MDS-UPDRSとは?パーキンソン病の評価とヤール分類との違い

MDS-UPDRS・ヤール分類・診察での評価

点数の意味を知ると、次に相談したいことが見えてくる

「MDS-UPDRSが30点と言われたけれど、どのくらいの状態なのか」「ヤール分類と何が違うのか」「診察では動けるのに、家では困る時間がある」。評価の数字だけでは、生活との関係が分かりにくいことがあります。

MDS-UPDRSは、パーキンソン病の症状や生活への影響を4つの領域から整理する評価尺度です。どの領域の点数か、どのような服薬条件で測ったかを確かめると、治療やリハビリ、生活支援で取り組みたいことを相談しやすくなります。

対象:パーキンソン病の評価結果を知りたい方、診察時と普段の状態に差がある方とご家族|医学情報の確認日:2026年11月7日

評価結果を聞いたら、まずこの3点を確認します

  • 今回の点数は、MDS-UPDRSのどのPartですか。
  • 診察時の運動評価は、オン・オフのどちらで、薬を飲んでからどのくらいでしたか。
  • 前回からの変化は、実生活で困っている動作や時間帯とどう関係しますか。

このページでは、結果を読むための考え方を説明します。正式な採点は、評価票の手順に沿って行います。

MDS-UPDRSとは?症状と生活への影響を整理する評価尺度

MDS-UPDRSは、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)が従来のUPDRSを改訂した評価尺度です。日常生活での非運動症状と運動症状、診察でみる運動所見、運動合併症を扱い、診療や臨床研究で使われます。[1]

英語版の開発・検証研究は2008年に報告されました。日本語の公式版もあり、2014年には日本人のパーキンソン病患者365人を対象とした検証結果が公表されています。日本語版を使う場合も、所定の説明や手順に沿って評価することが大切です。[2][3]

この尺度は、症状の負担を詳しく把握するためのものです。パーキンソン病かどうかを、点数だけで確定する検査ではありません。診断では、症状の経過、神経学的な診察、必要に応じた検査などを合わせて判断します。[8]

診断や検査の全体像は、パーキンソン病の検査・診断の進め方で整理しています。

4つのPartは、それぞれ何を評価する?

MDS-UPDRSは4部構成です。本人・ご家族から聞く生活の情報と、評価者が診察で確かめる情報を組み合わせます。各Partの対象と点数の範囲は、次のとおりです。[1][2]

Part 主にみること 情報の集め方 点数の範囲
Part I
日常の非運動症状
睡眠、気分、認知、便通など、運動以外の症状による生活への影響。 評価者による聞き取りと、本人・必要に応じてご家族が答える質問。 0〜52点
Part II
日常の運動症状
身の回りの動作や移動など、日常生活での動きにくさ。 本人を中心とした回答。必要に応じてご家族が補助し、評価者が確認。 0〜52点
Part III
診察時の運動所見
動作の遅さ、固さ、ふるえ、歩行や姿勢などの所見。 所定の手順による診察を、評価者が採点。 0〜132点
Part IV
運動合併症
オフやジスキネジアなどの時間、変動、生活への影響。 本人・ご家族の情報と診察をもとに、評価者が判断。 0〜24点

個々の採点は0〜4点です。Part IIIは18の項目について左右・身体部位などを分けて採点するため、33の採点欄があります。表は評価の概要であり、正式な質問文や採点基準を掲載したものではありません。

「運動スコア」という言葉だけでは、どの評価か分からないことがあります。
論文や結果説明で「MDS-UPDRS Part III」と書かれていれば、診察時の運動所見を指します。生活動作をみるPart IIとは、役割も点数の範囲も異なります。

「MDS-UPDRSが何点か」は、Partを確かめて読む

同じPartでは、一般に低いほど症状の負担が小さい

点数は、その領域で評価された症状や支障の程度を表します。同じPart・同じ評価条件であれば、一般に低いほうが負担の小さい状態です。ただし、点数は「健康な状態から何%離れているか」を表す割合ではありません。たとえば、点数が半分になったことを、そのまま「病気が半分治った」と読み替えることはできません。

4部を一つの総合点だけにまとめない

開発時の検証では、各Partを個別に報告することが勧められています。さらに7,466例分の評価データを使った再検討でも、Part IIIとほかのPartを足し合わせた点数の妥当性は支持されませんでした。[2][4]

結果を聞くときは、「合計が何点」だけで終えず、Part I・II・III・IVのどこに負担があるのか、前回からどこが変わったのかを確かめます。たとえば、診察での動きが改善しても、眠気や生活上のオフが残っていれば、その困りごとは別に相談できます。

従来のUPDRSとは区別する

従来のUPDRSとMDS-UPDRSには関連がありますが、質問や構成が異なります。古い診療記録や論文と比べる際は、尺度名とPartの両方を確認します。異なる尺度の点数を、そのまま同じものとして差し引かないようにします。[1][2]

ヤール分類との違い|大きな段階と、詳しい症状評価

ヤール分類(Hoehn and Yahr分類)は、運動症状の広がり、姿勢の安定性、身体的な自立の程度などから、大きな段階を捉える方法です。MDS-UPDRSは、複数の領域をより細かく評価します。[1][5]

比べる点 ヤール分類 MDS-UPDRS
捉え方 運動症状と身体的自立をもとに、段階を大きく把握する。 4つのPartから、症状や生活への影響を詳しく把握する。
姿勢・バランス 段階を判断するうえで重要な要素。 運動所見の一部として評価し、ほかの領域も合わせてみる。
非運動症状 段階だけでは、睡眠・気分などの負担を十分には表せない。 Part Iで、非運動症状による生活への影響を扱う。
変化の捉え方 同じ段階の中でも、動作や生活が変わることがある。 段階が変わらない間の、領域ごとの変化も確認できる。

「MDS-UPDRSが何点ならヤール何度」という一対一の換算はできません。同じヤール分類でも、ふるえ、動作、睡眠、オフの負担は人によって異なります。どちらも、点数や段階だけで将来の進み方を言い切るためのものではありません。

各段階と生活支援の目安は、ヤール分類・プルテスト・転倒予防と生活支援をご参照ください。

オン・オフと服薬のタイミングで、点数の読み方が変わる

オンは薬の効果が得られて比較的動きやすい状態、オフは効果が十分に得られず動きにくい状態を指します。Part IIIは診察時に観察した状態を評価するため、オンかオフか、レボドパを飲んでからどのくらい経ったかが重要です。[1]

一方、Part I・II・IVは、基本的に評価日を含む過去1週間の状態を扱います。Part I・IIの公式の通常形式には、オン用・オフ用の別々の採点欄はありません。変動がある場合は、普段の状態を回答したうえで、困る時間帯や具体的な出来事を補って伝えます。[1]

確かめる条件 診察で確認したいこと
尺度とPart 従来のUPDRSかMDS-UPDRSか。比較しているのは同じPartか。
診察時のオン・オフ 前回と今回が同じ状態か。異なる場合、その違いが記録されているか。
薬の条件 最終服薬時刻、薬の種類や量の変更、効き始め・切れ方の変化。
体調や併存する問題 痛み、けが、関節の問題など、動作に影響する事情がなかったか。
評価の手順 所定の方法で行ったか。評価者や環境が変わった場合、その点も踏まえて比べているか。

評価のために、自己判断で薬を抜かないでください。
オン・オフを調べる必要がある場合は、医療機関が目的に合わせて服薬と受診の手順を指示します。抗パーキンソン病薬の急な中断は危険があるため、普段の薬を変える前に必ず確認します。[7]

オフの意味や時間帯の捉え方は、ウェアリングオフ・オンオフ現象で解説しています。

何点変われば改善?小さな変化をどう受け止めるか

評価には、「数字が変わったこと」と「本人にとって意味のある変化か」という、二つの見方があります。点数の差を読むときは、同じPart・服薬条件で比べたかを確かめ、どの症状が変わったのかを見ます。

Part IIIでは、臨床的に意味のある変化の研究がある

2015年の研究では、260人・728組の評価をもとに、MDS-UPDRS Part IIIで臨床的に意味のある最小の変化を推定しました。その研究での推定値は、改善方向で3.25点の低下、悪化方向で4.63点の上昇でした。[6]

これは、その研究で得られた目安です。すべての人・すべての評価条件で、一定の点数を境に改善と未改善を分けられるわけではありません。Part I・II・IVや従来のUPDRSに、この値をそのまま使うこともできません。

数点の差を、生活のどの変化につなげて読むか

  • 変わった動作:何がしやすくなったか、どの場面ではまだ困るか。
  • 続いている時間:診察時だけの変化か、日常でも続いているか。
  • 生活での利益:手助けが減った、着替えの負担が減った、外出を続けやすくなったなど。
  • 併せて確認したいこと:オフ、ジスキネジア、眠気など、別の負担が増えていないか。

診察時の点数が下がった場合も、それだけで神経の再生や、病気の進行が止まったことまで示すわけではありません。評価条件と生活の変化を記録し、経過を追うことで、次の方針に役立つ変化かを確かめていきます。

論文の「治療群と比較群の差」と、一人の方の「前回と今回の差」も区別して読みます。運動療法の研究と日常への取り入れ方は、パーキンソン病の運動療法・リハビリで整理しています。

診察では動けるのに、家では困るとき

診察時のPart IIIと、生活上のPart II・運動合併症のPart IVは、異なる側面を評価します。診察ではオンで動けていても、朝の着替えや次の服薬前の移動に支障があることは、両立します。

伝え方の例
「今日は薬が効いていて歩けていますが、夕食前には椅子から立つのに家族の手が必要な日があります。何時ごろ起きて、どのくらい続くかをメモしてきました」

このように、いつ・何に・どれくらい困るかを添えると、診察時に見えなかった負担を共有できます。点数が比較的低くても、転倒や生活上の支障があれば、その内容を相談してかまいません。

ご家族が補足するときは、「本人は着替えに時間がかかることがつらい」「家族は移動時の転倒が心配」など、本人の感じ方と観察した出来事を分けて伝えると整理しやすくなります。

記録には、診察・服薬・症状のメモも使えます。すべての症状を細かく数え続ける必要はありません。まず、困っている場面を一つか二つ選んでみましょう。

診察前に準備すると、評価を相談に生かしやすくなる

  1. 過去1週間を振り返る:動きやすい時間と困る時間、生活への影響を短くまとめる。
  2. 薬の情報をそろえる:薬の名前・量・服薬時刻と、最近の変更を分かるようにする。
  3. 優先したいことを決める:「朝の着替えを楽にしたい」「家の中を安全に移動したい」など、一つの目標を添える。
  4. 結果と次の対策を聞く:負担のある領域に対して、薬、リハビリ、環境や介助をどう調整できるか相談する。

普段の様子を動画で伝える場合は、安全に撮れる範囲の短い記録で十分です。撮影のために、転びそうな動作を再現する必要はありません。

プルテストなど、体を支える準備が必要な診察手技を、ご自宅で採点のために行わないでください。Part IIIは手順に沿った診察が必要です。本人・ご家族は、日常で起きたことを伝える役割を担えます。

コピーして使える、評価結果と生活の相談メモ

以下は、結果説明を記録するための独自のメモです。MDS-UPDRSの公式評価票や自己採点用の質問表ではありません。分からない欄は空欄のままでかまいません。

【評価と診察のメモ】 受診日: 今回使った尺度・Part: 医療機関から説明された点数: 前回の点数・評価日(分かれば): 【診察当日の条件】 最後に薬を飲んだ時刻・診察の時刻: 診察時の動きやすさ(オン・オフ・不明): 最近の薬の変更・痛み・けがなど: 【過去1週間に困ったこと】 最も困った動作や症状: 起きやすい時間帯・続く長さ: 必要だった手助け・転倒などの出来事: 本人の感じ方/家族が観察したこと: 【今回相談したいこと】 生活でできるようになりたいこと: 点数の変化は、どの症状の変化ですか: 薬・リハビリ・生活環境で調整できることはありますか: 次回は、何をどの条件で確かめますか:

よくある質問

MDS-UPDRSが30点なら、重症ですか?

まず、どのPartの30点かを確認します。Partごとに対象と満点が異なるため、数字だけでは判断できません。同じPartでも、困っている症状や服薬条件と合わせて説明を受けます。

ヤール分類が同じなら、改善していないのでしょうか?

同じ段階の中でも、動作や生活の負担が変わることがあります。MDS-UPDRSの領域ごとの変化と、「何がしやすくなったか」「手助けは変わったか」を合わせて確認します。

診察時だけ調子がよく、普段のつらさが伝わりません

困る時間帯、服薬との関係、具体的な動作、続く長さをメモして持参します。診察時のPart IIIに、日常生活のPart IIや変動を扱うPart IVの情報を合わせることが役立ちます。

家族が代わりに回答してもよいですか?

公式の手順には、本人の回答をご家族が補助したり、観察した情報を評価者に伝えたりする場面があります。回答方法は医療機関の案内に従い、本人の感じ方と家族の観察を分けて伝えましょう。

評価を正確にするため、受診前に薬を抜いたほうがよいですか?

自己判断で中断しないでください。オフでの評価が必要な場合は、医療機関から具体的な指示を受けます。指示が分からないときは、受診前に確認します。

正式な日本語の評価票は、どこで確認できますか?

MDS公式サイトに日本語版の案内があります。正式な評価票の入手と利用条件は、公式案内をご参照ください。結果の解釈や実施については、担当の医療機関に相談します。[1]

点数を、暮らしの中で取り組める対策につなげる

MDS-UPDRSを知る利点は、困りごとのある領域や、変わった点を言葉にしやすくなることです。診察では動ける時間の様子と、家で困る時間の様子をそろえると、次に相談したいことが具体的になります。

「朝の着替えをもう少し楽にしたい」「家の中を安心して移動したい」。その目標に対して、薬の調整、リハビリ、道具や環境、手助けの方法をどう組み合わせるかを相談していきましょう。評価結果は、その相談を支える共通の情報になります。

次の診察には、今回のPartと点数、服薬の条件、過去1週間で一番困った場面を一つのメモにまとめてみてください。そこから、生活で確かめたい変化を医療者と共有できます。

参考文献・一次資料

  1. International Parkinson and Movement Disorder Society. MDS-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)公式案内.尺度の構成、公式評価票、翻訳版と利用条件。
  2. Goetz CG, et al. Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS): Scale presentation and clinimetric testing results. Mov Disord. 2008;23(15):2129–2170. doi:10.1002/mds.22340.
  3. Kashihara K, et al. Official Japanese Version of the International Parkinson and Movement Disorder Society–Unified Parkinson’s Disease Rating Scale: Validation Against the Original English Version. Mov Disord Clin Pract. 2014;1(3):200–212. doi:10.1002/mdc3.12058.
  4. Goetz CG, et al. It Is as It Was: MDS-UPDRS Part III Scores Cannot Be Combined with Other Parts to Give a Valid Sum. Mov Disord. 2023;38(2):342–347. doi:10.1002/mds.29279.
  5. Goetz CG, et al. Movement Disorder Society Task Force report on the Hoehn and Yahr staging scale: status and recommendations. Mov Disord. 2004;19(9):1020–1028. doi:10.1002/mds.20213.
  6. Horváth K, et al. Minimal clinically important difference on the Motor Examination part of MDS-UPDRS. Parkinsonism Relat Disord. 2015;21(12):1421–1426. doi:10.1016/j.parkreldis.2015.10.006.
  7. National Institute for Health and Care Excellence. Parkinson’s disease in adults(NG71), Recommendations.抗パーキンソン病薬の急な中断を避ける勧告1.3.2・1.3.3。
  8. International Parkinson and Movement Disorder Society. MDS Position Paper: Diagnosis of Parkinson’s Disease.2023年。パーキンソン病の臨床診断の位置づけ。

本ページは、評価結果と診察での相談を理解するための一般的な情報です。個別の診断、採点、服薬や治療方針は、担当の医療機関と確認してください。