成人のSMAと移行期医療|転院・治療継続・仕事と暮らしの準備

Cell Healing|成人・移行期のSMA

診療の引き継ぎと、
続けたい暮らしを一緒に準備する

小児科から成人の診療へ移るとき、進学・就職・転居で通院先が変わるとき。SMAの治療を続けるために、受け入れ先、次の治療予定、必要な介助、生活上の希望を整理します。すでに成人の診療を受けている方も、通院の負担を相談する際に使えます。

医療情報確認日:2026年10月25日
治療に関する説明は主に、SMN1遺伝子の変化による5q SMAを対象としています。

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  1. 成人のSMAと病型の考え方
  2. 移行期医療・転院前に決める5つのこと
  3. 初回受診に向けて引き継ぐ情報
  4. 治療を続けるための通院準備
  5. 本人にとって大切な目標を共有する
  6. 成人後もつなげたい診療・ケア
  7. 学校・仕事・暮らしの調整
  8. 本人の意思・家族との分担・将来の相談
  9. 成人診療への引き継ぎ・通院相談メモ
  10. よくある質問
  11. 参考文献・公的資料

成人のSMAには、小児期発症の方もいる

成人のSMAには、小児期に発症して成人になった方と、成人期に症状が現れた方がいます。「成人だからⅣ型」とは限りません。診断された年齢と、症状が始まった年齢も分けて確認します。[1]

これからの診療では、病型・遺伝子検査・治療歴に加えて、現在の動作、呼吸や栄養、通院の条件を共有します。SMAの基礎知識と国内の治療薬については、SMAの総合案内をご覧ください。

移行期医療・転院前に決める5つのこと

移行期医療は、小児期からの診療を成人期の医療につなぎ、生涯にわたる治療や生活を支えるための準備です。転院する時期と方法は、現在の担当医、受け入れ先、本人・家族で相談します。[2]

  1. 受け入れ先と初回予約:SMAを診る診療科、担当医、初診日、紹介に必要な手続きを確認する。
  2. 次の投与・処方・検査:次回予定までの担当を決め、受け入れ先で同じ治療や評価に対応できるか確認する。
  3. 専門診療の分担:呼吸、栄養・嚥下、整形外科、リハビリなどの継続先を確認する。
  4. 体調不良時の連絡先:移行中と移行後、それぞれの平日・夜間休日の相談先を確認する。
  5. 連絡の調整役:紹介元と紹介先の調整を誰に相談するか、未決定の項目をいつ確認するか決める。

診察でそのまま聞ける質問

「次の治療と検査は、いつ・どこで受けますか。初診までに体調が変わったら、どちらの病院へ連絡すればよいですか」

2026年の米国の成人SMA患者への調査では、移行前の話し合い、準備状況の確認、書面での計画などが、良好な移行経験という回答と関連していました。日本の診療体制とは異なる調査ですが、転院前から準備を重ねる重要性を考える資料になります。[3]

初回受診に向けて引き継ぐ情報

診断・治療に関する資料は、現在の医療機関に引き継ぎを依頼します。本人・家族は、普段の過ごし方や介助方法を補足すると、初回受診の準備を相談しやすくなります。以下は確認するための整理例です。

表は横にスクロールできます。

紹介元・紹介先と確認しておきたい内容
項目共有したい情報確認のポイント
診断・検査診断名、発症時期、遺伝子検査の報告書、分かる範囲のSMN2コピー数口頭の説明だけでなく、検査報告書を引き継げるか
治療歴薬の名称・製剤、投与方法、開始日、最終投与日、次回予定、副作用や変更理由過去の遺伝子治療も含め、治療歴の抜けがないか
評価の記録運動機能評価、呼吸・睡眠の検査、体重・栄養、嚥下評価など検査日と、そのときの補助具・介助の条件
脊柱・手術側弯、脊柱固定などの手術歴、画像、これまでの髄腔内投与の方法処置に必要な情報を医療機関同士で共有できるか
日常のケア呼吸・排痰の機器、栄養方法、車いす、座位や移乗の方法必要な機器・物品、姿勢、介助人数を事前に伝えたか
生活・連絡先学校・仕事、通院手段、本人の希望、支援者、緊急連絡先受診日に必要な支援と、情報を共有してよい相手

資料が手元にない場合は、分からない項目を埋めようとせず、「検査を受けた病院」「治療を受けた時期」から担当者に伝えてください。資料の確認方法を相談できます。

治療を続けるための通院準備

治療の選択では、医学的な効果と安全性に加え、本人が感じる負担や生活の質も話し合うことが推奨されています。通院が難しいときは、何が障壁になっているかを担当医に伝えてください。[4]

診察・処置の前に伝えておくこと

  • 移動と移乗:車いすから診察台への移り方、必要な介助人数やリフトの有無、使えるトイレ。
  • 姿勢と待ち時間:長く座ると痛む、横になると苦しい、頭や体幹の支えが必要、といった条件。
  • 付き添いと移動手段:同行できる人、利用できる交通手段、往復にかかる時間。
  • 受診当日の流れ:採血・評価・診察・処置の順序、食事や休息、帰宅後の予定。

例えばスピンラザでは、腰から針を入れて髄液のある空間に薬を投与する方法が用いられ、投与前後の検査や観察も必要です。脊柱の変形や手術歴、取れる姿勢は事前に伝え、投与方法や当日の過ごし方を相談します。[5]

負担は「困っている場面」に分けて相談する

「通院が大変」に加え、「移乗の介助者が確保できない」「待合室で姿勢を保てない」「仕事を休む日数が多い」など、場面を伝えます。予約時間、同日に行える検査、地域の医療機関との分担など、実施可能な方法を確認してください。

予定に間に合わないと分かったら

処方や投与の予定日を過ぎる前に、治療施設へ連絡します。日程の変更、薬の切り替えや中断は、薬ごとの条件と体調を踏まえて担当医と決めてください。国内の治療薬の違いは、SMA総合案内の治療薬一覧で確認できます。

本人にとって大切な目標を共有する

診察では、運動機能の評価と、本人が続けたい生活の両方を伝えます。治療の利益と負担を一緒に検討するために、「何ができると生活が変わるか」を具体的にすることが役立ちます。[4]

  • 手を使う:スマートフォンの操作、パソコン入力、食具を口まで運ぶ動作。
  • 姿勢・移動:楽に座れる時間、移乗のしやすさ、移動後の疲労。
  • 参加:授業、仕事、外出、趣味に使える時間や、必要な休憩。

これらは目標の例です。同じ動作でも、補助具・介助・休憩で負担は変わります。記録にはその条件も添え、薬の効果は診察や継続した評価と合わせて確認します。

成人後もつなげたい診療・ケア

治療薬の担当が決まっても、呼吸や姿勢などの相談先が一緒に引き継がれたとは限りません。次の担当が決まっているかを確認してください。

呼吸・睡眠・咳と、食事・栄養

SMAでは、咳の弱さ、感染時の呼吸の負担、睡眠中の浅い呼吸などが問題になることがあります。呼吸の検査や機器を使っている方は、現在の管理方法と体調不良時の対応を引き継ぎます。[6] 食事・飲み込み・体重の変化は、SMAの食事・栄養の項目も参考に、担当医や専門職へ伝えてください。

姿勢・関節・骨と、使いやすい環境

側弯、関節の動かしにくさ、痛み、骨折への注意なども継続して確認します。理学療法士・作業療法士などと、車いすやクッション、机、装具、動作や介助の方法を調整します。歩行の可否にかかわらず、座る・手を使う・生活するための支援が対象です。[7]

体調が変わったときの対応は、神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイドで、普段の状態や機器を伝える準備も確認できます。

学校・仕事・暮らしの調整

進学・就職・転居の際は、新しい場所での動線と、治療・介助の予定を一緒に確認します。以下は、本人の希望と実際の負担を伝えるための相談例です。

  • 通学・通勤:移動距離、混雑、段差、トイレ、移動後に必要な休息。
  • 授業・作業:長く同じ姿勢を取る負担、机や入力機器、介助が必要な場面。
  • 治療日:通院のための欠席・休暇、検査や処置の前後に調整したい予定。
  • 一人暮らし:起床・食事・入浴・就寝の介助、支援者が来られない日の連絡先。

仕事では、業務内容や勤務時間を主治医に伝え、必要な就業上の配慮を確認したうえで、職場の担当者や産業保健スタッフと調整します。厚生労働省の両立支援指針も、本人・医療機関・職場の連携を重視しています。[8]

学校・仕事・住まいの詳しい確認事項は、神経筋疾患の学校・仕事・将来設計にまとめています。

医療費・福祉サービスの確認先

年齢、転居、学校・仕事や介助の状況が変わる場合は、利用中の制度・手続きも確認します。病院の医療ソーシャルワーカーや自治体窓口に、「何が変わる予定か」「いつまでに準備が必要か」を伝えてください。

療養生活や就労の相談先を探すときは、都道府県・指定都市の難病相談支援センターも利用できます。[9] 制度の種類は医療費・福祉・在宅支援の総合案内、在宅の役割分担は在宅チームの作り方をご覧ください。

本人の意思・家族との分担・将来の相談

成人の診療へ移る準備は、家族の支援をなくすことではありません。本人が決めたいこと、説明や予約を手伝ってほしいこと、家族に共有してよい情報を話し合います。成人SMAの患者向け資料でも、介助、生活の自立、心の健康、将来設計などが取り上げられています。[10]

例えば、診察ではまず本人の希望を伝え、家族が治療歴や日常の変化を補足する方法もあります。予約・書類・移動の手配が一人に集中している場合は、病院の相談員や支援者に分担を相談してください。

妊娠・出産を考えるとき

本人またはパートナーの妊娠を希望する場合は、早めに担当医へ伝えます。病気や遺伝についての相談と、現在の薬に必要な注意を分けて確認します。例えばリスジプラムには生殖・妊娠に関する注意があり、男女とも治療計画の相談が必要です。自己判断で薬を止めず、主治医と必要に応じて産婦人科・遺伝カウンセリングにつなげてください。[11]

成人診療への引き継ぎ・通院相談メモ

次のメモをコピーし、分かるところから整理してください。紹介状や検査報告書に添えて、未確認の項目を相談するために使えます。記入・送信用の欄ではありません。

このメモには診療情報が含まれます。保管・共有する相手や方法を確認して使ってください。日々の症状や動作の変化は、SMA総合案内の受診前メモで整理できます。

よくある質問

成人になったら、すぐに転院する必要がありますか?

現在の施設の方針と、成人期に必要な診療、受け入れ先の体制を確認して相談します。紹介先が決まる前に受診を終えることを自己判断で決めず、初診日と、それまでの治療・処方の担当を確かめてください。

治療薬を受けられる病院なら、すべてのケアを引き継げますか?

受けられる診療は施設によって異なります。呼吸・嚥下・整形外科・リハビリや在宅支援の相談先まで、まとめて確認してください。専門施設と地域の医療機関で分担する場合も、連絡方法を決めておきます。

移動や介助の負担も、医師に相談してよいですか?

相談してよい内容です。治療を続けるうえで困っている場面と、本人が望む方法を伝えてください。看護師、リハビリ職、医療ソーシャルワーカーなどにつないでもらい、調整できることを確認します。

本人が一人で病気や治療を説明できないと、移行は難しいですか?

一人で全てを説明することを目標にする必要はありません。本人が伝えたいことを短いメモにし、家族や支援者に補足してもらう方法もあります。本人の希望を確認しながら、必要な支援を続けます。

参考文献・公的資料

海外資料は成人SMAの診療・生活支援の参考にしています。国内の薬の条件は日本の電子添文・適正使用資料を、制度の利用条件は各窓口で確認してください。

  1. 難病情報センター.脊髄性筋萎縮症(指定難病3).発症時期・病型の基礎知識。
  2. 国立精神・神経医療研究センター 神経筋疾患ポータルサイト.お役立ち情報「移行期医療」.
  3. Eisenman LE, Wise AR, Curry MA. Assessment of Transition Plan Implementation and Provider Engagement Among Adults Living with Spinal Muscular Atrophy (SMA): Findings from a Cross-Sectional Survey. Neurol Ther. 2026;15:2551–2566. doi:10.1007/s40120-026-01012-z. 米国の18〜29歳を対象とした横断調査。
  4. Schroth MK, et al. Spinal Muscular Atrophy Update in Best Practices: Recommendations for Treatment Considerations. Neurol Clin Pract. 2025;15(1):e200374. doi:10.1212/CPJ.0000000000200374. 治療の意思決定に関する提言(抄録を参照)。
  5. スピンラザ髄注12mg・28mg・50mgの適正使用のために(2025年11月改訂、PMDA掲載PDF).検査・投与手技・投与後の観察に関する情報。
  6. Cure SMA.Breathing Risks & Care.
  7. Cure SMA.Musculoskeletal.
  8. 厚生労働省.治療と就業の両立支援指針(概要、2026年).
  9. 難病情報センター.都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧.
  10. Cure SMA.Living Unlimited with SMA: A Booklet for Adults with SMA(2023年、英語PDF).成人の生活、介助、将来設計の参考。米国の制度は日本にそのまま当てはまりません。
  11. PMDA.エブリスディドライシロップ60mg/エブリスディ錠5mg 電子添文(2025年5月改訂).生殖・妊娠に関する注意。

このページは、受診や生活の相談を準備するための一般情報です。個別の診断、薬の適応・変更、ケアの方法は、担当の医療機関で確認してください。