DMDでCKとクレアチニンをどう見るか|8〜10歳の継続ケア中に見られた検査値推移
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)では、CKが高い・低いという一点だけで状態を判断することはできません。 今回は、8歳頃から約2年間の継続ケア中に共有いただいた検査値のうち、 CK、クレアチニン、AST、ALT、LD、CK-MBの推移を中心に、どこを慎重に見るべきかを整理します。
本記事は、保護者の同意を得て共有された検査値をもとにした一例の経過整理です。 特定の施術による治療効果を断定するものではなく、DMDの診断、治療、薬剤調整、心機能・呼吸機能の管理は主治医の判断を前提とします。
今回の経過で最も大切な見方
今回の一例では、CKが高値ながら低下傾向を示し、同時に低値が続いていたクレアチニンに上昇が見られました。 ただし、DMDでは年齢や病期の変化に伴ってCKが下がることがあるため、CK低下だけを改善の根拠にすることはできません。
一方で、クレアチニンは筋量やクレアチン代謝の影響を受けます。 DMDでは低値になりやすいため、低値が続いていた状態から上昇が見られたことは、 「それだけで筋量増加を証明する」とは言えないものの、経過として慎重に注目する価値がある変化です。
共有いただいた主な検査値の推移
| 検査日 | CK | クレアチニン | AST | ALT | LD | CK-MB | 見方 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024/07/25 | 7,392 | 0.10 | 133 | 157 | 1,047 | 206.5 | 筋由来酵素が高値。クレアチニンは低値。 |
| 2024/12/19 | 8,936 | 0.10 | 171 | 212 | 1,130 | 246.9 | 確認範囲内でCK、AST、ALT、LD、CK-MBが高い時期。 |
| 2025/03/27 | 5,891 | 0.10 | 118 | 160 | 919 | 163.1 | CKと筋由来酵素に低下が見られる。 |
| 2025/07/24 | 7,838 | 0.10 | 135 | 181 | 962 | 198.4 | 再上昇あり。CKは変動するため単回値では判断しない。 |
| 2025/12/25 | 約6,701 | 0.10 | 126 | 163 | 881 | 190.0 | CKは手書き追記値のため、公開前に原本照合が必要。 |
| 2026/04/23 | 4,449 | 0.15 | 99 | 121 | 684 | 126.4 | CK、AST、ALT、LD、CK-MBが低下し、クレアチニンは上昇。 |
※数値は共有資料から読み取ったものです。2025/12/25のCKは手書き追記値として読み取れるため、公開前に原本で再確認してください。
検査票の原資料は、個人情報をマスクしたうえで、関係者確認用のパスワード保護ページに分けています。 一般公開ページでは、原資料そのものではなく、数値の推移と医学的な見方を整理しています。
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それぞれの数値は何を意味するのか
CK:筋細胞から漏れ出る代表的な酵素
CKは筋肉の障害や筋細胞膜の不安定性で血液中に出やすくなる酵素です。 DMDでは非常に高値になることがありますが、年齢が上がるにつれて低下することもあります。 そのため、CKが下がった場合でも、筋への負担が減った可能性と、筋量低下や病期変化による低下の両方を考える必要があります。
クレアチニン:腎機能だけでなく筋量・代謝の影響を受ける
クレアチニンは腎機能の指標としてよく使われますが、筋肉量の影響を強く受けます。 DMDでは筋量低下に伴い低値になりやすく、腎機能評価ではシスタチンCなどを併用して判断されることがあります。
今回のように、低値が続いていたクレアチニンが0.15へ上がったことは、単独で筋量増加を証明するものではありません。 ただし、DMDの経過としては見逃さず、身体機能、疲労、食事、脱水、採血条件、腎機能指標と合わせて確認したい変化です。
AST・ALT:DMDでは肝臓だけでなく筋由来でも上がる
ASTやALTは「肝機能の数値」として説明されることが多いですが、筋肉にも存在します。 DMDでは筋由来の影響でAST・ALTが高くなることがあり、肝臓だけの問題として見ないことが重要です。 今回、ASTとALTが高値ながら低下している点は、CKやLDの推移と合わせて見る必要があります。
LD:組織障害を反映し得るが、単独では部位を特定できない
LDは筋肉を含む複数の組織に存在する酵素です。 DMDでは筋由来の影響で高くなることがありますが、LDだけでどの組織の変化かを断定することはできません。 CK、AST、ALT、臨床症状と合わせて見る数値です。
CK-MB:心臓だけの指標として単純化しない
CK-MBは心筋障害の文脈で使われることがありますが、DMDやBMDでは骨格筋由来でも上がることがあります。 そのため、CK-MBが高い、または下がったという一点だけで心臓の状態を判断することはできません。 心機能は心電図、心エコー、心臓MRI、BNP/NT-proBNP、トロポニンなど、主治医が必要に応じて総合的に評価します。
医学的に見た今回の意義
今回の経過で重要なのは、「CKが下がった」という一点ではありません。 DMDではCKが年齢とともに下がり得るため、CK低下だけなら自然経過との区別が難しいからです。
しかし今回の一例では、CKだけでなく、AST、ALT、LD、CK-MBにも低下傾向が見られ、 同時に低値が続いていたクレアチニンが上昇していました。 この組み合わせは、筋由来酵素の漏出が減った可能性と、筋量・代謝に関係する指標の変化が同時に見られた経過として、 慎重に記録する価値があります。
「改善した」「筋肉が増えた」「進行が止まった」とは断定しません。 ただし、DMDで低値になりやすいクレアチニンが上昇し、複数の筋由来酵素が低下したという組み合わせは、 一例の経過として重要であり、今後も主治医の管理下で継続観察したい変化です。
この一例から言えること、言えないこと
言えること
- 約2年間の継続ケア期間中に、CKの低下傾向が見られた。
- 0.10前後で低値が続いていたクレアチニンが、2026年4月に0.15となった。
- AST、ALT、LD、CK-MBも高値ながら、直近では低下傾向が見られた。
- DMDの経過では、CKだけではなく、クレアチニン、身体機能、疲労、呼吸、心機能を合わせて見る必要がある。
言えないこと
- この検査値の変化が、特定の施術だけによって起きたとは断定できません。
- 同じ方法で誰でも同じ変化が起こるとは言えません。
- CK低下だけを根拠に、DMDが改善した、進行が止まった、治ったとは言えません。
- クレアチニン上昇だけで筋量増加を確定することはできません。
「DMDが改善した」「筋肉が増えた」「進行が止まった」「医師が認めた」「治療効果が出た」 といった表現は避けます。 本記事では、あくまで「共有された検査値に見られた経過」として整理しています。
Cell Healingで重視している見方
DMDでは、筋肉に強い負荷をかけて鍛えるという考え方は適しません。 過負荷を避けながら、姿勢、関節可動域、呼吸しやすさ、疲労の出方、立ち上がりや歩行時の代償動作などを丁寧に見る必要があります。
検査値の変化が見られた場合でも、数字だけを良く見せるのではなく、 「DMDの自然経過でも起こり得るのか」 「他の指標と矛盾しないのか」 「本人の日常動作や疲労感と一致しているのか」 を確認しながら、補助的ケアの位置づけを整理しています。
まとめ
DMDではCKが下がることがありますが、それは必ずしも改善を意味しません。 一方で、低値が続いていたクレアチニンが上がる変化は、筋量や代謝の観点から慎重に見ていく価値があります。
今回の一例は、特定の結果を保証するものではありません。 しかし、DMDの経過をCKだけで見ず、クレアチニン、筋由来酵素、身体機能、疲労、呼吸、心機能を合わせて確認する重要性を示す記録として、 同じ病気と向き合うご家族にとって参考になる可能性があります。
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・厚生労働省 医療広告ガイドライン関連資料: https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf
