ALSで救急車を呼ぶか迷うとき|呼吸・誤嚥・発熱の見方

ALS救急判断 呼吸・誤嚥・発熱 救急隊への伝達

ALSで救急車を呼ぶか迷うとき|呼吸・誤嚥・発熱の見方

ALSでは、「今すぐ救急車を呼ぶべきか」「主治医や訪問看護へ相談すべきか」「朝まで待てるのか」で迷う場面があります。 特に呼吸、痰づまり、むせ込み後の発熱、水分が取れない状態、意識の変化は、判断が遅れると危険につながることがあります。

このページでは、ALSで救急車を呼ぶか迷うときに、自宅で見る項目、119番を考えるサイン、#7119や医療機関へ相談したい場面、救急隊へ伝える内容を整理します。 強い息苦しさ、意識の変化、唇や爪の紫色、痰づまりが改善しない状態がある場合は、この記事を読み進めるより119番を優先してください。

結論

  • ALSで救急車を呼ぶか迷うときは、「苦しいと言っているか」だけでなく、呼吸数、SpO2、意識、顔色、痰、水分量を普段と比べます。
  • 今すぐ119番を考えるのは、強い息苦しさ、反応の鈍さ、唇や爪の紫色、痰づまり、会話が続かない、水分が取れない状態です。
  • SpO2が保たれていても、二酸化炭素がたまる換気不足は否定できません。眠気、頭痛、ぼんやり感、呼吸の浅さを合わせて見ます。
  • むせ込み後は、その場で落ち着いても、24〜48時間で発熱、痰、湿った声、呼吸悪化が出ることがあります。
  • 救急隊には、診断名、主治医、NPPVや人工呼吸器の設定、吸引・カフアシストの有無、薬、意思疎通、緊急時の希望を短く伝えます。

このページで整理すること

このページは、ALSの方が急に体調を崩したときに、救急車を呼ぶべきか、当日中に相談すべきか、自宅で記録しながら様子を見る範囲かを整理するためのページです。 夜間呼吸、むせ込み後の発熱、入院準備、救急受診用シートとは役割を分けています。

ページ・場面 主な目的 このページとの違い
救急車を呼ぶか迷うとき 呼吸、誤嚥、発熱、意識変化から緊急度を判断する 119番、#7119、主治医・訪問看護への相談、自宅記録の分け方を扱います。
夜に苦しいとき 夜間低換気、CO2貯留、NPPV、痰、朝まで待たないサインを見る 夜間の息苦しさが中心です。
むせ込み後に発熱したとき 誤嚥後の発熱、痰、湿った声、食事・水分低下を追う むせた後の24〜48時間の観察が中心です。
入院準備 入院時に病棟へ渡す情報、持ち物、家族共有メモを整理する 入院が決まった後の準備が中心です。
救急受診用引き継ぎシート 救急隊・救急外来へ短時間で情報を渡す コピーして渡すシートとして使います。

救急判断は、「救急車を呼ぶか呼ばないか」の二択だけではありません。 今すぐ119番、#7119や救急相談、主治医・訪問看護へ当日相談、自宅で記録して翌日相談という段階に分けると、迷いを減らしやすくなります。

なぜALSでは救急判断に迷いやすいのか

ALSでは、呼吸、嚥下、痰、発話、意思疎通が同時に関わることがあります。 苦しいと訴えにくい、痰が出せない、むせた後に発熱する、SpO2が大きく下がらないのに換気が足りない、ということがあり、家族だけで判断しにくくなります。

また、救急外来ではALS専門外の医療者が最初に対応することもあります。 そのため、救急車を呼ぶかどうかだけでなく、呼んだ後に何を伝えるか、本人の希望をどう共有するかも大切になります。

呼吸が数字だけでは分かりにくい

SpO2が保たれていても、CO2がたまる換気不足は家庭では見えにくいことがあります。

誤嚥後に遅れて悪化する

むせた直後は落ち着いても、翌日以降に発熱、痰、呼吸悪化が出ることがあります。

意思表示が伝わりにくい

発話が難しい場合、苦しさ、処置の希望、挿管や気管切開の希望が伝わらないことがあります。

救急判断で大切なのは、家で診断名をつけることではありません。 普段と違う呼吸、痰、意識、水分、顔色を早めに拾い、必要な相手へつなげることです。

まず比べたい普段の状態

救急車を呼ぶか迷ったときは、一般的な基準だけでなく、本人の普段の状態と比べます。 ALSでは、同じSpO2や呼吸数でも、普段からの差が大切です。

普段から控えておきたい項目 書く内容 急変時に見る変化
SpO2 安静時、就寝前、起床時、NPPV使用時の普段値 普段より低い、痰を出しても戻らない、姿勢で大きく変わる
呼吸数 安静時に1分間で何回くらいか 普段より明らかに速い、浅い、肩で息をしている
意識・反応 普段の反応速度、会話量、眠気、朝の頭痛 ぼんやり、反応が遅い、すぐ眠る、会話がかみ合わない
痰・吸引 普段の痰、吸引回数、咳で出せるか、カフアシストの有無 痰が詰まる、吸引しても取れない、咳が弱い
食事・水分 普段の食事量、水分量、むせやすいもの、薬の飲み方 水分が取れない、薬が飲めない、尿が少ない
本人の希望 挿管、気管切開、人工呼吸器、入院、延命処置について話し合った内容 救急時に誰が説明するか、書面やメモがあるか

普段の数値が分からない場合でも、「いつもより息が速い」「いつもの姿勢で眠れない」「今日は水分がほとんど入っていない」などの比較は役立ちます。

今すぐ119番を考えるサイン

以下のような変化がある場合は、朝まで待つ、様子を見る、ネットで調べるより、119番を検討してください。 ALSでは、本人が強く訴えられないまま呼吸や痰の問題が進むことがあります。

119番を考えるサイン
  • 強い息苦しさがある、横になれない、座っていても苦しい。
  • 呼吸が速く浅い、肩で息をしている、胸とお腹の動きが普段と違う。
  • 一息で話せる言葉が短い、返事が途切れる、会話が続かない。
  • 呼びかけへの反応が遅い、ぼんやりする、すぐ眠ってしまう。
  • 唇や爪が紫色、顔色が明らかに悪い、冷汗がある。
  • 痰が詰まっているようで、咳・吸引・咳補助でも改善しない。
  • SpO2が普段より明らかに低く、体位調整や排痰後も戻りにくい。
  • 水分が取れない、尿がほとんど出ない、薬が飲めない。
  • むせ込み後に息苦しさ、顔色不良、反応低下がある。
  • 家族が「いつもと違う」「このまま待つのは怖い」と感じる。

119番をためらう場合でも、意識、呼吸、顔色、痰、水分のどれかが明らかに崩れているなら、早めの相談・要請を優先してください。

当日中に相談・受診したい場面

すぐ119番ほどではないように見えても、同日中に主治医、訪問看護、かかりつけ医、#7119などへ相談した方がよい場面があります。 特に、発熱、痰、水分低下、むせ込み、NPPV不調が重なっている場合は、早めに動きます。

  • 発熱があり、痰が増えている、または痰が硬くて出しにくい。
  • むせ込み後に湿った声、咳、痰、発熱が出てきた。
  • 水分が普段の3分の1以下、または飲むたびにむせる。
  • 食事量が半分以下で、食べると息切れやむせが増える。
  • 薬が飲めない、飲むたびにむせる、内服を続けられない。
  • SpO2が普段より低い状態が続く。
  • 呼吸数が普段より増え、小刻みに速い呼吸が続く。
  • NPPVを使っても苦しい、マスク漏れや乾燥で眠れない。
  • 吸引やカフアシストの回数が普段より増えている。
  • 家族だけで今夜を過ごす判断に不安がある。

相談するときは、「熱があります」だけでなく、「ALSがあり、痰が出せない」「水分が入らない」「普段より呼吸が速い」「むせ込み後です」と伝えると、緊急度が伝わりやすくなります。

呼吸で見るポイント

ALSの呼吸では、酸素の数字だけでは判断しきれないことがあります。 SpO2、呼吸数、会話、意識、姿勢、痰の状態を一緒に見ます。

見る項目 家庭で確認する内容 危ない変化
呼吸数 1分間の呼吸回数。普段と比べて速いか、浅いか。 普段より明らかに速い、25回/分前後以上が続く、または逆に弱く浅い。
SpO2 普段値との差、体位や排痰後の戻り方。 普段より明らかに低い、95%未満が続く、排痰後も戻らない。
会話 一息で話せる長さ、返事の速さ、声の強さ。 短い返事しかできない、言葉が続かない、声が弱い。
意識 呼びかけへの反応、眠気、ぼんやり感。 反応が遅い、すぐ眠る、つじつまが合わない。
姿勢 横になれるか、上体を起こすと楽か。 横になれない、座っていても苦しい、どの姿勢でも落ち着かない。
喉のゴロゴロ、吸引回数、咳の強さ。 痰が詰まる、吸引しても取れない、咳で出せない。

SpO2が正常に近くても、眠気、反応の鈍さ、朝の頭痛、呼吸の浅さがある場合は、CO2貯留や換気不足を含めて医療者へ伝えてください。

酸素だけで判断しないために

ALSの呼吸苦では、酸素が足りないことだけでなく、二酸化炭素を外へ出す「換気」が足りないことが問題になる場合があります。 そのため、酸素投与の必要性は医療者が判断し、NPPVなどの換気補助、吸引、排痰、感染や誤嚥の有無も合わせて確認します。

救急隊や救急外来には、「ALSがあり、呼吸筋が弱い可能性があります。酸素の数字だけでなく、換気不足やCO2貯留も心配です。NPPV、吸引、排痰の確認をお願いします」と伝えます。

家族が酸素投与を拒否したり、自己判断で調整したりする必要はありません。 ただし、ALSでは「酸素だけでなく換気を見る必要がある」と伝えられる準備が重要です。

誤嚥・むせ込み後に見るポイント

ALSでは、食事、水分、唾液、薬、胃内容物などにむせることがあります。 むせ込み直後に落ち着いても、その後に痰、湿った声、発熱、呼吸数の増加が出ることがあります。

時間 見ること 相談したい変化
直後〜数時間 咳、息苦しさ、湿った声、SpO2、痰、顔色 咳が止まらない、痰が出せない、息苦しい、顔色が悪い。
半日〜翌日 発熱、痰の量・色、食欲、水分、眠気、呼吸数 発熱、黄色・緑色の痰、水分が取れない、呼吸が速い。
翌日〜48時間 一度落ち着いた後の再悪化、食後のむせ、痰の残り 熱が再び上がる、食後に湿った声、吸引しても痰が残る。

「その場で落ち着いた」ことは良いサインですが、それだけで完全に安心とは言えません。 むせた時間、何でむせたか、その後の発熱・痰・呼吸を記録しておきます。

発熱で見るポイント

ALSで発熱があるときは、熱の高さだけでなく、痰、呼吸、水分、意識、排尿を合わせて見ます。 発熱で体力を使うと、呼吸筋の余力が落ち、痰が出しにくくなることがあります。

発熱と一緒に見ること
  • 痰が増えたか
  • 痰の色が黄色・緑色か
  • 呼吸数が増えたか
  • SpO2が普段より下がったか
  • 反応が鈍くないか
脱水と痰で見ること
  • 水分量が普段より少ないか
  • 尿が少ないか
  • 口が乾いていないか
  • 痰が硬くなっていないか
  • 薬が飲めているか

発熱に加えて、呼吸が速い、痰が出せない、水分が取れない、反応が鈍い場合は、体温が何度かに関係なく早めに相談してください。

食事・水分・薬で見るポイント

救急判断では、呼吸だけでなく、水分が取れているか、薬を飲めているかも重要です。 水分が取れないと、脱水、痰の硬さ、尿量低下、薬の中断につながります。

状態 見ること 相談・受診の目安
水分が少ない 普段の何割か、尿回数、尿の色、口の乾き 普段の3分の1以下、尿が少ない、口が乾く場合は相談します。
薬が飲めない 錠剤でむせる、粉でもむせる、飲むと息苦しい 自己判断で中止せず、医師・薬剤師へ相談します。
食事でむせる 食形態、水分、とろみ、一口量、食後の痰 食事のたびにむせる、湿った声、発熱がある場合は相談します。
食べると息切れする 食事時間、疲労、呼吸数、SpO2 食事だけで呼吸が苦しい場合は、無理に進めず相談します。

緊急度を3段階で整理する

迷ったときは、状況を3段階に分けます。 下の表は目安であり、実際には本人の普段の状態、主治医の指示、家族の不安、地域の救急体制によって変わります。

段階 状態の例 行動
緊急 強い息苦しさ、反応が鈍い、唇や爪が紫、痰づまり、水分不可、会話が続かない 119番を検討。ALS、呼吸筋低下、NPPV・吸引の有無、本人の希望を伝えます。
当日相談 発熱と痰、むせ込み後の発熱、水分低下、呼吸数増加、NPPV不調、吸引回数増加 主治医、訪問看護、かかりつけ医、#7119へ相談。必要に応じて受診します。
記録して相談 軽い痰の増加、微熱、軽いだるさ、普段と少し違うが呼吸・水分・反応は保てている 体温、SpO2、呼吸数、痰、水分、食事、反応を記録し、訪問看護や主治医へ共有します。

迷ったときは、低い段階に見積もりすぎないことが大切です。 ALSでは、呼吸・痰・水分・意識の変化が重なると、短時間で状態が変わることがあります。

#7119・主治医・訪問看護・119番の使い分け

すぐ命に関わるサインがある場合は119番を優先します。 ただし、判断に迷うときは、地域で実施されていれば#7119、主治医、訪問看護、かかりつけ医へ相談する方法もあります。

連絡先 使う場面 伝えること
119番 強い息苦しさ、意識の変化、痰づまり、顔色不良、水分不可など ALS、呼吸筋低下の可能性、NPPV・吸引、今の状態、本人の希望
#7119 救急車を呼ぶか、今すぐ受診すべきか迷うとき ALSであること、呼吸・痰・発熱・水分・反応の変化
主治医・専門病院 呼吸、NPPV、発熱、誤嚥、薬、入院先の相談 普段との違い、検査値、機器設定、本人の希望
訪問看護 痰、吸引、食事・水分、発熱、在宅での見守り判断 今日の変化、測定値、家族が困っていること
かかりつけ医 発熱、感染、脱水、内服、受診先の相談 ALSの状態、主治医、呼吸機器、現在の症状

#7119は実施地域があります。つながらない地域では、自治体や消防・医療機関が案内している救急相談窓口を確認してください。 明らかに緊急性が高い場合は、#7119を挟まず119番を優先します。

救急隊へ渡したい情報

救急要請後は、救急隊が到着するまでに、情報を一つにまとめます。 家族が説明しようとしても、慌てて抜けることがあるため、紙やスマートフォンで見せられる形にしておくと安心です。

情報 書く内容 なぜ必要か
診断名・主治医 ALS、発症時期、主治医名、病院、連絡先 搬送先や治療方針の確認に関わります。
呼吸機能 直近の%VC、肺活量、普段のSpO2、呼吸数、夜間低換気の有無 呼吸の余力や換気評価の参考になります。
機器 NPPV、人工呼吸器、吸引器、カフアシスト、加湿、予備バッテリー 搬送中・救急外来での呼吸管理に関わります。
薬・アレルギー お薬手帳、薬の現物、アレルギー、副作用歴 救急外来での薬剤選択に関わります。
意思疎通 発話、文字盤、視線入力、YES/NOサイン、家族の読み取り方 本人の苦しさや希望を確認するために必要です。
緊急時の希望 挿管、気管切開、人工呼吸器、延命処置について話し合った内容 本人の意思を医療者へ伝えるために重要です。

緊急時の希望は、救急の場で初めて決めると家族の負担が大きくなります。 元気な時から、主治医と本人・家族で話し合い、必要に応じて書面やメモに残しておきます。

家族の役割分担

救急時は、全員が同じことをしようとすると混乱します。 説明する人、荷物を準備する人、本人のそばにいる人、主治医や家族へ連絡する人を分けます。

説明担当

救急隊へ、ALS、今の状態、普段との違い、NPPV・吸引、本人の希望を伝えます。

機器・荷物担当

NPPV、吸引器、カフアシスト、充電器、回路、お薬手帳、医療証、メモを準備します。

本人のそばにいる担当

姿勢、痰、呼吸、文字盤、YES/NOサインを確認し、本人が伝えたいことを拾います。

連絡担当

主治医、訪問看護、家族、ケアマネジャー、搬送先候補へ連絡します。

役割分担は、救急時に家族が冷静でいるための準備です。 一人で全部を抱えず、紙にしたメモを使って、救急隊や病院に情報を渡します。

コピーして使える救急メモ

以下をコピーして、分かる範囲で記入してください。 すべて埋める必要はありません。救急時は「今困っていること」と「ALSであること」が伝わるだけでも役立ちます。

ALS救急メモ:短時間版
作成日:__年__月__日 本人氏名:__________ 診断名:ALS 主治医・医療機関:__________ 家族連絡先:__________ 【今いちばん困っていること】 □ 息苦しい □ 痰が詰まっている □ むせ込み後に悪化した □ 発熱がある □ 水分が取れない □ 薬が飲めない □ 反応が鈍い □ 顔色が悪い □ その他:__________ 【呼吸】 普段のSpO2:__%前後 現在のSpO2:__% 呼吸数:__回/分 横になると苦しい:□ あり □ なし 言葉が続かない:□ あり □ なし 反応が鈍い:□ あり □ なし 【機器】 NPPV・人工呼吸器:□ あり □ なし 設定表:□ あり □ なし 吸引器:□ あり □ なし カフアシスト:□ あり □ なし 酸素:□ あり □ なし 【痰・誤嚥・発熱】 痰:□ 増えた □ 硬い □ 黄色・緑色 □ 出せない むせ込み:□ あり □ なし むせた日時:__月__日__時ごろ 発熱:□ あり □ なし 最高体温:__℃ 【食事・水分】 食事量:普段の__割 水分量:普段の__割 尿:□ 普段通り □ 少ない 薬:□ 飲める □ 飲めない □ むせる 【意思疎通】 発話:□ できる □ 難しい YES:______ NO:______ 文字盤・視線入力:□ あり □ なし 【緊急時の希望】 挿管・気管切開・人工呼吸器について話し合った内容: ____________________
119番で伝える順番
1. ALSの患者です。 2. 今、____で困っています。 3. 呼吸が苦しく、普段と違います。 4. 普段のSpO2は__%ですが、今は__%です。 5. 呼吸数は__回/分です。 6. 痰が____で、吸引・咳補助は____です。 7. NPPV・人工呼吸器は □ 使っています / □ 使っていません。 8. 意思疎通は____で行います。 9. 主治医は____病院の____先生です。 10. 挿管・気管切開などについて話し合った内容があります。メモを渡します。

よくある失敗と避け方

よくある失敗 なぜ困るか 避け方
SpO2だけで安心する 換気不足やCO2貯留は、SpO2だけでは見えにくいことがあります。 眠気、反応、頭痛、呼吸数、横になる苦しさを一緒に見ます。
酸素だけで解決しようとする ALSでは酸素不足だけでなく、換気不足や排痰不良が問題になることがあります。 医療者へ、換気評価、NPPV、排痰、吸引の確認を伝えます。
むせた直後に落ち着いたので安心する 誤嚥後は、数時間から翌日に発熱、痰、呼吸悪化が出ることがあります。 むせた時間、食べたもの、水分、痰、発熱、呼吸を48時間ほど見ます。
水分が入らない状態を軽く見る 脱水、痰の硬さ、薬が飲めない、尿量低下につながります。 普段の何割飲めたか、尿量、薬が飲めるかを伝えます。
救急隊に病名だけ伝える 呼吸機器、痰、意思疎通、本人の希望が伝わりません。 短時間版メモを渡し、NPPV・吸引・希望を最初に伝えます。
本人の希望を救急時に初めて話し合う 時間が限られ、家族の負担が大きくなります。 元気な時から主治医と相談し、本人の希望をメモに残します。

次に確認したいページ

救急判断は、夜間呼吸、誤嚥後の発熱、入院準備、救急時の引き継ぎとつなげて考えると整理しやすくなります。

ALSで夜に苦しいとき

夜間低換気、CO2貯留、NPPV、痰、朝まで待たないサインを確認できます。

ALSで夜に苦しいときのサインを見る
ALSでむせ込み後に発熱したとき

むせ込み後の発熱、痰、湿った声、食事・水分低下の見方を確認できます。

ALSでむせ込み後に発熱したときの見方を見る
ALSで入院に備えるとき

入院時に必要な持ち物、伝達事項、家族共有メモを整理できます。

ALSの入院準備と家族共有メモを見る
ALSの救急受診用引き継ぎシート

救急隊・救急外来へ、呼吸器、吸引、薬、意思疎通を一枚で伝えるためのテンプレートです。

ALS救急受診用引き継ぎシートを見る
ALSで口の乾き・痰・口腔ケアがつらいとき

痰、粘い唾液、口の乾き、口腔ケアの負担を分けて確認できます。

ALSの口の乾き・痰・口腔ケアを見る
神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイド

救急、入院、検査、手術で共有したい呼吸・嚥下・麻酔・薬の情報を確認できます。

神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイドを見る

よくある質問

迷ったら救急車を呼んでよいですか?

強い息苦しさ、意識の変化、顔色不良、痰づまり、水分不可、会話が続かない状態がある場合は、119番を検討してください。 すぐ119番か迷うが明らかな緊急サインまではない場合は、地域で利用できれば#7119、主治医、訪問看護、かかりつけ医へ相談します。

発熱だけなら様子見でよいですか?

発熱だけで判断しません。痰の増加、呼吸数の増加、SpO2低下、水分低下、反応の鈍さ、むせ込み後の発熱がある場合は、同日中の相談を考えます。

むせ込み後にすぐ落ち着いたら安心ですか?

その場で落ち着くことは良いサインですが、完全に安心とは限りません。 その後24〜48時間は、発熱、痰、湿った声、呼吸数、水分量を確認してください。

SpO2が正常なら救急ではありませんか?

SpO2だけでは判断しません。ALSでは、SpO2が保たれていても、CO2貯留や換気不足が起きることがあります。 眠気、反応の鈍さ、呼吸の浅さ、朝の頭痛、横になる苦しさがあれば相談してください。

救急車の中で酸素を使われるのが心配です。どう伝えればよいですか?

酸素を拒否するのではなく、「ALSで呼吸筋が弱く、CO2貯留が心配です。酸素の数字だけでなく、換気補助、NPPV、吸引、排痰の確認をお願いします」と伝えます。 実際の酸素投与や換気補助は、救急隊・医療者の判断を優先します。

気管切開をしないと決めている場合、救急車は呼べませんか?

呼べます。救急車を呼ぶことと、気管切開を必ず行うことは同じではありません。 ただし、本人の希望が伝わらないと救急現場で確認が難しくなるため、挿管、気管切開、人工呼吸器、延命処置について話し合った内容を、主治医と相談しながら書面やメモに残しておくことが重要です。

一番準備しておくべきものは何ですか?

診断名、主治医連絡先、直近の呼吸機能、NPPVや人工呼吸器の設定、吸引・カフアシストの有無、お薬手帳、意思疎通方法、緊急時の希望をまとめた一枚のメモです。 救急時はこのメモを最初に渡せるようにしておきます。

参考文献・参考情報

本ページは、ALSで救急車を呼ぶか迷う場面の整理を目的とした一般的な情報です。 実際の判断は、本人の呼吸機能、嚥下、痰、NPPV使用状況、主治医の方針、地域の救急体制によって変わります。

まとめ

ALSで救急車を呼ぶか迷うときは、呼吸、誤嚥、発熱、水分、痰、意識を分けて見ます。 特に、強い息苦しさ、反応の鈍さ、顔色不良、痰づまり、水分が取れない状態は、朝まで待たずに119番を考えるサインです。

SpO2が保たれていても、換気不足やCO2貯留は否定できません。 救急隊や医療者へは、ALSであること、呼吸筋が弱い可能性、NPPV・吸引の有無、本人の意思疎通方法、緊急時の希望を短く伝えてください。

救急時の準備は、不安を増やすためではありません。 本人の状態と希望を必要な相手に伝え、必要な医療につなげるための準備です。

  • 本ページは一般的な情報整理を目的としたもので、個別の救急要請、診断、治療方針を確定するものではありません。
  • 強い息苦しさ、意識の変化、唇や爪の紫色、水分摂取不可、痰づまりが改善しない状態がある場合は、119番を含めた緊急対応を優先してください。
  • 酸素、NPPV、人工呼吸器、吸引、カフアシスト、薬の使用や設定変更は、主治医・医療者の指示に従ってください。
  • SpO2が保たれていても、換気不足やCO2貯留を否定できない場合があります。眠気、頭痛、反応の鈍さ、呼吸の浅さを合わせて見てください。
  • 挿管、気管切開、人工呼吸器、延命処置に関する希望は、本人・家族・主治医で早めに話し合い、必要に応じて書面やメモに残してください。