり・なし アレルギー: 副作用歴:

救急隊・受付で見せる短い文面

筋ジストロフィーがあります。 病型は____です。 呼吸・心臓・麻酔・移乗に注意が必要です。 本人が説明できない場合があります。 このカードと、服薬一覧・診療情報提供書を確認してください。 必要時は主治医または家族へ連絡してください。

家族が救急外来で伝える文面

筋ジストロフィーのため、呼吸・心臓・麻酔・移乗に注意が必要です。 普段の状態: ・呼吸: ・心臓: ・食事: ・移動: ・会話: ・服薬: 今日いつもと違うこと: ・発熱: ・呼吸: ・痰: ・食事: ・意識: ・痛み: ・転倒: ・尿/便: 麻酔や鎮静が必要な場合は、病型と主治医情報を確認してください。 本人の詳しい情報はこのカードと別紙にあります。

スマートフォンに保存する短文

【緊急時】 私は筋ジストロフィーがあります。 病型: 主治医: 緊急連絡先: 呼吸: 心臓: 麻酔・鎮静の注意: 嚥下: 移乗: 詳細はスマホ内「医療」フォルダ、または家族が保管しています。

詳細版:A4一枚メモ

【筋ジストロフィー 緊急時情報】 更新日: 本人氏名: 生年月日: 住所: 病名・病型: 診断年: 遺伝子検査: 主治医: 通院先: 病院代表電話: 夜間休日連絡先: 【現在の状態】 歩行: 車椅子: 移乗: 食事: 発話: 意思表示: 排泄: 入浴: 通学・通勤: 【呼吸】 NPPV/NIV: 気管切開: 人工呼吸器: カフアシスト: 吸引: %VC/FVC: PCF: 夜間低換気: CO2貯留: 普段のSpO2: 呼吸で注意すること: 【心臓】 心筋症: 不整脈: 心伝導障害: EF: ペースメーカー/ICD: 心臓薬: 失神・動悸: 循環器主治医: 【嚥下・栄養】 食形態: とろみ: 胃ろう: 経管栄養: 誤嚥性肺炎歴: 薬の飲み方: 避けたい食品・形態: 【麻酔・処置】 麻酔前に確認してほしいこと: 避けるよう指示されている薬剤: 過去の麻酔歴: 術後呼吸管理: ステロイド内服: 骨折・体位の注意: 【服薬】 薬剤名: 用量: 回数: 最終更新: お薬手帳の場所: 【アレルギー・副作用】 薬剤: 食物: その他: 【緊急連絡先】 家族1: 家族2: 訪問看護: 相談支援: 学校・職場: 介助者: 【本人・家族からのお願い】 本人が説明できない場合は、上記連絡先へ確認してください。 無理な移乗・体位変換は避けてください。 呼吸・麻酔・心臓については主治医情報を確認してください。

救急相談を急ぎたいサイン

緊急時カードは、いざという時に情報を伝えるための準備です。 次のような変化がある場合は、カードを持参し、早めに医療機関へ相談してください。

  • 安静でも息苦しい:呼吸筋低下、感染、痰詰まり、心不全などを確認する必要があります。
  • 痰が出せない、咳が弱い:排痰補助や呼吸管理が必要になることがあります。
  • SpO2が下がる、顔色が悪い:酸素だけでなく換気状態の確認が必要です。
  • 朝の頭痛、強い眠気、ぼんやりする:二酸化炭素貯留や夜間低換気の可能性があります。
  • 胸痛、動悸、失神、前失神:心筋症、不整脈、心伝導障害の確認が必要です。
  • 食事や水分で強くむせる、発熱する:誤嚥や肺炎の確認が必要です。
  • 転倒、骨折疑い、強い痛み:骨折、骨粗鬆症、移乗方法の見直しが必要です。
  • 手術・鎮静・内視鏡・歯科処置が必要になった:病型と麻酔の注意点を必ず共有してください。

急な呼吸苦、意識障害、胸痛、失神、強いむせ、転倒後の頭部打撲や骨折疑いがある場合は、様子見を続けず救急相談を優先してください。

よくある質問

緊急時カードは名刺サイズで足りますか?

最初に見せるカードは名刺サイズでも構いません。 ただし、名刺サイズには病名・病型、主治医、緊急連絡先、呼吸・心臓・麻酔の注意点だけを入れ、詳しい情報はA4一枚の別紙やスマートフォン内のPDFに分けると使いやすくなります。

一番大事な項目は何ですか?

病型、呼吸管理、心臓の状態、麻酔・鎮静・薬剤の注意、緊急連絡先です。 特にDMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、EDMDなどでは、病型ごとの注意点が異なるため、病名だけでなく病型を書いてください。

麻酔の注意点はどう書けばよいですか?

自己判断で広く断定するより、主治医や麻酔科に確認した内容を書いてください。 例として、DMD/BMDではサクシニルコリンや揮発性吸入麻酔薬に注意が必要です。 筋強直性ジストロフィーでは鎮静薬・鎮痛薬・術後呼吸管理などへの注意が重要になります。

酸素投与について書いた方がよいですか?

呼吸機能が低下している場合やNPPVを使っている場合は、書いた方がよいです。 「酸素だけでよいか」ではなく、換気補助、CO2貯留、排痰補助の確認が必要になることがあります。 主治医の指示があれば、その内容を短く書いてください。

家族も同じカードを持った方がよいですか?

持った方が安心です。 本人が説明できない時に、家族や介助者がすぐ提示できることが重要です。 紙だけでなく、スマートフォンに画像やPDFとして保存しておくと使いやすくなります。

学校や職場にも渡した方がよいですか?

必要な範囲で共有すると安心です。 ただし、医療情報をすべて渡す必要はありません。 学校や職場には、緊急連絡先、救急搬送時に持参してほしい資料、本人の移動・呼吸・嚥下・意思表示の注意点を中心にした簡易版が向いています。

どのくらいの頻度で更新すればよいですか?

少なくとも年1回、または服薬、呼吸器、心機能、肺活量、食形態、移乗方法、主治医、連絡先が変わった時に更新してください。 更新日がないカードは、現場で情報が新しいか判断しにくくなります。

主治医に確認してもらう必要がありますか?

可能であれば確認してもらってください。 特に、麻酔薬、鎮静、呼吸器設定、CO2貯留、心臓薬、ステロイド、アレルギー、DNARや事前指示に関わる内容は、本人・家族だけで書かず医療者と確認する方が安全です。

免責事項

  • 本ページは、筋ジストロフィーで緊急時カードを作る際の一般的な整理を目的としたものです。
  • 個別の病型、麻酔薬、呼吸管理、心臓管理、薬剤、救急対応、DNARや事前指示の内容を決定するものではありません。
  • 麻酔、鎮静、筋弛緩薬、酸素投与、呼吸器、排痰補助、心臓薬、ステロイド管理については、主治医、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科へ確認してください。
  • 急な呼吸苦、意識障害、胸痛、失神、強いむせ、転倒後の頭部打撲や骨折疑いがある場合は、救急相談を優先してください。
  • 薬、呼吸器設定、食形態、服薬方法、医療機器の使い方を自己判断で変更しないでください。

参考文献・参考情報

  1. 日本神経学会:デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン
    https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dmd.html
  2. 日本神経学会:デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン 第9章 麻酔・鎮静
    https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_09.pdf
  3. 日本神経学会:筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020
    https://www.neurology-jp.org/guidelinem/myotonic_2020.html
  4. Parent Project Muscular Dystrophy:Emergency Care
    https://www.parentprojectmd.org/care/care-guidelines/by-area/emergency-care/
  5. Parent Project Muscular Dystrophy:Surgery & Anesthesia Precautions
    https://www.parentprojectmd.org/care/care-guidelines/by-area/emergency-care/surgery-and-anesthesia/
  6. Muscular Dystrophy Association:DMD Emergency Alert Card
    https://www.mda.org/sites/default/files/2023/06/DMD_ER_Alert_Card.pdf
  7. OrphanAnesthesia:Duchenne muscular dystrophy
    https://www.orphananesthesia.eu/rare-diseases/published-guidelines/duchenne-muscular-dystrophy/809-duchenne-muscular-dystrophy-2/file.html
  8. Thorax:Development of respiratory care guidelines for Duchenne muscular dystrophy
    https://thorax.bmj.com/content/79/5/476
  9. Duchenne UK:Respiratory Guidelines Patient Leaflet
    https://www.duchenneuk.org/wp-content/uploads/2025/09/DMDCare-Respiratory-Patient-Leaflet-Sept25.pdf
  10. European Neuromuscular Centre consensus statement on anaesthesia in neuromuscular disorders
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9826444/
  11. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症
    https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d8.pdf

まとめ

筋ジストロフィーの緊急時カードは、病気の説明を長く書くためのものではありません。 救急隊や医療者に、病型、呼吸、心臓、麻酔・鎮静、服薬、移乗、連絡先を短く伝えるためのものです。

特に、DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、EDMDなどでは、病型ごとの注意点が大きく変わります。 「筋ジストロフィー」とだけ書かず、分かる範囲で正式な病型名と現在の呼吸・心臓・嚥下・移乗の状態を書いてください。

カードは、本人だけでなく家族や介助者も提示できるようにしておくと安心です。 作成後は主治医に確認し、服薬、呼吸器、心機能、食形態、連絡先が変わった時に更新してください。