ALSで急に悪化したように感じたら|確認したいことと相談の目安

ALS情報 急な悪化 呼吸・痰・感染 相談の目安

ALSで急に悪化したように感じたら|確認したいことと相談の目安

ALSは少しずつ進行することが多い病気ですが、実際の生活では「昨日までできていたことが急に難しくなった」「数日で一気に悪くなったように見える」と感じることがあります。

ただし、急に悪化したように見える変化が、いつもALSそのものの進行だけで起きているとは限りません。 感染、痰や唾液の増加、脱水、便秘、睡眠不足、薬の影響、転倒後の痛み、呼吸の問題などが重なると、短期間で状態が大きく落ちたように見えることがあります。

このページでは、ALSで急に悪化したように感じたときに、家で確認したいこと、通常の様子見にしない方がよいサイン、主治医・訪問看護・救急相談へ伝える内容を整理します。 明らかな呼吸苦、意識の変化、痰詰まり、強い脱水、転倒後の強い痛みがある場合は、この記事を読み進めるより先に医療者へ連絡してください。

結論

  • ALSで急に悪化したように見えるときは、病気の進行だけでなく、感染、痰・唾液、誤嚥、脱水、便秘、睡眠不足、薬の影響、転倒や痛みが重なっていないか確認します。
  • 特に呼吸の変化は早めの相談が必要です。横になると苦しい、会話が続かない、痰が出し切れない、朝の頭痛、日中の強い眠気、ぼんやりする変化は見落とさないでください。
  • 急な悪化は、「今すぐ対応」「今日〜明日で相談」「数日記録して相談」に分けると動きやすくなります。
  • 発熱、痰の増加、むせの増加、食事・水分が取れない、尿が少ない、便秘が強い、転倒後に痛い、新しい薬を始めた、眠れないなどは、短期間で状態を悪く見せる要因になります。
  • 「何となく悪い」ではなく、いつから、何が、どの場面で、どの程度変わったかを短く伝えると、主治医・訪問看護・救急相談につながりやすくなります。
  • 吸引、NPPV、カフアシスト、胃ろう、人工呼吸器を使っている人は、機器の設定や使用時間、吸引回数、電源、消耗品、緊急連絡先も一緒に確認します。
  • 家族が「いつもと違う」と感じることも重要な情報です。本人がうまく説明できない場合は、家族の観察をそのまま伝えてください。

このページで整理すること

このページは、ALSで「急に悪化したように感じた」ときに、進行そのものと短期的に戻せる可能性のある要因を分けるためのページです。 診断、治験、災害対策、吸引準備、レスパイトのページとは役割を分けています。

テーマ 主に見ること このページとの違い
急に悪化したように感じた時 呼吸、痰、感染、脱水、便秘、転倒、薬剤、睡眠、相談目安。 このページです。急な変化の初動整理に絞ります。
痰の吸引が必要になった時 吸引器、消耗品、夜間対応、訪問看護、排痰補助。 ALSで痰の吸引が必要になった時の準備で扱います。
人工呼吸器・吸引器の災害対策 電源、バッテリー、避難、持ち出し、連絡体制。 人工呼吸器や吸引器を使う家庭の災害対策で扱います。
治験と日常ケア 治験を考える時も、呼吸・嚥下・栄養を並行する考え方。 ALSで治験はどう考える?で扱います。
家族の緊急時プラン レスパイト、短期入所、緊急連絡先、家族が倒れた時の備え。 レスパイト・短期入所・緊急時プランで扱います。

このページの目的は、急な変化を家で確定判断することではありません。 相談すべき変化を見落とさず、医療者へ伝わる形に整理することです。

最初に分けたい3段階

急に悪化したように感じたときは、まず「今すぐ対応が必要か」「今日〜明日で相談するか」「数日記録して相談するか」に分けます。 迷う場合は、呼吸、意識、食事・水分、痰詰まり、転倒後の痛みを優先して見てください。

段階 状態の例 行動の目安
今すぐ相談・救急を考える 明らかな呼吸苦、会話が続かない、痰が詰まって苦しい、意識がぼんやりする、飲めない、強い脱水、転倒後の強い痛み。 主治医・訪問看護・救急相談・救急要請を優先します。
今日〜明日で相談 痰やむせが増えた、発熱や咳がある、食事量・水分量が落ちた、朝の頭痛や日中の眠気が増えた、介助量が急に増えた。 主治医、ALS外来、訪問看護、ケアチームへ連絡します。
数日記録して相談 疲れやすい、眠れていない、便秘がある、痛みで動きが悪い、薬の影響が疑われるが緊急症状はない。 変化の始まり、食事・水分、便通、睡眠、薬、動作を記録して次回相談します。

「いつものALSの進行かもしれない」と思っても、感染、誤嚥、痰詰まり、脱水、薬の影響、転倒後の骨折などが隠れていることがあります。 急な変化は、まず短期間で対応できる要因を確認することが大切です。

急に悪化したように見える理由

ALSは進行性の病気ですが、日常生活で見える変化は直線的ではありません。 もともと余力が少ないところへ、感染、痰、便秘、脱水、睡眠不足、痛み、薬の影響が乗ると、急に大きく落ちたように見えることがあります。

たとえば、咳の力が弱くなっている人に軽い風邪や痰の増加が重なると、会話、食事、睡眠、移動が一気につらく見えることがあります。 便秘や脱水でも、だるさ、食欲低下、眠気、起き上がりづらさが強く出ることがあります。

進行そのものだけではない例

痰が増えて会話が続かない、便秘で食欲と体力が落ちる、眠れず日中の動きが悪い、転倒後の痛みで歩けない。

一部戻ることがある例

感染や痰、便秘、脱水、痛み、薬の影響に対応すると、急に落ちたように見えた部分が軽くなることがあります。

「急に進行した」と決める前に、短期間で悪化させる要因が重なっていないかを確認してください。 ただし、呼吸苦や意識変化がある場合は、家で確認を続けず早めに連絡します。

先に確認したい可逆的な要因

急に悪化したように見えるときは、まず次の項目を確認します。 これらはALSそのものの進行とは別に、短期間で状態を悪く見せることがあります。

確認したいこと 起こりやすい変化 相談時に伝える内容
感染 発熱、咳、痰、だるさ、食欲低下、急な動作低下。 体温、咳・痰の変化、周囲の感染、発症日。
痰・唾液・分泌物 詰まり感、会話しにくい、眠れない、吸引回数が増える。 痰の量、色、粘り、吸引回数、出し切れない感じ。
誤嚥・むせ 食後の咳、痰の増加、声が濡れた感じ、発熱、食事量低下。 いつむせたか、水分・食事・薬でむせるか。
脱水 尿が少ない、口が乾く、便秘、だるい、ぼんやりする。 水分量、尿回数、尿の色、食事量、発汗や発熱。
便秘 食欲低下、腹部膨満、眠りにくい、動きにくい、気分不快。 最後の排便日、腹痛、膨満感、薬の使用。
睡眠不足 日中の眠気、だるさ、集中しにくい、会話や食事がつらい。 夜間覚醒、横になると苦しいか、痰・トイレ・不安で起きるか。
薬の影響 眠気、ふらつき、便秘、口渇、痰の粘り、食欲低下。 新しく始めた薬、増量した薬、市販薬、サプリ。
転倒・痛み 痛みで立てない、座れない、呼吸が浅くなる、食事や睡眠が落ちる。 転倒日時、ぶつけた部位、腫れ、変形、痛みの強さ。

急な変化では、「ALSの進行かどうか」を家で決めるより、「短期間で悪く見せる要因があるか」を確認して相談する方が安全です。

呼吸まわりで確認したいこと

ALSで急に悪化したように見えるとき、最も優先して確認したいのが呼吸です。 呼吸筋の余力が少ない場合、軽い感染、痰の増加、誤嚥、睡眠不足、横になる姿勢だけでも、状態が大きく変わることがあります。

早めに相談したい呼吸の変化

  • 横になると苦しい。
  • 会話が途中で続かない。
  • 息継ぎが増えた。
  • 呼吸が浅く速い。
  • 咳が弱く、痰を出し切れない。
  • 痰や唾液で詰まりそうになる。
  • 朝の頭痛・頭重感が強い。
  • 日中の眠気が急に増えた。
  • ぼんやりする、集中しにくい、反応が鈍い。
  • 夜に何度も目が覚める。
  • NPPVが苦しくて使えない、または使用時間が急に変わった。

SpO2だけで安心しない

パルスオキシメーターでSpO2が保たれていても、ALSでは低換気や二酸化炭素の貯留が問題になることがあります。 SpO2が大きく下がっていないから大丈夫、と自己判断せず、横になると苦しい、朝の頭痛、眠気、ぼんやりする変化がある場合は相談してください。

NPPV・人工呼吸器を使っている場合

すでにNPPVや人工呼吸器を使っている場合は、機器の故障だけでなく、マスクのずれ、リーク、痰、鼻づまり、姿勢、使用時間、電源、加湿、回路の問題も確認します。

確認項目 見る内容
使用時間 いつもより使えていないか、逆に使用時間が急に増えていないか。
マスク・回路 ずれ、空気漏れ、皮膚痛、回路外れ、水たまり、加湿の問題。
痰・鼻づまり 痰が増えている、鼻が詰まる、口が乾く、吸引回数が増えている。
アラーム アラーム内容、回数、発生した時間帯。
電源 コンセント、バッテリー、停電、接続不良。

呼吸に関する急な変化は、本人が「まだ大丈夫」と言っても早めに相談してください。 家族から見て会話、顔色、眠気、呼吸の速さ、痰の様子がいつもと違うことも重要な情報です。

痰・唾液・むせで確認したいこと

ALSでは、咳の力の低下、飲み込みにくさ、唾液や痰の増加、痰の粘りが重なると、短期間で苦しさや疲労が強くなることがあります。 痰や唾液の問題は、本人だけでなく家族の夜間対応や不安にも大きく関わります。

見たい変化 確認する内容 相談先
痰が増えた 量、色、粘り、におい、発熱、咳、吸引回数。 主治医、訪問看護、呼吸器、救急相談。
痰が出し切れない 咳の力、詰まり感、会話のしにくさ、夜間の苦しさ。 訪問看護、リハビリ、呼吸器、主治医。
唾液が多い・飲み込みにくい むせ、よだれ、口腔内にたまる感じ、吸引の必要性。 主治医、訪問看護、言語聴覚士。
食後に咳や痰が増える 食事形態、水分、とろみ、食後の声、発熱。 主治医、言語聴覚士、管理栄養士。
吸引回数が増えた 日中・夜間の回数、吸引で改善するか、家族の負担。 訪問看護、主治医、医療機器業者。

痰や唾液の問題は、「吸引すればよい」だけで終わらないことがあります。 咳介助、排痰補助、姿勢、嚥下、脱水、感染、呼吸評価を合わせて相談してください。

食事・水分・便秘・脱水

急に悪化したように感じる背景に、食事量や水分量の低下、便秘、脱水が隠れていることがあります。 ALSでは体力の余裕が少ないため、数日の食事量低下でも、動作、会話、気力、睡眠に影響が出ることがあります。

項目 悪化して見える理由 記録する内容
食事量低下 エネルギー不足で、疲れやすい、起き上がれない、会話がつらい。 食事量、食事時間、残した量、体重変化。
水分不足 脱水、便秘、痰の粘り、ぼんやり感、だるさにつながることがあります。 水分量、尿回数、尿の色、口渇、発熱。
むせ 飲食を避けるようになり、栄養・水分が落ちることがあります。 何でむせるか、水分・薬・食事形態、食後の声。
便秘 腹部膨満、食欲低下、不眠、だるさ、気分不快が出ることがあります。 最後の排便日、腹痛、膨満感、便秘薬の使用。
体重減少 体力や呼吸・嚥下の余力に影響しやすくなります。 週単位の体重、食事量、栄養補助、胃ろう相談の有無。

急に食べられない、飲めない、水分でむせる、尿が少ない、ぼんやりする場合は、家で様子を見続けず早めに相談してください。

薬・眠気・体調変化

新しい薬、増量した薬、市販薬、サプリメントが加わった後に、眠気、ふらつき、便秘、口渇、痰の粘り、食欲低下が出ることがあります。 ALSの進行と見間違えやすいため、薬の変更時期は必ず確認します。

  • 新しく始まった薬があるか。
  • 眠気、ふらつき、ぼんやり感が増えたか。
  • 便秘、口渇、尿が出にくい、食欲低下が出たか。
  • 痰が粘る、口や喉が乾く、吸引しにくい変化があるか。
  • 睡眠薬、抗不安薬、痛み止め、筋緊張をゆるめる薬、市販の風邪薬を使ったか。
  • 薬を自己判断で中止・増減していないか。

薬が原因かもしれないと思っても、自己判断で中止・増量・減量はしないでください。 いつ、何を、どの量で始めたかをメモして主治医や薬剤師へ相談します。

転倒・痛み・急な動作低下

転倒や打撲の後、痛みで動けなくなっているのに、「ALSが急に進んだ」と見えてしまうことがあります。 骨折、打撲、捻挫、筋肉痛、痛みによる呼吸の浅さ、寝不足が重なると、全身状態が急に悪く見えます。

変化 確認したいこと 相談の目安
転倒後に立てない 痛む場所、腫れ、変形、しびれ、頭を打ったか。 強い痛みや変形がある場合は早めに医療機関へ。
座位保持が急に難しい 痛み、発熱、脱水、呼吸苦、眠気、薬の影響。 急な変化なら主治医・訪問看護へ相談。
痛みで呼吸が浅い 胸部、背中、肋骨、転倒、咳の痛み。 息苦しさや発熱がある場合は急ぎます。
家族の介助量が急に増えた 何の動作で増えたか、痛み・便秘・呼吸・眠気の有無。 原因が分からない急な変化は早めに共有します。

「転倒したけれど大丈夫そう」と見えても、ALSでは痛みや恐怖で動作が大きく落ちることがあります。 転倒後の急な悪化は、進行だけでなく外傷も含めて考えます。

急ぎやすい相談の目安

通常の定期外来まで待たない方がよい変化

  • 明らかな呼吸苦がある。
  • 会話が難しいほど息切れする。
  • 横になると苦しい。
  • 痰や唾液が詰まり、吸引しても落ち着かない。
  • 発熱、咳、痰の増加がある。
  • 水分が取れない、尿が少ない、脱水が心配。
  • 食べられない、飲み込めない、むせが急に増えた。
  • 意識がぼんやりしている、反応が鈍い、いつもより混乱している。
  • 急に立てない、座位を保てない、介助量が大きく増えた。
  • 転倒後に強い痛み、腫れ、変形、頭部打撲がある。
  • NPPV・人工呼吸器・吸引器のトラブルがあり、代替手段がない。

迷ったときの考え方

ALSでは、「少し様子を見る」が危険になる場面があります。 呼吸、意識、水分、痰詰まり、転倒後の強い痛みは、迷ったら早めに相談してください。

家族が「いつもと違う」「表情が違う」「反応が鈍い」と感じた場合も、重要な情報です。 数値だけで判断せず、普段との違いを伝えてください。

連絡先の使い分け

急な変化があると、どこへ連絡すればよいか迷います。 あらかじめ連絡先を整理しておくと、家族が慌てにくくなります。

連絡先 向いている相談 伝えること
主治医・ALS外来 数日で悪化、呼吸・嚥下・体重・薬の相談、受診の要否。 いつから、何が、どの程度変わったか。
訪問看護 痰、吸引、発熱、食事・水分、便秘、皮膚、家族の不安。 当日の状態、バイタル、吸引回数、食事・水分量。
医療機器業者 NPPV、人工呼吸器、吸引器、バッテリー、回路、アラーム。 機器名、アラーム内容、発生時刻、電源・回路の状態。
ケアマネジャー・相談支援 介助量が急に増えた、家族が限界、訪問回数や短期入所を増やしたい。 何の介助が増えたか、家族の睡眠・仕事への影響。
救急相談・救急要請 呼吸苦、意識変化、痰詰まり、強い脱水、転倒後の強い痛み。 ALSであること、呼吸器・吸引器の有無、本人の意思表示方法。

連絡先は、紙に書いて冷蔵庫、ベッド周り、吸引器の近く、スマホのメモに置いておくと、急な場面で使いやすくなります。

受診や連絡で伝えたいこと

連絡するときは、長く説明しようとするより、次の順番で伝えると状況が伝わりやすくなります。

  1. ALSであること。
  2. いつから変わったか。
  3. 何が変わったか。
  4. 呼吸、痰、発熱、食事・水分、意識、転倒の有無。
  5. NPPV、人工呼吸器、吸引器、胃ろうの有無。
  6. 本人が話せるか、意思表示方法は何か。
  7. 今すぐ困っていること。
電話で伝える短い文例
ALSで在宅療養中です。
昨日の夜から急に状態が悪く見えます。

変わったことは、
・痰が増えて出し切れない
・横になると苦しい
・会話が続きにくい
・食事と水分が減っている
です。

NPPV:あり / なし
吸引器:あり / なし
発熱:あり / なし
意識:普段通り / ぼんやりしている
転倒:あり / なし

このまま様子を見てよいか、受診や救急相談が必要か確認したいです。
急な悪化の確認メモ
【ALS 急な悪化の確認メモ】

記入日:
本人の名前:
診断名:
主治医:
訪問看護:
緊急連絡先:

1. いつから変わったか
日付:
時間帯:
きっかけ:

2. 何が変わったか
呼吸:
痰・唾液:
むせ:
食事:
水分:
尿:
便通:
睡眠:
意識・反応:
痛み:
転倒:
会話:
移動:
介助量:

3. 呼吸・機器
NPPV:なし / あり
人工呼吸器:なし / あり
吸引器:なし / あり
カフアシスト:なし / あり
使用時間の変化:
アラーム:
吸引回数:
痰の色・粘り:
横になると苦しい:なし / あり
朝の頭痛:なし / あり
日中の眠気:なし / あり

4. 体調
発熱:
咳:
胸の苦しさ:
食事量:
水分量:
尿回数:
最後の排便:
体重:
新しい薬:
市販薬・サプリ:

5. 転倒・痛み
転倒:なし / あり
転倒日時:
ぶつけた部位:
痛み:
腫れ・変形:
頭を打った:

6. 本人の意思表示
会話:できる / 難しい
筆談:できる / 難しい
Yes/No:できる / 難しい
家族が代わりに説明する必要:なし / あり

7. 今一番困っていること
:

「急に悪い」とだけ伝えるより、「昨日の夜から痰が増え、横になると苦しく、吸引回数が普段の2倍になった」のように具体的に伝えると、判断が進みやすくなります。

家でやってよいこと・避けたいこと

急な悪化があると、家族は何かしなければと焦ります。 ただし、家でできることには限界があります。 安全にできる確認と、避けた方がよいことを分けます。

家で確認しやすいこと 避けたいこと
体温、食事量、水分量、尿回数、最後の排便、睡眠、痰の量・色・粘りを確認する。 呼吸苦や意識変化があるのに、記録だけを続ける。
本人が楽な姿勢を探す。横になると苦しい場合は無理に寝かせない。 苦しい体位で長く過ごさせる。
吸引器がある場合は、教わった手順で対応し、回数や状態を記録する。 教わっていない手技を自己流で行う。
NPPVや人工呼吸器の回路、電源、マスクずれ、アラームを確認する。 設定を自己判断で変更する。
薬の変更、新しい市販薬、サプリを確認する。 主治医に相談せず薬を中止・増量・減量する。
転倒後は痛む場所、腫れ、変形、頭部打撲を確認する。 強い痛みがあるのに無理に立たせる、歩かせる。

呼吸苦、痰詰まり、意識変化、飲めない状態、転倒後の強い痛みは、家で整えようとしすぎないことが大切です。 迷う場合は、相談を優先してください。

よくある質問

ALSで急に悪く見えるときは、必ず進行したということですか?

必ずしもそうではありません。 感染、痰や唾液、誤嚥、脱水、便秘、睡眠不足、薬の影響、転倒後の痛みなどで、一時的に大きく悪く見えることがあります。 ただし、呼吸苦や意識変化がある場合は、進行かどうかを家で判断せず早めに相談してください。

発熱がなくても呼吸の相談は必要ですか?

必要なことがあります。 痰詰まり、唾液、夜間低換気、誤嚥、咳の力低下は、発熱が目立たなくても呼吸状態を悪く見せることがあります。 横になると苦しい、朝の頭痛、日中の眠気、ぼんやりする変化がある場合は相談してください。

SpO2が正常なら大丈夫ですか?

SpO2だけでは判断しきれません。 ALSでは低換気や二酸化炭素の貯留が問題になることがあり、SpO2が大きく下がらないこともあります。 息苦しさ、朝の頭痛、日中の眠気、混乱、会話のしにくさがある場合は、数値だけで安心しないでください。

便秘や脱水でも動きが落ちることはありますか?

あります。 ALSでは余力が少ないため、便秘、脱水、食事量低下でも、だるさ、食欲低下、眠気、動作低下が強く出ることがあります。 水分が取れない、尿が少ない、ぼんやりする場合は早めに相談してください。

急に食べられなくなった場合、様子を見てよいですか?

むせ、痰の増加、脱水、体重減少、食後の咳、発熱がある場合は早めに相談してください。 食事量が落ちた原因が疲労だけなのか、嚥下や呼吸の問題なのかを確認する必要があります。

NPPVを使っているのに急に苦しそうです。何を見ればよいですか?

マスクのずれ、空気漏れ、回路外れ、アラーム、加湿、水たまり、鼻づまり、痰、使用時間の変化を確認します。 ただし、設定を自己判断で変えないでください。 苦しさが続く場合は、主治医、訪問看護、機器業者、救急相談へ連絡します。

家族が「いつもと違う」と感じるだけでも相談してよいですか?

相談して構いません。 ALSでは本人がうまく説明できないこともあります。 家族が見た、会話、顔色、眠気、吸引回数、食事量、反応、介助量の変化は重要な情報です。

急な悪化を感じた時、何をメモすればよいですか?

いつから、何が変わったか、呼吸、痰、発熱、食事、水分、尿、便通、睡眠、薬、転倒、NPPVや吸引の使用状況をメモしてください。 長い説明より、変化の始まりと今一番困っていることを短く伝える方が相談しやすくなります。

参考文献

  1. NICE. Motor neurone disease: assessment and management. NG42.
    https://www.nice.org.uk/guidance/ng42/chapter/recommendations
  2. NICE. Motor neurone disease: assessment and management – Breathing.
    https://www.nice.org.uk/guidance/ng42/ifp/chapter/breathing
  3. Motor Neurone Disease Association. MND in acute, urgent and emergency care. 2022.
    https://www.mndassociation.org/sites/default/files/2023-01/MND%20in%20acute%20urgent%20and%20emergency%20care%202022.pdf
  4. Motor Neurone Disease Association. P6 Managing respiratory symptoms.
    https://www.mndassociation.org/sites/default/files/public/2022-11/P6%20Respiratory%20symptoms.pdf
  5. McHenry KL, et al. Airway Clearance Strategies and Secretion Management in Amyotrophic Lateral Sclerosis. Respiratory Care. 2024.
    https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.4187/respcare.11215
  6. Murray NM, et al. Acute on Chronic Neuromuscular Respiratory Failure in Adults. Chest. 2021.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34324802/
  7. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS).
    https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als
  8. 難病情報センター. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2).
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/52

ALSで急に悪化したように見える場合、感染、分泌物、誤嚥、低換気、脱水、便秘、薬剤影響、転倒後の痛みなどが重なっていることがあります。 呼吸苦、意識変化、痰詰まり、飲めない状態、転倒後の強い痛みがある場合は、通常の経過観察より早めの相談を優先してください。

まとめ

ALSで急に悪化したように感じたときは、病気の進行だけでなく、感染、痰や唾液、誤嚥、脱水、便秘、睡眠不足、薬の影響、転倒後の痛みなどを確認してください。

特に呼吸まわりの変化は、早めの相談が必要です。 横になると苦しい、会話が続かない、痰が出し切れない、朝の頭痛、日中の強い眠気、ぼんやりする変化は、家族から見た違和感も含めて医療者へ伝えます。

急な変化を家で完全に判断する必要はありません。 いつから、何が、どの場面で変わったかを短く整理し、主治医、訪問看護、救急相談、必要時は救急要請につなげることが大切です。

免責事項

  • 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断、治療、救急判断を行うものではありません。
  • ALSで急な変化がある場合、病気の進行以外に、感染、痰詰まり、誤嚥、脱水、便秘、薬剤影響、転倒などが重なっていることがあります。
  • 明らかな呼吸苦、意識変化、痰詰まり、発熱を伴う胸部症状、飲めない状態、強い脱水、転倒後の強い痛みがある場合は、通常の外来待ちより早い対応が必要になることがあります。
  • NPPV、人工呼吸器、吸引器などの設定は自己判断で変更せず、主治医、訪問看護、医療機器業者へ相談してください。
  • 薬の中止、増量、減量は自己判断で行わず、主治医または薬剤師へ相談してください。