【ALS】運転・仕事をどこまで続けるか|安全と生活の両立を考える

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運転・仕事をどこまで続けるか|安全と生活の両立を考える

ALSと診断されたあと、多くの方が早い段階で迷うのが「まだ運転していいのか」「仕事はどこまで続けられるのか」という点です。 運転も仕事も、生活の自立、収入、役割、家族の負担に直結します。 そのため、簡単に「やめればいい」とは言えません。 一方で、手足の操作、反応、首の動き、発話、呼吸、疲労が変わると、本人だけでなく周囲の安全に関わる場面も出てきます。

大切なのは、続けるかやめるかを気持ちだけで決めることではありません。 今どの機能が運転や仕事に影響しているのか、何を変えれば続けやすいのか、どこから安全を優先すべきかを、本人・家族・医療者・職場で共有できる形にすることです。 このページでは、ALSで運転や仕事を考える時に、生活を守ることと安全を守ることをどう両立して整理するかをまとめます。

本ページは一般向けの情報です。運転の可否、免許、職務継続、休職、退職、障害認定を個別に判断するものではありません。運転に不安がある場合は、主治医、リハビリ職、運転免許センター等の安全運転相談窓口へ相談してください。仕事については、主治医、産業医、人事、支援機関と相談してください。

まず押さえたいこと

  • ALSで運転や仕事を続けられるかは、病名だけでは決まりません。症状の部位、進み方、仕事内容、通勤、支援の有無で変わります。
  • 運転は「まだ歩けるか」ではなく、ハンドル、ブレーキ、アクセル、首の向き直し、周囲確認、緊急時の反応が保てているかで見ます。
  • 仕事は「辞めるか続けるか」の二択ではなく、通勤、発話、手の操作、入力、会議、単独作業、安全確認を分けて考えます。
  • 本人の意欲は大切ですが、運転や安全作業では、家族や周囲が見ている危なさも判断材料になります。
  • まだできる時期から、移動手段、在宅勤務、入力支援、会話支援、送迎、制度利用を準備すると、急な中断を避けやすくなります。

ここで整理すること

このページは、ALSの全体像を説明するページではなく、運転と仕事をどう続けるか、どこで見直すかに絞ったページです。 仕事そのものを詳しく整理したい場合、視線入力やコミュニケーション手段を準備したい場合、ALS全体像を確認したい場合は、それぞれ別ページも参考になります。

このページで見ること 主な内容 別ページで詳しく見ること
運転の見直し 操作、反応、首の動き、疲労、同乗者の不安、運転相談 地域の安全運転相談、主治医・リハビリ職との相談
仕事の見直し 通勤、業務内容、発話、入力、単独作業、安全作業 ALSで仕事を続けられるかの詳細ページ
家族・職場との共有 本人の希望、周囲の不安、危険が出る場面、代替手段 家族会議、就労相談、制度利用
準備 運転を減らす準備、送迎、在宅勤務、視線入力、音声以外の連絡手段 AAC、視線入力、福祉用具のページ

このページでは、運転と仕事を「本人の生活を守るもの」と「安全のために見直すもの」の両方として扱います。

なぜ二択で考えにくいのか

ALSでは、最初からすべての動作ができなくなるわけではありません。 手、足、発話、飲み込み、呼吸、体幹、首の動きなど、変化する順番や速さは人によって違います。 そのため、ある作業は問題なくできても、別の作業ではすでに危険が出ていることがあります。

運転でいえば、普段の短距離運転はできても、夕方、雨の日、混雑した交差点、急な飛び出し、駐車場での切り返しでは危なさが出ることがあります。 仕事でいえば、デスクワークは続けられても、通勤、会議での発話、電話対応、現場移動、単独対応が先に難しくなることがあります。

できる部分が残る

一部の機能が保たれているため、本人も周囲も「まだ大丈夫」と感じやすくなります。

危ない場面だけが先に出る

日常生活では目立たなくても、運転や安全確認が必要な仕事では問題になることがあります。

疲れると変わる

午前は保てても、午後や長時間後に反応・操作・発話が落ちることがあります。

本人と家族で見え方が違う

本人は「まだできる」と感じ、家族は「見ていて怖い」と感じることがあります。

考えたいのは、続けるかやめるかの二択ではなく、「どの条件なら安全に保てるか」「どの条件からはやめるか」を決めておくことです。

運転で先に見たいこと

運転では、歩けるかどうかより、操作・確認・反応・疲労を見ます。 「家の中ではまだ動ける」「短距離なら行ける」という感覚だけでは、緊急時の安全までは判断できません。 とくにALSでは、手足の動きだけでなく、首の動き、体幹の安定、発話、呼吸、疲れ方も運転に関係します。

見たい項目 運転での意味 確認したい場面
手の力・細かい操作 ハンドル、ウインカー、シフト、ワイパー、駐車時の切り返しに関係します。 ハンドルを滑らず支えられるか。急な補正ができるか。
足の力と反応 アクセルとブレーキの踏み替え、踏み込み、踏み続ける力に関係します。 踏み替えが遅くないか。足がペダルに引っかからないか。
首・体幹 ミラー確認、左右確認、後方確認、長時間座位の安定に関係します。 交差点、車線変更、駐車時に首を十分に向けられるか。
疲労 短距離は大丈夫でも、夕方や長距離で反応が落ちることがあります。 運転後に強く疲れるか。帰り道で危なさが出ないか。
発話・呼吸・咳 トラブル時の連絡、体調急変時の説明、単独運転時の安全に関係します。 電話や助けを求める手段があるか。息苦しさが運転中に出ないか。
注意・判断 見落とし、判断の遅れ、道順変更、事故時対応に関係します。 同乗者から見て危ない場面が増えていないか。

「日常生活ではまだ何とかなる」と「運転を安全に続けられる」は同じではありません。

運転は、自分の生活だけでなく、歩行者、同乗者、他の車にも関わるため、少し早めに見直す方が安全です。

運転を見直したいサイン

運転を続けるかどうかは、本人の自信だけでは判断しにくいことがあります。 次のような変化が出ている場合は、運転を続ける条件を狭める、同乗者をつける、一時的に運転を控える、安全運転相談を利用するなど、早めに相談してください。

ペダル操作が不安

ブレーキとアクセルの踏み替えが遅い、足が引っかかる、踏み込みが弱いと感じる。

ハンドル操作が重い

片手が滑る、切り返しが遅い、車庫入れや駐車場で焦ることが増えた。

首を向けにくい

左右確認、後方確認、車線変更、駐車時の確認が前より遅くなった。

疲れると危ない

午後や夕方、長距離、通院帰りに反応や注意が落ちる。

同乗者が怖がる

家族から「ブレーキが遅い」「確認が少ない」「寄りすぎる」と言われる。

小さな接触・ヒヤリが増える

縁石に乗る、駐車でこする、クラクションを鳴らされる、急ブレーキが増える。

運転条件を狭める例

不安がある場面 一時的な見直し例 次に相談したいこと
夕方に反応が落ちる 午前だけ、短距離だけ、疲れている日は運転しない 疲労、睡眠、呼吸、服薬、運転可否
ペダル操作が不安 運転を控える。単独運転を避ける。 主治医、作業療法士、運転適性相談
首の確認が遅い 駐車場、交通量の多い道、夜間運転を避ける 姿勢、頸部支持、ミラー、車両環境
家族が危険を感じる 同乗して確認する、運転回数を減らす、代替移動を使う 家族会議、医療者への相談、安全運転相談
ヒヤリが増えている 運転中止を含めて検討する 免許センター、主治医、移動手段の確保

運転を減らすことは、生活を奪うことではありません。事故を避けながら、通院・買い物・仕事の移動を別の方法へ移す準備です。

運転について相談する相手

運転の不安は、本人と家族だけで抱えると話し合いが難しくなりやすいです。 「大丈夫」「危ない」の言い合いではなく、医療者や安全運転相談窓口を交えて、今の状態と今後の見通しを確認します。

相談先 相談できること 準備するとよい情報
主治医 症状の進行、運転に影響しやすい機能、診断書の必要性 運転中に不安な動作、ヒヤリ、疲労、家族の指摘
リハビリ職 手足、首、体幹、姿勢、操作動作、福祉用具や移動手段 車種、乗り降り、ペダル、ハンドル、確認動作
運転免許センター等の安全運転相談 病気や障害がある場合の運転相談、必要な手続き、診断書など 病名、症状、主治医の意見、現在の運転状況
家族・介助者 同乗時の危なさ、代替移動、通院や買い物の分担 運転を続けたい理由、不安な場面、代替案
職場 業務上の運転、通勤、出張、送迎、在宅勤務への変更 運転業務の頻度、危険が出る場面、代替できる工程

業務で運転する場合、自家用車で短距離を運転する場合より、責任や安全確認の範囲が大きくなります。

仕事で車を使っている場合は、早めに主治医・産業医・職場へ共有し、運転業務を減らす方法を相談してください。

仕事で先に見たいこと

ALSで仕事を考える時は、症状そのものだけでなく、仕事を成り立たせている周辺動作を見ます。 通勤、移動、会議、電話、入力、書類作業、現場作業、単独対応、緊急対応など、どこが先に負担になるかは人によって違います。

通勤

駅の階段、乗り換え、混雑、長い歩行、疲労、転倒リスクが仕事前から負担になります。

発話

会議、電話、接客、説明、オンライン会議で、声の疲れや伝わりにくさが問題になることがあります。

手の操作

タイピング、マウス、スマートフォン、書字、資料操作、細かいボタン操作が落ちやすくなります。

疲労

午前は保てても、午後や連勤後に発話、入力、移動が落ちることがあります。

安全確認が必要な作業

現場作業、車移動、機械操作、単独対応、緊急対応は早めの見直しが必要です。

コミュニケーション

発話が疲れる場合は、筆談、チャット、定型文、音声合成、視線入力などの準備が必要になります。

仕事で見たい項目

場面 困りやすいこと 相談できる調整
通勤 移動だけで疲れる、転倒が不安、仕事前に消耗する 在宅勤務、時差出勤、出社日数の調整、送迎
入力作業 タイピングが遅い、マウス操作が難しい、誤入力が増える 音声入力、ショートカット、支援機器、作業分担
会議・電話 発話が疲れる、聞き返される、長時間話せない チャット併用、議事録担当の変更、発話量を減らす
現場・外回り 移動、荷物、階段、暑さ寒さ、トラブル対応が負担 内勤化、同行、移動免除、訪問件数の調整
安全作業 機械操作、運転、緊急対応、単独作業に危険が出る 業務変更、複数名対応、危険作業から外れる
勤務時間 午後に落ちる、疲労が翌日に残る、連勤がきつい 短時間勤務、休憩、残業調整、勤務日数の調整

仕事は、病名だけで辞めるか決めるより、どの工程が負担や危険を増やしているかを分けて見た方が、続ける方法を探しやすくなります。

仕事で安全を優先したい場面

仕事を続けたい気持ちは大切です。 ただし、ALSでは症状の進行により、本人の努力では補えない危険が出ることがあります。 特に、他者の安全、機械、車、火気、高所、単独対応、緊急対応が関わる仕事では、早めに見直す必要があります。

業務の種類 注意したい理由 見直し例
車の運転を伴う仕事 反応、操作、疲労、体調変化が事故に直結しやすい 運転業務を外す、同行、内勤化、公共交通や送迎へ変更
機械操作 手の操作低下や疲労で誤操作が起こりやすい 操作業務を減らす、確認者をつける、別工程へ変更
高所・階段・脚立 転倒時の危険が大きい 高所作業を外す、低所作業へ変更、複数名対応
単独対応 体調変化やトラブル時に助けを呼びにくい 単独勤務を避ける、連絡手段を整える、見守りを増やす
電話・接客・説明 発話が疲れたり、伝わりにくくなったりする チャット、メール、定型文、担当変更、補助者をつける
緊急対応 素早い移動、発話、判断、操作が必要になる 緊急対応担当を外す、連絡役へ変更、バックアップ体制を作る

危険作業から外れることは、仕事を諦めることではありません。

安全を守りながら、本人が続けられる役割へ移すための準備です。

続け方を調整するときの考え方

運転も仕事も、すぐに全面中止か継続かで決める必要があるとは限りません。 ただし、条件を狭める場合も「何となく大丈夫そう」ではなく、何を続け、何をやめ、いつ見直すかを決めておくことが大切です。

距離を狭める

運転は近距離だけ、仕事は出社回数を減らすなど、移動距離を減らします。

時間帯を選ぶ

疲れやすい午後、夜間、雨の日、混雑時間を避けます。

単独を避ける

単独運転、単独現場、単独緊急対応を避け、同乗・同行・見守りを増やします。

入力と会話を助ける

音声入力、定型文、チャット、AAC、視線入力などを早めに試します。

安全作業を外す

運転、機械、高所、火気、重作業など、事故につながる工程を先に見直します。

見直し日を決める

一度決めた条件を固定せず、数週間〜数か月ごとに本人・家族・医療者で確認します。

続けるための調整は、本人の役割を守るための方法です。

ただし、事故や重大なミスが起きてから見直すのではなく、危ない兆しが出た段階で条件を変えることが大切です。

家族や職場と共有したいこと

運転や仕事の判断は、本人だけで抱えると遅れやすくなります。 家族や職場には、病名の説明だけでなく、どの場面で危険や困りごとが出ているかを具体的に共有します。 本人の希望と、周囲が見ている危なさの両方を並べて話すことが大切です。

共有したい軸 伝える例 相談したいこと
運転 夕方に反応が落ちる、首の向き直しが遅い、片脚の踏み替えが不安 運転条件、同乗、運転中止、代替移動
通勤 階段と長距離歩行で仕事前に疲れ切る 時差出勤、在宅勤務、送迎、出社頻度
仕事 タイピング、電話、会議、単独対応で負担が大きい 入力補助、発話負担の軽減、工程変更
安全 現場作業、機械操作、車移動、緊急対応が不安 危険作業から外れる、複数名対応、担当変更
本人の希望 収入、役割、社会とのつながりを保ちたい 続けたい理由を守りながら方法を変える
家族の不安 事故や急変時の対応が心配 連絡手段、送迎、緊急時の動き方

家族と話す時の言い方

「運転を全部やめるかどうかではなく、まず危ない場面を一緒に確認したい。夕方、雨の日、長距離、駐車場、通院帰りなど、どこから減らすかを決めたい。」

職場と話す時の言い方

「仕事を続けたい気持ちはあります。ただ、運転、現場移動、長時間の発話、単独対応は安全面で不安が出ています。危険が大きい工程を減らし、在宅・入力支援・担当変更を相談したいです。」

運転を減らす・やめる準備

運転を減らすことは、本人にとって大きな喪失感につながることがあります。 そのため、危なくなってから急にやめるより、まだ話し合える時期に代わりの移動手段を準備しておく方が、生活を保ちやすくなります。

準備すること 確認したい内容 メモ
通院手段 家族送迎、タクシー、福祉タクシー、介護タクシー、公共交通 通院頻度が多い場合は早めに決める
買い物 宅配、ネットスーパー、家族分担、近隣支援 重い物や雨の日の外出を減らす
仕事 在宅勤務、送迎、通勤時間、出社日、業務上の運転 業務で運転が必要な場合は早めに職場へ相談
家族の負担 送迎が一人に偏らないか、予定調整が可能か 家族だけで抱え込まない
緊急時 急な体調変化、夜間、呼吸・嚥下トラブル時の連絡方法 運転ではなく救急相談・救急搬送を使う場面を決める

運転をやめる準備は、自由を奪う準備ではありません。事故を避けながら、通院・仕事・買い物を続けるための準備です。

そのまま使えるメモ

主治医、リハビリ職、家族会議、職場面談、安全運転相談の前に、下のメモをスマートフォンや紙に写して使えます。 すべて埋める必要はありません。今困っているところから書いてください。

運転の相談メモ

【ALS 運転相談メモ】

1. いまの運転状況
毎日運転・週に数回・通院だけ・買い物だけ・仕事で運転・ほとんど運転しない

2. 不安がある場面
ブレーキ・アクセル・ハンドル・ウインカー・首の確認・駐車・車線変更・長距離・夕方・雨の日・夜間・その他
(                         )

3. 家族や同乗者から言われたこと
ブレーキが遅い・確認が少ない・車幅が寄る・駐車が危ない・疲れると怖い・特になし
(                         )

4. ヒヤリとした場面
縁石・接触・急ブレーキ・クラクション・踏み間違いそうになった・道で焦った・特になし
(                         )

5. 体調との関係
午前は大丈夫・午後に不安・通院帰りに疲れる・息切れがある・咳や痰が不安・薬で眠い・その他
(                         )

6. 相談したいこと
運転を続けてよいか・条件を狭めたい・安全運転相談を受けたい・診断書が必要か・代替移動を考えたい
(                         )

仕事の相談メモ

【ALS 仕事相談メモ】

1. いまの仕事で困っていること
通勤・運転・歩行・階段・発話・電話・会議・タイピング・書字・現場移動・単独対応・疲労・その他
(                         )

2. 安全面で不安な業務
車の運転・機械操作・高所作業・火気・現場作業・緊急対応・単独勤務・その他
(                         )

3. 続けたい理由
収入・役割・社会とのつながり・生活リズム・家族のため・その他
(                         )

4. 相談したい調整
在宅勤務・時差出勤・短時間勤務・業務変更・運転業務を外す・発話負担を減らす・入力支援・休憩・産業医面談
(                         )

5. 主治医や産業医に聞きたいこと
仕事を続ける条件・避けるべき作業・診断書/意見書・支援機器・通勤・休職時期・その他
(                         )

家族会議用メモ

【運転・仕事 家族会議メモ】

1. 本人が続けたいこと
運転・仕事・通勤・外出・買い物・通院・その他
(                         )

2. 家族が不安なこと
事故・転倒・疲労・呼吸・連絡手段・単独行動・帰宅後の疲れ・その他
(                         )

3. すぐ見直すこと
運転時間・運転距離・仕事の運転業務・現場作業・通勤方法・発話負担・その他
(                         )

4. 代わりに使う方法
送迎・タクシー・福祉タクシー・在宅勤務・オンライン会議・宅配・支援機器・その他
(                         )

5. 次に相談する相手
主治医・リハビリ職・運転免許センター・産業医・人事・ケアマネジャー・相談支援専門員・その他
(                         )

6. 次回見直し日
   年   月   日

面談前チェック表

確認すること メモ
運転で不安な操作を書いた
家族や同乗者からの指摘を書いた
仕事で危険が出る工程を書いた
通勤・発話・入力・疲労を分けて書いた
運転を減らした場合の移動手段を考えた
職場へ相談したい調整を3つ以内に絞った
主治医・産業医・安全運転相談のどこへ相談するか決めた

よくある質問

ALSと診断されたら、すぐ運転をやめるべきですか?

診断名だけで一律には決まりません。 ただし、ALSは進行により手足の操作、首の確認、発話、呼吸、疲労が変わるため、早めに運転条件を見直す必要があります。 不安な操作がある場合、家族が怖いと感じている場合、ヒヤリが増えている場合は、主治医や安全運転相談窓口へ相談してください。

本人は大丈夫と言っていますが、家族は運転が怖いです。

そのずれは珍しくありません。 本人は「慣れているから大丈夫」と感じ、家族はブレーキや確認の遅れを見て不安になることがあります。 感情で止めるのではなく、同乗時の不安、ヒヤリ、疲労後の変化をメモにして、主治医や安全運転相談へつなげる方が話し合いやすくなります。

車がないと通院も買い物も困ります。どう考えればよいですか?

生活に必要だからこそ、事故が起きる前に代わりの移動手段を準備します。 家族送迎、タクシー、福祉タクシー、介護タクシー、宅配、オンライン診療の可否、訪問サービスなどを組み合わせて考えます。 「今すぐ全部やめる」ではなく、どの運転から減らすかを決めることが第一歩です。

仕事はいつまで続けられますか?

一律には言えません。 仕事内容、通勤、発話、手の機能、疲労、安全性、職場の配慮、本人の希望で変わります。 危険作業や運転業務は早めに見直し、続けられる業務へ移せるかを職場と相談してください。

職場には病名まで伝えるべきですか?

どこまで伝えるかは本人の意思と職場環境によります。 ただし、配慮を受けるには、病名だけでなく「どの業務に支障があるか」「何を変えると安全に働けるか」を伝える必要があります。 診断書や意見書が必要な場合は主治医に相談してください。

発話が疲れるだけでも仕事の調整を相談してよいですか?

相談できます。 ALSでは、発話が疲れる、聞き返される、電話がつらい、長い会議で声が保たないことがあります。 チャット、メール、定型文、議事録の共有、発話量の少ない役割、AACの準備などを考えます。

運転業務を外れると仕事を失うのではと不安です。

不安になるのは自然です。 ただし、運転業務を続けることに危険がある場合は、事故が起きる前に別の役割へ移れるかを相談する方が安全です。 産業医、人事、主治医の意見書、合理的配慮、在宅勤務や内勤化などを含めて確認してください。

どのタイミングで運転をやめる話をすればよいですか?

明らかな事故やヒヤリが増えてからでは遅いことがあります。 ペダル操作、首の確認、ハンドル操作、疲労、家族の不安が出始めた段階で話し始める方が、本人の納得も得やすくなります。 代わりの移動手段を先に準備しておくと、急な喪失感を減らしやすくなります。

参考文献・参考情報

  1. 日本神経学会:筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/als_2023.html
  2. 日本神経学会:筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023追補版2025. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/als_tuiho2025.html
  3. 難病情報センター:筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2). https://www.nanbyou.or.jp/entry/52
  4. 警察庁:運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について. https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/list2.html
  5. 警視庁:一定の病気等に該当する方の受験・更新、安全運転相談. https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/sodan/tekisei00.html
  6. e-Gov法令検索:道路交通法. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
  7. ALS Association: FYI – Driving Challenges with ALS. https://www.als.org/navigating-als/resources/fyi-driving-challenges-als
  8. Association for Driver Rehabilitation Specialists: Driving and Amyotrophic Lateral Sclerosis. https://cdn.ymaws.com/www.aded.net/resource/resmgr/fact_sheets/21._ADED_FactSheets_ALS.pdf
  9. 厚生労働省:雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html
  10. 厚生労働省:合理的配慮指針. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000082153.pdf
  11. Job Accommodation Network: Amyotrophic Lateral Sclerosis Accommodation and Compliance. https://askjan.org/disabilities/Amyotrophic-Lateral-Sclerosis-ALS-Lou-Gehrig-s-Disease.cfm
  12. ALS Association: Living with ALS – Planning and Making Decisions. https://www.als.org/sites/default/files/2020-04/lwals_04_2017_0.pdf

参考情報は、ALSの医療的管理、運転に関する安全相談、職場での配慮、意思決定の考え方を確認するために掲載しています。個別の運転可否、免許、就労判断は、主治医、地域の運転免許窓口、産業医、職場、支援機関と相談してください。

まとめ

ALSで運転や仕事を考える時は、「今まで通り続けるか」「すぐやめるか」の二択ではなく、どの条件なら安全に保てるかを分けて考えることが大切です。

運転では、手足の操作、首の向き直し、周囲確認、反応、疲労、呼吸・発話、家族の不安を見ます。 仕事では、通勤、発話、入力、手の操作、安全作業、単独対応、疲労の残り方を見ます。

本人の生活や役割を守ることは大切です。 その一方で、運転や危険作業は本人の努力だけで安全を補えない段階があります。 まだ話し合える時期から、運転を減らす準備、在宅勤務、業務変更、入力・会話支援、送迎や福祉サービスを整えていくことが、生活と安全の両方を守ることにつながります。

  • 本ページは一般向けの情報であり、個別の運転可否、免許、就労可否、休職・退職判断を示すものではありません。
  • 運転に不安がある場合、ペダル操作、ハンドル操作、首の確認、反応、疲労、同乗者の不安をもとに、主治医や安全運転相談窓口へ相談してください。
  • 病気、疲労、薬の影響などで正常な運転ができないおそれがある状態では、運転を控える必要があります。
  • 仕事で運転、機械、高所、火気、単独対応、緊急対応など安全に関わる作業がある場合は、早めに主治医、産業医、職場へ相談してください。
  • 職場での配慮、勤務形態、診断書や意見書が必要な場合は、主治医、産業医、人事担当者、支援機関へ相談してください。