ALSの救急受診では「普段の状態」と「今の異常」を一枚で渡す
ALSで救急受診になると、本人が息苦しい、疲れて話せない、発話が難しい、家族も焦って説明が飛ぶ、ということが起こりやすくなります。 救急外来では、診断名だけでなく、普段の呼吸、嚥下、使用機器、薬、意思疎通、いつもと何が違うかを短時間で伝える必要があります。
結論
- ALSの救急受診では、病名だけでなく、普段の呼吸・嚥下・機器・薬・意思疎通・今回の異常を一枚で渡すと伝わりやすくなります。
- 家族が原因を断定する必要はありません。「いつから」「何が」「普段とどう違うか」を短く伝えることが重要です。
- NPPV、人工呼吸器、吸引、咳補助機器、胃ろう、意思疎通方法は、救急時に見落としたくない情報です。
- シートは作って終わりではなく、薬、機器、食形態、連絡先、意思疎通方法が変わった時に更新します。
このページの役割
このページは、ALSで救急搬送、急な受診、急な入院になった時に、救急隊・救急外来・病棟へ渡すための引き継ぎシートです。 定期受診で前回からの変化を伝える受診メモや、家族で役割分担を決める家族会議シートとは目的が違います。
| シート | 使う場面 | 書く中心 | 主な相手 |
|---|---|---|---|
| ALS救急受診用引き継ぎシート | 救急搬送、急な受診、入院 | ALS、呼吸、嚥下、機器、薬、意思疎通、今回の異常 | 救急隊、救急外来、当直医、病棟看護師 |
| ALS受診メモ | 定期受診、専門外来、訪問診療前 | 前回からの変化、呼吸・嚥下・体重・疲労、相談したいこと | 主治医、専門医、訪問診療医 |
| ALS家族会議テンプレート | 本人・家族・支援者で話し合う時 | 今月決めること、保留すること、家族の役割、外部支援 | 本人、家族、訪問看護、ケアマネ、相談支援 |
| 緊急時・入院・手術ガイド | 入院、手術、麻酔、退院調整 | 入院時の注意、麻酔、持ち物、退院後の支援 | 主治医、病棟、麻酔科、在宅チーム |
救急用シートは、長い病歴を書くための紙ではありません。見落とすと困る情報を、救急の場で短く渡すための紙です。
最初に伝えるのは「ALS・呼吸・嚥下・機器・普段との差」
診断名、発症部位、主治医、通院先、普段の状態を最初に伝えます。
NPPV、人工呼吸器、酸素、吸引、咳補助機器、普段のSpO2、痰の出しにくさを伝えます。
むせ、食形態、とろみ、胃ろう、経管栄養、薬の飲ませ方を伝えます。
いつから、何が、普段とどう違うかを短く伝えます。
このシートを渡すタイミング
引き継ぎシートは、救急搬送時、救急外来の受付、看護師の問診、医師の診察、入院時の病棟申し送りで使えます。 すべてを口頭で説明しようとせず、最初に紙を渡します。
| 場面 | 渡す相手 | 伝える一言 | 特に見てもらう欄 |
|---|---|---|---|
| 救急要請・救急隊到着時 | 救急隊 | 「ALSがあります。呼吸・嚥下・使用機器の情報をこの紙にまとめています。」 | 診断名、呼吸機器、吸引、薬、主治医、今回の異常 |
| 救急外来受付 | 受付・トリアージ担当 | 「本人が話しにくいので、このシートを先に見てください。」 | 普段の状態、今回の症状、緊急連絡先 |
| 医師の診察 | 救急医・当直医 | 「普段と違う点はここです。呼吸と嚥下を特に確認してほしいです。」 | 普段との差、呼吸、嚥下、発熱、痰、食事・水分 |
| 入院になる場合 | 病棟看護師・担当医 | 「普段の介助方法、意思疎通、食事、機器の使い方をまとめています。」 | 意思疎通、移乗、食形態、医療機器、家族連絡先 |
| 家族が途中で離れる場合 | 病棟・救急外来スタッフ | 「家族不在時に困る情報をこの紙に残しています。」 | 意思疎通、注意点、緊急連絡先、本人の希望 |
救急では「詳しい説明」より「見落とすと危ない情報」を先に出します。NPPV・人工呼吸器・吸引・胃ろう・薬・アレルギー・意思疎通方法・普段の呼吸状態は、早い段階で共有してください。
救急で優先して伝える情報
ALSでは、救急受診の理由が発熱や転倒でも、背景に呼吸、嚥下、排痰、栄養、意思疎通が関係していることがあります。 次の順番で伝えると、抜けにくくなります。
| 優先順位 | 伝えること | 具体例 |
|---|---|---|
| 最優先 | 今回なぜ救急受診したか | 呼吸苦、痰詰まり、発熱、むせ、食べられない、水分が取れない、転倒、意識がぼんやりする |
| 最優先 | 普段と何が違うか | 普段は会話できるが今日はできない、普段より痰が多い、普段よりSpO2が低い、普段より眠い |
| 高い | 呼吸機器・吸引・酸素 | NPPV、人工呼吸器、酸素、吸引器、咳補助機器、使用時間、設定、普段の状態 |
| 高い | 嚥下・食事・薬の飲み方 | むせる、とろみあり、胃ろうあり、錠剤が飲みにくい、誤嚥が疑われる |
| 高い | 意思疎通 | 発話困難、Yes/Noで答える、文字盤、スマホ、視線入力、家族通訳が必要 |
| 高い | 薬・アレルギー・禁忌 | 常用薬、頓服、アレルギー、過去に合わなかった薬、嚥下しにくい剤形 |
| 必要に応じて | 移乗・姿勢・介助 | 車いす、全介助、二人介助、リフト、横になると苦しい、座位の方が楽 |
呼吸苦、痰詰まり、意識低下、水分が取れない状態は、早めの医療相談が必要です。迷う場合は、主治医・訪問看護・救急相談・救急要請を優先してください。
救急隊・救急外来に最初に伝える一言
家族が慌てている時ほど、最初の一言を決めておくと説明が楽になります。状況に合わせて、下の文章をそのまま使えます。
救急隊に伝える一言
「ALSがあります。普段の呼吸・嚥下・使用機器・薬・意思疎通方法をこの紙にまとめています。今日は__時ごろから____が普段と違います。」
救急外来で伝える一言
「本人は話しづらい、または疲れて話せません。普段は____ですが、今日は____が違います。呼吸、痰、嚥下、薬、意思疎通の欄を先に見てください。」
入院時に伝える一言
「普段の移乗、食形態、薬の飲ませ方、呼吸機器、意思疎通方法がこのシートにあります。家族が不在の時間に困りやすい点も書いています。」
ALS 救急受診用引き継ぎシート:通常版
下の項目を印刷し、保険証・受給者証・薬・医療機器の情報と一緒に保管してください。全部を埋める必要はありません。分かる範囲で埋め、変更があれば更新します。
ALS 救急受診用引き継ぎシート
- 作成日・更新日
- __年__月__日
- 本人情報
- 氏名:____ / 生年月日:____ / 年齢:__歳 / 血液型:____
- 診断名
- ALS / 発症部位:上肢・下肢・球麻痺・呼吸・その他:____ / 診断年:__年
- 主治医・通院先
- 病院:____ / 診療科:____ / 主治医:____ / 電話:____
- 訪問看護
- 事業所:____ / 24時間連絡:あり・なし / 電話:____
- 在宅チーム
- 訪問診療:____ / ケアマネ・相談支援:____ / ヘルパー:____
- 家族連絡先
- 第1:____ / 第2:____ / 第3:____
- 今回の救急受診理由
- 呼吸苦 / 痰詰まり / 発熱 / むせ / 食べられない / 水分が取れない / 転倒 / 意識変化 / その他:____
- いつから・経過
- 発症時刻:__月__日__時頃 / 悪化の速さ:急に・徐々に / きっかけ:____
- 普段と違う点
- __________
- 呼吸の普段
- 息切れ:なし・あり / 横になる苦しさ:なし・あり / 朝の頭痛:なし・あり / 普段のSpO2:__%前後
- 呼吸機器
- NPPV:あり・なし / 人工呼吸器:あり・なし / 酸素:あり・なし / 使用時間:____
- 呼吸機器の設定メモ
- 機器名:____ / マスク・回路:____ / 設定は写真あり・紙あり・不明
- 吸引・排痰
- 吸引:あり・なし / 咳補助機器:あり・なし / 痰が出しにくい:あり・なし / 普段の頻度:____
- 嚥下・食事
- むせ:なし・あり / 食形態:普通・刻み・やわらかめ・ペースト・とろみ / 食事時間:__分
- 栄養・胃ろう
- 胃ろう:あり・なし / 経管栄養:あり・なし / 栄養剤名:____ / 注入方法:____
- 薬
- 常用薬:____ / 頓服:____ / お薬手帳:持参・未持参
- アレルギー・注意薬
- アレルギー:____ / 過去に合わなかった薬:____ / 飲み込みにくい薬:____
- 意思疎通
- 会話可・発話困難・筆談・文字盤・スマホ・視線入力・Yes/No / 家族補助:必要・不要
- 移動・移乗
- 歩行可・車いす・全介助・一部介助・二人介助・リフト / 転倒リスク:あり・なし
- 姿勢の注意
- 横になると苦しい・座位が楽・右向きが楽・左向きが楽・褥瘡注意部位:____
- 本人の希望
- 本人が伝えたいこと:____ / 家族が代わりに説明してよい範囲:____
- 持参物
- 保険証 / 受給者証 / お薬手帳 / 薬 / 呼吸機器 / 吸引物品 / 栄養剤 / 充電器 / 予備バッテリー / その他:____
ALS 救急受診用引き継ぎシート:最小版
時間がないときは、最小版だけでも構いません。救急隊や救急外来に最初に渡す用として使えます。
最小版
- 氏名・診断名
- 氏名:____ / ALS / 主治医:____病院 ____先生
- 今回の問題
- 呼吸苦 / 痰詰まり / 発熱 / むせ / 食べられない / 水分不可 / 転倒 / 意識変化 / その他:____
- 普段と違う点
- __________
- 呼吸
- NPPV・人工呼吸器・酸素・吸引・咳補助:あり・なし / 普段のSpO2:__%前後
- 嚥下・栄養
- むせ:あり・なし / 食形態:____ / 胃ろう:あり・なし
- 薬・アレルギー
- 薬:お薬手帳あり・なし / アレルギー:____
- 意思疎通
- 会話可・発話困難・Yes/No・文字盤・スマホ・視線入力 / 家族補助:必要・不要
- 緊急連絡先
- 家族:____ / 電話:____ / 訪問看護:____
救急隊が到着したら「ALSです。呼吸・嚥下・機器・普段との差をここに書いています」と伝えてください。家族が慌てていても、この一言と紙があるだけで情報共有がしやすくなります。
症状別:救急で伝えるポイント
同じ救急受診でも、呼吸苦、痰詰まり、むせ、発熱、転倒では伝える情報が少し違います。原因を家族が断定する必要はありません。普段との差を具体的に伝えます。
| 今回の症状 | 伝えること | 一言例 |
|---|---|---|
| 呼吸が苦しい | いつから、横になると悪いか、SpO2、NPPV・酸素、発熱、痰、会話できるか | 「普段より息が浅く、会話が続きません。夜から悪化し、痰も増えています。」 |
| 痰が詰まる・出せない | 痰の量・色、吸引の有無、咳の弱さ、発熱、咳補助機器の有無 | 「普段より痰が出せず、吸引しても詰まる感じがあります。」 |
| むせた・誤嚥が心配 | 何でむせたか、食後か、水分か、発熱、咳、声の湿り、食形態 | 「水分で強くむせた後から痰が増え、声が湿っています。」 |
| 発熱・感染 | 体温、咳、痰、呼吸、食事量、水分、尿量、普段の反応との違い | 「発熱後から食事量が落ち、痰が増え、普段より眠そうです。」 |
| 食べられない・飲めない | いつから、食事量、水分量、むせ、尿量、体重、脱水の不安 | 「昨日から水分がほとんど取れず、むせが増えています。」 |
| 転倒・外傷 | いつ、どこで、頭部打撲、痛み、動けるか、普段の移動能力 | 「普段は介助で移乗できますが、転倒後は痛みで動けません。」 |
| 意識がぼんやりする | いつから、眠気、呼吸、発熱、SpO2、薬、食事・水分、普段との差 | 「普段は受け答えできますが、今日は反応が遅く、呼吸も浅く見えます。」 |
家族が原因を決めつける必要はありません。「誤嚥だと思う」「感染だと思う」と断定するより、何が起きたか、いつからか、普段と何が違うかを伝える方が診察につながりやすくなります。
呼吸機器・吸引を使っている場合の持ち物
医療機器を使っている場合は、救急外来や入院先で同じ物品がすぐ用意できるとは限りません。可能な範囲で、普段使っているものを一緒に持参します。
- NPPV・人工呼吸器本体、マスク、回路、加温加湿器、接続部品
- 酸素を使用している場合の情報、流量、使用時間
- 吸引器、吸引カテーテル、予備チューブ、清潔物品
- 咳補助機器、設定メモ、使用頻度
- 充電器、予備バッテリー、延長コード
- 胃ろう・経管栄養の物品、栄養剤、注入セット
- 薬、お薬手帳、頓服、薬の飲ませ方のメモ
- 保険証、指定難病受給者証、自己負担上限額管理票
- 主治医・訪問看護・家族の連絡先
- 意思疎通に使うスマホ、文字盤、視線入力機器、充電器
NPPV、人工呼吸器、咳補助機器、栄養ポンプなどは、設定や使用時間を紙または写真で残しておくと、救急時に説明しやすくなります。
意思疎通が難しい場合の伝え方
ALSでは、本人の意識や理解が保たれていても、発話や筆記が難しいことがあります。救急時に「話せない=分からない」と誤解されないよう、意思疎通方法を明確に書いておきます。
| 状態 | 伝えること | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 発話が小さい・聞き取りにくい | 本人は理解しているが、声が出にくいこと | 「理解はできます。発話が小さいため、Yes/Noで確認してください。」 |
| 長く話せない | 会話で疲れやすいこと | 「長い説明は疲れます。短い質問で確認してください。」 |
| 筆談・スマホを使う | どの方法なら答えられるか | 「スマホ入力は可能です。手が疲れるため時間がかかります。」 |
| 視線入力・文字盤を使う | 機器名、家族の補助が必要か | 「視線入力を使います。家族がセッティングできます。」 |
| 家族が代弁する | 本人の希望と家族の説明範囲 | 「本人の意思確認はYes/Noで行い、詳しい生活情報は家族が補足します。」 |
意思疎通メモ
- 理解
- 理解できる・時間がかかる・状態により変わる:____
- 返答方法
- 会話 / うなずき / まばたき / 指差し / 筆談 / スマホ / 文字盤 / 視線入力:____
- Yes/Noの取り方
- Yes:____ / No:____
- 家族の補助
- 必要・不要 / 補助できる人:____ / 注意点:____
- 本人が伝えたいこと
- __________
入院になった場合に追加で伝えること
救急外来から入院になる場合、病棟では生活介助の情報が必要になります。呼吸や薬だけでなく、食事、排泄、移乗、姿勢、夜間、家族の付き添い可否を伝えます。
- 普段の食形態、とろみ、食事姿勢、むせやすいもの
- 薬の飲ませ方、粉砕・一包化・胃ろう投与の有無
- トイレ、排尿、排便、オムツ、ポータブルトイレ、導尿など
- 移乗方法、一人介助か二人介助か、リフトの必要性
- 寝る姿勢、横になると苦しい姿勢、褥瘡の注意部位
- 夜間に必要な対応、体位変換、吸引、呼吸器アラーム
- 意思疎通方法、ナースコールが押せるか
- 家族が付き添える時間、家族がいない時に困ること
- 退院時に必要な訪問看護・在宅チームへの連絡
入院・手術・麻酔時の注意点は、神経筋疾患の緊急時・入院・手術ガイドも確認してください。
更新するタイミングと保管場所
救急用シートは、古い情報のままだと危険です。薬、機器、食形態、連絡先が変わったら更新します。作っても見つからなければ使えないため、紙、スマートフォン、在宅チームの3か所で共有しておくと安心です。
更新したいタイミング
- NPPV、人工呼吸器、酸素、吸引、咳補助機器を導入・変更した
- 呼吸器や咳補助機器の設定が変わった
- むせが増えた、食形態が変わった、とろみを使い始めた
- 胃ろう、経管栄養、栄養剤、注入方法が変わった
- 薬が変わった、アレルギーや注意薬が増えた
- 発話、筆談、視線入力など意思疎通方法が変わった
- 主治医、訪問看護、緊急連絡先が変わった
- 転倒、救急受診、入院、退院があった
- 家族の介護体制が変わった
| 保管場所 | 入れておくもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 救急バッグ | 引き継ぎシート、保険証コピー、受給者証コピー、お薬手帳コピー、主治医連絡先 | 家族全員が場所を知っている状態にします。 |
| 玄関付近 | 救急隊に渡すシート、搬送時に持つものリスト | 救急隊が来た時にすぐ取れる場所にします。 |
| スマートフォン | シートの写真、PDF、主治医・訪問看護の連絡先 | 家族のスマートフォンにも共有します。 |
| 訪問看護・在宅チーム | 最新の呼吸・嚥下・機器・薬・緊急連絡先 | 更新時に訪問看護へ共有します。 |
| 短期入所・レスパイト先 | 生活情報、医療機器、食形態、移乗、意思疎通 | 施設の様式がある場合は、同じ情報を転記します。 |
ALSでは、数週間〜数か月で呼吸、嚥下、発話、移乗の状態が変わることがあります。大きな変更があった時点で、紙とスマートフォン内の両方を更新してください。
よくある失敗と対策
| 失敗しやすいこと | 起こる問題 | 対策 |
|---|---|---|
| 診断名だけ書く | 呼吸・嚥下・機器・意思疎通の注意点が伝わらない | ALSに加えて、普段の呼吸、嚥下、機器、今回の異常を書きます。 |
| 普段の状態を書かない | 救急側が「普段との差」を判断しにくい | 普段の会話、SpO2、食形態、移動、意識状態を書きます。 |
| 機器名・設定が家族の記憶だけ | 救急時に説明できず混乱する | 機器名、使用時間、設定メモ、写真を一緒に保管します。 |
| 薬の情報が古い | 薬剤確認や処方で混乱する | お薬手帳の最新版と、飲み込みにくい薬の情報を持参します。 |
| 意思疎通方法を書かない | 本人の理解や希望が確認されにくくなる | Yes/Noの取り方、文字盤、スマホ、視線入力、家族補助を明記します。 |
| 家族が原因を断定して伝える | 他の原因の確認が遅れる可能性がある | 「いつから」「何が」「普段とどう違うか」を中心に伝えます。 |
| 紙が見つからない | せっかく作っても救急時に使えない | 玄関、救急バッグ、スマホ、家族共有の複数箇所に置きます。 |
よくある質問
救急用シートは、どのタイミングで渡せばよいですか?
救急隊が到着した時、救急外来の受付、看護師の問診、医師の診察、入院時の病棟申し送りのタイミングで渡せます。最初に「ALSで、呼吸・嚥下・機器・意思疎通の情報をまとめています」と伝えると見てもらいやすくなります。
全部の欄を埋めないと使えませんか?
全部埋める必要はありません。最低限、診断名、主治医、今回の異常、普段と違う点、呼吸機器、嚥下、薬・アレルギー、意思疎通、家族連絡先があれば役立ちます。
原因を家族が判断して書いた方がよいですか?
原因を断定する必要はありません。「誤嚥だと思う」「感染だと思う」と決めつけるより、いつから、何が起きたか、普段と何が違うかを具体的に書く方が診察につながりやすくなります。
本人が話せない場合、どう伝えればよいですか?
「理解はできます」「Yes/Noで答えられます」「文字盤を使います」「家族が補助します」など、意思疎通方法を先に伝えます。話せないことと理解できないことは別なので、その点を紙に書いておくと誤解を減らせます。
NPPVや人工呼吸器の設定は家族が説明すべきですか?
分かる範囲で、機器名、使用時間、マスクや回路、設定メモの有無を伝えます。設定そのものを家族が判断して変えるのではなく、紙や写真で情報を残し、医療者に確認してもらいます。
救急時に持参できない物がある場合はどうすればよいですか?
すべて持てなくても、薬、お薬手帳、保険証・受給者証、主治医連絡先、呼吸機器や吸引の情報、意思疎通方法のメモは優先します。機器本体を持てない場合でも、機器名や設定の写真があると説明しやすくなります。
このシートは一度作ればそのままでよいですか?
薬、呼吸器、吸引、食形態、胃ろう、主治医、訪問看護、緊急連絡先が変わったら更新してください。ALSでは状態が変わることがあるため、受診後、退院後、機器変更後は見直すと安心です。
救急用シートがあれば、受診メモは不要ですか?
目的が違います。救急用シートは急な受診や入院で安全情報を伝えるためのものです。定期受診では、呼吸、嚥下、体重、疲労などの前回からの変化をまとめる受診メモを使うと整理しやすくなります。
あわせて確認したいページ
受診メモ、家族会議、緊急時カード、学校・職場共有シートを確認する。
テンプレート集を見る呼吸、嚥下、体重、疲労を通常受診で短く伝える。
受診メモを見る家族の役割分担、本人の希望、外部支援へ頼むことを整理する。
家族会議テンプレートを見る救急、入院、手術、麻酔、持ち物、伝える情報を整理する。
緊急時ガイドを見る訪問診療、訪問看護、ケアマネ、相談支援、ヘルパーを整理する。
在宅チームを見る家族が休む、介護者急病時の代替手段、短期入所の準備を確認する。
レスパイトを見る食事、移動、整容、入浴、トイレ、外出を整理する。
日常生活ガイドを見る朝の頭痛、日中の眠気、咳の弱さ、排痰、感染時対応を確認する。
呼吸ケアを見る症状、治療、生活支援、呼吸・栄養・制度の全体を確認する。
ALS総合ページを見る参考文献・参考情報
-
NICE. Motor neurone disease: assessment and management. NICE guideline NG42.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng42 -
NICE. Recommendations: Motor neurone disease: assessment and management.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng42/chapter/recommendations -
European Academy of Neurology. EAN guideline on the management of amyotrophic lateral sclerosis in collaboration with ERN EURO-NMD. European Journal of Neurology. 2024.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ene.16264 -
National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis ALS.
https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als -
Miller RG, Jackson CE, Kasarskis EJ, et al. Practice Parameter update: The care of the patient with amyotrophic lateral sclerosis: drug, nutritional, and respiratory therapies. Neurology. 2009.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2764727/ -
ALS Association. Addressing Respiratory Changes in ALS.
https://www.als.org/navigating-als/living-with-als/therapies-care/addressing-respiratory-changes -
ALS Association. Managing Speech and Swallowing Changes.
https://www.als.org/navigating-als/living-with-als/therapies-care/managing-speech-swallowing-changes -
MND Australia. Breathing and MND: an introduction.
https://www.mndaustralia.org.au/mnd-connect/information-resources/breathing-and-mnd-an-introduction
まとめ
ALSの救急受診では、家族がその場で完璧に説明しようとするほど、大切な情報が抜けやすくなります。 そのため、普段の呼吸、嚥下、薬、機器、意思疎通、今回の異常を一枚にまとめておくことが重要です。
救急用シートは、治療方針を決める紙ではなく、救急隊や救急外来が最初に状況を把握するための橋渡しです。 普段と何が違うのか、何を見落とすと困るのかを短く伝えることで、本人と家族の説明負担を減らしやすくなります。
- このページは、ALSの救急受診、救急搬送、入院時の情報共有、呼吸機器、吸引、嚥下、栄養、薬、意思疎通、家族による引き継ぎを整理するための一般情報です。
- 個別の救急判断、診断、治療、処置、入院適応、NPPV・人工呼吸器・吸引・胃ろう・薬剤の適応を判断するものではありません。
- 実際に必要な情報や対応は、本人の症状、呼吸機能、嚥下機能、使用機器、薬、病院体制、訪問看護・在宅チームの方針、救急時の状態によって変わります。
- 呼吸困難、痰詰まり、意識低下、急な嚥下困難、脱水、強い転倒、介護者の急病など安全に関わる状況では、シート作成よりも医療機関・訪問看護・救急への相談を優先してください。
