パーキンソン病の立ちくらみ・起立性低血圧|転倒・食事・薬との関係

立ちくらみ・食後のふらつき・血圧と転倒

ふらつく場面を知り、朝の移動や食後を過ごしやすくする

「立ち上がると目の前が暗くなる」「食後だけ力が抜ける」「薬が効いて動けるのに、ふらついて歩けない」。パーキンソン病では、動作やバランスの問題に、血圧の変動が重なっていることがあります。

起立性低血圧は、立ったときに血圧が下がる状態です。起きる時間帯、姿勢、食事や薬との関係を整理すると、原因の評価とともに、起き上がり方、食事、服薬、生活環境で調整できることが見えてきます。

対象:パーキンソン病で立ちくらみ・食後のふらつきがある方、転倒や失神が心配な方とご家族|医学情報の確認日:2026年11月7日

立ちくらみが出たら、まず安全な姿勢をとります

歩き続けず、周囲に助けを求め、安全に座るか横になります。血圧を測るために、そのまま立って我慢する必要はありません。[1]

呼びかけへの反応がおかしい、急な片側の麻痺や話しにくさ、強い胸痛・息苦しさがある場合は、いつもの立ちくらみと決めつけず119番へ連絡してください。[7]

起立性低血圧とは?「立った後の力の抜け方」にも注目する

立つと、重力によって血液が脚やお腹側に移動します。通常は自律神経の働きで血管や心拍が調整され、脳への血流が保たれます。この調整が十分に働かないと、血圧が下がったままになり、立ちくらみなどが起こります。[2]

目の前が暗くなる、気が遠くなる感覚だけでなく、次のような訴えが手掛かりになることもあります。[1][2]

  • 立つと力が抜ける、脚が支えにくくなる。
  • 視界がぼやける、頭が働きにくい感じがする。
  • 立っていると疲れやすい、気分が悪くなる。
  • 座る・横になることで楽になる。

はっきりしためまいがなくても、血圧が下がっている場合があります。転倒や失神の背景に関わることもあるため、原因が分からない転倒が続くときは、歩き方や筋力と合わせて血圧も相談します。[2]

パーキンソン病だけでなく、薬や体調が重なることがある

パーキンソン病では、自律神経による血圧調節の障害から「神経原性起立性低血圧」が起こることがあります。一方で、血圧が下がる理由を病気一つにまとめず、調整できる要因を探すことも大切です。[2][3]

  • 薬の影響:降圧薬・利尿薬、一部の抗パーキンソン病薬、抗うつ薬などが関わる場合があります。
  • 水分や体調の変化:飲水不足、発汗、下痢・嘔吐、感染、貧血などが悪化要因になります。
  • ほかの病気:心臓の病気などを含め、症状や診察に応じて別の原因も評価します。

薬を飲み始めた・量が変わった時期、食事量や水分が減った時期、発熱や下痢があった時期を伝えると、診察の手掛かりになります。[3][4]

薬の効き方が日によって変わる場合は、薬が効きにくい日と便秘・食事・体調の関係も参考になります。

診断の目安|普段の血圧が正常でも、立つ前後を比べる

一般的な診断の目安は、立ってから3分以内に、上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上、持続して低下することです。医療機関では、姿勢を変える前後の血圧と脈拍を、症状と合わせて確認します。[2][3]

場面 測定の例 一緒に確認すること
立つ前 横になって少なくとも5分安静にした後、血圧・脈拍を測る。 測定した姿勢、服薬や食事からの時間。
立って1分 安全に立てる条件で、血圧・脈拍を測る。 目の前が暗い、力が抜けるなどの症状。
立って3分 血圧・脈拍と、症状の変化を確かめる。 低下が続くか、立ち続けられるか。

上の表は医療機関での標準的な方法の例です。家庭で行う場合は、先に医療者へ安全性と方法を確認してください。失神・転倒のおそれがある方は、一人で立位測定を試さず、症状が出たら測定より安全確保を優先します。

「上の血圧が100以上あるから大丈夫」とは限りません。
たとえば、横になって130/80mmHgだった血圧が、立って105/75mmHgに下がった場合、上の血圧は25mmHg低下しています。絶対値に加えて、姿勢による下がり幅と症状を見ます。

横になったときの血圧が高い方などでは、下がり幅の解釈も個別に行います。また、座ったままの血圧が正常なことや、一度の測定で低下しなかったことだけでは、原因を決められません。食事・水分・薬・時間帯で結果が変わるためです。[2]

立った直後の短い変化や、3分を過ぎてからの低下が、通常の測定では捉えにくい場合もあります。症状が続くときは、医療機関で測定条件の見直し、傾斜台を使う検査、必要に応じた24時間血圧測定などを相談します。確認のために、自宅で無理に立ち続ける必要はありません。[2][3]

オフによる動きにくさとは、どう見分ける?

「足に力が入らない」「立つと動けない」という言葉だけでは、血圧低下か、オフによる動きにくさかを分けられません。起きた場面と感覚を、できるだけ具体的に伝えます。

起きていること 伝えたい内容 評価の手掛かり
立つと目の前が暗くなる・気が遠くなる 立ってから何秒・何分で起き、座るとどう変わるか。 姿勢に伴う血圧低下などを調べる。
次の服薬前に、こわばり・動作の遅さ・足の出にくさが増える 服薬時刻、効き始め、切れ方、動きやすい時間との違い。 オフの有無や、薬効の変動を調べる。
ふらつきに動悸・胸痛などが伴う、姿勢と関係なく起きる 症状の始まり方、持続時間、一緒に起きた症状。 心臓など、別の原因も含めて評価する。

これらは、相談内容を整理するための手掛かりです。オフと起立性低血圧は重なることもあり、時間帯だけでは診断できません。薬が効いている時間でも、立つときのふらつきが残るなら、その症状を別に伝えます。

オフの整理は、ウェアリングオフ・オンオフ現象、立ち上がる動作の問題は、椅子から立ち上がれないときの見直しで解説しています。

朝・食後・入浴・夜間|起きやすい場面に対策を合わせる

血圧が下がりやすい条件には、朝の起床、まとまった食事、暑さ、飲酒、長く立つことなどがあります。まず自分に多い場面を見つけ、生活の動き方を調整します。[1][2]

場面 見直せること 相談につなげる情報
朝、ベッドから起きるとき 横になった姿勢から、いったん座って様子を見てから立つ。必要な支えや見守りを用意する。 起床直後か、服薬後か。座っていても症状があるか。
食後 一度に多く食べる場合は、1日の必要量を保ちながら食事を分ける方法を相談する。食後すぐの一人での移動を見直す。 食事の量・内容、食後どのくらいで起きるか。
入浴・暑い場所 熱い湯や長時間の入浴を避ける。浴室椅子、室温、入浴後の立ち上がり方を整える。 入浴中か、出るときか、着替え中か。
夜間のトイレ 急いで起きず、照明・支え・動線を整える。必要に応じてベッド近くの排泄方法を相談する。 眠気やオフ、夜間の薬、転びかけた場所。
立ち仕事・待ち時間 座れる場所や休憩を用意する。長く立ったままになる予定を調整する。 何分ほどでつらくなるか、座ると楽になるか。
運動中・運動後 症状がある日は無理に立位練習を続けず、姿勢や負荷を担当者と調整する。 運動の種類、暑さ、終了後の立ち上がりとの関係。

食後のふらつきは、食事性低血圧も相談する

食後には、お腹側への血流の変化などによって血圧が下がることがあります。起立性低血圧と併存する場合もあるため、「食後に眠い・だるい」で終えず、起きる時間と血圧を相談します。多量の食事や炭水化物の多い食事、飲酒との関係が手掛かりになります。[2][3]

食事の工夫では、体重や必要な栄養を保つことも大切です。食事を抜いたり、主食を極端に減らしたりせず、量・回数・内容を医療者や管理栄養士と調整します。

排便時のいきみや、トイレに急ぐことも含めて困っている場合は、パーキンソン病と便秘の生活調整もご参照ください。

水分・塩分・腹帯などは、持病と安全性を踏まえて選ぶ

水分や塩分は、自分に合う量と時間帯を決める

十分な水分の確保や塩分の調整は、起立性低血圧の対策になる場合があります。ただし、心不全、腎臓・肝臓の病気、横になったときの高血圧などがあると、適した方法が変わります。[3]

診察では「1日にどのくらい飲んでよいか」「どの時間帯に分けるか」「塩分の制限や調整が必要か」を確認します。夜間のトイレが気になるからと飲水を大幅に減らしている場合や、飲むとむせる場合も伝えてください。

水をまとまって飲むことで、一時的に血圧が上がることを利用する方法もありますが、全員に一律の量や一気飲みを勧めるものではありません。飲み込みと持病を踏まえ、使える方法を相談します。[1][2]

腹帯や着圧用品は、種類と着け方が重要

お腹への血液のたまりを減らす腹帯は、非薬物療法の選択肢です。パーキンソン病と起立性低血圧のある15人が参加した小規模な比較試験では、主解析12人で、腹帯によって傾斜台試験中の血圧低下が軽減しました。生活上の症状の改善も報告されていますが、その追跡は非盲検であり、長期的な効果には検討が必要です。[5]

着圧用品は、圧迫する範囲や強さによって働きが異なります。短い靴下を着けるだけで同じ効果が得られるとは限りません。お腹の苦しさ、着脱のしやすさ、皮膚や血管の状態も含め、医療者と選びます。[2][3]

体に力を入れる方法や、運動の姿勢も相談できる

脚・お尻・お腹などに力を入れる方法が、血圧を支える対策として使われることがあります。パーキンソン病ではバランスや動作の制約があるため、自分が安全にできる方法を医療者と練習します。ふらついている最中に、片脚立ちや深いしゃがみ込みを自己流で試す必要はありません。[1][3]

運動を続けるには、座位などの姿勢、負荷、時間帯も調整できます。運動療法・リハビリの続け方と合わせて、立ちくらみがあることを担当者に伝えましょう。

薬の見直しと治療|立つと低く、横になると高い場合もある

対策は、脱水などの悪化要因を整え、薬の影響を見直し、生活上の方法を組み合わせて進めます。症状が残る場合には、ミドドリンなど血圧を支える薬が検討されることもあります。選ぶ薬と服用時刻は、症状・持病・ほかの薬・血圧の変動に合わせて決めます。[3][4]

抗パーキンソン病薬や降圧薬を、自己判断で中止・増減しないでください。立ちくらみを減らすことと、動きやすさや持病の治療を保つことを、主治医と一緒に考えます。

臥位高血圧があると、治療の調整が必要になる

自律神経による血圧調節の障害では、立つと血圧が下がる一方で、横になると血圧が高くなる「臥位高血圧」や、夜間の高血圧がみられる場合があります。起立性低血圧を治療する薬が、横になったときの血圧を上げることもあります。[2][3]

そのため、立位の値だけでなく、休んでいる姿勢や就寝前後の血圧も、医療機関の指示に沿って確認します。ミドドリンの添付文書でも、臥位で血圧が上がりすぎることへの注意が示されています。[6]

薬を飲む時間や寝姿勢の調整、ベッドの頭側を高くする方法などは、夜間の移動も含めて相談します。立ちくらみが出た直後は安全な姿勢で休むことを優先し、普段の休み方・寝方は別に決めます。

繰り返す失神・転倒、新しい症状は受診を早める

次のような変化があれば、次回予約まで待つか迷った段階で、担当の医療機関に連絡してください。

  • 気を失った、転倒した、転びかけることが増えた。
  • 症状が急に増えた、薬の変更後から起き始めた。
  • 発熱・下痢・嘔吐や、食事・水分が取れない状態がある。
  • 立っていられる時間が短くなり、食事・トイレ・外出に支障が出ている。

119番へ連絡したい症状

呼びかけに反応しない・意識がもうろうとしている、突然片側の手足に力が入らない、顔の片側がゆがむ・ろれつが回らない、急な強い胸痛や呼吸困難、急に支えなしでは立てないほどふらつく場合です。血圧の記録をそろえるために、通報を遅らせないでください。[7]

転倒を繰り返すときは、血圧だけでなく、すくみ足、姿勢反射、視力、住環境や介助の方法も合わせて見直します。姿勢の不安定さと転倒予防で整理しています。

診察に持参するメモ|数値と「そのとき何をしていたか」を一緒に

血圧を記録できる場合は、数値の横に、姿勢・症状・服薬と食事の時刻を書きます。測れなかったときも、起きた場面だけで相談できます。測定の頻度と期間は、担当の医療機関と決めましょう。

【立ちくらみ・ふらつきの記録】 日付・起きた時刻: 直前の姿勢と動作(起床・立ち上がり・歩行など): 症状(目の前が暗い・力が抜ける・動悸など): 立ってから症状が出るまでの時間: 続いた長さ・座る/横になるとどう変わったか: 転倒・失神・けがの有無: 【安全に測定できた場合】 測定した時刻・姿勢・血圧・脈拍: 立つ前に休んだ姿勢と時間: 立って何分の値か: ※医療機関の指示に沿って記録。症状が出たら安全確保を優先。 【食事・薬・体調】 食事の時刻・量・内容: 薬の名前と服用時刻・最近の変更: 飲水量の変化、発熱・下痢など: 【今回相談したいこと】 最も困る場面(朝のトイレ・食後の移動など): 血圧を下げる要因や、薬の影響はありますか: 自分に合う水分・食事・生活上の対策は何ですか: 横になったとき・夜間の血圧も調べますか:

服薬全体と一緒に整理したい方は、診察・服薬・症状のメモも使えます。

よくある質問

普段は血圧が正常でも、起立性低血圧はありますか?

あります。座位などでの普段の値に加え、立つ前後の下がり幅と症状を見ます。立ったときの値が極端に低くなくても、姿勢によって大きく下がっている場合があります。

めまいがなくても、血圧を調べたほうがよいことはありますか?

原因の分からない転倒や失神、立つと力が抜ける・頭がぼんやりする場合などは、相談する理由になります。症状が軽いかどうかだけで判断せず、必要な測定を医療機関と決めます。

水分と塩分を増やせばよいですか?

役立つ場合はありますが、心臓・腎臓などの持病や臥位高血圧によって調整が必要です。飲み込みの状態も含めて、自分に合う量と時間帯を確認します。

薬を飲んだ後にふらつきます。やめたほうがよいですか?

自己判断で中止せず、薬の名前・服用時刻・症状が出た時刻を主治医へ伝えてください。動きやすさと血圧の両方を見ながら、種類・量・時刻などを検討します。

座って測った血圧が正常なら、問題ありませんか?

その結果だけでは、立つことや食事に伴う低下は分かりません。症状が起きる条件を伝え、必要な測定を相談します。失神しそうな方が、一人で立位測定を試す必要はありません。

立ちくらみが増えたら、パーキンソン病が進んだということですか?

症状だけでは判断できません。薬の変更、脱水、貧血、感染など、見直せる要因が関わる場合があります。急な変化や失神・転倒があるときは、受診を早めて相談します。

原因と時間帯が分かると、選べる対策が増える

立ちくらみを整理する利点は、朝の起き上がり、食後の移動、入浴、夜間のトイレなど、困る場面に合わせて対策を考えられることです。薬や水分の見直し、食事の分け方、支えや見守りのタイミングを組み合わせる余地があります。

「朝のトイレまで安全に行きたい」「食後も落ち着いて過ごしたい」。その目標を、症状が出る時刻・姿勢・服薬や食事との関係と一緒に伝えてみてください。治療では、症状の負担を減らし、日常の活動を続けやすくすることを目指します。[2]

参考文献・一次資料

  1. International Parkinson and Movement Disorder Society. Orthostatic Hypotension in Parkinson’s Disease: Essential Facts for Patients.2025年更新。症状、起きやすい場面、日常の対策。
  2. Gibbons CH, et al. The recommendations of a consensus panel for the screening, diagnosis, and treatment of neurogenic orthostatic hypotension and associated supine hypertension. J Neurol. 2017;264:1567–1582. doi:10.1007/s00415-016-8375-x.
  3. Fanciulli A, et al. Diagnosis and treatment of autonomic failure, pain and sleep disturbances in Parkinson’s disease: guideline “Parkinson’s disease” of the German Society of Neurology. J Neurol. 2025;272:90. doi:10.1007/s00415-024-12730-5.
  4. National Institute for Health and Care Excellence. Parkinson’s disease in adults(NG71), Recommendations 1.5.8–1.5.10.起立性低血圧に関わる薬の見直しと治療。
  5. Fanciulli A, et al. Elastic Abdominal Binders Attenuate Orthostatic Hypotension in Parkinson’s Disease. Mov Disord Clin Pract. 2016;3(2):156–160. doi:10.1002/mdc3.12270.
  6. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).メトリジンD錠2mg 添付文書.ミドドリン塩酸塩の効能・効果、臥位血圧上昇に関する注意。
  7. 厚生労働省.こんな時は迷わず119へ.意識の異常、脳卒中を疑う症状、胸痛・呼吸困難などの緊急症状。

本ページは一般的な医療情報です。個別の診断、家庭での測定方法、水分・塩分の調整、服薬や治療は、担当の医療機関と相談してください。