パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い|原因・検査・受診のポイント

病名・症状の呼び方・似た病気との違い

似た症状でも、原因によって必要な治療や支援が変わる

「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は、似た言葉ですが、同じ意味で使われるとは限りません。病気の名前を指しているのか、症状のまとまりを指しているのかを分けると、診察の説明が理解しやすくなります。

このページでは、言葉の関係、MSA・PSP・薬剤性などの原因、検査と薬への反応の読み方を整理します。原因を確かめることは、薬の見直しや転倒・排尿・飲み込みへの対応を、本人に合う形へつなげるために役立ちます。

パーキンソン病は、パーキンソニズムの原因の一つ

パーキンソニズムは症状のまとまり、パーキンソン病(PD)はその原因となる病気の一つです。国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)のPD診断基準では、動作緩慢に、安静時振戦または筋強剛を伴うことを運動性パーキンソニズムの基本としています。[1]

言葉意味と確認したいこと
パーキンソニズム動作緩慢、筋強剛、安静時振戦などを組み合わせて捉える症状のまとまり。原因をさらに調べる。
パーキンソン病(PD)パーキンソニズムを起こす病気の一つ。症状、経過、診察、治療への反応などから診断する。
非定型パーキンソニズムMSA・PSP・CBSなど、PDと似た運動症状に別の特徴が重なる病態を説明するときに使われる呼び方。

動作緩慢は、単に年齢のため動きがゆっくり、痛くて動かせない、という状態だけを指しません。医師は反復動作の速度や大きさの変化などを診察して判断します。ふるえが目立たない場合もあるため、ふるえの有無だけでは区別できません。

日本語の「パーキンソン症候群」は、使われる範囲に注意する

日本の診療説明では、「パーキンソン症候群」をPD以外の病気の総称として使うこともあります。日本神経学会の一般向け解説も、この使い方でMSA・PSP・薬剤性などを説明しています。[3]

診察では、言葉の範囲を聞いて構いません。
「今の説明は症状のまとまりを指していますか。それとも、PD以外の原因を考えているという意味ですか」「原因の病名はどこまで分かっていますか」と尋ねると、現在の診断段階を共有しやすくなります。

パーキンソニズムや、似た歩行障害を起こす主な原因

原因には神経変性疾患のほか、薬、脳血管障害、正常圧水頭症などがあります。次の表は、診察でどのような情報を組み合わせるかを理解するための概要です。一つの特徴への当てはまりで病名を決める表ではありません。

病気・病態診察で注目する特徴の例読み違えないために
パーキンソン病
PD
動作緩慢、筋強剛、安静時振戦。左右差やレボドパへの明確な反応などを含めて評価。ふるえがない人もいる。左右差や薬効だけで確定しない。[1]
多系統萎縮症
MSA
パーキンソン症状に、強い起立性低血圧、排尿障害、小脳性のふらつきなどが重なる。主にパーキンソン症状が目立つ型がMSA-P。薬に反応する人もいる。[4]
進行性核上性麻痺
PSP
早い時期の転倒、上下方向の眼球運動の問題、体幹の動きにくさ、発話・認知の変化など。初期から全ての特徴がそろうとは限らず、症状の出方に複数の型がある。[5]
大脳皮質基底核症候群
CBS
左右差の強い手足の動きにくさに、道具を使う動作の障害、感覚の評価上の異常などが重なる。CBSは臨床症候群の名前。原因の病理が全てCBDとは限らない。[6]
レビー小体型認知症
DLB
認知機能の低下に、注意・覚醒の変動、繰り返す具体的な幻視、パーキンソン症状、睡眠中の行動などが関係する。PDでも幻覚や認知の変化は起こり得る。症状が現れた順序と薬・体調も評価する。[7]
薬剤性パーキンソニズム一部の抗精神病薬、吐き気止め等と、症状の発生・変化との時間的な関係。薬の開始・増量時期を確認。原因薬の調整は処方医と相談し、自己判断で中止しない。[8]
血管障害性パーキンソニズム脳血管障害の病歴、歩行中心の症状、神経診察、MRI上の病変との関係。MRIで血管病変が見つかっただけでは決めない。PDとの併存なども含めて判断する。[10]
正常圧水頭症歩行障害、認知機能の変化、排尿の問題と、脳室拡大などの画像所見。全症状がそろうとは限らない。適応を評価し、シャント手術等による改善を検討できる場合がある。[9]

CBSとCBDは、同じ意味ではない

大脳皮質基底核症候群(CBS)は、診察で見える症状の組み合わせを指します。大脳皮質基底核変性症(CBD)は、その背景になり得る病気の一つです。CBSの背景にはCBD以外の病理もあり、CBDがCBS以外の形で現れることもあります。[6]

MSA-Pについて詳しく知りたい場合は、多系統萎縮症のパーキンソン型で、血圧・排尿・睡眠・嚥下との関係を説明しています。

診断を見直す手がかりとして伝えたい変化

PDの診断では、支持する所見とともに、別の原因を考える所見も評価します。次のような変化は、いつから、どの程度、生活のどこに影響したかを主治医へ伝える材料になります。[1][4][5]

  • 運動症状が出て間もないころから、転倒を繰り返す。
  • 早い段階から強い立ちくらみ、失神、尿が出にくいなどの問題がある。
  • 視線を上下に動かしにくい、段差や食卓が見づらいといった変化がある。
  • 手足の力やこわばりだけでは説明しにくい、道具の使い方や動作の組み立ての難しさがある。
  • 発話、飲み込み、睡眠中の呼吸音などの問題が早くから目立つ。
  • 認知、注意・覚醒、行動の変化が運動症状と近い時期に現れる。

これらには、薬、心臓や泌尿器の病気、視力、関節、睡眠など別の要因が関わる場合もあります。「一つあるからMSAやPSP」と考えず、症状が出た順序と程度をまとめて診察へ持参してください。

家で後ろから体を引いて転倒反応を試したり、危険な歩行や眼球運動の検査を再現したりする必要はありません。普段の安全な動作と、家族が気づいた変化を伝えます。

検査と薬への反応を、どう組み合わせるか

診断の中心は、病歴と神経診察です。医師は、動作緩慢、筋強剛、振戦、歩行に加え、眼球運動、協調運動、自律神経、認知などを必要に応じて評価し、検査を選びます。[2]

検査・評価主な役割それだけでは決められないこと
MRI・CT血管病変、水頭症、脳の構造変化などを調べる。MSA・PSP等を考える所見も評価する。通常MRIが正常でもPDは除外できない。他の病気でも、初期に特徴がそろわない場合がある。[11]
DATスキャン線条体のドパミントランスポーターへの集積を調べ、シナプス前ドパミン神経系の障害を評価する。集積低下だけでPDとMSA・PSP・CBD等を確実に区別できない。[10]
MIBG心筋シンチ心臓の交感神経の状態を調べ、PDを支持する材料として使う。心疾患、薬等の影響も考える。正常という結果だけでPDを除外しない。[11]
レボドパ等への反応どの症状が、どの程度・どれくらいの期間変わったかを診察と合わせて評価する。PD以外でも反応する場合があり、1回の効き方だけで確定・否定しない。[1][4]

DATの「正常」は、MRIやMIBGの「正常」と同じ意味ではありません。
適切に実施・評価された正常なシナプス前ドパミン機能画像は、MDS基準でPDの除外項目です。症状と合わないときは、専門医が検査条件や判読も再確認し、別の原因を検討します。[2]

検査全体はパーキンソン病の検査と診断、DATとSBRの詳しい読み方はDATスキャンの結果・SBRにまとめています。

「薬が効かない」の中身を分ける

ふるえ、動作緩慢、歩行、バランスでは、薬への反応が同じとは限りません。処方量、試した期間、飲めた状況、副作用なども評価に必要です。「ふるえだけ残った」「1回飲んで変わらなかった」だけで、病名を自己判断しないでください。

薬の量を増減したり、比較のために休薬したりせず、服薬時刻と動作の変化を受診メモ・服薬日誌に残すと、診察で共有しやすくなります。

薬剤性と正常圧水頭症を、見落とさず相談する

薬剤性:処方の見直しにつながることがある

一部の薬がパーキンソン症状に関わる場合は、処方医が中止・減量・代替薬への変更などを検討します。薬の必要性と調整による影響もあるため、お薬手帳を使って、開始・増量時期と症状が出た時期を共有してください。[8]

薬を調整した後も、症状が続けば別の原因や背景のPDなどを検討します。「薬剤性なら必ずすぐ治る」とは決めず、診察を続けます。

正常圧水頭症:治療適応の評価が役立つことがある

歩行の変化に認知や排尿の問題が重なる場合は、画像や診察から正常圧水頭症を検討することがあります。必要に応じて髄液タップテスト等を行い、症状・画像・合併症を踏まえてシャント手術の適応を評価します。[9]

タップテストで変化がなかっただけで、完全に除外できるわけではありません。また、脳室が大きい人全員が手術で改善するわけでもありません。検査の意味と、得られそうな利益・負担を専門医に聞いてください。

経過を見て、診断が見直されることがある

初期には病気ごとの特徴が十分に現れず、似た症状から始まる場合があります。その後の眼球運動、自律神経、認知、転倒、薬への反応などが加わり、原因の見立てが更新されることがあります。[4][5][6]

病名が変わった場合は、「新しく何が分かったのか」「これまでの薬やリハビリはどうするのか」「次に優先する症状は何か」を聞くと、今後の方針を整理できます。

診断が確定するまでの間も、相談できることがあります。
転倒、むせ、排尿、立ちくらみ、動作や介助の負担を具体的に伝えてください。原因の評価と並行して、その時点の困りごとに対応する治療や生活支援を相談できます。

ヤール分類は主に運動症状の重症度を示す目安で、原因の病名を決めるものではありません。必要な支援の整理にはヤール分類と生活支援も参照してください。

受診で使えるメモと、主治医への質問

現在の症状一覧に加えて、起きた順序を残すと、経過を説明しやすくなります。分からない時期は「春ごろ」「薬を増やした後」などでも構いません。

【現在説明されている病名・症候群】____
【最初に気づいた症状と時期】____
【その後の順序】歩行・転倒:__/血圧・排尿:__/認知・見え方:__
【左右差・出やすい場面】____
【薬の履歴】薬名:__/開始・増量時期:__/変わった症状:__
【検査の説明】MRI:__/DAT:__/MIBG等:__
【生活で困ること】歩行/食事/排尿/睡眠/着替え/介助:__
【今回聞きたいこと】原因の見立て/追加評価/今できる対応:__

診察で聞いておきたい5つのこと

  1. 今の「パーキンソン症候群」は、どの範囲を指す説明ですか。
  2. PDを支持する所見と、他の原因を考える所見は何ですか。
  3. 今回の検査で分かったことと、まだ判断できないことは何ですか。
  4. 原因がまだ確定していなくても、今の症状にできる対応はありますか。
  5. 次回までに記録することと、早めに連絡する変化は何ですか。

突然の症状は、いつもの動きにくさと分ける

突然、片側の手足に力が入らない、顔の片側がゆがむ、ろれつが回らない、急な呼吸困難や意識の異常がある場合は、119を優先してください。パーキンソン病や症候群の経過観察として待つ場面ではありません。[12]

繰り返す転倒、むせや体重減少、尿が出にくい、睡眠中の苦しそうな呼吸音などは、次の予約を待ってよいかも含めて主治医へ相談してください。

よくある質問

パーキンソン症候群は、パーキンソン病より重いのですか?

その言葉だけでは重症度は決まりません。何が原因か、どの症状があるか、現在の生活にどの程度影響しているかを確認します。PD以外の原因を指している場合も、具体的な病名と方針を聞いてください。

ふるえがなければ、パーキンソン病ではありませんか?

ふるえが目立たないPDもあります。MDS基準では動作緩慢に、安静時振戦または筋強剛を伴うことを基本に、他の所見と合わせて原因を判断します。

DATが低下していれば、PDで確定しますか?

確定しません。MSA・PSP・CBDなどでも低下し得るため、神経診察、経過、他の検査を組み合わせます。適切に評価された正常なシナプス前ドパミン機能画像は、MDS基準ではPDの除外項目です。

レボドパが効かなければ、MSAやPSPですか?

薬効だけでは決められません。試した期間・処方量・症状の種類・副作用等を医師が確認します。逆にPD以外でも反応する場合があります。自己増量や休薬で確かめないでください。

薬剤性なら、薬をやめればすぐ治りますか?

必ずすぐ改善するとは限りません。処方医が薬の必要性と症状を評価し、変更後の経過を見ます。症状が続けば、背景のPDなど別の原因も検討します。薬は自己判断で中止しないでください。

正常圧水頭症は、手術すれば全員よくなりますか?

全員ではありません。症状、画像、検査への反応、合併症などから適応と期待できる利益を評価します。タップテストで変化がない場合も、結果だけで完全に除外するものではありません。

病名が確定するまで、何もできませんか?

原因の評価を続けながら、転倒、嚥下、排尿、血圧、動作や介助の負担などに対応する方法を相談できます。生活で何に困っているかを具体的に伝えてください。

原因の整理を、自分に合う治療と支援につなげる

似た動きにくさでも、原因が違えば、薬の選び方、追加の検査、生活で優先する対応が変わります。薬剤の調整や水頭症の治療評価につながる場合もあれば、転倒・飲み込み・排尿などへの支援を早く整えることが役立つ場合もあります。

次の診察には、症状が出た順序、薬の変更との関係、今いちばん困る生活場面を持参してください。病名の意味と今できる対応を共有することで、本人に必要な治療や支援を選びやすくなります。

参考文献・公的情報

  1. Postuma RB, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2015;30(12):1591–1601. doi:10.1002/mds.26424. PDの診断基準
  2. International Parkinson and Movement Disorder Society. Diagnosis of Parkinson’s Disease. Position Paper. 2023. 診断と画像検査の位置づけ
  3. 日本神経学会. 神経内科の主な病気:パーキンソン症候群
  4. Wenning GK, et al. The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy. Mov Disord. 2022;37(6):1131–1148. doi:10.1002/mds.29005. MSA診断基準
  5. Höglinger GU, et al. Clinical diagnosis of progressive supranuclear palsy: The movement disorder society criteria. Mov Disord. 2017;32(6):853–864. doi:10.1002/mds.26987. PSP診断基準
  6. Armstrong MJ, et al. Criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration. Neurology. 2013;80(5):496–503. doi:10.1212/WNL.0b013e31827f0fd1. CBDの診断と臨床像
  7. McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017;89(1):88–100. doi:10.1212/WNL.0000000000004058. DLBの診断・管理に関する合意文書
  8. 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル:薬剤性パーキンソニズム. 2022年2月改定. PMDA掲載マニュアル
  9. Nakajima M, et al. Guidelines for Management of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (Third Edition). Neurol Med Chir (Tokyo). 2021;61(2):63–97. doi:10.2176/nmc.st.2020-0292. 正常圧水頭症の診療ガイドライン
  10. Morbelli S, et al. EANM practice guideline/SNMMI procedure standard for dopaminergic imaging in Parkinsonian syndromes 1.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2020;47:1885–1912. doi:10.1007/s00259-020-04817-8. DAT等の画像診断ガイドライン
  11. 日本神経学会監修. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 第Ⅲ編 第1章「診断,予後」. MRI・MIBG等の役割
  12. 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ

医学情報の確認日:2026年11月7日。診断基準は専門的な診察と検査で用いるもので、家庭での項目数による判定には使いません。