立ちくらみ・食後のふらつき・血圧と転倒
ふらつく場面を知り、朝の移動や食後を過ごしやすくする
「立ち上がると目の前が暗くなる」「食後だけ力が抜ける」「薬が効いて動けるのに、ふらついて歩けない」。パーキンソン病では、動作やバランスの問題に、血圧の変動が重なっていることがあります。
起立性低血圧は、立ったときに血圧が下がる状態です。起きる時間帯、姿勢、食事や薬との関係を整理すると、原因の評価とともに、起き上がり方、食事、服薬、生活環境で調整できることが見えてきます。
立ちくらみが出たら、まず安全な姿勢をとります
歩き続けず、周囲に助けを求め、安全に座るか横になります。血圧を測るために、そのまま立って我慢する必要はありません。[1]
呼びかけへの反応がおかしい、急な片側の麻痺や話しにくさ、強い胸痛・息苦しさがある場合は、いつもの立ちくらみと決めつけず119番へ連絡してください。[7]
起立性低血圧とは?「立った後の力の抜け方」にも注目する
立つと、重力によって血液が脚やお腹側に移動します。通常は自律神経の働きで血管や心拍が調整され、脳への血流が保たれます。この調整が十分に働かないと、血圧が下がったままになり、立ちくらみなどが起こります。[2]
目の前が暗くなる、気が遠くなる感覚だけでなく、次のような訴えが手掛かりになることもあります。[1][2]
- 立つと力が抜ける、脚が支えにくくなる。
- 視界がぼやける、頭が働きにくい感じがする。
- 立っていると疲れやすい、気分が悪くなる。
- 座る・横になることで楽になる。
はっきりしためまいがなくても、血圧が下がっている場合があります。転倒や失神の背景に関わることもあるため、原因が分からない転倒が続くときは、歩き方や筋力と合わせて血圧も相談します。[2]
パーキンソン病だけでなく、薬や体調が重なることがある
パーキンソン病では、自律神経による血圧調節の障害から「神経原性起立性低血圧」が起こることがあります。一方で、血圧が下がる理由を病気一つにまとめず、調整できる要因を探すことも大切です。[2][3]
- 薬の影響:降圧薬・利尿薬、一部の抗パーキンソン病薬、抗うつ薬などが関わる場合があります。
- 水分や体調の変化:飲水不足、発汗、下痢・嘔吐、感染、貧血などが悪化要因になります。
- ほかの病気:心臓の病気などを含め、症状や診察に応じて別の原因も評価します。
薬を飲み始めた・量が変わった時期、食事量や水分が減った時期、発熱や下痢があった時期を伝えると、診察の手掛かりになります。[3][4]
薬の効き方が日によって変わる場合は、薬が効きにくい日と便秘・食事・体調の関係も参考になります。
診断の目安|普段の血圧が正常でも、立つ前後を比べる
一般的な診断の目安は、立ってから3分以内に、上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上、持続して低下することです。医療機関では、姿勢を変える前後の血圧と脈拍を、症状と合わせて確認します。[2][3]
| 場面 | 測定の例 | 一緒に確認すること |
|---|---|---|
| 立つ前 | 横になって少なくとも5分安静にした後、血圧・脈拍を測る。 | 測定した姿勢、服薬や食事からの時間。 |
| 立って1分 | 安全に立てる条件で、血圧・脈拍を測る。 | 目の前が暗い、力が抜けるなどの症状。 |
| 立って3分 | 血圧・脈拍と、症状の変化を確かめる。 | 低下が続くか、立ち続けられるか。 |
上の表は医療機関での標準的な方法の例です。家庭で行う場合は、先に医療者へ安全性と方法を確認してください。失神・転倒のおそれがある方は、一人で立位測定を試さず、症状が出たら測定より安全確保を優先します。
「上の血圧が100以上あるから大丈夫」とは限りません。
たとえば、横になって130/80mmHgだった血圧が、立って105/75mmHgに下がった場合、上の血圧は25mmHg低下しています。絶対値に加えて、姿勢による下がり幅と症状を見ます。
横になったときの血圧が高い方などでは、下がり幅の解釈も個別に行います。また、座ったままの血圧が正常なことや、一度の測定で低下しなかったことだけでは、原因を決められません。食事・水分・薬・時間帯で結果が変わるためです。[2]
立った直後の短い変化や、3分を過ぎてからの低下が、通常の測定では捉えにくい場合もあります。症状が続くときは、医療機関で測定条件の見直し、傾斜台を使う検査、必要に応じた24時間血圧測定などを相談します。確認のために、自宅で無理に立ち続ける必要はありません。[2][3]
オフによる動きにくさとは、どう見分ける?
「足に力が入らない」「立つと動けない」という言葉だけでは、血圧低下か、オフによる動きにくさかを分けられません。起きた場面と感覚を、できるだけ具体的に伝えます。
| 起きていること | 伝えたい内容 | 評価の手掛かり |
|---|---|---|
| 立つと目の前が暗くなる・気が遠くなる | 立ってから何秒・何分で起き、座るとどう変わるか。 | 姿勢に伴う血圧低下などを調べる。 |
| 次の服薬前に、こわばり・動作の遅さ・足の出にくさが増える | 服薬時刻、効き始め、切れ方、動きやすい時間との違い。 | オフの有無や、薬効の変動を調べる。 |
| ふらつきに動悸・胸痛などが伴う、姿勢と関係なく起きる | 症状の始まり方、持続時間、一緒に起きた症状。 | 心臓など、別の原因も含めて評価する。 |
これらは、相談内容を整理するための手掛かりです。オフと起立性低血圧は重なることもあり、時間帯だけでは診断できません。薬が効いている時間でも、立つときのふらつきが残るなら、その症状を別に伝えます。
オフの整理は、ウェアリングオフ・オンオフ現象、立ち上がる動作の問題は、椅子から立ち上がれないときの見直しで解説しています。
朝・食後・入浴・夜間|起きやすい場面に対策を合わせる
血圧が下がりやすい条件には、朝の起床、まとまった食事、暑さ、飲酒、長く立つことなどがあります。まず自分に多い場面を見つけ、生活の動き方を調整します。[1][2]
| 場面 | 見直せること | 相談につなげる情報 |
|---|---|---|
| 朝、ベッドから起きるとき | 横になった姿勢から、いったん座って様子を見てから立つ。必要な支えや見守りを用意する。 | 起床直後か、服薬後か。座っていても症状があるか。 |
| 食後 | 一度に多く食べる場合は、1日の必要量を保ちながら食事を分ける方法を相談する。食後すぐの一人での移動を見直す。 | 食事の量・内容、食後どのくらいで起きるか。 |
| 入浴・暑い場所 | 熱い湯や長時間の入浴を避ける。浴室椅子、室温、入浴後の立ち上がり方を整える。 | 入浴中か、出るときか、着替え中か。 |
| 夜間のトイレ | 急いで起きず、照明・支え・動線を整える。必要に応じてベッド近くの排泄方法を相談する。 | 眠気やオフ、夜間の薬、転びかけた場所。 |
| 立ち仕事・待ち時間 | 座れる場所や休憩を用意する。長く立ったままになる予定を調整する。 | 何分ほどでつらくなるか、座ると楽になるか。 |
| 運動中・運動後 | 症状がある日は無理に立位練習を続けず、姿勢や負荷を担当者と調整する。 | 運動の種類、暑さ、終了後の立ち上がりとの関係。 |
食後のふらつきは、食事性低血圧も相談する
食後には、お腹側への血流の変化などによって血圧が下がることがあります。起立性低血圧と併存する場合もあるため、「食後に眠い・だるい」で終えず、起きる時間と血圧を相談します。多量の食事や炭水化物の多い食事、飲酒との関係が手掛かりになります。[2][3]
食事の工夫では、体重や必要な栄養を保つことも大切です。食事を抜いたり、主食を極端に減らしたりせず、量・回数・内容を医療者や管理栄養士と調整します。
排便時のいきみや、トイレに急ぐことも含めて困っている場合は、パーキンソン病と便秘の生活調整もご参照ください。
水分・塩分・腹帯などは、持病と安全性を踏まえて選ぶ
水分や塩分は、自分に合う量と時間帯を決める
十分な水分の確保や塩分の調整は、起立性低血圧の対策になる場合があります。ただし、心不全、腎臓・肝臓の病気、横になったときの高血圧などがあると、適した方法が変わります。[3]
診察では「1日にどのくらい飲んでよいか」「どの時間帯に分けるか」「塩分の制限や調整が必要か」を確認します。夜間のトイレが気になるからと飲水を大幅に減らしている場合や、飲むとむせる場合も伝えてください。
水をまとまって飲むことで、一時的に血圧が上がることを利用する方法もありますが、全員に一律の量や一気飲みを勧めるものではありません。飲み込みと持病を踏まえ、使える方法を相談します。[1][2]
腹帯や着圧用品は、種類と着け方が重要
お腹への血液のたまりを減らす腹帯は、非薬物療法の選択肢です。パーキンソン病と起立性低血圧のある15人が参加した小規模な比較試験では、主解析12人で、腹帯によって傾斜台試験中の血圧低下が軽減しました。生活上の症状の改善も報告されていますが、その追跡は非盲検であり、長期的な効果には検討が必要です。[5]
着圧用品は、圧迫する範囲や強さによって働きが異なります。短い靴下を着けるだけで同じ効果が得られるとは限りません。お腹の苦しさ、着脱のしやすさ、皮膚や血管の状態も含め、医療者と選びます。[2][3]
体に力を入れる方法や、運動の姿勢も相談できる
脚・お尻・お腹などに力を入れる方法が、血圧を支える対策として使われることがあります。パーキンソン病ではバランスや動作の制約があるため、自分が安全にできる方法を医療者と練習します。ふらついている最中に、片脚立ちや深いしゃがみ込みを自己流で試す必要はありません。[1][3]
運動を続けるには、座位などの姿勢、負荷、時間帯も調整できます。運動療法・リハビリの続け方と合わせて、立ちくらみがあることを担当者に伝えましょう。
薬の見直しと治療|立つと低く、横になると高い場合もある
対策は、脱水などの悪化要因を整え、薬の影響を見直し、生活上の方法を組み合わせて進めます。症状が残る場合には、ミドドリンなど血圧を支える薬が検討されることもあります。選ぶ薬と服用時刻は、症状・持病・ほかの薬・血圧の変動に合わせて決めます。[3][4]
抗パーキンソン病薬や降圧薬を、自己判断で中止・増減しないでください。立ちくらみを減らすことと、動きやすさや持病の治療を保つことを、主治医と一緒に考えます。
臥位高血圧があると、治療の調整が必要になる
自律神経による血圧調節の障害では、立つと血圧が下がる一方で、横になると血圧が高くなる「臥位高血圧」や、夜間の高血圧がみられる場合があります。起立性低血圧を治療する薬が、横になったときの血圧を上げることもあります。[2][3]
そのため、立位の値だけでなく、休んでいる姿勢や就寝前後の血圧も、医療機関の指示に沿って確認します。ミドドリンの添付文書でも、臥位で血圧が上がりすぎることへの注意が示されています。[6]
薬を飲む時間や寝姿勢の調整、ベッドの頭側を高くする方法などは、夜間の移動も含めて相談します。立ちくらみが出た直後は安全な姿勢で休むことを優先し、普段の休み方・寝方は別に決めます。
繰り返す失神・転倒、新しい症状は受診を早める
次のような変化があれば、次回予約まで待つか迷った段階で、担当の医療機関に連絡してください。
- 気を失った、転倒した、転びかけることが増えた。
- 症状が急に増えた、薬の変更後から起き始めた。
- 発熱・下痢・嘔吐や、食事・水分が取れない状態がある。
- 立っていられる時間が短くなり、食事・トイレ・外出に支障が出ている。
119番へ連絡したい症状
呼びかけに反応しない・意識がもうろうとしている、突然片側の手足に力が入らない、顔の片側がゆがむ・ろれつが回らない、急な強い胸痛や呼吸困難、急に支えなしでは立てないほどふらつく場合です。血圧の記録をそろえるために、通報を遅らせないでください。[7]
転倒を繰り返すときは、血圧だけでなく、すくみ足、姿勢反射、視力、住環境や介助の方法も合わせて見直します。姿勢の不安定さと転倒予防で整理しています。
診察に持参するメモ|数値と「そのとき何をしていたか」を一緒に
血圧を記録できる場合は、数値の横に、姿勢・症状・服薬と食事の時刻を書きます。測れなかったときも、起きた場面だけで相談できます。測定の頻度と期間は、担当の医療機関と決めましょう。
服薬全体と一緒に整理したい方は、診察・服薬・症状のメモも使えます。
よくある質問
普段は血圧が正常でも、起立性低血圧はありますか?
あります。座位などでの普段の値に加え、立つ前後の下がり幅と症状を見ます。立ったときの値が極端に低くなくても、姿勢によって大きく下がっている場合があります。
めまいがなくても、血圧を調べたほうがよいことはありますか?
原因の分からない転倒や失神、立つと力が抜ける・頭がぼんやりする場合などは、相談する理由になります。症状が軽いかどうかだけで判断せず、必要な測定を医療機関と決めます。
水分と塩分を増やせばよいですか?
役立つ場合はありますが、心臓・腎臓などの持病や臥位高血圧によって調整が必要です。飲み込みの状態も含めて、自分に合う量と時間帯を確認します。
薬を飲んだ後にふらつきます。やめたほうがよいですか?
自己判断で中止せず、薬の名前・服用時刻・症状が出た時刻を主治医へ伝えてください。動きやすさと血圧の両方を見ながら、種類・量・時刻などを検討します。
座って測った血圧が正常なら、問題ありませんか?
その結果だけでは、立つことや食事に伴う低下は分かりません。症状が起きる条件を伝え、必要な測定を相談します。失神しそうな方が、一人で立位測定を試す必要はありません。
立ちくらみが増えたら、パーキンソン病が進んだということですか?
症状だけでは判断できません。薬の変更、脱水、貧血、感染など、見直せる要因が関わる場合があります。急な変化や失神・転倒があるときは、受診を早めて相談します。
原因と時間帯が分かると、選べる対策が増える
立ちくらみを整理する利点は、朝の起き上がり、食後の移動、入浴、夜間のトイレなど、困る場面に合わせて対策を考えられることです。薬や水分の見直し、食事の分け方、支えや見守りのタイミングを組み合わせる余地があります。
「朝のトイレまで安全に行きたい」「食後も落ち着いて過ごしたい」。その目標を、症状が出る時刻・姿勢・服薬や食事との関係と一緒に伝えてみてください。治療では、症状の負担を減らし、日常の活動を続けやすくすることを目指します。[2]
参考文献・一次資料
- International Parkinson and Movement Disorder Society. Orthostatic Hypotension in Parkinson’s Disease: Essential Facts for Patients.2025年更新。症状、起きやすい場面、日常の対策。
- Gibbons CH, et al. The recommendations of a consensus panel for the screening, diagnosis, and treatment of neurogenic orthostatic hypotension and associated supine hypertension. J Neurol. 2017;264:1567–1582. doi:10.1007/s00415-016-8375-x.
- Fanciulli A, et al. Diagnosis and treatment of autonomic failure, pain and sleep disturbances in Parkinson’s disease: guideline “Parkinson’s disease” of the German Society of Neurology. J Neurol. 2025;272:90. doi:10.1007/s00415-024-12730-5.
- National Institute for Health and Care Excellence. Parkinson’s disease in adults(NG71), Recommendations 1.5.8–1.5.10.起立性低血圧に関わる薬の見直しと治療。
- Fanciulli A, et al. Elastic Abdominal Binders Attenuate Orthostatic Hypotension in Parkinson’s Disease. Mov Disord Clin Pract. 2016;3(2):156–160. doi:10.1002/mdc3.12270.
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA).メトリジンD錠2mg 添付文書.ミドドリン塩酸塩の効能・効果、臥位血圧上昇に関する注意。
- 厚生労働省.こんな時は迷わず119へ.意識の異常、脳卒中を疑う症状、胸痛・呼吸困難などの緊急症状。
本ページは一般的な医療情報です。個別の診断、家庭での測定方法、水分・塩分の調整、服薬や治療は、担当の医療機関と相談してください。

