【筋強直性ジストロフィー1型(DM1)】開発パイプライン|del-desiran、DYNE-101、PGN-EDODM1、VX-670、tideglusib

DM1 開発パイプライン DMPK RNA 2026年5月時点

【筋強直性ジストロフィー1型(DM1)】開発パイプライン|del-desiran、DYNE-101、PGN-EDODM1、VX-670、tideglusib

DM1では、DMPK由来の毒性RNAを減らす治療、筋肉へ核酸医薬を届ける治療、スプライシング異常を改善する治療、ミオトニアや眠気などの症状を狙う治療、小児・先天型DM1を対象にした治療開発が進んでいます。

最終更新:2026年5月3日。 開発段階、募集状況、企業名、試験名、対象年齢、評価項目は短期間で変わります。ここでは、公開情報をもとに「何がどの段階にあるか」を整理します。参加判断は、治験登録情報と主治医・実施施設の確認を優先してください。

結論:DM1パイプラインは原因治療候補が増えている

DM1の治療開発は、以前のように「ミオトニアを軽くする薬」だけではなく、DMPK由来の毒性RNA、スプライシング異常、筋肉への核酸医薬送達を狙う段階に進んでいます。 特に、del-desiran、z-basivarsen/DYNE-101、PGN-EDODM1、VX-670は、DM1の原因に近い部分を狙う候補として注目されます。

  • 最も進んだ候補: del-desiranはPhase 3 HARBORが中心
  • 次の大型候補: z-basivarsen/DYNE-101はPhase 3 HARMONIAが開始
  • 確認が必要な候補: PGN-EDODM1は米国と米国外で状況が異なる
  • 早期候補: VX-670は成人DM1のPhase 1/2と延長試験
  • 小児領域: tideglusibは先天型・小児期発症DM1で見たい候補
  • 症状管理: mexiletineやpitolisantは原因治療ではなく、ミオトニアや眠気への候補

パイプラインは「承認済み治療の一覧」ではありません。 Phase 3でも承認前の治験薬であり、早期段階の候補は有効性・安全性が十分に確立していないことがあります。 期待と現実を分け、開発段階、対象者、評価項目、リスクを確認してください。

パイプラインを見る時の基本

DM1の開発情報では、薬剤名だけを見ると判断を誤りやすくなります。 同じDM1向けでも、原因に近い部分を狙う薬、症状を軽くする薬、成人向け、小児向け、観察研究、前臨床段階の候補では意味が違います。

見る項目 意味 判断のポイント
開発段階 前臨床、Phase 1、Phase 2、Phase 3、延長試験など。 段階が進むほどデータは増えますが、承認を意味するわけではありません。
作用機序 DMPK RNA低下、スプライシング補正、イオンチャネル、眠気改善など。 原因に近いのか、症状改善なのかを分けます。
対象者 成人、16歳以上、小児、先天型、歩行可能、特定機能条件など。 自分や家族が対象になるかは、試験ごとの条件で変わります。
評価項目 vHOT、5xSTS、筋力、歩行、患者報告、バイオマーカーなど。 何をもって「効いた」と見る試験か確認します。
投与方法 点滴、経口、注射、反復投与、延長試験など。 来院回数、家族負担、仕事・学校との両立に関わります。
安全条件 心臓、呼吸、NPPV、併用薬、肝腎機能など。 DM1では心臓・呼吸の条件が特に重要です。

パイプラインページでは薬剤の位置づけを整理し、治験参加の判断は別ページで確認します。 実際に参加を検討する場合は、対象条件、来院負担、プラセボ、費用、主治医の意見を確認してください。

臨床段階の主な候補

2026年5月時点で、公開情報から確認しやすいDM1向け臨床段階の候補を整理します。 募集状況や実施地域は変わるため、最新情報は各登録ページで確認してください。

薬剤・候補 企業・主体 段階 狙い 2026年5月時点の読み方
del-desiran
(AOC 1001)
Novartis / Avidity Phase 3 DMPK mRNA低下、スプライシング改善、筋機能。 HARBORが中心。vHOTを主要評価項目とする大規模試験。H2 2026の読出し見込み。
z-basivarsen
(DYNE-101)
Dyne Therapeutics Phase 3 DMPK RNA低下、筋肉・中枢神経系への送達。 HARMONIAが開始。5xSTSを主要評価項目とする48週間試験。
PGN-EDODM1 PepGen Phase 2 DMPK RNA/スプライシング異常への作用を狙うペプチド結合型オリゴ。 FREEDOM2-DM1は米国でpartial clinical hold。米国外の状況は別途確認が必要。
VX-670 Vertex Phase 1/2 DMPK転写産物/CTGリピート関連病態を狙う候補。 成人DM1で安全性・忍容性・薬物動態・薬力学を評価。延長試験も登録。
tideglusib
(AMO-02)
AMO Pharma Phase 2/3 GSK3β阻害。先天型・小児期発症DM1の機能・発達など。 成人DM1とは対象が異なる。小児・先天型DM1として見る。
pitolisant Harmony Biosciencesなど Phase 2系 過度の日中眠気・疲労。 原因治療ではなく、眠気・疲労への症状管理候補。
mexiletine 既存薬・研究者主導 研究/既存薬 ミオトニア、筋強直。 心臓評価が重要。自己判断で使う薬ではありません。

現時点で「原因に近い部分を狙う候補」として特に見たいのは、del-desiran、z-basivarsen/DYNE-101、PGN-EDODM1、VX-670です。 ただし、どれも承認済み治療ではなく、開発段階・地域・対象条件が異なります。

del-desiran:Phase 3の中心候補

del-desiranは、旧AOC 1001、delpacibart etedesiranとも表記されるDM1向け治験薬です。 抗体オリゴヌクレオチド複合体を用いて筋肉への送達を狙い、DMPK mRNAを低下させる設計です。

項目 内容 見るポイント
薬剤名 del-desiran、delpacibart etedesiran、旧AOC 1001。 検索時は複数の表記を確認します。
企業 AvidityからNovartis傘下のプログラムへ。 企業発表や治験登録の表記が変わる可能性があります。
主試験 HARBOR、Phase 3、無作為化二重盲検プラセボ対照。 HARBOR本体とHARBOR-OLEを分けて確認します。
主要評価項目 video Hand Opening Time(vHOT)。手を開く時間を用いる評価。 ミオトニアや手の機能に関わる評価です。
読出し時期 Novartis資料ではH2 2026のマイルストーン。 結果発表時期は変更される可能性があります。
日本 jRCTにHARBOR、HARBOR-OLEが登録されています。 募集状況・実施施設・対象条件はjRCTで確認します。

del-desiranは、DM1パイプラインの中でも開発段階が進んだ候補です。 ただし、Phase 3結果が出る前の段階では、有効性・安全性・承認可否を断定できません。

z-basivarsen / DYNE-101:Phase 3 HARMONIA

z-basivarsenは、旧DYNE-101として知られるDM1向け治験薬です。 transferrin receptor 1(TfR1)に結合するFabとアンチセンスオリゴヌクレオチドを組み合わせ、筋肉と中枢神経系への送達を狙う設計です。

項目 内容 見るポイント
薬剤名 zeleciment basivarsen、z-basivarsen、旧DYNE-101。 表記が複数あるため、検索時は両方確認します。
企業 Dyne Therapeutics。 FORCEプラットフォームを用いる候補です。
ACHIEVE Phase 1/2試験。 安全性、忍容性、薬力学、有効性などを確認します。
HARMONIA Phase 3、約150例、16歳以上、48週間の二重盲検試験。 5xSTSが主要評価項目です。
評価項目 5xSTS、vHOT、筋力、10m歩行/走行、MDHI、CNS関連評価など。 筋力・ミオトニアだけでなく多系統評価を見ます。
日本 jRCTにHARMONIA登録情報があります。 実施状況は日本の登録情報を確認します。

z-basivarsen/DYNE-101は、del-desiranと並んでDM1の原因に近い部分を狙う重要候補です。 vHOTだけでなく5xSTSを主要評価項目とする点は、下肢機能・バランス・体幹機能に関わる評価として注目されます。

PGN-EDODM1:地域差を確認したい候補

PGN-EDODM1は、PepGenが開発するDM1向けのペプチド結合型オリゴヌクレオチドです。 DMPK転写産物に関係する病態を狙う候補として、FREEDOM-DM1、FREEDOM2-DM1、FREEDOM-OLEなどの試験が登録されています。

項目 内容 見るポイント
薬剤名 PGN-EDODM1。 ペプチド結合型オリゴヌクレオチドとして開発されています。
FREEDOM-DM1 Phase 1単回投与試験。 安全性、忍容性、薬物動態、薬力学を見る試験です。
FREEDOM2-DM1 Phase 2複数回投与試験。 米国ではpartial clinical holdが発表されています。
FREEDOM-OLE 過去試験完了者を対象にした延長試験。 対象者は限定される可能性があります。
地域差 米国、英国、カナダ、韓国、豪州、ニュージーランドなどで状況が異なります。 国ごとの規制状況を分けて確認します。

PGN-EDODM1は、米国でpartial clinical holdが発表されているため、単純に「進行中」または「停止」とまとめない方が安全です。 米国の状況、米国外の状況、会社発表、ClinicalTrials.gov、実施施設の情報を分けて確認してください。

VX-670:早期臨床+延長試験

VX-670は、Vertexが開発する成人DM1向け候補です。 公開登録では、成人DM1を対象に、単回投与・複数回投与で安全性、忍容性、薬物動態、薬力学を評価するPhase 1/2試験と、長期安全性・有効性を確認する延長試験が確認できます。

項目 内容 見るポイント
薬剤名 VX-670。 VertexのDM1向け候補です。
主試験 NCT06185764。 成人DM1のPhase 1/2、初期臨床試験として確認します。
延長試験 NCT06926621。 親試験完了者など、対象者が限られる可能性があります。
主目的 安全性、忍容性、薬物動態、薬力学。 早期相では治療効果より安全性確認の比重が高いことがあります。
対象年齢 成人DM1。 小児・先天型DM1とは分けて見ます。

VX-670は、早期臨床段階の候補として、今後のデータ更新を追いたいプログラムです。 現時点では、del-desiranやz-basivarsenのようなPhase 3候補とは開発段階が違う点に注意します。

先天型・小児期発症DM1:tideglusib

tideglusib(AMO-02)は、先天型DM1や小児期発症DM1を対象とする候補です。 成人DM1の治験とは評価項目が異なり、筋力だけでなく、発達、認知、呼吸、嚥下、学校生活、家族負担が関係します。

項目 内容 見るポイント
薬剤名 tideglusib、AMO-02。 GSK3β阻害薬として研究されています。
対象 先天型DM1、小児期発症DM1。 成人発症DM1とは別の対象です。
試験例 NCT05004129など。 先行試験参加者と治療未経験者で条件が違う場合があります。
評価項目 機能、発達、認知、生活機能、家族負担など。 成人のvHOTや5xSTSだけでは見られない領域が重要です。

先天型・小児期発症DM1の治療開発では、本人だけでなく家族の通院負担、学校、発達支援、呼吸・嚥下管理も関係します。 小児神経、遺伝カウンセリング、主治医と一緒に確認してください。

症状管理系:mexiletine、pitolisantなど

DM1のパイプラインには、DMPK RNAを狙う原因治療候補だけでなく、日中眠気、疲労、ミオトニアなど、生活上の困りごとを狙う候補もあります。 これらは原因治療ではありませんが、生活を保つ意味では重要です。

候補 狙い 注意点
mexiletine ミオトニア、手の開きにくさ、筋強直。 抗不整脈薬でもあるため、心電図・循環器評価が必要です。
pitolisant 過度の日中眠気、疲労。 原因治療ではなく、眠気・疲労の症状管理として見ます。
metformin 代謝・筋機能への影響を調べる研究があります。 糖代謝、腎機能、消化器症状、併用薬を確認します。
呼吸リハ・運動介入 呼吸筋、疲労、歩行、生活機能。 心臓・呼吸・睡眠を確認してから設計します。

DM1では、「眠気が減る」「手が開きやすくなる」「疲労が残りにくい」だけでも、仕事・通院・家事・外出に大きく影響します。 原因治療候補と症状管理候補は、競合ではなく役割が違うものとして見ます。

早期・前臨床・探索段階の候補

DM1では、臨床試験まで進んでいる候補以外にも、前臨床や探索段階のプログラムがあります。 これらは将来の候補として重要ですが、現時点で患者が参加できる治験とは限りません。

候補・企業 公開情報上の位置づけ 読み方
ATX-01
ARTHEx Biotech
MBNL関連、miR-23bを介したアンチセンス系候補。 DM1のスプライシング病態に近い候補として見る。
JUV-161
Juvena Therapeutics
stem cell-secreted proteins系の候補。 DMPK直接標的とは別枠で見る。
SRP-1003
Sarepta
DMPKのCUGリピート関連を狙うRNAi系候補。 早期段階の候補として追跡。
AT466
Astellas Gene Therapies
AAVアンチセンス系として公開パイプラインに掲載。 前臨床・探索段階として慎重に見る。
DT818
Design Therapeutics
gene targeting chimera small molecule系候補。 公開情報と進捗更新を待つ領域。
EF-210
EditForce
RNA関連の編集・修飾技術を用いる候補。 臨床段階かどうかを分けて確認。
LoQus23 MSH3を狙う小分子候補。 repeat expansion biologyに関わる候補として追跡。
RGT-DM1
Regenta Therapeutics
CUGリピート関連を狙う小分子候補。 公開情報が限られるため、企業発表とMDF更新で確認。

早期段階の候補は、期待できる一方で、患者向け治験に進むまで時間がかかることがあります。 「パイプラインに載っている」ことと「すぐに使える」「参加できる」は別です。

停止・終了・進捗不明のプログラムの見方

DM1の開発では、途中で停止したプログラム、会社が買収されたプログラム、公開情報が乏しいプログラムもあります。 これは珍しいことではありません。希少疾患の治療開発では、技術的課題、安全性、資金、企業戦略、規制当局との協議によって進路が変わります。

表示 意味 判断の仕方
Active 会社やプログラムが公開情報上で継続している可能性。 治験登録があるか、企業発表が更新されているかを見る。
Unknown 進捗が明確に公開されていない状態。 患者向けに期待を煽らず、更新待ちとして扱う。
Stopped / Ended そのプログラムが中止・終了している可能性。 同じ企業の別候補や技術移管がないか確認する。
Acquired / Outlicensed 企業買収や導出で開発主体が変わった状態。 薬剤名、企業名、試験名が変わることがあります。
Preclinical 人での有効性・安全性はまだ確認されていない段階。 患者が参加できる治験ではないことが多いです。

古いニュースや企業発表だけで「もうすぐ使える」と判断しないでください。 ClinicalTrials.gov、jRCT、MDF、企業公式、論文の順に確認すると、実際の開発状況を誤読しにくくなります。

今後見るべき更新ポイント

DM1のパイプラインは、2026年以降も更新が続く可能性が高い領域です。 特に、Phase 3候補の読出し、規制当局との協議、日本での実施状況、長期延長試験、安全性情報を追う必要があります。

更新ポイント なぜ重要か 確認先
HARBOR結果 del-desiranのPhase 3有効性・安全性の大きな判断材料になります。 Novartis、ClinicalTrials.gov、論文、学会発表。
HARMONIA進捗 z-basivarsen/DYNE-101のPhase 3として重要です。 Dyne、ClinicalTrials.gov、jRCT、学会発表。
PGN-EDODM1の規制状況 米国のpartial clinical holdと米国外の進行状況を分けて見る必要があります。 PepGen、ClinicalTrials.gov、規制関連発表。
VX-670の早期データ 早期相から次段階へ進むかの判断材料になります。 Vertex、ClinicalTrials.gov、学会発表。
小児・先天型DM1 成人DM1とは別の評価軸が必要です。 ClinicalTrials.gov、小児神経領域、MDF。
日本の治験登録 日本で参加可能かどうかは海外情報だけでは分かりません。 jRCT、難病治験ウェブ、主治医、専門施設。

パイプラインの更新を見る時は、「薬剤名」「企業」「試験名」「NCT番号/jRCT番号」「開発段階」「対象年齢」「評価項目」をセットで記録してください。 名前だけを追うより、変更に強くなります。

参考文献・参考情報