【FSHD】公的支援・生活支援|装具・手帳・介護保険・仕事・学校配慮の整理
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)では、腕が上がらない、足先が引っかかる、左右差で体が傾く、反り腰で腰が痛い、外出後に疲労が残る、といった生活上の困りごとが出ることがあります。 支援を考える時は、制度名を先に覚えるより、「どの動作で困っているか」「どこで危ないか」「何を変えると続けやすいか」から整理すると進めやすくなります。
結論:FSHDの支援は「困る動作」から考える
FSHDでは、病名だけで必要な支援が決まるわけではありません。 同じFSHDでも、肩甲帯が主に困る人、下垂足と転倒が中心の人、反り腰と腰痛が強い人、疲労で仕事や学校が続きにくい人など、必要な支援は変わります。
- 医療費が重い: 指定難病の医療費助成、軽症高額該当、指定難病登録者証を確認する
- 足先が引っかかる・転ぶ: 短下肢装具(AFO)、靴、杖、手すり、歩行器、住宅内動線を相談する
- 腕が上がらない・洗髪がつらい: 作業環境、補助具、作業療法、職場・学校配慮を考える
- 反り腰・体幹の崩れで痛い: 座位、作業姿勢、休憩、リハビリ、椅子・机の高さを見直す
- 外出翌日に疲労が残る: 移動方法、車椅子の部分利用、通勤・通学負担、仕事量を調整する
- 生活や就労の制限が大きい: 身体障害者手帳、障害年金、障害福祉サービス、介護保険を確認する
補装具や住宅改修は、先に購入・工事をすると制度対象外になることがあります。 AFO、車椅子、手すり、住宅改修、入浴用具などを考える場合は、購入前に主治医、リハビリ担当者、自治体窓口へ確認してください。
このページの位置づけ
このページは、制度全体を説明する共通ページではなく、FSHDの症状を生活支援につなげるためのページです。 医療費助成、介護保険、障害福祉サービス、年金制度そのものの詳しい手順は、自治体や公的機関の情報、または共通の制度ページで確認します。
ここで中心にするのは、FSHDで起こりやすい「肩甲帯の弱さ」「下垂足」「左右差」「反り腰」「慢性痛」「疲労の残り方」「仕事・学校での困りごと」を、どの制度や相談先につなげるかです。
| ページ | 主な役割 | このページとの違い |
|---|---|---|
| FSHD総合ページ | FSHDの症状、遺伝、自然経過、呼吸・心臓、各ページへの入口。 | このページは、そこから生活支援・制度相談へ進むためのページです。 |
| 難病の介護・制度サポート | 医療費、福祉、介護、年金、住宅改修などの共通手順。 | このページは、FSHD特有の困りごとから制度につなげます。 |
| FSHD評価と記録 | 左右差、歩行、転倒、疲労、痛みを比較できる形で記録するページ。 | このページでは、その記録を申請・相談に使う形へ変換します。 |
| FSHD運動・リハビリ | 肩甲帯、体幹、下肢、下垂足、疲労に合わせた運動設計。 | このページでは、装具・福祉用具・仕事や学校の配慮につなげます。 |
このページは、「制度を全部覚える」ためではなく、「FSHDで今困っている動作を、誰に、何として相談するか」を決めるためのページです。
困りごとから支援へつなぐ早見表
制度名だけを見ると分かりにくくなります。 まずは、実際に困っている動作から、相談先と候補を整理します。
| 困りごと | 考えやすい支援 | 最初に相談する相手 |
|---|---|---|
| 下垂足・つまずき | AFO、靴、インソール、杖、歩行器、転倒対策、通勤・通学経路の調整。 | 主治医、理学療法士、装具外来、義肢装具士、自治体窓口。 |
| 洗髪・更衣・腕上げがつらい | 作業台の高さ調整、道具配置、シャワー環境、作業療法、職場・学校配慮。 | 作業療法士、主治医、職場・学校、医療ソーシャルワーカー。 |
| 反り腰・腰痛・長時間座位がつらい | 椅子、クッション、座位調整、作業姿勢、休憩、リハビリ、必要時の装具相談。 | 理学療法士、作業療法士、整形外科、福祉用具事業者。 |
| 浴室・トイレ・階段が危ない | 手すり、すべり止め、シャワーチェア、段差解消、夜間照明、住宅改修。 | 自治体窓口、相談支援専門員、ケアマネジャー、福祉用具事業者。 |
| 外出や通勤で疲労が残る | 移動支援、車椅子の部分利用、タクシー利用、勤務時間調整、在宅勤務、通学配慮。 | 職場・学校、主治医、医療ソーシャルワーカー、自治体窓口。 |
| 仕事量を維持できない | 業務変更、時短、在宅勤務、障害者雇用、傷病手当金、障害年金の相談。 | 職場、人事、産業医、ハローワーク、年金事務所、社会保険労務士。 |
| 朝の頭痛・眠気・横になると苦しい | 呼吸機能検査、睡眠評価、NPPV/NIV、排痰補助、在宅療養準備。 | 主治医、呼吸器内科、睡眠医療、リハビリ、医療ソーシャルワーカー。 |
支援を受ける時は、「FSHDです」だけでなく、「右足が引っかかって月に何回転ぶ」「洗髪で肩が疲れて休憩が必要」「通勤後は翌日まで疲労が残る」のように説明すると、必要性が伝わりやすくなります。
FSHDで支援を考えやすい生活場面
FSHDは左右差が目立ちやすく、片側をかばうことで、肩、首、腰、足首の負担が増えることがあります。 制度申請や職場・学校への説明では、生活場面ごとに整理すると伝わりやすくなります。
- 高い棚に手が届きにくい
- 洗髪やドライヤーがつらい
- 服の着脱で疲れる
- 洗濯物を干しにくい
- 荷物を持つと肩・首が痛い
- PC作業や書字で疲れやすい
- 腕を上げ続ける仕事が難しい
- 足先が引っかかる
- 階段や段差が危ない
- つまずき・転倒が増えた
- 坂道や駅構内が負担になる
- 長距離移動で疲れる
- 外出後に翌日まで疲労が残る
- 靴底の減り方に左右差がある
- 反り腰で腰痛が出る
- 長時間座位・立位がつらい
- 左右差で片側ばかり痛い
- 午後に動作が崩れやすい
- 睡眠後も疲労が抜けない
- 家事や仕事の後に動けなくなる
- 翌日の予定まで崩れる
支援の必要性は、「歩けるかどうか」だけでは判断できません。 FSHDでは、肩の使いにくさ、反り腰、下垂足、疲労の残り方、転倒リスクが生活全体に影響することがあります。
医療費助成を確認する場面
筋ジストロフィーは指定難病113に含まれます。 ただし、指定難病に該当することと、医療費助成の対象として認定されることは同じではありません。 診断基準、重症度、軽症高額該当、継続的な医療費の状況を踏まえて判断されます。
- 診断名がFSHDとして整理されているか
- FSHD1かFSHD2か、検査結果があるか
- 難病指定医に臨床調査個人票を依頼できるか
- 継続的な通院・検査・リハビリがあるか
- 医療費の領収書・明細を保管しているか
- 重症度分類を満たさない場合、軽症高額該当に当てはまる可能性があるか
- 神経内科・筋疾患外来
- 遺伝学的検査や診断後評価
- 呼吸機能検査・睡眠評価
- 心電図・心エコーなど必要時の心臓評価
- リハビリ、装具外来、疼痛管理
- 在宅療養や訪問看護が必要になった場合の指定医療機関確認
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 臨床調査個人票 | 指定難病の医療費助成申請では、難病指定医による診断書が必要になります。 |
| 軽症高額該当 | 重症度分類を満たさない場合でも、一定以上の医療費が継続している場合に確認する価値があります。 |
| 指定医療機関 | 医療費助成は、原則として指定医療機関での医療が対象になります。 |
| 指定難病登録者証 | 医療費助成の対象にならない場合でも、福祉・就労などの支援で使えることがあります。 |
医療費助成は、申請から受給者証の交付まで時間がかかることがあります。 申請書、診断書、保険情報、課税状況の確認書類、住民票など、必要書類は自治体・時期で変わるため、窓口で確認してください。
身体障害者手帳で伝えたいこと
身体障害者手帳は、病名そのものではなく、身体機能の障害の程度に応じて判断されます。 FSHDでは、上肢、下肢、体幹、呼吸、日常生活、仕事にどの程度の制限があるかを、診断書や意見書で具体的に伝える必要があります。
| 項目 | FSHDで説明したいこと | 準備したい材料 |
|---|---|---|
| 上肢機能 | 洗髪、更衣、食事、棚の出し入れ、荷物、仕事での腕上げ。 | 困る動作、左右差、できる時間、疲労の残り方。 |
| 下肢機能 | 下垂足、転倒、階段、立ち上がり、歩行距離、通勤・通学。 | 転倒回数、つまずく場所、歩行補助具、装具の必要性。 |
| 体幹機能 | 反り腰、座位保持、立位保持、腰痛、姿勢の崩れ。 | 座れる時間、立てる時間、腰痛、日常動作への影響。 |
| 呼吸機能 | 睡眠時低換気、咳の弱さ、NPPV/NIV、排痰補助が必要か。 | 呼吸機能検査、睡眠評価、朝の頭痛、日中眠気、咳の弱さ。 |
| 仕事への影響 | 通勤、立ち仕事、高所作業、反復動作、疲労、欠勤・時短。 | 勤務内容、配慮内容、勤務時間の変化、診断書や意見書。 |
| 生活への影響 | 入浴、トイレ、着替え、買い物、外出、家事、睡眠。 | 介助の有無、家族負担、危険場面、改善に必要な支援。 |
手帳の相談では、「どの病気か」だけでなく、「どの動作が、どの程度、どれくらいの頻度で難しいか」が重要です。 外来で短時間に説明できるよう、1か月分の転倒・疲労・痛み・仕事への影響を記録しておくと役立ちます。
障害年金で整理したいこと
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代も含めて受け取れる可能性がある制度です。 FSHDでは、診断名だけでなく、初診日、加入していた年金制度、納付要件、日常生活や仕事への制限を整理します。
| 確認項目 | FSHDで見たいこと | 準備したいもの |
|---|---|---|
| 初診日 | FSHDや筋力低下、歩行障害、肩の上がりにくさで初めて医療機関を受診した日。 | 紹介状、診療明細、検査記録、過去の病院名。 |
| 仕事への影響 | 通勤困難、立ち仕事の制限、欠勤、時短、配置転換、退職、在宅勤務。 | 勤務記録、診断書、職場配慮の記録、給与や勤務時間の変化。 |
| 日常生活への影響 | 更衣、入浴、トイレ、歩行、階段、家事、買い物、外出。 | 介助の有無、できる時間、疲労の残り方、家族の支援内容。 |
| 症状の変化 | 左右差、下垂足、転倒、肩甲帯、体幹、呼吸、痛み、疲労。 | 月ごとの記録、動画、転倒メモ、検査結果。 |
障害年金は、診断名だけではなく、初診日と生活・仕事への制限が重要になります。 手続きが複雑な場合は、年金事務所、社会保険労務士、病院の相談員に早めに確認してください。
補装具・福祉用具を考えるタイミング
FSHDでは、補装具や福祉用具を早めに試すことで、転倒、痛み、疲労、外出不安を減らせることがあります。 「使う=悪化」ではなく、生活を守るための選択肢として考えます。
| 困りごと | 考えやすい支援・道具 | 注意点 |
|---|---|---|
| 下垂足・つまずき | 短下肢装具(AFO)、靴、インソール、杖、歩行器。 | 自己判断で購入する前に、理学療法士・義肢装具士と歩行を確認します。 |
| 長距離移動 | 車椅子、電動車椅子、電動モビリティ、公共交通の配慮。 | 歩ける人でも、疲労や転倒を減らす目的で部分的に使うことがあります。 |
| 肩・腕上げ | 作業台の高さ調整、肘を支える環境、洗髪補助、道具の配置変更。 | 腕を上げ続ける動作を減らし、肩甲帯と首肩の負担を減らします。 |
| 反り腰・腰痛 | 椅子、クッション、作業姿勢、休憩、必要時の装具相談。 | 固定しすぎるより、生活動作で腰に負担が集中しない形を探します。 |
| 入浴・トイレ | 手すり、シャワーチェア、浴室すべり止め、トイレ手すり、立ち上がり補助。 | 転倒後ではなく、不安が出た時点で早めに環境を見直します。 |
| 仕事・学習 | 机・椅子の高さ、PC入力補助、書字補助、荷物軽量化、座席位置調整。 | 腕を上げ続ける、長く座る、重い荷物を運ぶ場面を減らします。 |
補装具費支給制度や福祉用具の対象、申請手順、自己負担は制度・自治体・年齢で変わります。 先に購入・工事をすると対象外になることもあるため、申請前に自治体窓口へ確認してください。
住宅・浴室・トイレ・夜間動線
FSHDでは、転倒しやすい場所が決まっていることがあります。 玄関、階段、浴室、トイレ、寝室からトイレまでの夜間動線、洗濯・洗面の動作を先に見直すと、事故を減らしやすくなります。
- 玄関の段差
- 階段と手すり
- 浴室のすべりやすさ
- トイレの立ち上がり
- 夜間の寝室からトイレまで
- 洗面・洗髪・洗濯の高さ
- 寝室からベッド外へ出る動作
- 手すり
- 段差解消
- すべり止め
- 夜間照明
- シャワーチェア
- 動線上の荷物・コード整理
- 洗髪・洗面台の高さ調整
| 場所 | FSHDで起こりやすい困りごと | 支援につなげる説明 |
|---|---|---|
| 玄関 | 段差で足先が引っかかる、片足立ちで靴を履きにくい。 | 手すり、椅子、靴の見直し、段差対策を相談します。 |
| 浴室 | すべる、立ち上がりが不安、腕を上げて洗髪しにくい。 | シャワーチェア、手すり、すべり止め、洗髪補助を相談します。 |
| トイレ | 立ち上がりに腕や腰を使いすぎる、夜間に転びそうになる。 | 手すり、夜間照明、寝室からの動線を確認します。 |
| 階段 | 下垂足、疲労、片側の弱さで踏み外しやすい。 | 手すり、移動回数の削減、部屋の配置変更を相談します。 |
住宅改修や福祉用具は、制度利用の前に工事・購入をしてしまうと、助成対象外になることがあります。 必ず自治体、ケアマネジャー、相談支援専門員、福祉用具事業者に確認してから進めてください。
仕事・学校・外出の配慮
FSHDでは、能力そのものよりも、環境が合わないことで疲労や痛みが増えることがあります。 仕事、学校、外出では、移動距離、階段、荷物、腕上げ、長時間立位、通勤・通学の負担を整理します。
- 高所作業を避ける
- 重い荷物を減らす
- 長時間立位を減らす
- 通勤方法を調整する
- 時短・在宅・休憩の相談をする
- 腕を上げ続ける作業を減らす
- 配置転換や業務内容の調整を検討する
- 階段移動を減らす
- 荷物を軽くする
- 体育・遠足・校外活動を調整する
- 机・ロッカーの位置を調整する
- 疲労が残る活動を分ける
- 転倒時の連絡ルールを決める
- 診断書や学校生活管理の相談をする
- 駅構内の移動距離
- 坂道や段差
- トイレ位置
- 荷物の重さ
- 帰宅後・翌日の疲労
- 車椅子やタクシーの部分利用
- 外出予定の翌日に予定を詰めすぎない
配慮を相談する時は、「できません」だけでなく、「この条件ならできます」と伝える方が話が進みやすくなります。 例:階段移動を減らす、荷物を分ける、作業台を低くする、午前に重要作業を寄せる、休憩を固定する、など。
介護保険と障害福祉サービスの使い分け
FSHDの支援では、年齢や状態によって、障害福祉サービス、介護保険、医療保険、補装具費支給制度などの入口が変わります。 同じ手すり、福祉用具、介助でも、どの制度で動くかは自治体や年齢で違います。
| 制度 | 考えやすい場面 | 相談先 |
|---|---|---|
| 障害福祉サービス | 移動支援、居宅介護、相談支援、生活上の支援が必要な場合。 | 市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員。 |
| 補装具費支給制度 | AFO、車椅子、歩行補助具など、身体機能を補う用具を考える場合。 | 市区町村、主治医、理学療法士、義肢装具士。 |
| 介護保険 | 原則65歳以上、または40歳以上で特定疾病に該当し介護が必要な場合。 | 地域包括支援センター、市区町村、ケアマネジャー。 |
| 医療保険 | 診療、検査、リハビリ、訪問看護、呼吸・睡眠評価など医療として必要な場合。 | 主治医、医療ソーシャルワーカー、指定医療機関。 |
迷った場合は、最初から制度名を決めなくて構いません。 「足が引っかかって転ぶ」「入浴で立ち上がれない」「外出後に翌日まで動けない」と生活場面で伝え、どの制度が使えるかを窓口で確認してください。
申請前にやっておくこと
制度や補助具の相談では、症状名よりも「何に困っているか」が伝わる方が進みやすくなります。 申請や意見書の相談前に、次の項目を1か月分だけでも記録しておくと役立ちます。
| 記録項目 | 書き方 | 支援につながる例 |
|---|---|---|
| 転倒・つまずき | 回数、場所、時間帯、右足/左足、けがの有無。 | AFO、靴、手すり、歩行補助具、住宅調整。 |
| 上肢動作 | 洗髪、更衣、棚、洗濯、仕事での腕上げ。 | 作業環境調整、作業療法、補助具、職場・学校配慮。 |
| 歩行・外出 | 歩行距離、休憩回数、駅・坂道・階段、帰宅後の疲労。 | 移動支援、車椅子、通勤・通学配慮、福祉用具。 |
| 入浴・トイレ | 立ち上がり、すべり、不安、介助の有無。 | 手すり、シャワーチェア、住宅改修、介護・福祉サービス。 |
| 痛み・疲労 | 肩、首、腰、足、疲労0〜10、翌日に残るか。 | リハビリ、疼痛管理、休憩、就労配慮。 |
| 呼吸・睡眠 | 朝の頭痛、眠気、仰向けの苦しさ、咳の弱さ。 | 呼吸評価、睡眠評価、NPPV/NIV、排痰補助。 |
| 仕事・学校 | 休んだ日、早退、配慮が必要だった場面、困った作業。 | 診断書、意見書、合理的配慮、就労相談、学校共有。 |
申請や相談では、完璧な記録より「具体的な生活場面」が大切です。 写真、転倒メモ、歩行距離、仕事・学校で困った場面、家族の介助内容も材料になります。
相談時に使える伝え方
主治医、リハビリ、自治体窓口、職場・学校へ相談する時は、次のように「病名」「困る動作」「頻度」「希望する支援」をまとめると伝わりやすくなります。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 病名 | FSHDと診断されています。診断書・検査結果は手元にあります。 |
| 歩行 | 右足の下垂足で月に3回ほどつまずきます。駅の階段と夜間トイレが不安です。 |
| 上肢 | 洗髪と着替えで肩が疲れます。高い棚の作業が続くと首と肩が痛くなります。 |
| 体幹・腰 | 反り腰が強く、長く座ると腰痛が出ます。仕事後は翌日まで疲労が残ります。 |
| 呼吸・睡眠 | 朝の頭痛と日中の眠気があります。仰向けで寝ると苦しい時があります。 |
| 相談したいこと | AFO、手すり、福祉用具、身体障害者手帳、補装具費支給制度、職場配慮の対象になるか相談したいです。 |
相談時は、制度名を最初から決め打ちしなくても構いません。 「何に困っていて、何を使えば安全に続けられそうか」を整理し、医療側と制度側の両方に確認してください。
先に避けたい失敗
FSHDの支援では、困ってから動くと、申請、判定、作製、工事、職場・学校調整に時間がかかることがあります。 次のような進め方は、あとから困りやすいので注意してください。
- AFOや車椅子を、制度確認前に自己購入してしまう。
- 住宅改修や手すり工事を、自治体確認前に進めてしまう。
- 転倒が増えているのに、靴・装具・手すりの相談を後回しにする。
- 仕事や学校へ、病名だけ伝えて具体的な配慮を伝えない。
- 疲労や痛みが翌日に残っているのに、「まだ動けるから」と記録しない。
- 医療費助成や手帳、年金の相談を、退職後や悪化後まで先延ばしにする。
- 呼吸・睡眠の症状を、体力低下や疲れだけと考えて放置する。
制度利用では、「今すぐ使うか」だけでなく、「必要になった時にすぐ動けるか」が大切です。 書類、検査結果、症状記録、窓口を先に確認しておくと、選択肢を残しやすくなります。
よくある質問
FSHDと診断されたら、必ず医療費助成の対象になりますか?
必ず対象になるとは限りません。 筋ジストロフィーは指定難病113に含まれますが、医療費助成は診断基準、重症度、軽症高額該当などを踏まえて判断されます。 継続的な医療費がある場合は、領収書・明細を保管し、難病指定医や自治体窓口に確認してください。
歩ける場合でも身体障害者手帳の相談をしてよいですか?
相談自体は可能です。 手帳は病名だけでなく、上肢、下肢、体幹、呼吸などの機能障害と生活上の制限で判断されます。 歩ける場合でも、下垂足、転倒、階段、上肢動作、体幹保持、疲労の影響が大きい場合は、主治医や自治体窓口で確認してください。
AFOや車椅子は、悪化してから考えるものですか?
悪化してからだけのものではありません。 AFOや車椅子は、転倒、疲労、痛み、外出不安を減らすために部分的に使うことがあります。 自己判断で購入する前に、主治医、理学療法士、義肢装具士、自治体窓口へ相談してください。
介護保険と障害福祉サービスはどちらを使えばよいですか?
年齢、状態、必要な支援、自治体の運用によって変わります。 40歳以上、65歳以上、障害福祉サービスの対象、補装具費支給制度など、入口が複数あります。 迷う場合は、困っている生活場面を整理して、市区町村の障害福祉窓口や地域包括支援センターへ確認してください。
仕事や学校には病名を伝えた方がよいですか?
伝える範囲は本人や家族の判断になります。 ただし、配慮を受けるには、病名だけでなく「どの動作で困るか」「どの条件なら続けられるか」を具体的に伝える必要があります。 例として、階段移動を減らす、荷物を軽くする、腕を上げる作業を減らす、休憩を固定する、在宅勤務や時短を相談する、などがあります。
申請のために何を記録しておけばよいですか?
転倒回数、つまずく場所、歩行距離、洗髪・更衣・仕事での腕上げ、腰痛、疲労が翌日に残るか、呼吸・睡眠の症状、通勤・通学で困る場面を記録します。 1か月分だけでもあると、主治医、リハビリ、自治体、職場・学校へ説明しやすくなります。
まとめ
FSHDの公的支援・生活支援は、制度名から覚えるより、困っている動作から考える方が進めやすくなります。 肩が上がらない、足先が引っかかる、反り腰で腰が痛い、左右差で片側に負担が集中する、外出後に翌日まで疲労が残る、といった生活場面を具体的に整理してください。
医療費助成、身体障害者手帳、障害年金、補装具費支給制度、障害福祉サービス、介護保険、学校・職場配慮は、それぞれ判断材料が違います。 ただし、どの制度でも共通して大切なのは、「どの動作が、どの程度、どれくらいの頻度で難しいか」を伝えることです。
AFO、車椅子、手すり、住宅改修などは、先に購入・工事をすると制度対象外になることがあります。 支援を使うか迷う段階でも、主治医、リハビリ担当者、医療ソーシャルワーカー、自治体窓口へ早めに相談し、必要な書類と手順を確認しておくことが大切です。
現在の状態を整理したい場合は、左右差、肩の使いにくさ、下垂足、転倒、疲労、仕事・学校、住宅内の危険場面をまとめておくと相談しやすくなります。
参考文献・参考情報
- GeneReviews:Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy
- Tawil R, et al. Evidence-based guideline summary: Evaluation, diagnosis, and management of facioscapulohumeral muscular dystrophy. Neurology. 2015.
- 難病情報センター:筋ジストロフィー(指定難病113)診断・治療指針
- 難病情報センター:指定難病患者への医療費助成制度のご案内
- 厚生労働省:難病にかかる医療費の助成が受けられます
- 厚生労働省:補装具費支給制度の概要
- 厚生労働省:身体障害者手帳について
- 日本年金機構:障害年金
- FSHD Society:Clinical Care
- 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の制度利用、認定、給付、等級、年金受給を保証するものではありません。
- 医療費助成、身体障害者手帳、障害年金、補装具費支給制度、障害福祉サービス、介護保険の対象や手続きは、病状、年齢、自治体、加入制度、診断書内容によって変わります。
- AFO、車椅子、手すり、住宅改修、福祉用具は、購入・工事の前に主治医、リハビリ担当者、自治体窓口へ確認してください。
- 転倒、呼吸苦、朝の頭痛、日中の強い眠気、動悸、失神、急な歩行悪化、むせの増加がある場合は、制度相談より先に医療機関へ相談してください。
- 職場・学校への共有内容は、本人や家族の希望、必要な配慮、安全性を踏まえて決めてください。
