ALSの家族会議テンプレート|今月決めること・保留すること・役割分担を整理する

ALSの家族会議は「全部を一度に決める場」にしない

ALSでは、呼吸、嚥下、会話、移動、仕事、在宅療養、介護、制度、緊急時、将来の希望など、家族で話し合うことが多くなります。大切な話ほど、本人の気持ち、家族の不安、現実的な負担、将来への心配が一度に混ざりやすくなります。このページでは、ALSの家族会議で「今月決めること」「まだ決めないこと」「外部支援へ頼むこと」を分けて整理するためのテンプレートをまとめます。

最初に押さえること:
家族会議の目的は、感情を消すことではありません。本人の希望、家族の限界、今月の安全課題、次に相談する相手を同じ紙に置き、話が広がりすぎないようにすることです。1回の会議で全部を決める必要はありません。

結論:家族会議は「本人の希望」「今月決めること」「保留」「役割分担」の4つで進める

1. 本人の希望

何を続けたいか、何が嫌か、誰に何を伝えてよいかを最初に確認します。支援の都合だけで話が進まないようにします。

2. 今月決めること

呼吸評価、嚥下相談、訪問看護、福祉用具、緊急時カード、制度申請など、今月動くことを1〜3個に絞ります。

3. まだ決めないこと

胃ろう、呼吸器、仕事、住まい、介護体制など、重いテーマは「今日決める」「今日は情報収集だけ」に分けます。

4. 役割分担

本人、家族、主治医、訪問看護、ケアマネ、相談支援、自治体に分け、家族だけで抱え込まない形にします。

家族会議で扱うテーマ

ALSの家族会議では、医療、生活、制度、仕事、緊急時、家族の負担が混ざりやすくなります。テーマを分けるだけで、話し合いが進めやすくなります。

テーマ 話す内容 今月決める例 相談先
呼吸 朝の頭痛、日中の眠気、横になる苦しさ、咳の弱さ、痰、NPPV、吸引 呼吸検査を相談する、訪問看護へ痰の相談をする、救急時の連絡先を決める 主治医、呼吸器内科、訪問看護、リハ職
嚥下・栄養 むせ、食事時間、体重低下、食形態、とろみ、薬の飲みにくさ、胃ろう相談 ST評価を相談する、体重記録を始める、食形態を見直す 主治医、ST、管理栄養士、訪問看護
会話・意思疎通 声の小ささ、会話疲労、筆談、文字盤、スマホ、視線入力、家族の代弁範囲 意思疎通方法を一つ用意する、本人の希望をメモに残す 主治医、ST、訪問看護、支援機器担当
移動・日常生活 歩行、転倒、移乗、入浴、トイレ、外出、車いす、介護ベッド、福祉用具 車いすを試す、入浴方法を変える、ベッド周りを整える PT/OT、ケアマネ、相談支援、福祉用具専門相談員
在宅チーム 訪問診療、訪問看護、ヘルパー、ケアマネ、相談支援、薬局、レスパイト 訪問看護を探す、ケアマネ・相談支援へ連絡する、短期入所候補を確認する 主治医、医療ソーシャルワーカー、自治体、在宅チーム
制度・お金 指定難病、身体障害者手帳、障害年金、介護保険、障害福祉、医療費、税控除 自治体へ電話する、必要書類を確認する、障害年金の初診日を整理する 自治体、年金事務所、MSW、社労士、税務署
仕事・家族生活 休職、時短、在宅勤務、通院付き添い、家族の睡眠、介護者の仕事 職場へ共有する内容を決める、家族の休む日を決める 職場、産業医、ケアマネ、相談支援、家族
緊急時 救急受診、入院、介護者急病、停電、痰詰まり、誤嚥、転倒 救急用シートを作る、主治医・訪問看護・家族の連絡順を決める 主治医、訪問看護、救急、自治体、家族
重いテーマを避ける必要はありませんが、順番を決めて扱います。
胃ろう、呼吸器、意思決定、仕事、介護体制などは一度で結論が出にくい話題です。「今日は情報を集める」「次回までに主治医へ聞く」「本人の希望だけ確認する」のように小さく分けます。

家族会議の進め方

家族会議は、長時間話すほど良いわけではありません。30〜45分程度で終わる形にし、今日決めることを少なくします。

順番 やること 目安時間 注意点
1 今日決めるテーマを1〜3個に絞る 5分 「全部話す」をやめます。今日扱わない話題は保留欄へ移します。
2 本人の希望を先に確認する 5〜10分 本人が話しにくい場合は、メモ・Yes/No・家族の補助を使います。
3 家族が困っていることを事実で出す 5〜10分 不満ではなく、睡眠、仕事、介助時間、夜間対応などの事実で書きます。
4 医療・制度・生活のどこへ相談するか分ける 10分 家族だけで決められないことは、主治医・訪問看護・自治体へ渡します。
5 今日決めたことと次回までの宿題を書く 5分 誰が、何を、いつまでに行うかを一行で残します。
家族会議は「説得の場」にしないことが重要です。
本人に受け入れさせる、家族に我慢させる、誰かを責める場になると、次の話し合いが難しくなります。本人の希望と家族の限界を同じ紙に並べ、外部支援へ渡す前提で話します。

ALS家族会議テンプレート:通常版

下の項目をコピーして使えます。すべて埋める必要はありません。まずは「今回決めること」「本人の希望」「家族の限界」「次の相談先」だけでも十分です。

ALS 家族会議メモ

記入日
__年__月__日
参加者
本人:____ / 家族:____ / 支援者:____
今日いちばん決めたいこと
__________
今月中に決めたいこと
1. ____ / 2. ____ / 3. ____
今日は決めないこと
__________
本人が続けたいこと
__________
本人が避けたいこと
__________
本人が困っていること
呼吸 / 嚥下 / 会話 / 移動 / 入浴 / トイレ / 外出 / 仕事 / その他:____
家族が困っていること
夜間 / 通院 / 食事介助 / 移乗 / 入浴 / 仕事 / 睡眠不足 / 不安:____
呼吸の確認
朝の頭痛:あり・なし / 眠気:あり・なし / 咳・痰:あり・なし / NPPV等:あり・なし / 相談先:____
嚥下・栄養の確認
むせ:あり・なし / 食事時間:__分 / 体重変化:__kg / 食形態:____ / 相談先:____
会話・意思疎通
会話可 / 疲れる / 筆談 / スマホ / 文字盤 / 視線入力 / 家族補助:____
日常生活
移動:____ / 入浴:____ / トイレ:____ / 外出:____ / 夜間:____
外部支援へ頼むこと
主治医:____ / 訪問看護:____ / ケアマネ:____ / 相談支援:____ / 自治体:____
家族内の役割分担
本人:____ / 家族A:____ / 家族B:____ / その他:____
今日決めたこと
1. ____ / 2. ____ / 3. ____
次回までの宿題
誰が:____ / 何を:____ / いつまでに:____
次に話し合う日
__年__月__日頃 / 形式:対面・電話・オンライン・メモ共有

短時間版テンプレート

疲労が強い日、本人が長く話せない日、家族が忙しい日は、短時間版だけで十分です。

ALS 家族会議メモ・短時間版

今日決めること
__________
本人が困っていること
__________
家族が限界に近いこと
__________
今日は決めないこと
__________
外部へ相談すること
主治医 / 訪問看護 / ケアマネ / 相談支援 / 自治体 / 職場 / その他:____
次回までの宿題
誰が:____ / 何を:____ / いつまでに:____
短時間版の使い方:
「今日決めること」と「今日は決めないこと」を分けるだけでも、話し合いの負担は下がります。結論が出なくても、次回までに誰が何を確認するかが決まれば十分意味があります。

本人の意思を確認するための質問

ALSでは、家族が本人のためを思って話を進めても、本人の希望とずれることがあります。本人の発話が難しい場合でも、短い質問、Yes/No、メモ、文字盤、スマートフォンなどで確認できる範囲を残します。

聞くこと 質問例 書き方
今いちばん困ること 「今、生活で一番つらいのはどれですか」 呼吸 / 食事 / 会話 / 移動 / 仕事 / 家族に頼むこと / その他:____
続けたいこと 「今後もできるだけ続けたいことは何ですか」 仕事 / 外出 / 食事 / 家族時間 / 趣味 / 自宅生活 / その他:____
避けたいこと 「今は避けたいこと、話したくないことはありますか」 __________
誰に伝えてよいか 「病気や支援のことを、誰にどこまで伝えてよいですか」 家族 / 職場 / 友人 / 支援者 / 伝えたくない相手:____
家族に頼みたいこと 「家族に頼みたいこと、逆に頼みにくいことはありますか」 __________
医師に聞きたいこと 「次の受診で必ず聞きたいことは何ですか」 呼吸 / 嚥下 / 薬 / 治験 / 在宅 / 緊急時 / その他:____
本人の希望は、一度決めたら固定ではありません。
体調、呼吸、嚥下、家族の状況、支援体制が変わると、本人の考えも変わることがあります。家族会議では「今の希望」として記録し、必要に応じて更新します。

家族の限界を責めずに書く

家族の負担は、本人への愛情とは別問題です。睡眠不足、夜間対応、通院付き添い、移乗介助、食事介助、仕事への影響が積み重なると、在宅生活そのものが不安定になります。家族会議では、家族の限界も安全情報として扱います。

家族の負担 書く内容 外部支援へつなぐ方向
夜間対応 体位変換、トイレ、吸引、呼吸器アラーム、眠れない日数 訪問看護、重度訪問介護、短期入所、レスパイト
食事・嚥下 食事時間、むせ対応、食形態作り、薬の飲ませ方 ST、管理栄養士、訪問看護、食形態見直し
移乗・入浴 持ち上げ介助、腰痛、転倒不安、浴室での危険 福祉用具、訪問介護、訪問入浴、PT/OT
通院付き添い 移動時間、仕事を休む頻度、通院後の本人・家族の疲労 訪問診療、訪問看護、移動支援、福祉タクシー
仕事・収入 欠勤、時短、介護休業、収入減、家計不安 障害年金、税控除、相談支援、職場相談
精神的負担 不安、孤立、話せる相手がいない、兄弟姉妹・子どもへの影響 医療ソーシャルワーカー、相談支援、家族会、心理支援
家族が限界になるまで待たないでください。
家族の疲労は、本人の安全にも直結します。家族会議で「家族だけでは難しいこと」を書き出し、訪問看護、訪問介護、重度訪問介護、短期入所、レスパイトへ早めに相談します。

決めること・保留することの分け方

家族会議で重い話題が出たときは、無理に結論を出さず、段階を分けます。

話題 今日決めることの例 保留してよいことの例 次の一手
呼吸器・NPPV 呼吸症状を記録し、次回受診で相談する 導入するかどうかの最終判断 呼吸検査、主治医相談、訪問看護へ共有
胃ろう・栄養 体重と食事時間を記録し、嚥下評価を相談する 胃ろうを作るかどうかの最終判断 ST、栄養相談、主治医へ質問メモ
仕事・休職 職場へ伝える内容と相談相手を決める 退職・長期方針の結論 産業医、人事、障害年金、家計確認
在宅療養 訪問看護または在宅チームへ相談する 最終的な住まい方の結論 在宅チーム、ケアマネ、相談支援、福祉用具
介護者急病 緊急連絡先と短期入所候補を確認する 施設利用の長期方針 レスパイト、短期入所、家族内バックアップ
意思決定・将来 本人が今話せる範囲を確認する すべての医療判断・終末期方針 主治医、家族、必要に応じて文書化を相談
「今日は決めない」と決めることも、家族会議の成果です。
ただし、保留にしたテーマは放置せず、次に誰へ聞くか、いつ再度話すかを一行で残します。

受診前に家族会議をする場合

受診前に10分だけ家族会議をすると、主治医へ聞くことが整理しやすくなります。本人が疲れやすい場合は、受診メモに転記して持参します。

受診前に確認すること
  • 今日主治医に一番聞きたいことは何か
  • 前回受診から変わったことは何か
  • 呼吸、嚥下、体重、疲労、会話、移動で悪化したものはあるか
  • 本人が直接聞きたいことは何か
  • 家族が補足したい観察事実は何か
  • 薬、検査、訪問看護、制度、緊急時で確認したいことはあるか
  • 受診後に家族で再度話す必要があるテーマは何か

受診時に使うメモは、ALS 受診メモテンプレートも確認してください。

緊急時に備えて家族で決めておくこと

ALSでは、呼吸苦、痰詰まり、むせ、発熱、脱水、転倒、介護者急病など、急に判断が必要になる場面があります。家族会議では、平時に最低限の連絡順を決めます。

緊急時に決めること
  • 呼吸苦・痰詰まりのとき、最初に誰へ連絡するか
  • 訪問看護の24時間連絡先があるか
  • 主治医・専門病院・救急外来の連絡先
  • 救急車を呼ぶ判断を誰がするか
  • 救急受診用引き継ぎシートをどこに置くか
  • お薬手帳、受給者証、保険証、医療機器情報をどこに置くか
  • 本人が話せないとき、誰が代わりに説明するか
  • 主介護者が倒れたとき、誰が代わるか
  • 短期入所・レスパイト先の候補
  • 停電・災害時に医療機器の電源をどう確保するか
呼吸困難、痰詰まり、意識低下、水分が取れない状態は、家族会議ではなく医療相談が優先です。
緊急時の話し合いは平時に行います。症状が起きている最中は、主治医・訪問看護・救急相談・救急要請を優先してください。

救急時に使う紙は、ALS 救急受診用引き継ぎシートを確認してください。

外部支援へ渡すための相談文

家族会議で決めきれないことは、家族だけで抱えず、主治医・訪問看護・ケアマネ・相談支援・自治体へ渡します。

主治医へ相談する一言

「家族で話し合った結果、呼吸・嚥下・体重・疲労・在宅支援について不安があります。今日決めたいことは____です。本人の希望は____で、家族として困っていることは____です。」

訪問看護へ相談する一言

「家族だけで呼吸、痰、食事、夜間対応を見るのが不安です。本人の普段の状態、家族が困っていること、緊急時の連絡順を一緒に整理したいです。」

ケアマネ・相談支援へ相談する一言

「家族会議で、入浴、トイレ、移乗、夜間、通院付き添い、家族の睡眠不足が課題になりました。訪問介護、重度訪問介護、福祉用具、短期入所、レスパイトを含めて相談したいです。」

自治体へ相談する一言

「ALSで在宅生活を続けるために、介護保険、障害福祉サービス、身体障害者手帳、指定難病、短期入所、レスパイト、福祉用具について相談したいです。どの窓口で何を申請すればよいか確認したいです。」

家族会議で避けたい進め方

避けたいこと 起こりやすい問題 代わりにすること
一度で全部決めようとする 話が重くなり、誰も次に動けなくなる 今月決めることを1〜3個に絞ります。
本人を説得する場にする 本人の希望が出にくくなる 本人の希望、嫌なこと、まだ話したくないことを先に確認します。
家族の不安だけで結論を出す 支援が本人の生活から離れる 本人の希望と家族の限界を同じ紙に並べます。
家族の負担を我慢で処理する 介護者が倒れ、在宅生活が急に崩れる 睡眠、夜間対応、仕事への影響を外部支援へつなげます。
保留を放置する 重要な判断が先送りされ続ける 保留欄に入れたら、次回日程と相談先を決めます。
医療判断を家族だけで決める 不安や誤解で判断が偏る 呼吸、嚥下、胃ろう、呼吸器、薬は主治医・専門職へ質問を作ります。

家族会議の後にやること

話し合って終わりにせず、次の一手を残します。家族の誰か一人に負担が偏らないよう、役割を分けます。

会議後チェック
  • 今日決めたことを1〜3個にまとめた
  • 保留にしたことを残した
  • 本人の希望を一行でも残した
  • 家族の限界を外部支援へ渡す形にした
  • 主治医に聞くことを作った
  • 訪問看護・ケアマネ・相談支援・自治体へ聞くことを分けた
  • 救急用シートや受診メモに反映した
  • 次回の話し合い時期を決めた
家族会議の結果は、受診メモや在宅チームにも共有します。
家族内だけで終わらせず、主治医、訪問看護、ケアマネ、相談支援へ必要な範囲で伝えると、具体的な支援につながりやすくなります。

あわせて確認したいページ

家族会議は、受診メモ、救急用シート、在宅チーム、レスパイト、制度申請とつながります。必要な項目から確認してください。

参考文献・参考情報

免責事項

このページは、ALSの家族会議、本人の希望、家族の役割分担、在宅支援、呼吸・嚥下・栄養・意思疎通、緊急時準備、制度申請を整理するための一般情報です。個別の診断、治療、薬剤、検査、NPPV、人工呼吸器、胃ろう、吸引、在宅医療、介護・福祉サービス、意思決定、療養方針を判断するものではありません。

実際に話し合う内容や決め方は、本人の病状、呼吸機能、嚥下機能、意思疎通、家族構成、住環境、医療機関、訪問看護、在宅チーム、自治体制度、本人の価値観によって変わります。重要な医療判断や制度利用では、主治医、訪問看護、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、相談支援専門員、自治体窓口、必要に応じて専門職へ確認してください。呼吸困難、痰詰まり、意識低下、急な嚥下困難、脱水、強い転倒、介護者の急病など安全に関わる状況では、家族会議よりも医療機関・訪問看護・救急への相談を優先してください。