ALSが心配な方へ/受診前の情報
「ALSかもしれない」と不安になったとき
筋肉のぴくつき、手足の違和感、話しにくさを検索して、ALSにたどり着くことがあります。症状を一つずつ照合しても、画面上では診断できません。このページでは、急いで相談したい変化と受診時に伝える内容を、症状別の詳しい記事とともに案内します。
「ALSかもしれない」という不安と、診察上の疑い
ぴくつきを見てALSが心配になったことと、医師が診察所見からALSを疑うことは、同じ意味ではありません。医師は、症状の経過、筋力や反射などの診察所見、必要な検査を合わせて判断します。検索結果や家庭での筋力テストから、自分に診断名をつけることはできません。
一方、「不安になっただけだから受診しなくてよい」と決めるのも早計です。実際に動作がしづらくなっている、変化が続く、生活に支障があるなら、ALS以外の原因も含めて相談する理由があります。受診時には「いつから」「どこに」「何が起き、何がしづらくなったか」を伝えると、医師が経過を追いやすくなります。
ALSは、筋肉を動かす神経が障害され、筋力低下や筋萎縮が進む病気です。ぴくつきが見られることもありますが、ぴくつき一つで診断する病気ではありません。感覚の症状が目立つ場合には別の原因も考えます。ただし、しびれがあるというだけでALSを否定することもできません。
受診を急ぐ変化
顔のゆがみ、片側の手足の急な脱力、突然ろれつが回らない・言葉が出ないなどが起きた場合は、脳卒中などの緊急対応が必要なことがあります。日本では119へ連絡してください。強い呼吸困難や意識の変化がある場合も、記事を読み続けず救急へ相談してください。
急な変化とは別に、次のような症状が続く、または悪化する場合は、早めに医療機関へ相談してください。これらはALSだけに特有ではなく、治療できる別の病気が関係することもあります。
- 片手でボタンを留める、箸を使う、物を握るといった動作が以前より難しい。
- 片足のつま先が上がりにくく、引っかかりや転倒が増えている。
- 筋肉の痩せとともに、実際に力が入りにくくなっている。
- 周囲から聞き返されることが増えた、水分でむせる、飲み込みにくい。
- 横になると息苦しい、呼吸のしづらさが出てきた。
変化の速さは人によって異なります。「数週間待たないと受診対象にならない」という意味ではありません。今困っていることがあれば、その時点で相談できます。
気になる症状をどう見るか
筋肉がぴくつく
線維束性収縮と呼ばれるぴくつきは、ALSでも、疲労や睡眠不足などがある人でも起こります。ぴくつきの回数や場所を画面越しに見ても、原因は分かりません。続くぴくつきに、実際の筋力低下や筋萎縮が伴うかを含め、気になるなら診察で確認してください。
手足がだるい、しびれる
「だるい」「力が出ない感じがする」という感覚と、物を持てない・つま先を上げられないといった動作の変化は区別して伝えます。しびれや痛みが中心なら、脊椎や末梢神経の病気なども検討されます。しびれがあっても、力が落ちているなら、その変化も一緒に相談してください。
喉や舌、話し方が気になる
喉が詰まる感じや舌の細かな動きだけでは原因を決められません。水分で実際にむせるか、食事に時間がかかるか、家族などに聞き返される回数が増えたかは、診察で役立つ情報です。急にろれつが回らなくなった場合は前述の救急の目安を優先してください。
同じ「ぴくつき」「しびれ」でも、随伴する症状と経過で見方は変わります。下の症状別の記事では、それぞれをもう少し詳しく説明しています。
何科を受診するか、何を伝えるか
進む筋力低下や筋萎縮、話しにくさ、飲み込みにくさが心配な場合の相談先は脳神経内科です。予約や紹介状の取り方が分からなければ、かかりつけ医に相談しても構いません。しびれや首・腰の痛みが中心なら、その症状も含めて受診先を選びます。
受診前に短く書いておきたいこと
- いつから:最初に気づいた時期、急に起きたか徐々に変わったか。
- どこに:最初の部位と今困っている部位。右左も分かれば記す。
- 何が変わったか:日常の動作で困ること、周囲に気づかれた変化、良くなったり悪くなったりするか。
例えば「右手が変」より「春ごろから右手でペットボトルのふたが開けにくい。ボタンは留められる」の方が、経過を共有しやすくなります。むせが気になるなら「水分で週に何度かむせる」のように書けます。「ALSが心配です」と率直に伝えて構いません。
鏡で筋肉を何度も比べる、舌を撮影し続ける、握力やつま先立ちを繰り返すと、日常の変化がかえって見えにくくなることがあります。記録するのは診察で伝えたい点だけで十分です。自己チェックが止まらないときの考え方も別記事にまとめています。
診察と検査で分かること
脳神経内科では、症状の始まり方や広がりを聞き、筋力、筋萎縮、反射、話し方などを診ます。その上で必要なら、針筋電図・神経伝導検査、MRI、血液検査などを組み合わせます。筋電図は筋肉を動かす神経の異常を調べる手がかりとなり、画像や血液の検査はALSに似た別の原因を探すためにも使われます。全員に同じ検査が必要というわけではありません。
初期には一度の診察や一つの検査だけで結論が出ないこともあります。「異常なし」と言われたときは、何を確認した結果か、どのような変化があれば再受診するかを聞いておくと、その後の判断に役立ちます。経過観察になった場合も、次回の時期と、早く連絡した方がよい症状を確認してください。
診察、筋電図、神経伝導検査、画像・血液検査の役割。
頸椎や末梢神経など、区別が必要な原因。
一回で判断がつかない場合と経過観察の意味。
結果の範囲と、症状が変わったときの相談。
専門医からALSの可能性について説明を受けている場合は、診断や検査の段階を主治医に確認してください。「疑い」という言葉だけで、診断が確定したかどうかは分かりません。診断基準の説明も参照できます。
症状から詳しく調べる
このページは受診前の入口です。症状ごとの細かな違いや検査の解釈は、該当する記事で確認できます。
線維束性収縮と筋力低下をどう区別して伝えるか。
感覚症状が中心の場合に考えること。
握力、つまずき、左右差が気になるとき。
話し方や食事の変化を受診時にどう伝えるか。
ぴくつきが続き、不安が強い場合の情報。
何を調べ、結果をどう読む検査か。
よくある質問
筋肉がぴくつくだけでALSと分かりますか?
分かりません。ぴくつきはさまざまな理由で起こり、医師は筋力、筋萎縮、反射、経過なども確認します。続く場合や、動作のしづらさがある場合は相談してください。
しびれがあればALSではありませんか?
そうとは言い切れません。ALSは通常、運動の障害が中心ですが、しびれの原因が別にある場合もあります。しびれと筋力低下の両方があるなら、両方を伝えてください。
一度「異常なし」と言われたのに不安です。
検査の結果が何を示し、何を調べていないかを主治医に尋ねてください。新たな筋力低下、むせ、話し方や呼吸の変化があれば、指示された時期を待たずに連絡します。検査後も不安で眠れないほどつらい場合は、そのこと自体も医療者に相談できます。
参考資料
- 難病情報センター:筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 日本神経学会:筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2023
- NHS:Motor neurone disease(症状と検査)
- Gold Coast criteria for amyotrophic lateral sclerosis(診断基準)
- Stroke Association:脳卒中の症状
本ページは一般的な情報の提供を目的としています。個別の診断や検査の要否は診察で判断されます。症状が急に出た場合や呼吸が苦しい場合は、本文の救急の目安に従ってください。
