ALSで重度訪問介護を24時間使うには?申請時に整理したいポイント

ALS情報 重度訪問介護 24時間支援 在宅生活

ALSで重度訪問介護を24時間使うには?申請時の生活記録と支援量の整理

ALSの在宅生活では、身体介助の回数だけでなく、見守り、体位調整、排泄、移乗、食事、吸引器や呼吸器まわりの確認、意思疎通支援などが、一日を通して必要になることがあります。 短時間の訪問介護だけでは生活が回らず、重度訪問介護を長時間で組み立てることが課題になる場面があります。

ただし、「24時間介護が必要です」とだけ伝えても、必要性が十分に伝わるとは限りません。 申請では、朝・昼・夕方・夜間・深夜のどの時間帯に、どの介助や見守りが必要で、家族がどこまで担っていて、どこが限界になっているのかを具体的に整理することが重要です。

このページでは、ALSで重度訪問介護を24時間に近い形で使うことを考えるときに、対象の考え方、申請時に整理したい生活記録、支給時間を説明する視点、入院時の意思疎通支援との関係をまとめます。

本ページは一般的な制度整理です。実際の支給時間や支給決定は、市区町村、障害支援区分、認定調査、サービス等利用計画、日常生活の状況、家族介護の実態、医療的ケアの有無、地域の支援体制によって異なります。具体的な申請は、自治体の障害福祉窓口、相談支援専門員、主治医、訪問看護、医療ソーシャルワーカーに確認してください。

結論

  • 重度訪問介護は、常時介護を要する重度障害者に対して、居宅での介護、家事、見守り、生活全般の援助、外出時支援などを総合的に行う障害福祉サービスです。
  • ALSでは、四肢の麻痺、移乗・排泄・体位変換、意思疎通支援、吸引器や呼吸器まわりの確認、夜間の見守りが重なると、長時間支援が必要になりやすくなります。
  • 「24時間支援」は、単に家族が大変という意味ではなく、日中・夜間・深夜を通して、断続的な介助や安全確認が必要な状態として説明することが大切です。
  • 申請では、病名だけでなく、1日の時間帯ごとの介助内容、見守りの必要性、家族介護の限界、本人の意思疎通、医療的ケア周辺の支援を具体化します。
  • 家族が頑張っていることで生活が回っている場合、そのままでは支援の必要性が見えにくくなります。睡眠時間、夜間対応回数、一人介助の危険性、家族の体調不良も記録します。
  • 入院中の重度訪問介護は、医療行為の代替ではなく、本人に慣れた支援者による意思疎通支援や本人固有の介助方法を伝える役割として重要になることがあります。
  • 支給決定は自治体ごとに判断されます。不足を感じた場合は、生活記録、医師意見書、訪問看護の記録、サービス等利用計画をそろえ、変更申請や再相談を検討します。

このページで整理すること

このページは、ALSの在宅生活で重度訪問介護を長時間、または24時間に近い形で使うことを考えるときに、申請前に何を整理すればよいかをまとめるページです。

ここでは、制度の対象、生活記録、家族介護の限界、夜間見守り、意思疎通支援、医療的ケア周辺の支援、入院時の支援まで扱います。 家族負担全体、吸引の在宅準備、災害対策、AAC、入院準備とは役割を分けています。

テーマ 主に見ること このページでの扱い
重度訪問介護 長時間の見守り、身体介護、生活援助、外出支援、意思疎通支援。 このページの中心です。申請時の整理方法を扱います。
24時間支援 日中、夜間、深夜を通した介助・見守り・呼び出し対応。 必要性をどう説明するかを時間帯ごとに整理します。
家族負担 睡眠不足、身体負担、就労への影響、限界感、代替介護者の不在。 支援量を考える根拠の一つとして扱います。
医療的ケア周辺 吸引、呼吸器、NPPV、胃ろう、体位変換、見守り。 医療行為そのものではなく、周辺支援・連携・見守りとして整理します。
意思疎通支援 文字盤、視線入力、スイッチ、本人固有の合図、病院への伝達。 在宅と入院の両方で重要な支援として扱います。
サービス等利用計画 相談支援専門員が作成する計画案、生活全体の支援設計。 支給量を説明する土台として扱います。

申請では「ALSだから24時間必要」と伝えるより、「この生活を安全に続けるには、この時間帯にこの支援が必要」と示す方が、状況が伝わりやすくなります。

重度訪問介護の基本

重度訪問介護は、重度の肢体不自由、重度の知的障害、精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する方を対象とした障害福祉サービスです。 居宅での入浴、排せつ、食事などの介護だけでなく、調理、洗濯、掃除、生活全般の援助、外出時の支援、見守り等を含めて総合的に行うサービスとして整理されています。

ALSでは、短時間の身体介護だけでは対応しにくい場面が多くあります。 たとえば、呼び出しに応じて体位を変える、意思疎通を支える、NPPVや吸引器の周辺を確認する、夜間に見守る、本人の合図を読み取り生活判断につなげるなど、生活全体にまたがる支援が必要になることがあります。

短時間型の訪問介護との違い

決まった行為だけでなく、断続的に起こる介助、見守り、生活全般の支援を長時間で組み立てやすい点が特徴です。

ALSで重要な点

体位変換、移乗、排泄、呼吸器まわり、吸引器周辺、意思疎通支援が、日中だけでなく夜間にも出やすいことです。

重度訪問介護で扱われる支援の例

支援の種類 ALSでの具体例 申請時に伝えたいこと
身体介護 起床、移乗、排泄、食事、体位変換、着替え、清潔保持。 1回ごとの介助時間、回数、一人介助の危険性。
見守り 呼び出しへの対応、転倒予防、呼吸や痰の変化、夜間の安全確認。 見守りがないと何が危険か、どの時間帯に必要か。
意思疎通支援 文字盤、視線入力、本人の合図の読み取り、医療者や家族への伝達。 本人だけでは伝えられない場面、慣れた支援者が必要な理由。
生活援助 調理、洗濯、掃除、物品管理、機器周辺の準備、外出準備。 本人の生活を維持するために必要な支援として説明します。
外出支援 通院、買い物、社会参加、介護タクシー利用、外出中の体位・意思疎通支援。 外出が本人の生活や医療継続にどう関係するか。
入院時の支援 入院中に本人の意思疎通や固有の介助方法を医療者へ伝える。 入院前から重度訪問介護を利用し、本人に慣れた支援者がいること。

重度訪問介護は、医療行為をヘルパーが自由に行う制度ではありません。

吸引などの医療的ケアに関わる場合は、喀痰吸引等研修、事業所登録、医師の指示、訪問看護との連携など、別途確認が必要です。

「24時間使う」とはどう考えるか

「24時間重度訪問介護を使う」とは、単にヘルパーが常に横に立っているという意味ではありません。 実際には、本人の生活全体を見て、どの時間帯に身体介護が必要か、どの時間帯に見守りが必要か、どの時間帯に意思疎通支援や呼び出し対応が必要かを積み上げて考えます。

ALSでは、介助が途切れた時間に問題が起こりやすいことがあります。 体位を変えられない、痰が絡んでも呼べない、文字盤や視線入力がなければ意思が伝わらない、夜間に呼吸器や吸引器の周辺で対応が必要になるなど、見守りと待機が安全に直結する場合があります。

考え方 伝えたい内容 注意点
身体介護の時間 移乗、排泄、体位変換、食事、清潔、着替えに必要な時間。 回数と1回あたりの所要時間を記録します。
断続的な支援 一定時間ごとに起きる体位変換、吸引器周辺、トイレ、姿勢修正。 「見守りだけ」に見えても、いつ介助が発生するかを説明します。
夜間の見守り 呼び出し、体位交換、痰、NPPV、呼吸器、痛み、トイレ対応。 家族が何回起きているか、どれだけ眠れていないかを記録します。
意思疎通支援 本人の合図、文字盤、視線入力、医療・生活判断の伝達。 意思疎通がないと生活判断や安全確認ができない場面を示します。
家族の代替不能性 家族しか分からない手順、家族しか眠れない状況、家族の体調不良。 家族がいることを理由に支援が不要と見なされないよう、限界も伝えます。
支援者の交代 24時間を一人で担うのではなく、複数人・複数事業所で組む必要。 人員確保と支給量は別の課題として整理します。

24時間支援の必要性は、「ずっと介助しているか」だけではありません。介助が必要なときにすぐ対応できないと安全が保てないか、意思疎通が途切れると生活判断ができないかを整理します。

ALSで長時間支援が必要になりやすい理由

ALSでは、症状の進行により、手足の動き、体幹保持、寝返り、呼吸、嚥下、発話、意思伝達が少しずつ変化します。 日中の一部だけ介助すれば済む時期から、生活全体を支える必要がある時期へ移ることがあります。

24時間支援が話題になりやすい場面

  • 寝返りや体位交換が自力でできず、一定時間ごとに支援が必要。
  • トイレ、排尿、排便、オムツ交換、ポータブルトイレなどの対応が頻回。
  • ベッドから車椅子、車椅子からトイレなどの移乗に常時介助が必要。
  • 手が使いにくく、呼び出し、ナースコール、スマホ、意思伝達機器を一人で操作しにくい。
  • 発話が難しく、文字盤や視線入力を使うにも支援者の読み取りが必要。
  • NPPV、人工呼吸器、吸引器、カフアシストなどの周辺で見守りや準備が必要。
  • 夜間に痰、体位、呼吸、痛み、不安で何度も呼び出しがある。
  • 一人の家族が対応しており、睡眠不足や体調不良が続いている。
  • 本人が一人で過ごす時間に転倒、窒息、呼吸苦、意思疎通不能の不安がある。

ALSでは、介助の回数だけでなく、「呼べない」「動けない」「伝えられない」「苦しくなったときに自分で対処できない」ことが、長時間支援の必要性につながります。

対象になりやすい状態の整理

重度訪問介護の対象は、障害支援区分4以上で、重度の肢体不自由などにより常時介護を要する方が中心になります。 厚生労働省の説明では、二肢以上の麻痺等があり、認定調査項目の「歩行」「移乗」「排尿」「排便」がいずれも支援不要以外であることなどが示されています。

ALSの場合、人工呼吸器の有無だけで考えるのではなく、移動、移乗、排泄、寝返り、意思疎通、呼吸器周辺、吸引器周辺、家族介護の継続可能性まで含めて整理します。

項目 ALSでの見え方 記録・説明の例
歩行 歩けない、歩けても転倒リスクが高い、屋内移動にも見守りが必要。 移動距離、転倒歴、車椅子利用、移動時に必要な介助。
移乗 ベッド、車椅子、トイレ、浴室、椅子への移乗に介助が必要。 一人介助か二人介助か、移乗回数、介助者の腰痛や危険性。
排尿・排便 トイレ移動、衣服操作、姿勢保持、清拭、夜間対応が必要。 1日の回数、夜間回数、所要時間、家族が起きる回数。
寝返り・体位変換 自力で寝返りできず、痛み、痺れ、呼吸苦、褥瘡予防のため介助が必要。 何時間ごとに必要か、夜間に何回対応しているか。
食事・嚥下 姿勢調整、一口量、むせ、食後の痰、胃ろう管理周辺の支援。 食事時間、むせの頻度、介助者が必要な理由。
呼吸・吸引 NPPV、人工呼吸器、吸引器、痰、マスク調整、夜間確認。 機器使用時間、吸引回数、夜間呼び出し、訪問看護の指示。
意思疎通 発話困難、文字盤、視線入力、本人固有の合図、医療判断の伝達。 誰が読み取れるか、支援がないと伝えられない内容。
家族状況 主介護者の睡眠不足、就労、通院、体調不良、一人介護。 家族が担っている時間、限界、代替者の有無。

人工呼吸器を使っているかどうかだけで支援の必要性を判断しないことが大切です。

人工呼吸器を使っていなくても、移乗、排泄、体位変換、意思疎通、夜間見守りが重なれば、長時間支援が必要になることがあります。

申請から利用までの流れ

重度訪問介護を利用するには、自治体の障害福祉窓口への相談から始まります。 すでに障害福祉サービスを使っている場合でも、支給量が足りない、夜間支援が必要、状態が変わった場合は、変更申請や計画の見直しが必要になることがあります。

流れ 主な内容 準備したいもの
1. 相談 自治体障害福祉窓口、相談支援専門員、病院MSW、訪問看護へ相談。 現在の困りごと、介助内容、家族負担、夜間状況。
2. 申請 障害福祉サービスの利用申請、必要に応じて支給量変更申請。 申請書、本人確認、障害者手帳や診断書など自治体指定書類。
3. 障害支援区分認定 認定調査、医師意見書などをもとに区分が判定されます。 日常生活の実態を調査時に伝える準備。
4. サービス等利用計画案 相談支援専門員が生活全体の支援計画を作成します。 24時間の生活表、家族介護の限界、必要な支援時間。
5. 支給決定 自治体がサービス種別、支給量、有効期間などを決定します。 決定内容が生活実態に合っているか確認します。
6. 事業所調整 重度訪問介護事業所、ヘルパーの人員、時間帯を調整します。 医療的ケア対応、夜間対応、意思疎通支援の可否。
7. 利用開始・見直し 実際に使いながら、足りない時間帯や支援内容を見直します。 利用後の困りごと、空白時間、家族負担の変化。

支給決定と事業所確保は別の課題です。支給時間が決まっても、地域に対応できる事業所やヘルパーが足りないことがあります。早めに複数の支援者へ相談してください。

申請時に整理したいポイント

申請時は、生活全体を「時間帯」と「支援内容」に分けて見せることが重要です。 「大変」「危ない」「家族が限界」という言葉だけでは、支給量の判断に必要な情報が不足しやすくなります。

時間帯ごとに分ける

時間帯 ALSで起こりやすい支援 記録したいこと
早朝 体位変換、NPPV解除、吸引、起床、排泄、着替え。 起床までの介助回数、朝の痰、呼吸、家族が起きる時間。
食事、服薬、整容、トイレ、車椅子移乗、通院準備。 1つの動作にかかる時間、同時に必要な支援。
食事、排泄、体位修正、意思疎通、見守り、外出。 本人が一人で安全に過ごせる時間があるか。
夕方 入浴・清拭、食事、排泄、疲労時の姿勢調整。 家族の身体負担、二人介助の必要性、転倒リスク。
就寝準備、NPPV、吸引器、体位調整、呼び出し対応。 就寝までの所要時間、家族が待機している時間。
深夜 体位変換、痰、呼吸器確認、痛み、トイレ、不安への対応。 1晩に何回起きるか、何分対応するか、家族の睡眠時間。
通院・外出日 移動、車椅子、吸引器、意思疎通、医療者への説明。 外出準備時間、同行者の人数、帰宅後の疲労。

支援内容を具体化する

  • 何分おきに体位変換が必要か。
  • 排泄介助が1日何回あり、夜間に何回起きているか。
  • 吸引器や呼吸器まわりで、家族がどのような確認をしているか。
  • 本人が呼べない、押せない、伝えられない場面があるか。
  • 文字盤や視線入力に、支援者の読み取りが必要か。
  • 一人介助では危険な移乗や入浴があるか。
  • 家族が仕事、通院、睡眠、家事を犠牲にしている時間はどこか。
  • 家族が体調不良になった場合、代替できる人がいるか。

「家族が何とかしている」状態は、必要な支援が外から見えにくくなります。

実際に誰が、何時に、何分、どの介助をしているかを記録し、家族の睡眠不足や体調不良も含めて共有してください。

支給時間を説明するときの視点

支給時間を考えるときは、単発の身体介助だけでなく、生活全体を安全に保つための見守り、断続的な介助、意思疎通支援、家族の限界を含めて整理します。

視点 伝わりやすい説明 伝わりにくい説明
夜間支援 「23時、1時、3時、5時に体位変換と痰の確認が必要。家族は1回20分対応し、連続睡眠が取れていない。」 「夜が大変です。」
見守り 「本人は呼び出しボタンを押せず、痰や呼吸苦を自力で伝えられないため、近くで確認が必要。」 「見守りが必要です。」
意思疎通 「文字盤は使えるが、支援者が読み取らないと医療・排泄・痛みの希望を伝えられない。」 「話しにくいです。」
移乗 「ベッドから車椅子、車椅子からトイレへの移乗に一人介助では危険があり、1日6回発生している。」 「移動が難しいです。」
家族介護 「主介護者は夜間対応で睡眠が3時間程度。日中も介助があり、通院や仕事ができない。」 「家族が疲れています。」
医療的ケア周辺 「吸引そのものは訪問看護の指導下だが、痰の合図確認、姿勢調整、機器準備、呼び出し対応が必要。」 「吸引器があります。」

支給量の説明に入れたい項目

  • 1日の生活表。時間帯ごとの介助内容を記録する。
  • 夜間の呼び出し回数と家族の睡眠時間。
  • 介助がないと起こる危険。転倒、窒息、呼吸苦、褥瘡、意思疎通不能など。
  • 本人が一人でできないこと。ボタンを押す、姿勢を変える、痰を出す、伝えるなど。
  • 家族が担っている内容と、継続できない理由。
  • 訪問看護、主治医、リハビリ職から見た支援の必要性。
  • 不足している時間帯と、追加したい支援内容。

支給時間を説明するときは、「どの時間帯に、何が、何回、どのくらいの時間必要か」を数字と生活場面で示すと、支援の必要性が伝わりやすくなります。

家族介護の限界をどう伝えるか

ALSの在宅生活では、家族が多くの介助を担っていることがあります。 しかし、家族がいるから支援が不要ということではありません。 家族が睡眠不足、腰痛、仕事の中断、通院困難、精神的な限界を抱えている場合、その状態を支援調整に反映させる必要があります。

家族負担を伝えるときの視点

負担 具体的に書くこと 支援とのつながり
睡眠不足 夜間に起きる回数、対応時間、連続睡眠の長さ。 夜間支援、見守り、体位変換支援の必要性。
身体負担 移乗や体位変換で腰痛・肩痛が出ているか。 二人介助、福祉用具、支援時間の増加。
就労への影響 介護で仕事を休む、勤務時間を減らす、夜間対応で働けない。 日中・夜間の支援、家族以外の介助者確保。
一人介護 主介護者以外に代替できる人がいない。 長時間支援、レスパイト、複数事業所の調整。
医療的ケア周辺 吸引器、呼吸器、胃ろう、薬、緊急時対応を家族が担っている。 訪問看護、医療連携、見守り支援。
意思疎通の負担 本人の意思を家族だけが読み取っている。 意思疎通支援、文字盤・視線入力の共有、入院時支援。
家族の体調 主介護者の病気、通院、年齢、妊娠、育児、他の介護。 家族が担えない時間を制度で補う必要性。

「家族だからやるべき」と考え続けると、在宅生活そのものが不安定になることがあります。

家族の限界は、本人の在宅生活を守るためにも重要な情報です。遠慮せず、睡眠・体調・就労・代替者の有無を具体的に共有してください。

医療的ケアと重度訪問介護の関係

ALSでは、吸引器、NPPV、人工呼吸器、胃ろう、カフアシストなどが関わることがあります。 重度訪問介護は医療行為そのものを自由に行う制度ではありませんが、医療的ケアの周辺で必要になる見守り、体位調整、呼び出し、物品準備、意思疎通支援、訪問看護との連携は生活上の大きな支援になります。

医療的ケア周辺 重度訪問介護で整理したい支援 確認先
吸引 痰が絡んだ合図の確認、姿勢調整、物品準備、緊急時連絡、研修修了者の対応可否。 主治医、訪問看護、喀痰吸引等対応事業所。
NPPV マスクのずれ、呼び出し、苦しさの伝達、体位変換、夜間確認。 呼吸管理チーム、訪問看護、機器業者。
人工呼吸器 アラーム時の連絡、体位、意思疎通、周辺環境の確認、停電時の準備。 主治医、訪問看護、機器業者、自治体。
胃ろう 姿勢、注入中の見守り、物品準備、本人の不快感の伝達。 主治医、訪問看護、管理栄養士。
カフアシスト等 準備、体位、本人の合図、訪問看護や家族との手順共有。 呼吸リハビリ、訪問看護、主治医。
薬・体調変化 飲み忘れ防止、体調変化の共有、緊急時の連絡補助。 主治医、薬剤師、訪問看護。

医療的ケアがある場合は、「医療行為を誰が行うか」と「その前後で生活上どの支援が必要か」を分けると、重度訪問介護で説明しやすくなります。

意思疎通支援をどう整理するか

ALSでは、話す力や手の操作が低下すると、本人の意思を伝えるために文字盤、視線入力、スイッチ、スマホ、タブレットなどが必要になります。 しかし、機器があるだけでは不十分で、本人の合図を読み取り、医療者や家族へ伝える支援者が必要になることがあります。

これは重度訪問介護の申請でも重要です。 意思疎通ができない時間があると、痛み、痰、トイレ、体位、呼吸苦、緊急時の希望を伝えられず、安全に直結します。

意思疎通支援として記録したいこと

  • 本人が声で伝えられるか。声が出る時間帯や疲労で変わるか。
  • 文字盤、視線入力、スイッチ、スマホを一人で使えるか。
  • 機器の設置や調整に支援者が必要か。
  • 本人固有の合図を読み取れる人が限られているか。
  • 痛み、痰、トイレ、呼吸苦などをすぐ伝えられない時間があるか。
  • 緊急時、本人の希望を医療者へ伝える支援が必要か。
  • 家族だけが読み取っていることで、家族が外出や睡眠を取れない状態か。

意思疎通支援は、会話の補助だけではありません。ALSでは、痛み・呼吸・痰・排泄・緊急時の希望を伝えるための安全確保にも関わります。

入院時のコミュニケーション支援との関係

重度訪問介護は、入院中にも一定条件のもとで意思疎通支援などに関係します。 厚生労働省は、重度の障害で意思疎通に支援が必要な方が入院する場合、入院前から支援を行っている等、本人へのコミュニケーション支援に熟知している支援者が付き添うことが可能であると案内しています。

ALSでは、人工呼吸器、NPPV、視線入力、文字盤、本人固有の合図が関わることがあります。 入院中に医療スタッフが初めて本人の意思疎通を理解するのは難しい場合があり、普段から関わる支援者が本人の希望、痛み、苦しさ、体位、合図を伝えることが役立つことがあります。

入院時を見据えて在宅時から準備したいこと

  • 本人の合図を、家族以外の支援者にも共有する。
  • 文字盤・視線入力・スイッチの使い方を支援者が理解している。
  • 体位変換、痛み、呼吸苦、痰、トイレの希望をどう伝えるか決めておく。
  • 入院時にヘルパーが何を支援し、何は医療者が行うのかを分けておく。
  • 病院へ渡す情報シートを作っておく。

入院時の支援は、医療者の代わりに医療行為をするためではありません。本人の意思や本人固有の介助方法を医療者へ伝え、安全に治療を受けるための支援として考えます。

事業所・ヘルパーが足りないとき

重度訪問介護では、支給量が決まっても、実際にその時間を埋められる事業所やヘルパーがすぐ見つからないことがあります。 特に、夜間対応、医療的ケア周辺、意思疎通支援、長時間シフトに慣れた事業所は地域差が出やすい部分です。

事業所探しで確認したいこと

確認項目 聞きたいこと 理由
ALS経験 ALS、人工呼吸器、NPPV、吸引器周辺の支援経験があるか。 進行性疾患や意思疎通支援に慣れているか確認します。
夜間対応 夜間、深夜、早朝のシフトに対応できるか。 家族の睡眠確保に直結します。
喀痰吸引等 喀痰吸引等研修修了者がいるか、登録事業所か。 吸引に関われるかは条件があるためです。
意思疎通支援 文字盤、視線入力、スイッチ、本人固有の合図に対応できるか。 身体介助だけでは生活が成り立たない場合があります。
複数人体制 急な欠勤時の代替、複数人での引き継ぎが可能か。 一人のヘルパーに依存すると不安定になります。
訪問看護との連携 看護師の指導や手順書、緊急時連絡に対応できるか。 医療的ケア周辺では連携が重要です。
外出支援 通院、介護タクシー、外出中の意思疎通支援に対応できるか。 在宅だけでなく通院継続に関わります。

複数の事業所で組むことも考える

24時間に近い支援を一つの事業所だけで埋めるのは難しいことがあります。 日中と夜間、平日と休日、医療的ケア周辺に強い事業所、外出支援に強い事業所など、複数の事業所で役割分担する場合もあります。

支給時間が足りない問題と、支援者が見つからない問題は別です。

どちらで困っているのかを分けて、自治体、相談支援専門員、訪問看護、病院MSWに共有してください。

相談前にまとめたいメモ

申請や変更相談では、生活の大変さをその場で説明するだけでは不足しやすくなります。 1日の生活表、夜間対応、家族の睡眠、意思疎通、医療的ケア周辺、現在のサービス不足を短くまとめておくと、相談支援専門員や自治体へ伝えやすくなります。

まず見る5項目

  • 1日の中で、本人を一人にできない時間帯。
  • 夜間に家族が起きている回数と対応内容。
  • 体位変換、排泄、移乗、吸引器周辺、呼吸器周辺の回数。
  • 意思疎通支援がないと伝えられない内容。
  • 家族が担っているが、継続できない時間帯。

コピーして使える重度訪問介護・24時間支援相談メモ

作成日:__年__月__日
本人氏名:________
診断名:ALS

【現在の制度状況】
障害支援区分:□ 未申請 □ 申請中 □ 区分__
身体障害者手帳:□ あり □ なし □ 申請中
要介護認定:□ あり □ なし □ 申請中
現在利用中のサービス:
□ 訪問介護
□ 重度訪問介護
□ 訪問看護
□ 訪問リハビリ
□ 訪問入浴
□ 短期入所
□ 福祉用具
□ その他:________

【現在の身体状況】
歩行:□ 自立 □ 見守り □ 介助 □ 車椅子中心 □ 寝たきりに近い
移乗:□ 自立 □ 一部介助 □ 全介助 □ 二人介助が必要
排尿:□ 自立 □ 一部介助 □ 全介助
排便:□ 自立 □ 一部介助 □ 全介助
寝返り:□ 自立 □ 一部介助 □ 全介助
食事:□ 自立 □ 一部介助 □ 全介助
発話:□ 可能 □ 聞き取りにくい □ 困難
意思疎通:□ 会話 □ 文字盤 □ スマホ □ 視線入力 □ スイッチ □ その他

【医療的ケア・機器】
NPPV:□ なし □ 夜間 □ 日中も使用
人工呼吸器:□ なし □ あり
気管切開:□ なし □ あり
吸引器:□ なし □ あり
胃ろう:□ なし □ あり
カフアシスト等:□ なし □ あり
その他機器:________

【1日の支援内容】
朝:________
昼:________
夕方:________
夜:________
深夜:________

【夜間の状況】
家族が起きる回数:1晩__回くらい
主な理由:
□ 体位変換
□ トイレ
□ 吸引・痰
□ NPPV・呼吸器確認
□ 痛み
□ 不安
□ 意思疎通
□ その他:________
家族の連続睡眠時間:__時間くらい

【意思疎通支援】
本人が一人で呼べる:□ はい □ いいえ □ 条件つき
文字盤・視線入力に支援が必要:□ はい □ いいえ
家族しか読み取れない合図:□ あり □ なし
伝えられないと困る内容:
□ 痛み
□ 痰
□ 呼吸苦
□ トイレ
□ 体位
□ 医療判断
□ 緊急時の希望
□ その他:________

【家族介護の状況】
主介護者:________
同居家族:□ あり □ なし
主介護者の就労:□ あり □ なし
主介護者の体調不良:□ あり □ なし
代替できる人:□ あり □ なし
家族が困っていること:
□ 睡眠不足
□ 腰痛・肩痛
□ 仕事に行けない
□ 通院できない
□ 外出できない
□ 夜間が限界
□ 一人介助が危険
□ 緊急時が不安
□ その他:________

【現在足りていない支援】
□ 朝の起床介助
□ 日中の見守り
□ 夕方の入浴・清拭
□ 夜間の体位変換
□ 深夜の見守り
□ 排泄介助
□ 移乗介助
□ 吸引器・呼吸器周辺の支援
□ 意思疎通支援
□ 通院・外出支援
□ 家族の休息時間
□ その他:________

【希望する相談内容】
□ 重度訪問介護の新規申請
□ 支給時間の増量
□ 夜間支援
□ 24時間に近い支援体制
□ 事業所探し
□ 喀痰吸引等に対応できる事業所
□ 入院時の意思疎通支援
□ サービス等利用計画の見直し
□ その他:________

申請メモの目的は、家族の頑張りを証明することではありません。本人の生活を安全に続けるために、どの時間帯にどの支援が足りないかを見える形にすることです。

よくある質問

ALSなら必ず24時間の重度訪問介護が認められますか?

一律ではありません。ALSであっても、支給量は障害支援区分、認定調査、生活実態、介助内容、見守りの必要性、意思疎通支援、家族状況、自治体判断などを踏まえて決まります。病名だけでなく、24時間の生活の中でどの支援が必要かを具体的に整理することが大切です。

人工呼吸器を使っていないと対象になりませんか?

人工呼吸器の使用は重要な要素の一つですが、それだけで決まるわけではありません。移乗、排泄、体位変換、常時見守り、意思疎通支援、家族介護の限界など、生活全体の支援必要性で考えます。

家族が介護していると支給時間は減りますか?

家族の介護状況は確認されますが、家族がいることだけで必要な支援がなくなるわけではありません。家族が何時間担っているか、睡眠不足や体調不良があるか、継続できる状態か、代替者がいるかを具体的に伝えることが重要です。

「見守り」だけの時間も申請で説明できますか?

説明できます。ただし、単にそばにいるという意味ではなく、見守りがないと何が起きるのかを具体化する必要があります。たとえば、呼べない、痰が絡んでも伝えられない、姿勢を変えられない、意思疎通支援がないと痛みやトイレを伝えられない、という形で整理します。

重度訪問介護で吸引も頼めますか?

介護職員等が喀痰吸引を行うには、喀痰吸引等研修の修了、認定、登録事業所、医師の指示、訪問看護との連携などの条件があります。重度訪問介護の利用と、吸引に対応できるかは分けて確認してください。

24時間分の支給が決まれば、すぐヘルパーが埋まりますか?

そうとは限りません。支給量が決まることと、実際に対応できる事業所やヘルパーが確保できることは別です。特に夜間、医療的ケア周辺、意思疎通支援に対応できる人材は地域差があります。早めに複数の事業所を探す必要があります。

入院中も重度訪問介護を使えますか?

一定条件のもとで、入院中の意思疎通支援などに関係します。医療行為の代替ではなく、本人に慣れた支援者が、本人の意思や固有の介助方法を医療者へ伝える役割として考えます。利用条件は自治体や制度運用に確認してください。

支給時間が足りない場合はどうすればよいですか?

生活記録、夜間対応回数、家族負担、医師意見書、訪問看護記録、サービス等利用計画を整理し、相談支援専門員や自治体へ支給量の見直しを相談します。状態が変わった場合は、変更申請が必要になることがあります。

申請前に何日くらい記録すればよいですか?

決まりがあるわけではありませんが、まずは数日から1週間程度、朝・昼・夕方・夜・深夜の介助内容と家族の睡眠を記録すると、生活の全体像が伝わりやすくなります。通院日や入浴日など、負担が大きい日も別に記録すると役立ちます。

まずどこに相談すればよいですか?

自治体の障害福祉窓口、相談支援専門員、病院の医療ソーシャルワーカー、訪問看護、主治医が入口になります。すでに関わっている支援者がいる場合は、その人に生活記録を見せ、申請や変更相談へつなげてもらうと進めやすくなります。

参考文献・参考情報

  1. 厚生労働省. 障害福祉サービスについて.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
  2. 厚生労働省. 介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17797.html
  3. 厚生労働省. 障害福祉サービスを利用するには.
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html
  4. 厚生労働省. 特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者の入院時における支援者の付添いの受入れについて.
    https://www.mhlw.go.jp/content/001177644.pdf
  5. 厚生労働省. 重度障害者が入院する場合 医療従事者等とのコミュニケーションを支援する重度訪問介護ヘルパーの付き添いが可能です.
    https://www.mhlw.go.jp/content/001010878.pdf
  6. 厚生労働省. 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00009.html
  7. 厚生労働省. 喀痰吸引等制度について.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/index.html
  8. National Institute for Health and Care Excellence. Motor neurone disease: assessment and management. NICE guideline NG42.
    https://www.nice.org.uk/guidance/ng42/chapter/recommendations

重度訪問介護は、居宅での介護、生活全般の援助、外出時支援、見守り等を含む障害福祉サービスです。実際の支給量は、障害支援区分、生活実態、介護者の状況、サービス等利用計画、地域の支援体制などを踏まえて自治体が判断します。

まとめ

ALSで重度訪問介護を24時間に近い形で使うことを考えるときは、単に「介護が大変」と伝えるだけでは不十分です。 1日の生活を時間帯ごとに分け、どの介助、見守り、意思疎通支援、医療的ケア周辺の支援が必要なのかを具体的に整理することが大切です。

とくに、夜間の体位変換、痰や呼吸器まわりの不安、本人が呼べないこと、文字盤や視線入力に支援者が必要なこと、家族が眠れていないことは、支給量を考えるうえで重要な情報になります。

支給決定は自治体の判断であり、地域差もあります。 だからこそ、主治医、訪問看護、相談支援専門員、病院MSW、家族が同じ生活像を共有し、本人の安全と家族の継続可能性の両方を説明できるように準備してください。

  • 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の支給決定、法的判断、自治体判断を保証するものではありません。
  • 重度訪問介護の対象、支給量、入院時利用、医療的ケアへの対応は、障害支援区分、生活実態、自治体、事業所、医療連携体制によって異なります。
  • 喀痰吸引等に介護職員等が関わる場合は、研修修了、認定、登録事業所、医師・看護師との連携などの条件があります。
  • 申請や変更相談では、自治体の障害福祉窓口、相談支援専門員、主治医、訪問看護、医療ソーシャルワーカーに確認してください。