筋ジストロフィーの受診メモ|診察で伝えたい変化とコピー用テンプレート

筋ジストロフィー|受診時の記録

診察の終わりに「転びやすくなったことを言い忘れた」「夜間の呼吸について聞けなかった」と気づくことがあります。筋ジストロフィーの受診メモは、前回から変わったことと、今日決めたいことを短く伝えるための道具です。

そのままコピーして使える記入欄を下に用意しました。全部埋める必要はありません。最初の数行だけでも、医師に渡せる状態にしておくと役立ちます。

時間がないときは、この5項目だけ

  1. 診断名と前回受診日。疾患型や遺伝学的検査結果が分かる場合は記入します。不明なら病名をそのまま書けば大丈夫です。
  2. 前回から変わったこと。良くなったこと、悪くなったこと、変わらなかったことを、動作と時期で書きます。
  3. 呼吸・飲み込み・心臓に関する気がかり。夜間の息苦しさ、朝の頭痛、むせ、動悸など、安全に関わる変化は先に伝えます。
  4. 薬・機器・介助の変更。処方薬、呼吸補助、装具、車椅子、食形態や介助量など、前回と違うことを記します。
  5. 今日聞きたいことを最大3つ。検査、治療、生活や学校・仕事で必要な対応など、優先順位を付けます。

受診の目的は、項目を埋めることではなく、必要な診療につなげることです。症状が急に変化した場合は次回の定期受診を待たずに医療機関へ連絡してください。

筋ジストロフィーの受診メモ【コピー用】

スマートフォンのメモに貼るか、紙に写して使ってください。該当しない項目は消し、分からないところは空欄で構いません。医師への説明が必要な内容と、家族だけで共有したい内容は分けておきましょう。

コピー用・短時間版
【受診日】__年__月__日 【前回受診】__年__月__日
【病名・病型】__________ 【診療科・医師】______
【今日いちばん困っていること】________________
【前回から変わったこと/いつから】______________
【呼吸・むせ・動悸など急いで伝えること】__________
【薬・機器・介助の変更】___________________
【今日聞きたいこと】①______ ②______ ③______
【診察で決まったこと・次の検査/受診】____________

変化を詳しく伝える場合の追記欄

必要な欄だけ追記
■ 移動・転倒
歩ける距離/時間、階段、立ち上がり、転倒・つまずき:
前回と比べて変わった時期:
杖・装具・車椅子・移乗の手助け:
■ 手・肩・首などの動き
洗髪、更衣、食事、字を書く、スマホを持つ、頭を支える:
どちら側か、疲れやすさ、痛み:
■ 呼吸・睡眠
息切れ、横になると苦しい、朝の頭痛、日中の眠気:
咳や痰の出しにくさ、風邪の後の変化:
使用中の呼吸補助機器・設定の変更(分かる範囲):
■ 心臓
動悸、胸の違和感、むくみ、失神・ふらつき:
最後に心電図/心エコーを受けた日(分かる場合):
■ 食事・飲み込み・体重
水や食事でむせる、食事にかかる時間、食形態:
直近の体重・体重の変化、便秘:
■ 睡眠・日中の生活
仕事/学校/家事で変わったこと、休憩、翌日の疲労:
介助している人の負担、必要な支援:
■ 処方・検査
今の薬、変更後の体調、アレルギー:
持参した検査結果/知りたい結果:
■ 今日相談したいこと
①
②
③
■ 診察後に記入
検査・治療・紹介先/開始日:
自宅で見る変化と連絡する目安:
次回の予約日:

印刷やスマートフォンでの共有時は、氏名・連絡先などを必要な範囲で記入し、他の人に見せる場合は本人の意向を確認してください。これは受診を助けるメモであり、処方箋や医療機関の指示書に代わるものではありません。

「悪くなった」を、医師に伝わる変化にする

同じ「筋力が落ちた」でも、床から立つときに手をつくようになったのか、食器を持ち上げにくいのかで診察で確認する部位が変わります。できれば、いつから・どの動作が・以前と比べてどう変わったかを書いてください。

伝え方受診メモに書く例
歩行「以前は駅まで歩けたが、先月から途中で一度休む。今週2回つまずいた」
腕・手「右手で洗髪できたが、ここ3週間は途中で腕を下ろす。服のボタンにも時間がかかる」
呼吸・睡眠「この2週間、起床時の頭痛が週3回。日中の眠気も増えた」
嚥下・栄養「水でむせる回数が増え、食事時間が20分から40分程度になった」
学校・仕事「帰宅後に疲れて翌日の朝まで回復しないため、休憩や勤務時間を相談したい」

比較するために無理な歩行試験や反復運動を自宅で行う必要はありません。転倒や過度の疲労を避け、普段の生活で自然に分かる変化を記録してください。体重、心電図、呼吸機能などの結果は、受けた検査が分かる範囲で持参します。

病型によって、特に確認したいこと

「筋ジストロフィー」は一つの病気ではありません。DMD/BMD、筋強直性ジストロフィー、FSHDなどで注意点や検査計画が違います。下の項目は全員に同じ検査を求めるリストではなく、自分の診断名に照らして主治医と確認するための質問例です。

病型受診時に確認したい例
デュシェンヌ型・ベッカー型(DMD/BMD)歩行や移動の変化、呼吸機能と咳の力、心機能の定期評価、骨の健康や転倒・骨折、ステロイドなどの治療と副作用、利用中の機器や学校・生活上の支援。
筋強直性ジストロフィー1型(DM1)力を入れた後に手が開きにくい、日中の強い眠気、呼吸・睡眠、飲み込み、心電図や不整脈の評価、白内障、内分泌や代謝、手術・麻酔予定の有無。
顔面肩甲上腕型(FSHD)顔・肩・腕・体幹・足首の左右差、肩を上げる動作、転倒、痛み・疲労、装具やリハビリの相談。呼吸や聴力・眼の評価は病型や症状に応じ主治医と相談。
その他の筋ジストロフィー診断名と遺伝学的検査結果を確認し、心臓・呼吸・嚥下など、その病型で優先すべき定期評価を主治医に尋ねる。

遺伝学的な診断や治療薬の選択は病型と検査結果によります。ほかの人に効いた治療や検査の間隔を、自分にもそのまま当てはめないでください。

診察の前・診察中・帰宅後の使い方

受診前:前回からの変化を短く書く

診察券、薬一覧、お薬手帳、ほかの病院の検査結果があれば持参します。家族と記録する場合は「本人が最も困っていること」を先に確認してください。毎回すべてを書き直す必要はありません。前回のメモをコピーし、変更した箇所だけ更新できます。

診察中:今日相談したいことから伝える

診察冒頭に「前回から変わった点が2つあります。まず夜間の息苦しさ、それから歩行です」と話すと伝えやすくなります。必要ならメモを医師に渡します。検査値の意味、今後の見通し、薬の変更理由が分からなければ、その場で聞いてください。

診察後:決まったことと連絡の目安を残す

検査日、薬の変更、受診先、次回予約を記入し、「どの症状が出たら予定を早めて連絡するか」を確認します。家族や訪問看護に共有する場合も、最新の内容に更新してから渡してください。

受診日を待たずに連絡する症状

息苦しさの急な悪化、胸痛や失神、食事・水分で繰り返す窒息やむせ、急な歩行不能、転倒して頭を打った場合は、医療機関に速やかに相談してください。強い呼吸困難や意識の異常など切迫したときは救急受診が必要です。

受診メモでよくある疑問

どの項目も埋めないと受診に使えませんか?

いいえ。病名、前回から変わったこと、今日聞きたいことを書くだけでも役立ちます。不要な欄は消して使ってください。

筋肉量や筋力の数値がないと相談できませんか?

数値がなくても相談できます。階段、洗髪、食事、移動など実際の動作と変化を伝えてください。必要な測定は医療機関で相談できます。

心臓や呼吸の症状がなければ記入しなくてよいですか?

無症状でも病型によって定期的な心臓や呼吸の評価が重要です。自分の病型で必要な検査と次回の予定を主治医に尋ねてください。

家族が代わりに書いてもよいですか?

本人が書きにくければ、家族が手伝えます。本人が一番困っていることや、医師に聞きたいことを先に確かめ、本人の言葉を残してください。

このメモを救急時にも使えますか?

受診メモは経過の共有に使えますが、緊急時には現在の薬、呼吸補助機器、アレルギー、連絡先などが分かる別の緊急時カードも用意してください。情報が変わったら更新します。

関連ページと参考資料

医療項目の確認に用いた資料
  1. GeneReviews「Dystrophinopathies」(DMD/BMD)
  2. GeneReviews「Myotonic Dystrophy Type 1」
  3. GeneReviews「Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy」

このメモは医療機関の問診票や検査指示を代替しません。病型ごとの必要な検査や緊急時対応は担当医に確認してください。